最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
※取材の都合により、後半からのレポートになりますのでご了承下さい。
星稜の攻勢にも「1人1人アジリティがしっかりした子が多いので、対敵動作で簡単に1対1で破れないというのはビックリした」と河崎護監督も話したように、キャプテンの野上浩平(3年・鷲羽FC)と久山隆一(3年・岡山操南中)のCBコンビを中心にゼロで前半を凌ぎ切った玉野光南は、後半スタートから選手交替を決断。左SHを土居晃貴(1年・アヴァンサールFC)から難波大智(3年・玉野宇野中)に入れ替え、さらに1トップ下の定森大輝(3年・鷲羽FC)が左SBへ移り、その位置にいた塩田晃大(1年・サウーディFC)がボランチへ、ボランチの後藤大輝が1トップ下へスライドして、後半の40分間に臨みます。
51分は星稜。原田亘(2年・ヴィッセル神戸U-15)の右クロスに、森山泰希(2年・名古屋グランパスU15)が飛び込むも、わずかに触れずオフェンスファウルに。53分も星稜。上田大空(3年・鹿島アントラーズノルテJY)、森山と繋ぎ、キャプテンマークを巻く寺村介(3年・FC四日市)の仕掛けもシュートには至らず。逆に53分には玉野光南もカウンター発動。中井レアーズ(2年・アクート岡山FC)のパスから、後藤の狙った40mロングは枠外も果敢なチャレンジ。一刺しへの意欲をシュートへ滲ませます。
53分に左から森山が、55分に右から原田が、同じく55分に左から上田が入れたクロスはいずれもフィニッシュまで持ち込めず、次のシュートも玉野光南。59分、SHの古矢涼(3年・倉敷新田中)が右からアーリークロスを放り込み、DFのクリアをダイレクトで叩いた難波のシュートは星稜GK近藤大河(3年・名古屋グランパスU15)にキャッチされたものの、後半のシュート数で見ればゼロの星稜に対して、これが2本目の玉野光南からすれば、決して悪くないリズムで経過させた20分。
何とか押し切りたい星稜の後半ファーストシュートは60分。仲谷将樹(3年・ガンバ大阪堺JY)が左へスルーパスを通し、抜け出した寺村のシュートはわずかに枠の左へ。61分にも先制機。左から前川優太(2年・セレッソ大阪西U-15)が蹴ったCKを、ニアに潜った森下洋平(2年・エスポワール白山FC)がすらしたヘディングは左のポストを直撃。玉野光南ゴールを陥れることはできません。
河崎監督も62分には1人目の交替を決断。森山に替えて、長谷川朔太郎(2年・FC四日市)をそのまま前線に投入。それでも68分には玉野光南が難波と後藤の綺麗なパス交換から、DFのブロックに阻まれたものの中井がシュートを放つと、71分には小川将太郎(2年・FC四日市)、73分には阿部雅志(1年・FC四日市)を続けざまにピッチへ送り込み、「PK戦はイヤなので、ラスト10分になってCBを上げて勝ちに行った」と河崎監督が言及したように、ここに来て戦線復帰した寺田弓人(3年・ヘミニス金沢FC)を最前線に置いて、最後の勝負へ打って出ます。
79分は星稜。藤田峻作(3年・友渕FC)のフィードをに弓田が競り勝つも、久山が確実にクリア。80分も星稜。寺村の左クロスを阿部が頭で繋ぐも、シュートには至らず。80+1分も星稜。阿部が右へ展開し、森下が丁寧に送り込んだクロスへ、3列目から飛び出した鈴木大誠(2年・SOLESTRELLA NARA2002)のシュートも玉野光南GK山本克哉(3年・総社東中)が正面でがっちりキャッチ。「力関係から考えると『よくやった』と迎えた」と乙倉健二監督も称えた玉野光南の堅陣は崩れず。クォーターファイナルの行方はPK戦へと委ねられることになりました。
「正直負けたような、イヤな雰囲気は出ていた」と寺村も感じる中、「PKになったら勝ったと思え。精神的に勝ったと思え」と河崎監督へロシアンルーレットに送り出された星稜と、県予選でも準決勝と決勝はそのロシアンルーレットを制してきた玉野光南が対峙するワン・オン・ワン。
先攻の玉野光南1人目は1年生の塩田晃大。「チームの中でも一番技術が高い2人」(乙倉監督)の内の1人は、氷の冷静さでGKの逆を突いて成功。星稜1人目は「ここ最近でレギュラーになった」(河崎監督)という藤田でしたが、こちらも確実に左スミのゴールネットを捕獲。レフティ同士が大事なファーストキッカーの重責を果たします。
玉野光南2人目の後藤、星稜2人目の寺田は共に成功。特に後者のキックは河崎監督も「寺田がストーンと決めてくれて、いい意味で後ろのヤツらがいい意味で力が入ったよね。いいPKでした」と絶賛する一撃。すると、玉野光南の3人目として登場したキャプテンの野上が蹴ったボールは、枠を外れてしまいます。失敗の後の難しい星稜3人目はこちらもキャプテンの寺村。「『オマエやったらやれるから』と仲間から言われて楽になった」という10番のキックは、飛び付いた山本もわずかに及ばず左スミギリギリへ成功。これで星稜は1点のリード。
玉野光南4人目はCBの久山。右を狙ったキックは近藤もよく触りましたが、キックの勢いが勝って成功。星稜4人目の中谷も左を狙うと、ここも山本は反応したものの、絶妙のコースへ突き刺さり、ここまでのスコアは3-4。運命のPK戦はいよいよ5人目へ。
玉野光南5人目は「チームの中でも一番技術が高い2人」(乙倉監督)の内の1人でもある塩田奨馬(1年・ハジャスFC)。指揮官も「絶大な信頼を置いている」1年生は、この"外せば終わり"という極限の場面でも左スミへきっちり成功。玉野光南は1人目と5人目に起用されたルーキーが、その責務を完璧なまでにまっとうし、あとは山本にすべてを託します。
星稜5人目は森下。上下動を繰り返し続けた右SBが、チーム5人目にして初めて右へ蹴ったボールは、山本の逆を取って力強くゴールネットへ突き刺さります。「練習ではGKに蹴る方向を言ってから、2本決めるまでやると。それをやり続けることで自信を持たせる」という河崎トレーニングの成果がここに結実。「シビレましたね」と指揮官を唸らせた星稜が、2年連続となるベスト8へ駒を進める結果となりました。
星稜は選手権本大会で過去11度のPK戦を経験し、その結果は4勝7敗。本田圭佑を擁した83回大会も、まだ記憶に新しい前回大会も、共に国立での準決勝をPK戦で落とすなど、「PKに弱いというイメージ」(寺村)を抱いていた方も少なくないかもしれません。それでも今年のチームは「かなりPKの練習をしてきているので、いい"ハート"を持っている」と寺村。その"ハート"はこの重要な一戦できっちりと証明されました。次のゲームに向けて「大事なのはベストメンバーでベストコンディションを出せるように。自分たちのプレーを出すことに尽きる」と話した河崎監督。試合後に玉野光南イレブンから「心に響いたし、ありがたい」想いの詰まった贈り物を託された寺村。2年連続の聖地へ。星稜の頂点を目指す歩みはまだまだ止まりません。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!