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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年01月06日

高校選手権準々決勝 星稜×修徳@駒沢陸上

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komazawa0105.jpg夢の聖地へあと1勝まで迫ったクォーターファイナルの勝敗は、まさに天国と地獄。2年連続か、初めての進出か。星稜と修徳が激突するのは駒沢陸上です。
初戦となった2回戦の一条戦では、ようやく戦線に帰ってきたキャプテン寺村介(3年・FC四日市)の復帰弾を含む5ゴールを挙げて圧勝。3回戦で当たった玉野光南には固い守備に苦しめられ、PK戦までもつれたものの、「PKになったら勝ったと思え。精神的に勝ったと思え」という河崎護監督が言い続けてきた意識の下、5人全員が成功してこのクォーターファイナルへ。過去2戦2敗の国立でリベンジを果たすべく、まずは難敵と対峙するこの一戦に臨みます。
ボトムアップ理論を採り入れる綾羽との初戦は、後半に押し込まれる時間帯を創られながら、エースの田上真伍(3年・FC東京U-15深川)がFKを突き刺し、辛勝を収めた修徳。一転、またもボトムアップ理論の松商学園と対戦した3回戦は、「修徳があまりボールを持つこともないと思うので、そういう面では今日はいいゲームだった」とキャプテンの池田晃輔(3年・埼玉ユナイテッドFCフェスタ)が振り返る、ポゼッションでも上回っての快勝。全国の舞台でその実力を確実に伸ばしており、最高の雰囲気で国立決めのゲームへ挑みます。第二でも補助でもない"陸上"には9258人の大観衆が。最蹴章の聖地を懸けた一戦は、修徳の10番を背負う田上のキックオフシュートで幕を開けました。
2分に"2本目"のシュートを放ったのも修徳。小野寺湧紀(2年・荒川第五中)が裏へ落とすと、田上のボレーは星稜GK近藤大河(3年・名古屋グランパスU15)がキャッチしたものの、早くも好機を創出。9分にも小野寺の浮き球に加藤禅(3年・柏レイソルU-15)が走り出し、マーカーと併走しながら放ったシュートはブロックされましたが、直後に田上が蹴った左CKも大野翔平(3年・クリアージュ)に合いかけるなど、「自分たちがボールを持てる時間は限られていると思ってたけど、実際にやってみたら結構蹴ってきた」(加藤)星稜相手に、自分たちのストロングである"球際"で勝った修徳がチャンスを生み出します。
一方の星稜はボール支配率という意味では上回る中でも、バイタル周辺まではボールを持ち込めず。「やっぱりゴール前は簡単に打たせてもらえない」と河崎監督も話した通り、最後の局面では久保祐貴(3年・習志野第一中)を中心に、出足の鋭い修徳ディフェンスを前にして、フィニッシュまで至らない流れに。15分、19分、20分と右サイドから相次いで投げ入れた森下洋平(3年・エスポワール白山FC)のロングスローも跳ね返されてしまい、なかなか攻撃のリズムが出てきません。
19分には修徳に先制機。今野尚也(3年・GOODLY)の左クロスを加藤が競り合い、ルーズボールを佐藤悠輝(3年・FC東京U-15深川)が叩いたボレーはわずかにクロスバーの上へ。22分にも修徳の流れるようなアタック。池田からのリターンを受けた佐藤が左へ振り分け、小野寺が上げたクロスはファーサイドまで。田上のノートラップボレーは枠の右へ外れるも、得点の香りを感じさせる一連を披露。星稜も24分には左サイドの深い位置で獲得したFKを、前川優太(2年・セレッソ大阪西U-15)がマイナス気味に短く出し、寺村がシュートを狙うも察知したDFが間一髪でブロック。お互いに惜しい手数を繰り出します。
ただ、以降は全体の流れは変わらないまま、シュートの本数が多いのは修徳。「CBとか前にも凄く強いし、そういう面でキープできないんじゃないかなと思ってたけど、ゲーム中は意外にできた」と語る加藤にボールが収まり、ここを基点にしたカウンターを徹底。32分には小野寺の左クロスに飛び込んだ田上のヘディングは、わずかにゴール右へ。39分にも今野尚也(3年・GOODLY)、小野寺と繋ぎ、田上が大きく右へサイドを変えたボールに、池田はワントラップボレーを敢行。ボールは右サイドネットの外側を襲いましたが、「自分たちの攻撃でゲームを進められた」と話したのは最後尾からチームを見守る守護神の高橋太郎(3年・すみだSC)。1対7というシュート数を持ち出すまでもなく、修徳ペースで進んだ40分間はスコアレスでハーフタイムへ入りました。
後半も先に相手ゴールを脅かしたのは修徳。41分、今野、田上、加藤と回したボールを、田上はきっちり枠内へ。ここは近藤にキャッチされたものの、河崎監督が「勝負の分かれ目は10番を抑えるかどうか。直前のミーティングでマンマークにした」と明かしたように、平田健人(2年・千里丘FC)にマンツーマンで付かれる中で、「やりにくさはあった」としながらも田上がうまくマーカーを剥がしながら、チャンスを演出していきます。
とはいえ、そこは「今日のプレーはウチも普段の何パーセントは出せたかな」と指揮官も評価した星稜。44分には寺村の突破から左CKを獲得すると、前川のキックと跳ね返りを放り込んだクロスはいずれも決定的なシーンには繋がりませんでしたが、原田亘(2年・ヴィッセル神戸U-15)と森下で組む右サイドも活性化し始め、51分にはやはり右サイドでのアタックから、森下のロングスローまで。「全体的にちょっと下がってしまって、前に行くパワーがなくなった」(久保)「ハーフウェーラインあたりまで全員が引き込まなきゃ守れないというチーム状況というか、取った後に攻撃まで行けない」(峰和也・3年・Wings U-15)と2人が声を揃えた通り、星稜の圧力が徐々に相手を押し込みます。
先に動いた岩本監督。53分、小野寺に替えて送り込むのは絶対的な切り札の関秀太(3年・スクデット)。少し差し込まれ始めた左サイドの抑止力と、ドリブルの威力に攻撃のリズム再構築を託します。そんな中、59分にはスタンドがどよめくシーンが。大野が深い位置から何気なく蹴り込んだ修徳のFKはゴール方向に飛んで行き、難なくキャッチするだろうと思われたボールを近藤がまさかのファンブル。左ポストに当たった球体にDFがクリアして、結果的には事なきを得ましたが、あわやゴールという場面が突如として訪れました。
66分は星稜。藤田峻作(3年・友淵FC)が左から蹴り込んだFKはGKも弾き切れず、拾った寺村のミドルはクロスバーの上へ。68分も星稜。左サイドまで走って森下が投げ込んだロングスローはDFがはっきりクリア。68分には修徳に2人目の交替が。「加藤は良かったけど、裏に行けなかったから、ゴールに一番近いヤツがスピードのあるヤツにした」(岩本監督)と、加藤に替えて雪江悠人(2年・三郷JY)を右SHへ投入し、佐藤を右から左へスライド。関を最前線に置いて、"スピード"で最後の壁を打ち崩しに掛かります。
「体力じゃ負けていなかった」(峰)「試合中にも後半の最後の方とか、相手が足が止まっているのを見てビックリするくらい、自分たちは体力が付いた」(加藤)と自信を持っていたラスト10分間のラッシュは修徳。72分、左サイドで佐藤が縦に付け、田上が中へ入れたボールを関は巧みにフリック。走り込んだ池田の決定的なシュートは、しかし上田が懸命にブロック。74分も修徳。佐藤のパスから田上が狙ったミドルは枠の上へ。76分の「作戦通り」(田上)というセットプレーも修徳。田上のショートコーナーを池田が戻すと、田上がニアへ入れたボールはフリーの大野へ。ヘディングはクロスバーを直撃し、結果としてはオフサイドになったものの、「ショートでニアの選手をどかしてから、GKの前で触るというのはずっと練習からやっている」と田上。攻撃面でも練習の成果をこの土壇場で遺憾なく発揮してみせます。
80+2分に左から前川が蹴ったCKも高橋ががっちりキャッチすると、駒沢に鳴り響いたのは主審のタイムアップを告げるホイッスル。「自分たちのゲームは8割方できていた」(池田)「完全にウチのゲームだったと思う」(久保)と修徳のドイスボランチも言及した80分間は結局スコアレス。国立への切符はPK戦へと委ねられることになりました。
おなじみ"葛飾ラプソディー"に送り出された修徳1人目は田上。3回戦でも試合中のキッカーを務めた10番が、その時と同じ左を狙って蹴ったキックは近藤が完璧なセーブで阻止。星稜1人目は藤田。3回戦でもPK戦の1番手として登場した6番が、その時と同じ左を狙って蹴った「今日も読まれていましたよね」と河崎監督も言及したキックは、それでも枠のギリギリを捕獲。0-1。星稜が得たアドバンテージ。
修徳の2人目は池田。キャプテンマークを巻く精神的支柱が右をチョイスしたキックも、近藤がビッグセーブで仁王立ち。星稜2人目の寺田弓人(3年・ヘミニス金沢FC)がクロスバーに当てながらねじ込むと、修徳3人目の久保が右へ蹴ったキックも、近藤が脅威の3連続セーブ。「今日の近藤君は"降りて"きていましたよね」と河崎監督も認める守護神の大活躍。星稜3人目はキャプテンの寺村がスポットへ。
一瞬寺村を呼び止めた河崎監督。真意を問われると、「寺田がバーに当てて決めたので、やっぱり力んでいましたよね。去年の準決勝はバーの上でしたから、力が入ってくるんですよね。それをリラックスしろと言っただけです」とのこと。「リラックスし過ぎてましたよね」と河崎監督も笑った10番のキックがゆっくりとゴールネットへ吸い込まれ、熱戦に打たれた終止符。「強い気持ちを持って戦っていることが、選手の成長というかベスト4に繋がっているかな」と指揮官も話す星稜が、2年連続となる国立へ歩みを進める結果となりました。
敗れたPK戦に関しては、「池田と久保が外して負けたんだから納得しています」と穏やかに語った岩本監督。傍から見ると互角以上のゲームを繰り広げた印象もありましたが、「無失点でも得点ができないとサッカーは勝てないので、実力が足りなかったというしかない」(渡邉黎生・3年・LARGO.FC)「星稜は全国の強豪だけあって、ピンチの時も落ち着いていたりしていたので、そこの力の差はあるなと感じた」(田上)と攻守のキーマンが揃って言及。ゲームや両者の力を冷静に振り返っている姿が印象的でした。「楽しんでやろうとか、自分たちでやろうとか、そういうことも大切なことなんだけど、ひたむきに勝利に対してボールを追い掛けるチームがこのベスト8に残ったということは、もしかしたらそういうことが良かったことなのかなと思います」と岩本監督。その持てる力をフルに出し切っての全国ベスト8は立派な勲章。選手たちへ最大限の拍手を贈りたいと思います。
最後に。個人的にどうしても岩本監督に聞いておきたいことがありました。冒頭にもありますが、今大会の修徳は綾羽、松商学園といわゆる"ボトムアップ理論"を採り入れているチームと続けて対戦しています。これについてどう思われていたのかなと。問われた岩本監督は「やりにくくはないですけど、『生徒と采配を振るい合って、俺が負けたらどうなの?』って(笑) 向こうは生徒が前に出て行ってるけど、こっちは大人が出て行ってるなとは思いましたけど(笑)」と笑顔。続けて「サッカーってそんなに甘いものじゃないと僕は思っているし、平面の中で一緒にやっている中で状況を見て、それで負けたら『俺は25年間何をやっていたんだ』ということになっちゃうから、そこはしたたかに分析してね。だから勝てて良かったです(笑)」とのこと。この指揮官にして、この選手たちあり。やはり修徳は、最後まで修徳でした。              土屋

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