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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年12月16日

高円宮杯プレミアリーグ参入戦2回戦 星稜×京都橘@広島一球

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hiroshima1216①.jpg日本最高峰の日常へと続く最終関門。昨年の高校選手権で国立のピッチを踏みしめた両者が、1枚の切符を懸けて激突する舞台は広島広域公園第一球技場です。
昨年の高校選手権はベスト4。今年のインターハイはベスト8と、近年は全国の舞台でコンスタントに上位進出を続けている星稜。プリンス北信越もアルビレックス新潟ユースや帝京長岡などのライバルがひしめく中、1試合平均で4得点近い数字を叩き出し、2年ぶりとなる7回目の優勝を達成。土曜日の1回戦では東北を3位で通過してきた盛岡商業に、一時は2点差を追い付かれながら、最後は後半終了間際の決勝弾で振り切ってこのステージへ。あと1勝でプレミアへの扉が開きます。
仙頭啓矢(現・東洋大)と小屋松知哉(3年・宇治FC JY)の2トップを擁して、昨年の高校選手権に旋風を巻き起こした京都橘。今年のインターハイ予選では県予選準々決勝での敗退を余儀なくされましたが、プリンス関西1部では優勝した大阪桐蔭と勝ち点差1での2位をしっかり確保。一昨日のゲームでは、中国王者の"ホーム"瀬戸内を倒して勝ち上がってきました。1,2年生の多いチームですが、「僕は橘が好きなので、後輩のためにも来年に繋げたい」とはロアッソ熊本への入団が内定しているGKの永井建成(3年・京都FC長岡京)。直後に控える選手権へ良いイメージで臨むためにも、このゲームは絶対に落とせません。氷点下の朝を迎えた広島の山あいは、冷たい風も吹き付ける冬の装い。プレミアへの扉に手を掛けた両者の一戦は、星稜のキックオフで幕を開けました。
いきなりスコアが動いたのは3分。エリア内で相手のクリアへ反応したのは、星稜の左SHに入った川森直威(3年・FC四日市JY)。頭で繋いだボールを森山泰希(2年・名古屋グランパスU15)が収め、タイミングを計って計って枠へ飛ばしたシュートは、地を這う弾道でゴールネットへ飛び込みます。広がった黄色と緑の歓喜。星稜が開始早々にリードを奪ってみせました。
さて、「ロッカールームの感じも『大丈夫やろ』みたいな所があった」(米澤一成監督)「どっかで『勝てるやろ』みたいな気持ちがあったんですかね」(永井)と2人が似たような感想を口にした京都橘を尻目に、畳み掛ける星稜。5分には右SBを務めるキャプテンの森下洋平(3年・エスポワール白山FC JY)のオーバーラップで獲得した右CKを前川優太(2年・セレッソ大阪西U-15)が蹴り込み、こぼれを狙った川森のシュートはDFが何とかクリア。その右CKも前川が際どいボールを送り込むなど、追加点への意欲を前面に押し出します。
一方の京都橘は8分にボランチの藤村洋太(3年・Wizards F.C)が左へ散らし、中山俊輝(3年・京都城陽SC)が中へ入れたボールはクロスバーをかすめて枠外へ。10分にも志知大輝(2年・F.C.Alma大垣U-15)を起点に宮吉悠太(3年・J FORZA滋賀)が中央を通すパスにトライするも、球足が速く小屋松はコントロールし切れず。少しずつ攻撃のリズムは出てきたものの、フィニッシュには至りません。
ところが、ファーストシュートが導いた同点弾は13分。「夏くらいからメンバーに入ってきたが。予想よりもよく伸びてくれた」と指揮官も評価する藤村が中盤でボールを奪い切り、そのまま右へ勝負パス。DFとの競争に走り勝った中野克哉(2年・YF NARATESORO U-15)は、GKとの1対1も落ち着いてゴール左スミへ流し込みます。「選手らがどういう風にやるのか静観していた所もある」と語った米澤監督の期待にもピッチ上の選手が結果で応えた一撃。京都橘が早い時間で追い付きました。
19分には星稜も森下が強めにクサビを打ち込み、森山を経由して川森が右へ展開。最後は前線に入った轡田葵左(3年・グランセナ新潟FC JY)がクロスバーを越えるミドルを放ちますが、以降はペースを取り戻した京都橘に勢いが移行。20分過ぎには「サイドの所でどうしても相手に人数を掛けられたりとか、崩されることが多かったので」(米澤監督)FWの宮吉と左SHの中山を入れ替えたことも、「僕がサイドに入る方がチームとしてボールが落ち着くかなというのはある」と宮吉が自ら語ったように奏功。23分にはルーズボールを藤村が拾い、中野が狙ったミドルは枠の上に外れるも、手数もきっちり繰り出します。
すると、「アレはえげつなかったですね。後ろから見ていてもビックリしました」と守護神の永井も驚いたのは25分の勝ち越しゴール。自陣のハーフウェーラインあたりでルーズボールを拾った小屋松は、「相手のラインも高かったのでイメージはしていた」というコース取りからグングン加速。マーカーを一瞬で置き去りにすると、懸命に戻ったDFも切り返しでいなしてから打ち切ったシュートは、左のポストを叩いてゴールへ転がり込みます。その衝撃にどよめきが収まらないスタンド。「久々にああいう形で点が取れたので、自分的にも嬉しかった」と語る10番の60m独走弾。"THE 小屋松"と形容したくなるようなスーペルゴラッソが飛び出し、前半の内に京都橘がスコアを引っ繰り返しました。
攻撃の活性化がそのまま守備に与えた好影響。「上背のないボランチだが、"下"での切り替えの速さとか寄せの速さ、予測は彼らの選手としての才能」と米澤監督も言及した通り、藤村と志知のドイスボランチを中心に、中盤で相手を囲い込むスピードも抜群。「サイドの守備はチーム的にも言われている」という宮吉も積極的にプレスを敢行するなど、星稜に息つく暇を許しません。加えて、29分にはCBの林大樹(2年・京都サンガU-15)、宮吉とワンタッチで回し、小屋松もダイレクトで縦へ。志知もワンタッチで左へ送ると、上がってきたSBの小川礼太(1年・京都サンガU-15)が上げたクロスはファーでDFにクリアされたものの、流麗なパスワークまで披露。「早く逆転できたので、しっかり繋ぐことができた」と米澤監督。京都橘がゲームを完全に掌握して、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムを挟み、迎えた後半もすぐさま動いたスコア。動かしたのは古都の橘。47分、中野が右から蹴ったCKはDFのクリアに遭いましたが、拾った林が左へ付けると、受けた宮吉は右足で丁寧なクロス。ここへ突っ込んだ"FW"の中山がGKの鼻先で捉えたヘディングは、ゆっくりとゴールネットへ収まります。「僕と俊輝は結構そういうのがあってやりやすい」と宮吉が話せば、「以前の練習試合でもああいうヘディングがあったので、ミヤからは絶対来るなと思っていた」と中山。3年生コンビで挙げた追加点。点差が2点に広がります。
さらに48分にも、倉本光太郎(2年・京都サンガU-15)と小屋松の連携から、中野が星稜のGK近藤大河(3年・名古屋グランパスU15)にファインセーブを強いるシュートを放つと、再びホットラインが開通したのは56分。林、小屋松、小川とボールが回り、バイタルで受けた宮吉は絶妙のタイミングでスルーパス。まったくのフリーで抜け出した中山は、GKとの1対1も冷静にゴール右スミへボールを送り届けます。「ヘディングとスピードが武器」と話す9番が、その武器を遺憾なく発揮して奪った連続ゴール。1-4。大勢は決しました。
3点のビハインドを追いかける格好になった星稜は57分、一挙に3人の交替を決断。長谷川朔太郎(2年・FC四日市JY)、平田健人(2年・千里丘FC)、仲谷将樹(3年・ガンバ大阪堺JY)を同時にピッチへ送り込み、長谷川と仲谷を最前線に並べ、平田を右SHに配して、まずは1点を返しに掛かります。
61分にはその星稜のサイドアタック。川森を起点に平田が右へ振り分けると、駆け上がった森下は鋭いクロスを入れましたが、ここは「Jクラブへの入団が決まったということで、絶対にゴールを決めさせたくないというプライドは前より高くなった」という永井が、しなやかな跳躍から完璧なキャッチ。これ以上の失点は許さないという覚悟をワンプレーに滲ませます。
冴え渡る米澤采配。70分、藤村のパスを引き出した小屋松はベルベットスルーパスを裏へ。ここに走り込んだのは3分前に投入されていた赤澤祥平(3年・FCグリーンウェーブU-15)。飛び出したGKの左脇へ流し込んだシュートは、ゆっくりとゴールへ吸い込まれます。交替で出場機会を掴んだ選手も、すぐさま結果で応える好循環。5点目が京都橘へ記録されました。
何とか意地を見せたい星稜も77分、途中出場の原田亘(2年・ヴィッセル神戸U-15)が右へ流し、森下のクロスへ長谷川が合わせたヘディングはヒットせず。84分にも相手最終ラインでのパスミスをかっさらった長谷川がGKと1対1になりますが、思い切り叩いたシュートは永井が仁王立ちで阻止。87分にも原田が右のハイサイドへ付けたパスを、阿部雅志(1年・FC四日市JY)が体をねじってシュートまで持ち込むも、ボールは枠の左へ。どうしても京都橘ゴールを脅かせません。
90+2分のラストチャンス。左から前川が蹴り込んだCKを原田が懸命に残し、こぼれ球に突っ込んだ仲谷は体で押し込みましたが、無情にもボールはわずかにゴール左へ逸れて万事休す。「3年生としてやるべきことが1つ終わったかなという感じで安心した」とはキャプテンマークを巻く小屋松。京都橘が磐石の試合運びで完勝を収め、来年度からのプレミア昇格を勝ち取る結果となりました。
立ち上がりこそ苦しんだものの、終わってみれば大量5ゴールを奪う圧倒的な勝ち方で、堂々と目標を達成してみせた京都橘。「基本的に個人個人で頑張れる選手が多い。しんどい時にどうせなあかんというのはいつも言っているので、精神面も上がってきていると思う」と宮吉も言及したように、90分間でゲームを捉えるメンタルコントロールの確かさが目に付きました。これで1つ目のハードルを軽々と飛び越えたチームにとって、次に果たすべきは国立でのリベンジ。「最後に選手権が残っていますし、そこでもう1回後輩たちに何か残してあげられるように頑張っていきたい」と小屋松。聖地の芝生は"伝統の橘魂"を胸に闘う若者の帰還を静かに待っています。        土屋

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