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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
関東へと挑戦するための切符はたったの1枚。8つの王者による正真正銘のチャンピオンズカップは山梨、押原公園です。
茨城高校年代の1部リーグであるIFAリーグで堂々の優勝を果たし、このトーナメントへ勝ち上がってきたのは水戸商業。インターハイではここ5年で2回の県制覇を果たしており、選手権でも過去8回の全国出場を誇るなど、茨城きっての名門校が山梨に殴り込みをかけます。今年の選手権予選では準決勝で鹿島学園に延長で敗れたため、このゲームに臨む3年生はベンチメンバーも含めて4人。1,2年生は自分たちの未来を勝ち取るための"3試合"に挑みます。
東京高校年代の1部リーグに当たるT1リーグを最多得点、最少失点のわずか1敗で駆け抜け、関東へとその立つステージを上げるために山梨の地を訪れたのは横河武蔵野FCユース。今年のチームは新人戦でFC東京U-18と三菱養和SCユースを相次いで破り、クラ選の関東予選では日本一に輝いた横浜FMユースを苦しめるなど、その実力は折り紙付き。「僕自身がプリンス1部でやってみたいなというのもあるし、選手にやらせてみたいなというのもある。もう僕らもプリンスにいなくてはいけないくらいになってきていると思う」と増本浩平監督。総出で応援に駆け付けたジュニアとジュニアユースの後輩に、先輩としての雄姿を刻み込みたい一戦です。会場は富士山を望む山梨・昭和町は押原公園。ポカポカ陽気とも形容できそうなコンディションの下、13時ジャストに3連戦の初戦は幕を開けました。
いきなりの決定機は水戸商業。2分、矢幡拓也(2年・鹿島アントラーズJY)の左CKを荻谷瑠(2年)が合わせたヘディングはゴール右スミギリギリへ。ここは横河のキャプテンマークを託された吉山遼馬(3年・AZ'86 tokyo-ome)がライン上で掻き出しましたが、5分にも右から矢幡がクロス気味の軌道で直接狙ったFKは右のポストへヒット。まずは茨城王者がセットプレーから2度の際どいシーンを創出します。
さて、「もっと大胆に自分たちの背後を狙ってくるというイメージを持っていたが、試合に入ってみたらボールを動かしてきたので少し混乱した」と吉山が振り返ったように、少し押し込まれる立ち上がりを強いられた横河でしたが、9分には決定的なチャンス。右から渡辺悠雅(2年・横河武蔵野FC JY)が入れたクロスを佐野樹生(3年・横河武蔵野FC JY)が繋ぎ、長岡克憲(3年・横河武蔵野FC JY)が丁寧にコースを突いたシュートは、水戸商業のGK永山道紀(2年)がファインセーブ。10分にも長岡、七枝拓己(3年・ディアマント鹿児島)と繋ぎ、佐野が放ったシュートは水戸商業の左SB沓沢大介(2年)がライン上でブロックしたものの、こちらも流れから2度の決定機を生み出してみせます。
以降はしっかりボールが回り出した横河がイニシアチブを取りながら、ゲームを進めていく展開に。15分には左ショートコーナー、17分には左FKを共にアンカーの服部光洋(3年・横河武蔵野FC JY)が蹴り込むと、22分にも惜しいシーンが。CBの小林雅実(2年・横河武蔵野FC JY)が1本のフィードを裏へ落とし、反応した佐野が抜け出しかけるも、こちらは水戸商業3年生カルテットの一角を占めるCBの関根稜平(3年・鹿島アントラーズノルテJY)が間一髪でタックル。25分にも服部が枠内ミドルにチャレンジするなど、サイドも制圧しながら増えてきた手数。
すると、「狙い通りのことをしてくれた」と増本監督も評価した先制弾は25分。右サイドへ開いた佐野がボールを受け、そのまま縦に持ち出してマイナス気味に折り返すと、待っていた長岡のシュートはゴール左スミへ吸い込まれます。活用したかったハイサイドからいい形で奪った一撃に、広がった青い歓喜の輪。横河が1点のリードを奪いました。
26分にも右SBの松野崇紀(3年・横河武蔵野FC JY)、吉山、長岡とスムーズにボールが動き、渡辺が右から中へ折り返したボールを佐野が打ち切ったシュートは枠の左へ外れましたが、「相手を横に、縦にと動かすことはできた」と吉山も話したように、ボールと相手を動かしながら続ける横河の攻勢。
28分、松野からパスをもらった渡辺はエリア内で2人のDFをぶち抜いて中へ送るも、関根が何とかクリア。31分は右サイド、ゴールまで25m強の位置から長岡が狙ったFKはクロスバーの上へ。37分にもハーフウェーライン付近でボールを持った渡辺はゴリゴリ突き進み、マーカーを引きずりながらそのまま狙ったシュートは永山がファインセーブで応酬。40分にも佐野が単独で抜け出し、枠へ収めたシュートは永山が足でビッグセーブ。直後に服部が蹴った右CKを、七枝が合わせたヘディングも枠の左へ。
41分には水戸商業にもチャンス。矢幡のスルーパスから右サイドをSHの奥山航(2年)が飛び出し、折り返したボールは横河のGK宗仲光(3年・横河武蔵野FC JY)がしっかりキャッチ。「決め切れていれば楽なゲームだったかもしれないけど、やっぱりここまで来ているチームなので難しいと思う」とは増本監督。最後の大会に懸ける関根の奮闘もあって、前半のスコアはこれ以上動かず。0-1で最初の45分間が終了しました。
後半もスタートから押し込んだのは横河。48分には七枝の右CKがこぼれると、反応した渡辺のボレーはクロスバーの上へ。49分にもバイタルでボールを収めた佐野は、距離のある位置から枠の左へ外れるボレー。50分にも七枝が左サイドから絶妙なコースとスピードで裏へ流し、走り込んだ佐野はフリーでしたが、大きくなってしまったコントロール。54分にも服部の右CKを長岡が頭で合わせるも、ボールは枠の左へ。「侵入できているけど侵入させてくれている部分もあるし、最後はちゃんと閉じてきているからという話はした」と増本監督。チャンスは創出。されど、スコアは動かず。
57分に動いたのは水戸商業ベンチ。1人目の交替は左SHの宮嶋明仁(2年)を下げて、右SHへ三本松隼人(2年)を投入。右にいた奥山が左へスライドして中盤に変化を加えるも、次のチャンスは横河。58分、服部が左へ展開すると七枝はグラウンダーで中へ。渡辺が放ったシュートは沓沢にブロックされたものの、簡単に主導権を明け渡すつもりは毛頭ありません。
59分は横河。渡辺のパスから吉山が狙ったシュートはゴール左へ。61分も横河。渡辺を起点に服部が右サイドへ送り、上がった松野の折り返しに走り込んでいた渡辺のシュートは永山がキャッチ。62分は水戸商業。左サイドをドリブルで運んだ尾亦力哉(2年)のシュートはDFが体を投げ出し、こぼれを矢幡が叩いたシュートもDFが何とかブロック。63分は横河。渡辺が溜めて繰り出したスルーパスに、単騎で走った佐野のシュートは永山が足で好セーブ。にわかに漂い始めた次のゴールの予感。
とはいえ、佐野と渡辺に何度も決定機が訪れながらも、なかなか追加点を奪えない横河は少しジリジリするような展開に。69分には服部に替えて太田翔(1年・三菱養和SC調布)を送り込みましたが、「相手に勢いを与えてしまう部分もあって、どんどん疲労も貯まっていって足も重くなった」と吉山が話したように、60分前後からは水戸商業もSHの奥山を中心に、左サイドからの攻撃が活性化。75分には三本松が枠の左へ外れるミドルを放ちましたが、10分以上お互いになかったシュートの沈黙を破ったのも水戸商業。「どうしても負けたくないので比重が後ろ後ろになったかな」とは増本監督。右から松野、小林、槇廉(1年・芝中)、平賀雅也(3年・府ロクJY)で構成された横河の4バックが切らさない集中力。1点差のままで白熱のゲームは最終盤へ。
75分には水戸商業が岡野将也(1年・水戸ホーリーホックJY)を、横河が見木友哉(1年・横浜FC鶴見JY)を投入し、共に攻撃陣へ加えた変化。「時間が進んでいく内に、『1-0でいいか』という気持ちがだいぶ出てきたと思う」と増本監督。前へのパワーは持ちつつ、決定的なシーンはないままに時計の針は容赦なく進み、いよいよ残されたのはアディショナルタイムのみ。
90+3分の咆哮は東京王者。左サイドで獲得したFK。時間を考えてもコーナー付近で時間を費やしても良さそうな場面でしたが、スポットに向かったのは1年生の太田。「アイツは打ちに行ったから、絶対打つだろうなとは思ったんですけど、まさかですよね」と指揮官も驚いたこのシーンの結末は、何とその太田が左のポストに当てて直接FKをねじ込む待望の追加点。今回のメンバー選考に際し、「『自信ある?』って聞いたら「あります」って。『今までも信じてきて色々あったけど信じていい?』って聞いても『大丈夫です』と力強く言ったので、そこでチャレンジしてもらおうかなと思ってメンバーに入れた」と太田についての話を明かしてくれた増本監督。最後の最後で2点のリードを手にした横河に凱歌。「東京中の色々な想いを背負って、すごいプレッシャーと戦っています」と増本監督も笑った東京の"街クラブ"が、セミファイナル進出を勝ち取る結果となりました。
例年ならこのステージで1つ勝てば昇格が決まるレギュレーションでしたが、今年は8分の1というあまりにも狭き門を目指す関東王者たち。ただ、「ウチが1部でやっていくには、このトーナメントを勝ち上がっていっても来年のリーグは相当厳しいものになると思うので、これくらいの厳しさでもしょうがないとは思う」と増本監督。確かにこの超難関の最終試験をクリアできれば、チームとしても、そして選手個人としても、かなりの経験値を獲得できるのは間違いありません。「僕たちが3年生になった時の目標の1つに『必ずプリンスに昇格する』というのがありました。その立てた目標が目の前にあるので、ジュニアやジュニアユースも応援しにきてくれましたし、みんなの気持ちを背負ってピッチで表現したいと思います」と力強く語ったのはキャプテンの吉山。東京の覇者から関東の覇者へ。街クラブの冒険はまだまだ終わりません。 土屋
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