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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年01月12日

高校選手権準決勝 星稜×京都橘@国立

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kokuritsu0111②.jpg夢の聖地へ2年連続で辿り着くという偉業を成し遂げた両者の対峙。共に初めての全国制覇を狙う実力派同士のリターンマッチは、引き続き国立霞ヶ丘競技場です。
1年前。結果的に頂点へ立つ鵬翔相手に2度もリードを奪いながら、2度とも追い付かれ、最後はPK戦で屈した星稜。雪辱に燃える今大会は初戦こそ一条に5ゴールを叩き込んで快勝しましたが、3回戦の玉野光南戦、準々決勝の修徳戦と揃ってスコアレスドローからのPK戦という薄氷の勝利で、2年続けての国立へと進出してきました。過去2回の聖地は共にPK戦での敗退。3度目の正直として、初勝利と初のファイナル切符を同時に掴みたい一戦です。
1年前。全国制覇へと手が届きかけていた残り6分で鵬翔に追い付かれ、PK戦で涙を呑んだ京都橘。小屋松知哉(3年・宇治FC JY)、永井建成(3年・京都FC長岡京)とJクラブへと進む攻守の要を擁し、藤枝東と那覇西を相次いで撃破すると、インターハイ王者であり、優勝候補筆頭とも目されていた市立船橋を小屋松の2発で沈め、堂々のセミファイナル進出。昨年よりあと1つ先へ。一番高い所へ登り詰める準備は整いました。実はこの両者は12月16日に行われたプレミアリーグ参入戦でも兵刃を交えており、その時は京都橘が5-1と快勝を収め、来シーズンからプレミアへ昇格する権利を獲得。ちょうど1ヶ月後に行われることとなったリターンマッチは、選手権ファイナルを懸けた大一番。27335人の証人が見守る中、注目のゲームは星稜のキックオフでスタートしました。
3分の閃光。瞬いたのは星稜。このゲームから右CBへ戻った寺田弓人(3年・ヘミニス金沢FC)が右へ付けると、原田亘(2年・ヴィッセル神戸U-15)は間髪入れずにアーリークロス。中央へ落ちたボールに、DFより前へ体をねじ込んだ仲谷将樹(3年・ガンバ大阪堺JY)が左足で狙ったシュートは、永井を破ってゴールへ転がり込みます。「狙いとしている攻撃ですけど、入るとは思っていませんでした」と笑わせたのは河﨑護監督ですが、確かに開始直後から再三量産してたクロスがきっちり先制点に。星稜が早くもリードを奪いました。
実はプレミア参入戦の時も先制したのは星稜。しかも時間も同じ開始3分。不思議な一致に「選手たちも同じだなと思っていたと思うし、私もそう思っていた」と米澤監督は話しましたが、「時間的には同じだけど、やられ方が少し違った。サイドから積極的にクロスを入れられて、うまく対応できずに失点という形」とも。守護神の永井も「みんなだいぶ焦ってイライラしていた」と告白。12分には中野克哉(2年・YF NARATESORO)の右CKを、宮吉悠太(3年・J-FORZA JY)が左足で枠へ飛ばすも、星稜GK近藤大河(3年・名古屋グランパスU15)がしっかりキャッチ。1ヶ月前はすぐに返した同点弾も繰り出せず、なかなかリズムが出てきません。
星稜の対応で目を引いたのは、「京都橘との対戦が決まった時から自分は言われていた」という平田健人(2年・千里丘FC)が、小屋松へマンツーマンで付いたこと。「小屋松に関してはこの1年間そういうことがよく起こっていたので、予想はしていた」と米澤監督も認める中で、「スピードや技術もあって1人で止めるのは無理なので、後ろの2人がサポートしてくれるのを信じて前で潰すことを考えた」と前にガツガツ行くことで、ある程度は平田が小屋松を封じることに成功。その上で、周囲も「後ろにはCB2枚をフリーで構えさせて、流動的に動く選手にはマンマークで付け」という指揮官の指示を着実に遂行し、相手に攻撃の形を創らせません。
それでも一瞬の隙があれば輝くのがエースの証。25分、自陣の左サイドで小屋松は溜めて中へ。藤村洋太(3年・Wizards F.C)が右へ回すと、中野は中央へリターン。シュート体勢に入った小屋松へマーカーが寄せるも、その小屋松はキックフェイント気味に左へラストパス。フリーで狙った中山俊輝(3年・京都城陽SC)のシュートは近藤がキャッチしたものの、パスにもセンスを覗かせる10番が決定機を演出するも、スコアは動かず。
33分は星稜。右SBの森下洋平(3年・エスポワール白山FC)が中央をスルーパスで切り裂き、受けた森山泰希(2年・名古屋グランパスU15)の反転ミドルは永井がキャッチ。35分も星稜。前川優太(2年・セレッソ大阪西U-15)の右CKに、寺田が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。39分は京都橘。倉本光太郎(2年・京都サンガU-15)のFKから、こぼれを拾った小屋松が左クロスを上げるも、DFが何とかクリア。45+1分も京都橘。ゴールまで細かいパスワークを披露し、小屋松のスルーパスは中山へわずかに届かずオフェンスファウル。「前半は落ち着いてやってくれた」と河﨑監督。相手エースには「1対1にせずに2人で守るイメージ」(寺田)を共有しながら、きっちり仕事はさせず。星稜が1点のアドバンテージを握って、ゲームはハーフタイムに入りました。
後半に入っても流れは変わらず、星稜がゲームリズムを掌握すると、51分に訪れた点差を離すチャンス。原田の外を回った森下のクロスがファーへ流れると、猛然と突っ込んできた寺村介(3年・FC四日市)がエリア内でDFともつれて転倒。日比野真主審はペナルティスポットを指し示します。キッカーはファウルの瞬間からボールを離さなかった寺村。PK戦も含めて今大会4度目となるキックは、準々決勝後に河﨑監督が「ここまで左、右、左だから、次は右だね」とおどけた通り、やはり右を選択し、反応した永井も一歩及ばず。「凄いリーダーシップを持っていて、彼に引っ張られて導かれたかなと思う」と指揮官も絶賛するキャプテンがさすがの一撃。点差は2点に広がりました。
小さくないビハインドを負った京都橘は、55分に1人目の交替を決断。宮吉を下げて、赤澤祥平(3年・グリーンウェーブFC U-15)を最前線に送り込み、中山を左SHへスライドさせて勝負に出ると、63分には決定機。中山のパスを小屋松がダイレクトではたき、赤澤は冷静に右へラストパス。フリーの中野が狙ったシュートは、しかし近藤がファインセーブで回避。直後の左CKも中野のキックを小川礼太(1年・京都サンガU-15)が頭で返すも、ゴール方向へ飛んだDFのクリアはわずかに枠の左へ。ワンテンポ上がった応援団の"シング・シング・シング"。ただ、好リズムにも「まだ慌てているかなと思っていた」とは最後尾の永井。次に生まれた得点も追加点。
64分、京都橘のCKは一転、星稜の高速カウンターへ。森山が丁寧に落とし、前川が右に出したボールへ、仲谷は追い付くとグングン加速。そのまま中へ入れた低いクロスに、逆サイドから飛び込んだ原田は粘って粘ってシュート。ボールは右のポストを叩いて、ゴールネットへ収まります。「僕はあの試合は途中出場だったけど、参入戦の時とは集中力が全然違った」とは平田。3-0。思わぬ大差で星稜がグッとファイナルへの切符を手繰り寄せました。
「3点目が入ってからみんな下を向いてしまった」と永井も振り返った京都橘。65分には小屋松が1人で3人のマーカーを剥がし、強引に打ち切ったミドルはわずかにクロスバーの上へ。69分にも中野のパスから小屋松が放ったシュートは近藤がファインセーブ。こぼれに反応した中山のシュートも、前半終了間際の警告で決勝は出場停止が決まっていた平田が体でブロック。74分にも中野の右CKがこぼれると、拾った小屋松の左クロスに林大樹(2年・京都サンガU-15)が合わせるも枠外へ。どうしてもゴールに手が届きません。
前川に替えて、鈴木大誠(2年・SOLESTRELLA NARA2002)をピッチへ送り出した1分後の"トドメ"。75分、右サイドでのスローインから、仲谷の落としを森下はピンポイントに中へ。ニアへ飛び込んだ森山はトラップでマーカーを外し、そのままボレーで丁寧にフィニッシュ。2年生ストライカーに飛び出した今大会初ゴールは、勝利を決定付ける4点目。星稜が国立の舞台を完全に制圧してみせました。
何とか意地を見せたい昨年度のファイナリスト。80分には藤村、赤澤、中山と細かく繋ぎ、最後に小屋松が打ったシュートも弱く、近藤ががっちりキャッチ。85分には永井も途中出場の稲垣拓斗(3年・ヘミニス金沢FC)が放った決定的なシュートをファインセーブで凌ぐなど、プレーで懸命にイレブンを鼓舞。89分には中央、ゴールまで25m強の距離から赤澤が直接狙ったFKもクロスバーの上へ消えると、これが京都橘にとって今年度のラストシュート。ファイナルスコアは4-0。「国立で勝利がない私にとっては時間が長くて長くて。駆け出しの時に県決勝で私自身の初優勝の時に感じたのと近いかなと。54歳ですけどドキドキハラハラという感じでした」と笑った河﨑監督の国立初勝利。星稜が昨年度の、そしてプレミア参入戦のリベンジを成し遂げ、栄光のファイナルへと駒を進める結果となりました。
「もう少し先取点を取られる時間が遅ければ。あの1点が最後まで響いたかなと思う」と米澤監督が振り返った京都橘。そこまでの展開は1ヶ月前とまったく同じでしたが、その後の展開は厳しいものとなりました。それでも「今まで橘にはなかったことがたくさんある中での3位ということで、選手は精神的にも成長したからこそここまで来られたのではないかなと思う」と指揮官も言及した通り、プレッシャーにさらされる中で2年連続の全国ベスト4は立派な結果。「来年後輩たちが頑張ってくれると信じています。今は学校に銀と銅があるので、来年は金で。学校に金銀銅と3つ揃えて欲しいですね」とは永井。3年生が掲げた大きな目標は、スタメンに6人も名前を連ねた下級生にしっかりと受け継がれました。
「でき過ぎな試合で、ただただビックリしております」とおなじみのとぼけた口調で、河﨑監督も決勝進出を喜んだ星稜。「3回はビデオを見たし、あの試合が自分では凄く次のプランに生きましたね」(河﨑監督)というプレミア参入戦で得た教訓を生かし、色々な"貸し"に蹴りを付けて、とうとう国立最蹴章のファイナルへ挑みます。前述したように平田は出場停止となりますが、「個人的にアイツは2年生で一番信頼している。結果を残してくれたので、そういう人の分も俺らが結果で応えたい」と決意を口にしたのは寺田。「国立最蹴章に"北陸ダービー"なんて有り得ない話ですよ」と河﨑監督が笑顔で語ったように、最後の対戦相手は富山第一。北陸勢初の頂へ。"星稜ファミリー"結実の時は、もうすぐそこまで迫っています。         土屋

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