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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
大学サッカー界を2分する勢力と言っていい、関西と関東の王者が直接対峙する大一番。セミファイナルの舞台は西が丘です。
国内屈指のタレント集団・阪南大を勝ち点2差で抑え、関西王座を勝ち獲ったのは大阪体育大。インカレ出場は実に10年ぶりということで、坂本康博総監督も「ウチは初出場みたいなものですから」と笑いますが、初戦となった2回戦は関西リーグMVP獲得の澤上竜二(2年・飛龍)がいきなりハットトリックを記録して新潟経営大に快勝すると、一昨日の準々決勝も東海学園大相手に澤上と伊佐耕平(4年・神戸科学技術)の2トップが共にドッピエッタで4ゴールを奪う大勝。最高のイメージを持って、最強の相手に挑みます。
迎え撃つは1部昇格年度からの関東3連覇という偉業を達成し、今や大学サッカー界の中ではどのチームもその首を打ち果たさんと躍起になっている専修大。そんな黄金時代を1年時から支えた長澤和輝(4年・八千代)と下田北斗(4年・大清水)にとっては、これが大学最後のコンペティション。初戦は関西大相手に後半だけで5ゴールを奪って圧勝を収め、一昨日の難敵・明治大戦は延長までもつれた熱戦を仲川輝人(3年・川崎フロンターレU-18)の決勝弾で制してのセミファイナル進出。2年ぶりの頂点へ向けて、死角はありません。日曜の西が丘には冬晴れの天候もあってか、2000人に迫る観衆が。今大会最注目のチャンピオン対決は、大体大のキックオフでその幕が上がりました。
4分の閃光。前澤甲気(3年・清水商業)のパスをハーフウェーライン付近で受けた仲川は加速、加速、加速。その上、懸命に戻ったマーカーをそのままの切れ味であっさりいなすと、GKとの1対1もゴール右スミへ冷静にフィニッシュ。「相手を褒めなきゃいけないんじゃないですか。あんなスピードで真ん中をぶっちぎって」と敵将の坂本総監督も脱帽した一撃は、ピッチ上のあらゆるものを無力化した電光石火の先制弾。あっという間に専修のスコアボードに1の数字が踊りました。
「あの縦に入る展開は必ず来ると散々言ってきた」(坂本総監督)形から、早くもビハインドを負った格好となった大体大。7分にはFKの流れから、山本大稀(4年・米子北)が入れた左クロスを右SBの山口幸太(3年・四日市中央工業)がトラップで収めるも、シュートまでは至らず。8分には池上丈二(1年・青森山田)の右CKをニアでCBの坂本修佑(3年・初芝橋本)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ消えましたが、チャンスをしっかり創出。さらに13分には山本が右から入れたFKに、注目の澤上がボレーで叩いたボールはクロスバーを直撃するなど、同点への意欲を前面に打ち出します。
専修でスタートから目を引いたのはその配置。準々決勝でCBの河津良一(3年・作陽)が負傷退場した影響もあって、「相手の2トップにウチの4バックのCBじゃやられちゃうという所」(源平貴久監督)から、最終ラインに3枚を並べる3-4-1-2の布陣を採用。澤上と伊佐をその3枚で監視しつつ、2トップの仲川と前澤に加え、その下に位置する長澤で早く攻め切る狙いを見せたものの、特に中盤でややイージーなパスミスが散見され、先制以降はなかなかギアを上げ切れません。
逆に大体大は、対戦相手としてその強みを問われた源平監督が「サイドからのクロスで9番10番の頭というのを徹底していた所」と答えたように、セットプレーも含めたサイド攻撃で専修を圧倒。16分に山本の右FKへ突っ込んだ澤上のヘディングは当て切れず、18分には左SBの坂口豪(3年・セレッソ大阪U-18)が上げたクロスに伊佐のボレーはヒットせず、共に専修GK福島春樹(2年・静岡学園)にキャッチされましたが、ゲームリズムは着実に引き寄せます。
27分は専修。長澤が獲得したFKはピッチ中央、ゴールまで30m弱。下田が直接狙ったボールは枠の左へ。31分は大体大。伊佐、澤上と回ったボールから、山本がエリア内に潜って狙ったシュートは、専修の篠崎拓也(3年・桐光学園)が体でブロック。33分も大体大。相手のミスパスをインターセプトしたキャプテンのCB池永航(4年・清明学院)が1本で裏へ落とすと、走り込んだ澤上の決定的なワントラップボレーはわずかにクロスバーを越えましたが、少しずつ合い始めた澤上スコープのフォーカス。
獲物との一致は37分。澤上が右のハイサイドで奪ったFK。山本が蹴り込んだこの日4本目のキックがニアへ向かうと、体を投げ出した澤上が頭に当てたボールは、バウンドしながらゆっくりと左のサイドネットへ転がり込みます。「彼はヘディングは弱いんです」という坂本総監督の言葉も、にわかには信じ難い完璧なダイビングヘッド。10番の大会6ゴール目が飛び出し、スコアは振り出しに引き戻されました。
畳み掛ける関西王者。41分、左サイドを駆け上がった坂口が、伊佐とのワンツーから打ち切ったミドルは福島がキャッチ。42分、左に流れることの多かった伊佐がここも左クロスを右足で放り込むと、綺麗に合わせた澤上のヘディングはゴール右スミギリギリを捉えるも、福島が驚異的な反応でビッグセーブ。押し寄せる荒波。
44分の逆転弾はあっさりと。3列目から右サイドへ飛び出した國吉祐介(2年・四日市中央工業)が、ミドルレンジからトライしたシュートは福島が懸命に弾きましたが、ここに詰めていた伊佐が難なくプッシュ。専修ディフェンスはオフサイドを主張するも、副審のフラッグは上がらず。沸き上がる応援団に「たまたまやで」と応えたのは本人ですが、今日も2トップがきっちり揃い踏み。45+1分に右SBの北爪健吾(3年・前橋育英)が上げたクロスから、前澤が枠へ飛ばした決定的なヘディングもGK村上昌謙(3年・草津東)がワンハンドでのファインセーブで回避した大体大が、リードを奪い返す格好でハーフタイムへ入りました。
「追い掛けないといけない」(源平監督)専修は後半開始から2枚替え。3バックの中央を務めた玉田道歩(4年・サンフレッチェ広島ユース)とボランチの星野有亮(3年・静岡学園)を下げて、山川翔也(2年・新潟西)と北出雄星(2年・三菱養和SCユース)を送り込み、システムも本来の4-3-3へシフト。右に仲川、中央に山川、左に前澤を並べ、下田をアンカーに長澤と北出をその前に配する形で同点、そして逆転を狙います。
ところが、後半開始から2分経たない内に記録されたのは追加点。47分、澤上が抜け出した大体大のカウンターに戻り切れない専修。澤上のパスをもらった伊佐が左へ流すと、シュートレンジに入っていた山本は打たずに中へ。ここに走り込んでいた池上のシュートがゴール左スミを貫いて、高速カウンターは完結。「単純なことはできないけど、ああいうシュートはうまい」と指揮官も言及した1年生が大仕事。専修の出鼻を見事に挫いてみせた"白の戦士たち"。点差は2点に広がりました。
「後半の頭にシステムを変えた所で、攻め急いじゃってやられたというのもある」と源平監督も話した専修は、これで一層攻めざるを得ない状況になりましたが、56分には仲川が可能性の低いミドルを枠外に打ち上げるなど焦りの色も。59分に長澤が粘って右へ繋ぎ、北出が切れ味鋭いターンから上げ切ったクロスも中とは合わず。追い込まれつつある関東王者。
63分には大体大に1人目の交替が。スタメン起用に結果で応えた池上に替えて、安田圭佑(2年・京都両洋)をそのまま右SHへ送り込み、攻守両面での運動量アップに着手。64分は専修。前澤、仲川と短く繋ぎ、オーバーラップしてきた北爪のミドルは枠の右へ。68分は大体大。山本の左FKはゴール前にこぼれ、反応した伊佐の決定的なシュートは2人のDFが決死のブロック。直後に山本が蹴った右CKへ、澤上が飛びついたヘディングは福島がキャッチしたものの、漂う気配は2点目より4点目。
源平監督は69分に最後の交替策を決断。左SBの小口大貴(1年・川崎フロンターレU-18)をレフティの後藤京介(3年・三菱養和SCユース)とスイッチさせ、高めにかかった縦への推進力。69分にはその専修にチャンス。下田の左CKを北出が残し、長澤が狙ったシュートは山口が体で飛び込んで阻止。73分の専修は中央で4本のダイレクトパスが通るも、仲川が左へ送ったパスは味方と合わず。逆に大体大も80分には伊佐がマーカー2人をぶち抜いて、わずかにゴール左へ逸れるシュートまで。2点差のまま、残された時間はあと10分。
執念と意地の発露は81分。右サイドから上がったクロスは中央に落ち、北出が放ったシュートはDFがブロックしたものの、左で拾った後藤は中へ。マーカーを背負った長澤が丁寧に落とすと、北出が左足で振り抜いたボールはゴールカバーに入ったDFも頭1つ分及ばずに、ゴールネットへ到達。緑のゴール裏沸騰。たちまち点差は1点に。
一変した西が丘の空気。83分は専修の決定機。長澤が右へ展開し、仲川は一瞬の加速で縦へ抜け出して中へ戻すと、こぼれに反応した長澤のシュートは惜しくもクロスバーの上へ。88分は専修のさらなる決定機。北出が右へ振り分け、北爪がグラウンダーで入れたクロスはファーでフリーの後藤へ。SBからSBへ渡された同点へのバトン。後藤が丁寧に枠へ飛ばしたボールは、しかし村上が気持ちのファインセーブ。「アイツはああいう所は強いので計算内。すごく成長していて、彼なしでは今のチームはない」と坂本総監督も絶賛した守護神の仁王立ち。スコアボードの数字は変わりません。
いよいよ追い詰められた専修の猛ラッシュ。90+2分、仲川の右クロスを前澤が頭で残し、下田が枠へ収めたシュートは村上がキャッチ。同じく90+2分、下田のFKをここも前澤が懸命に残し、山川の前にこぼれたボールは間一髪で池永がクリア。90+4分、右から北爪が投げ込んだスローイン。中央でチームメイトが待ち受ける中、下田が選択した渾身のミドルが描いた軌道はわずかにクロスバーの上へ。榎本一慶主審が轟かせた試合終了を告げるホイッスル。関西王者の咆哮。関東王者の落日。大体大が28年ぶりとなるファイナルへの切符を掴み取る結果となりました。
戦前の予想に違わぬ好ゲームでした。専修も3失点を食らってからは本来のアグレッシブさが戻ってきた印象でしたが、「守備でやられちゃうのは予想通り。それを上回る攻撃力ということでここ数年間やってきているので、それが肉体的なことで発揮できなかったのは残念」と源平監督が語ったように、雨の中で明治と120分戦った2日前の代償は思いの外に大きかったようです。
一方、澤上と伊佐という大会最強2トップを最大限に生かし、3試合で11ゴールという圧倒的な攻撃力を武器に、とうとう最後の1試合まで辿り着いた大体大。前回の優勝時は両校優勝であり、同校史上初となる単独優勝にこれで王手を懸けました。「せっかくのチャンスを掴み取ったんだから、自分たちでモノにしろと言っている」と坂本総監督。最後となる国立のピッチは、"緑の戦士たち"が足を踏み入れる時を静かに待っています。 土屋
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