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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年12月25日

インカレ決勝 国士舘大×大阪体育大@国立

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kokuritsu1225.jpg「今のチームで日本一になりたい」と国士舘大の平松宗(3年・アルビレックス新潟ユース)が語った言葉は両雄の偽らざる想い。"今のチーム"でファイナルまで辿り着いた2つの実力者が激突する舞台は、日本サッカーの聖地・国立競技場です。
最下位からの大逆襲。5月の中断期前までリーグ戦ではほとんど勝てず、2部降格すら危ぶまれていたものの、地獄の夏合宿を経て蘇ったチームは怒涛の"後期優勝"でインカレ出場権まで獲得。迎えた今大会も阪南大、流通経済大、鹿屋体育大という難敵が揃う「強豪だけのブロック」(細田三二監督)を堂々と突破し、とうとう国立の舞台まで勝ち上がってきました。「インカレに入る前からあそこに立って、カップを掲げるイメージはできている」と語ったのはキャプテンの石川喬穂(4年・広島皆実)。闘将が抱いてきたイメージの実現までは、あと90分間です。
関東と並び称される激戦の関西リーグを堂々たる戦いぶりで制し、10年ぶりにインカレへと駒を進めてきた大阪体育大。新潟経営大、東海学園大という曲者を、2試合連続4ゴールという爆発的な得点力で撃破。セミファイナルではドイツ・1FCケルンへの加入が決まった長澤和輝(4年・八千代)擁する、大学サッカー界最強との呼び声高い専修大に、2トップの澤上竜二(2年・飛龍)と伊佐耕平(4年・神戸科学技術)が揃ってゴールを奪う活躍を見せ、3-2で勝ち切ってファイナルへ。28年前の初優勝時は両校優勝だったため、今回狙うのが単独日本一であることは間違いありません。もう残された試合数も片手で数えられる改修前の国立には9053人の観衆が。キックオフの笛が吹かれると国士舘がボールを蹴り出し、最後の1試合の火蓋が切って落とされました。
ファーストシュートは1分経たない内に国士舘。左から橋本拓門(4年・柏レイソルU-18)が蹴り込んだ左FKを、CBの今瀬淳也(3年・市立船橋)が合わせたヘディングは大体大GK村上昌謙(3年・草津東)にキャッチされますが、まずはリーグ戦の好調そのままに決勝まで駆け上がってきた国士舘が先手を繰り出します。
ただ、以降は関西王者にチャンスの連続。8分、池上丈二(1年・青森山田)の左CKは一旦クリアされたものの、再び山本大稀(4年・米子北)が繋ぎ、左から伊佐が上げた好クロスは国士舘のSB藤嵜智貴(1年・清水エスパルスユース)が何とかクリア。9分、池上が今度は右から蹴ったCKに、CBの池永航(4年・清明学院)が当てたヘディングは枠の左へ。12分にも伊佐が左へ回し、山本のカットインシュートはDFにブロックされるも、拾った池上の左足ミドルは枠の左へ。
続く大体大のラッシュ。14分、左から山本が入れたFKはゴール前で混戦も、橋本が間一髪でクリア。15分、右からここも山本が入れたFKはファーまで届き、走り込んだ國吉祐介(2年・四日市中央工業)が放った左足シュートは枠の左へ。18分、池永が縦にフィードを送り、競り合った伊佐が自ら拾って狙ったミドルは国士舘のGK久保田晃次(3年・清水エスパルスユース)がキャッチしましたが、「思ったよりいいリズムで攻めることができていた」とは伊佐。勢い付く大体大応援団。
ところが、先に歓喜の雄叫びを上げたのはもう一方の応援団。22分に負傷を押してスタメン出場していた平松のプレー続行が難しくなり、早くも服部康平(4年・国士舘高)との交替を余儀なくされる嫌な流れの中、ゲーム展開無視の瞬間は「自分が出ると1年の頃から笑いが起きるみたいな、ネタキャラみたいなところがあって、自分が出たら面白いとか盛り上がるというのはよく言われる」と話したストライカーのファーストタッチ。24分、福田真也(4年・日本航空)のパスを受けた進藤誠司(3年・流通経済大柏)が左からアーリークロスを上げると、胸トラップで収めた服部はそのまま左足ボレー。「自分でもちょっとビックリした」という一撃は、あっと言う間にゴールネットを捕獲します。今大会初出場の"ネタキャラ"が披露したスーペルゴラッソ。流れの中から初めて掴んだチャンスがゴールに直結し、国士舘に先制ゴールが記録されました。
さて、「結構自分たちが押していた中で簡単にやられてしまった」(國吉)大体大は、ここから攻撃の連動性が薄れ、なかなか相手陣内にいい形で攻め込めない展開に。逆に「4年間の中で一番いい交替出場の入りができたので、『これは行けるな』という手応えもあった」という服部がうまく基点を創った国士舘の攻勢。28分には福田、進藤と回し、藤嵜の左クロスをファーで佐々木陸(3年・東福岡)が当てたヘディングは枠の左へ外れるも、33分も国士舘。左から橋本が蹴ったFKがこぼれ、反応した進藤のシュートはDFに当たり、村上がキャッチ。
37分には進藤が裏へ落としたボールへ、懸命に走って追い付いた服部が独走。ここはよく戻った池永がタックルで掻き出しましたが、「今年のチームは先制されることもそんなに多くなかった」(國吉)大体大を尻目に、押し込む国士舘。44分には池上の左CKから、伊佐が頭で叩いたボールはGKを破るも、カバーに入っていた石川がライン上で決死のクリア。守備のビッグプレーも飛び出し、ゲームリズムは完全に国士舘へ。
緑の咆哮。アディショナルタイムに突入した45+2分、「点を取れるなという感触はあった」という伊佐が右へ開いて落とすと、SBの山口幸太(3年・四日市中央工業)は鋭いクロスを中へ。難しいボールへの対応で、クリアを迷ったDFに当たったボールがこぼれると、すかさず反応した山本はゴール右スミへ叩き込みます。「前半の内に追い付きたいというのはあった」(伊佐)大体大が最高の時間帯でスコアを振り出しに引き戻して、最初の45分間は終了しました。
「あのまま同点ゴールを入れられなかったら、意見交換する時にもイライラしていたのかなというのはあるが、ハーフタイムのロッカールームではいい声を掛けられた」と國吉。その雰囲気そのままに貫いた国士舘ゴール。47分、右から伊佐が上げたクロスを澤上が繋ぎ、今度は池上が左から柔らかいクロスをファーへ。ここに飛び込んだ山本のヘディングは、懸命に飛び付いたGKの手を弾いて、ゆっくりとゴールネットへ転がり込みます。「ウチの2トップはどこへ行ってもマークされるので、中盤がもっと前に絡めと言うのはずっと言っていた」と坂本康博総監督。インターハイ得点王も経験した右SHのドッピエッタ。大体大が後半開始早々にスコアを引っ繰り返しました。
「後半の立ち上がりは相手にリズムを渡さずに、こっちにリズムを持ってこようと話していた」(伊佐)共通認識を具現化した大体大のラッシュ再び。50分、池上が粘って戻すと、山田貴文(3年・日章学園)のミドルはクロスバーの上へ。51分、池上の右クロスを収めた澤上のボレーはマーカーが体でブロック。56分、ここも池上を起点に澤上の反転ミドルはわずかに枠の右へ。「サイドを使うという意味で、相手はサッカーが徹底されていた」と石川。関西王者ががっちり握った主導権。
62分も大体大。池上、澤上、國吉とスムーズにボールが回り、最後は序盤から果敢に攻め上がっていた左SBの坂口豪(3年・セレッソ大阪U-18)が放ったミドルはゴール左へ外れましたが、リズムの良さを体現するようなSBのフィニッシュ。国士舘も63分には今瀬のFKに服部が頭で飛び付くも、村上が確実にキャッチ。さらに70分には準々決勝、準決勝と2戦連発中のスーパーサブ田中智也(1年・横浜F・マリノスユース)を準備したタイミングで、今瀬が負傷退場を強いられ、急遽そのままCBに吉田吏玖(4年・遠野)を送り込む交替に着手。「前半は行けるなという感触はあったが、後半は相手がグッと締めてきてまとまっていて、本当に隙がない感じだった」とは服部。重くのしかかる1点のビハインド。
73分も大体大。ロングフィードを伊佐は収めて右へ落とし、池上の枠を襲ったミドルは久保田がファインセーブで何とか回避。74分も大体大。池上の左CKがこぼれると、山本は粘って戻し、池上の左クロスに突っ込んだ坂本修佑(3年・初芝橋本)のヘディングはわずかにクロスバーの上に消えますが、燃え上がる3点目への意欲。74分には進藤を下げて、最後のカードとなる田中を送り込んだ国士舘は、76分に橋本が蹴った左FKも村上がしっかりキャッチ。近くて遠い1点差。
78分にも伊佐が左サイドをドリブルで突き進み、最後は國吉のミドルが枠の左へ外れると、大体大が決断した最初で最後の交替。1年生ながら随所に好プレーを披露した池上に替えて、安田圭佑(2年・京都両洋)をそのまま右SHへ。88分に開通した最強2トップライン。澤上が中央を切り裂くスルーパスを通し、独走から繰り出した伊佐の決定的なシュートは、しかし左のポストにヒット。水際で踏み止まる国士舘。「応援をやってくれている選手たちもしっかり盛り上げて一丸となってできたというのは、凄くいいチームになったかなと思う」と石川も話した一体感は、果たして奇跡を起こすのか。
89分は国士舘。右サイドから丁寧に蹴った橋本のFKへ、中央で福田が飛び込むも、必死に伸ばした足には惜しくもボールがヒットせず。直後のファイナルスコアは"緑の戦士たち"。90分、坂本が裏へ大きく蹴ったボールを、澤上は競り勝って左へ。「自分たちが悪かったというより、相手が良かったという感じだった」と素直に認めた石川を振り切り、山本が放ったシュートはチームの日本一を決定付けるハットトリック弾。「僕たちは守備のチーム。よく守れているので僕らは攻めることができている」と伊佐が話した"守備のチーム"の大会14ゴール目は、全国制覇へのフィナーレ。勝ったのは関西王者。「せっかくのチャンスを掴み取ったんだから、自分たちでモノにしろ」と総監督に檄を飛ばされた大体大が、夕闇迫る国立の空へカップを掲げる結果となりました。
後期のリーグ戦から始まった快進撃も、シーズン途中で軌道修正した目標にはあと一歩届かなかった国士舘。それでも、「半年前にはイメージできなかった」(石川)国立の舞台で躍動した4年生の姿は、ベンチやスタンドで声援を送った下級生の目に強く焼き付いたはずです。「勝つチームもあるし負けるチームもあるので、今日はしっかり負けを認めて、この悔しさをバネにして、次に向けてしっかりトレーニングしていきたい」と語ったキャプテンの石川が最後に口にしたのは「チームとして国士が一丸になれたのが嬉しかった」という言葉。どん底から這い上がったという彼らの大会を通じた健闘には、大きな拍手を贈りたいと思います。
「1試合1試合カツカツでやってきた」(伊佐)中、最後は専修、国士舘と関東勢2校を相次いで倒し、頂点を勝ち獲った大体大。同校としては10年ぶりの出場となった今回のインカレ。「まさか取れるなんて思っていなかった」と伊佐が話し、「よくこんなチームでここまで来たなと思った」とは坂本総監督ですが、逆に自分たちの実力とそれを発揮するためのストロングをどのチームより理解していた結果が、この日本一という成果に繋がったのではないかなと感じました。実は大体大が同校優勝を達成したのは西が丘。28年間に渡っての悲願とも言うべき単独優勝を果たした舞台は、大体大にとって初めて踏みしめた緑のピッチ。今年の大学サッカー界でプレーする誰もが夢見た"最後のコクリツ"でした。           土屋

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