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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年01月11日

高校選手権準決勝 富山第一×四日市中央工業@国立

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kokuritsu0111①.jpg4166分の4。改修前としては最後の聖地へ辿り着いた栄えある4校の饗宴。最蹴章となる3試合のファーストラウンドは、言うまでもなく国立霞ヶ丘競技場です。
14年前。石黒智久や西野泰正、中島裕希らを擁し、2年連続で国立の舞台を経験した富山第一。今大会は初戦でいきなり実力校の長崎総科大附属と激突するも、注目のアタッカー西村拓真(2年・名東クラブ)がドッピエッタを記録して競り勝つと、2回戦、3回戦も共に1点差で粘り強く勝ち上がり、迎えた準々決勝では日章学園に4ゴールを叩き込んでの完勝で国立の舞台へ。富山県勢として、そして北陸勢としてもいまだ勝利のない聖地で、まずは悲願の1勝を狙います。
2年前。後半のアディショナルタイムまで大旗をその手に掴みかけながら、最後は延長戦の末に悔しい準優勝を強いられた四日市中央工業。1,2年生主体で臨んだ「しんどい代」(樋口士郎監督)だったはずの今大会は、矢板中央相手に3-2と打ち合った初戦を制し、3回戦では昨年度の初戦で敗れた桐光学園にきっちりリベンジ。国立を懸けた履正社との準々決勝は、後半アディショナルタイムにCBの後藤凌太(3年・FCこもの)が執念の同点ゴールをねじ込むと、勢いそのままにPK戦を勝ち切ってこのステージへ。小倉隆史、中西永輔、中田一三をもってしても成し遂げられなかった"単独優勝"を目指し、最後の国立へ挑みます。雲ひとつない快晴の聖地に詰め掛けたのは、22228人にもおよぶ大観衆。バックスタンドを彩る両校応援団にとっても晴れ舞台。セミファイナルの第1試合は12時5分にその幕が上がりました。
ファーストチャンスは富山第一。5分、キャプテンの大塚翔(3年・富山北FC)が裏へシンプルに落とし、渡辺仁史朗(3年・富山北FC)が走ったボールは後藤がしっかりカバーしてクリアしましたが、まずは富山第一が「ウチの強みである"仁史朗の裏へ飛び出すスピード"というのを生かした戦いをしたい」と大塚一朗監督も明言した形で、チャンスを窺います。
一方の四中工は8分にファーストシュート。中盤でボールを拾った小林颯(1年・セレッソ大阪西U-15)は、ゴールまで30m近い距離から枠内シュートを敢行。ここは富山第一GK高橋昂祐(2年・FCひがし)がファインセーブで掻き出したものの、ここまで2ゴールをマークしているスーパールーキーがチームに勢いをもたらすべく、惜しいシーンを創り出します。
そんな中、徐々に前への圧力で上回り始めたのは富山第一。「前にボールが溜まる分、富一さんの方が後ろからの推進力という部分では良かったのかな」と樋口監督が話したように、渡辺のパワーや大塚のキープ力を軸にサイドアタックも機能。右は西村が、左は再三SHを追い越して上がるSBの竹澤昂樹(3年・エスポワール白山FC)が、それぞれ縦への推進力を発揮して、四中工を押し込みます。
17分は四中工。こちらも縦への意欲を見せていた左SBの中田永一(2年・FC.Avenidasol)がクロスを放り込み、こぼれを狙った右SB大辻竜也(3年・FCこもの)のミドルは枠の右へ。21分は富山第一。右サイドで相手ボールを奪い切った細木勇人(3年・UOZU FC UB)がそのまま持ち込み、放ったシュートは枠の右へ。22分も富山第一。右サイドを西村が川縁大雅(3年・FCひがし)とのワンツーで抜け出すと、枠を捉えたシュートは四中工GK高田勝至(2年・鈴鹿鼓ヶ浦中)が右足1本でストップするも、やはりサイドアタックから生み出した決定的なシーン。
すると、勢いはそのまま成果へと昇華。直後の左CKは細木がショートでスタート。受けた竹澤が中へ送ったボールはこぼれるも、反応した藤井徹(3年・FCひがし)が押し込んだボールは右スミへ向かい、ゴールネットへ転がり込みます。「セットプレーがお互いに得意なので鍵になる」という大塚監督の予想的中。CBコンビが見せた攻撃面の連携で、越中の紫軍団が先にスコアを動かしました。
さて、1.3列目くらいに位置する小林を起点にしたカウンターや、しっかりとボールを動かすパスワークは披露するものの、なかなかそれがフィニッシュへと結び付かない四中工。26分には中田のクリアを小林がヒールで繋ぎ、加藤慧(2年・北勢FC)が走り込むも高橋がキャッチ。逆に29分は富山第一。西村のパスから抜け出した渡辺へ高田がタックルを見舞い、高田は何とかイエローカードで済みましたが、やはり渡辺の"スピード"を生かした形は効果的。そのFKもトリック気味に始めると、竹澤のシュートは高田が何とかキャッチ。続く富山第一のリズム。
35分も富山第一。高橋のフィードに野沢祐弥(3年・UOZU FC UB)が競り勝つと、抜け出した渡辺の左足シュートは高田がキャッチ。36分も富山第一。川縁が左から中へ戻したボールを、最後は渡辺が枠の左へ外れるフィニッシュ。41分には四中工も森島と小林の1年生コンビでバイタルを攻略し、小林が右へ流れながらシュートを打つも富山第一のCB村上寛和(2年・FCひがし)が体でブロック。同点機は創らせません。
左足1本で揺り戻したスコア。44分、左サイドで獲得したFKは四中工。ゴールまでの距離は約25m。スポットには大辻と中田の両SBが。角度的には右利きの位置かと思われましたが、蹴ったのはレフティの中田。左足から放たれたボールは右スミへ向かうと、クロスバーをかすめてそのままゴールネットへ突き刺さります。2003年のコンフェデで中村俊輔が見せた一撃を髣髴とさせるようなゴラッソFK。「セットプレーというお互いのいい所が出たのかなと思う」と大塚監督も話したように、双方セットプレーから1点を奪い合う格好となり、最初の45分間はタイスコアでハーフタイムへ入りました。
後半もスタートの勢いは富山第一。47分、竹澤のパスを野沢は裏へ。ボランチのラインから細木が飛び出し、ここは高田にキャッチされましたが、「コンビネーションで細木が2列目から飛び出してくれた」と大塚監督も話した通り、前半を受けて後半へ修正した一端を早くもチャンスの芽に。53分にも渡辺が右のハイサイドを独力で持ち運び、高田にファインセーブを強いるシュート。54分にも細木が右奥へ蹴り込んだボールから、粘って粘って打ち切った西村のシュートも高田がビッグセーブで回避するも、勝ち越し弾への意欲を隠しません。
57分の咆哮は紫。そこまでも果敢にドリブルで仕掛けていた竹澤が、ここも中央へ潜ると1人でグイグイ前進。四中工も中央を数人掛かりで締めに行きましたが、こぼれたボールを拾ったのはフォローに駆け上がってきた細木。ワンテンポずらして放ったシュートは、ここまでファインセーブを連発していた高田もノーチャンス。ゆっくりとゴール右スミへ吸い込まれます。「後半に向けて2列目やボランチが裏を狙うということができたんじゃないかなと思う」とはしてやったりの大塚監督。3年生ボランチの2戦連発弾が飛び出し、再び富山第一が一歩前へ出ました。
前半終了間際にここまで守備陣を支えてきた後藤が負傷交替を余儀なくされ、栗田一兵(3年・FC四日市)がそのままCBに入るなど、アクシデントにも見舞われながら、失点のシーン以外はその栗田とキャプテンの坂圭祐(3年・四日市内部中)の両CBを中心にしっかりと体を張りながら、「常に高いラインを保ってコンパクトに」(樋口監督)という狙いも遂行。攻撃面でも「森島のパフォーマンスが前半より上がったことで、サイドへのボールが増えた」(同)こともあって、リズムは出てきたもののシュートは打てない四中工でしたが、その後半ファーストシュートがもたらした歓喜と絶叫。
73分、自陣で相手ボールを刈り取った中田は得意の左足でDFラインの裏へ好フィード。特に後半は完璧に近い対応を見せていた富山第一ディフェンスに一瞬できた綻び。完全に単独で抜け出した井手川純(3年・阿久比中)は、左サイドから中央へコースを取りながら、1対1の局面も冷静にGKを見極め、ゴール右スミへとボールを流し込みます。富山第一からすれば「ああいう一発のボールで裏を取られることが非常に多くて、そこだけは注意しろと言っていた」と大塚監督も悔やんだシーンでしたが、ワンチャンスを生かした井手川もお見事。伝統の"17番"が聖地で煌き、両者の点差は一瞬で吹き飛びました。
2度のリードがことごとく霧散した富山第一。既に68分には「腰とふくらはぎに違和感があると自分から申し出てきた」(大塚監督)という竹澤と菅田峻平(3年・水橋FC U-15)が交替。74分には西村に替えて高浪奨(3年・ヴァリエンテ富山)を送り込み、効いていた両翼を共にスイッチ。77分には大塚の完璧なスルーパスに、3列目から川縁が飛び出すもシュートはDFがブロック。直後のCKも細木のキックを村上はヘディングで枠へ飛ばすも、高田がファインセーブ。3度目の勝ち越しとは行きません。
82分には四中工にこの日初めてリードを奪う絶好機が。尻上がりに調子を上げてきた森島が繰り出した絶妙のスルーパス。走った途中出場の舘和希(2年・伊賀FC JY)はシュートまで持ち込むも、ボールはDFが執念で触ってわずかに枠の右へ。84分には右サイドで獲得したFK。ここもスポットに大辻と中田が並ぶと、後者が直接狙ったキックはわずかにクロスバーの上へ。最終盤に来て、勢いは今や完全に四中工へ。
90+1分は四中工。舘和希のドリブルで奪った右CK。中田が蹴ったボールはゴール前の混戦を生み出すも、シュートまでは至らず。90+2分には富山第一に最後の交替が。大塚監督は高橋を下げて、田子真太郎(3年・ヴァリエンテ富山)を投入するGK同士の入れ替えを決断。90+3分は四中工。その田子のキックミスを拾い、森島が無人のゴールを狙ったミドルはやや焦ってしまいヒットせず。しばらくして、大坪博和主審が吹いたのはドロー決着を告げるホイッスル。最後の1試合を戦う権利が記された切符の行方は、PK戦へと縺れることとなりました。
先攻の富山第一1人目は10番を背負う大塚。右を狙ったキックはGKの逆。吼えたキャプテン。後攻の四中工1人目もキャプテンの坂。右スミへ飛んだキックは、田子も読んでいたもののコース勝ち。吼えたキャプテン。1人目はお互い成功。富山第一2人目の藤井、四中工2人目の大辻は揃って成功。両者譲らず。
富山第一の3人目は野沢。左へのキックは高橋も初めて同方向へ飛ぶも、揺れたゴールネット。四中工3人目は中田。この2倍はあった距離からFKを沈めた男のチョイスは右。1秒後のガッツポーズは田子。「お調子者でおだてれば木に登る性格の持ち主。このチームを立ち上げた時に、思い込みで『おまえはPK職人だ』と言っていたら、夏の練習試合でも大学生相手に3試合勝ったりしたので、『上に登ったんだったらそのままにしておこう』と」大塚監督も独特の表現で信頼を口にした"PK職人"が大仕事。初めてスコアに差が付きます。
富山第一4人目の渡辺は小粋なループ気味のキックで成功。外せば負けというプレッシャーの中、四中工4人目の村澤桂輔(3年・名古屋FC)はパーフェクトなキックで意地の成功。迎えた富山第一5人目は細木。張り詰めた空気の中、選択した中央のゴールネットに突き刺さる白黒の球体。「PK戦しか出番はないのに、試合が始まる前から緊張していた」と語る"職人"の活躍で、凱歌を上げたのは越中の紫。3度目の挑戦で鬼門を突破した富山第一がしびれるロシアンルーレットを制して、初のファイナルへと勝ち進む結果となりました。
「格上の富一相手に前半は内容はともかく1-1で折り返せて、後半も危ない場面もありながらある意味PKまで行けたというのは、非常に選手は頑張ったのかなと思っています」と樋口監督が振り返ったように、四中工の健闘が光りました。前述したように前半終了間際に後藤を負傷で失いながらも、「元々プリンスリーグで試合に出ていた」(樋口監督)という栗田はまったく遜色ないプレーで堅守に貢献。「今年は述べ30人近い選手を先発メンバーで色々使いながらここまで来たので、ある程度誰が出てもそんなにパフォ-マンスは落ちない」という指揮官の言葉を証明するようなゲームを、最後まで見せてくれたと思います。四中工という伝統の看板に息づいているものを、この舞台ではっきりと感じさせてくれる好チームでした。
同校として、富山県勢として、そして北陸勢として初めての国立勝利を手に入れた富山第一は、いい意味でやることがハッキリしていたなという印象を持ちました。例えば渡辺のスピード。例えば細木や川縁の飛び出し。狙いに迷いがない分、左SBに入った竹澤のオーバーラップや、ドイスボランチの飛び出しもいい方向に転がっていくのかなと。決勝に向けて、「試合の"流れ"は自分たちで創るものだと言っているのに、自分たちで"流れ"を手放してしまった所をもう1回整理したい」と話したのは大塚監督。迷いのなさが引き寄せ得る"流れ"は試合の中での話。そして戴冠への"流れ"は、間違いなく富山第一へと傾きかけています。      土屋

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