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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年12月15日

インカレ1回戦 福岡大×愛知学院大@味スタ西

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ajista w 1215①.jpg今や九州のサッカー界を代表する昨年のファイナリストに、東海を代表する名門が挑む構図。舞台は味スタの方の"西"、味スタ西です。
「先発、中継ぎ、抑えがいます」と乾真寛監督が冗談を飛ばすほど、複数のロングスローワーを擁し、国内史上でも屈指の大型チームという武器を最大限に生かして、昨年は決勝まで勝ち上がった福岡大。今年は九州リーグ3位とギリギリでの全国進出となりましたが、既にJ1のリーグ戦にも出場した藤嶋栄介(4年・大津)を守護神に頂き、目指すのは昨年の"1つ上"だけです。
そのディフェンディングチャンピオンと対峙するのは、松永成立や秋田豊など日本代表選手を輩出する古豪ながら、近年は新興勢力の台頭もあって表舞台から遠ざかっていた愛知学院大。8年ぶりの全国となった今回は、東海地区で拡大された3枠目での出場。久々にその存在感を示すチャンスを得たチームが、強豪相手にどこまで自分たちのサッカーを出し切れるかに注目したい所です。真冬の味スタ西には650人を超える観衆が。日なたにいる分にはポカポカ陽気とも形容できそうなコンディションの中、第1試合は福岡大のキックオフでスタートしました。
立ち上がりはお互いに流れの中からのチャンスは少なく、セットプレーで相手ゴールを脅かす展開に。2分は愛知学院大。左から鈴木貴也(4年・ジュビロ磐田ユース)が入れたFKはDFがクリア。4分は福岡大。右から川上竜(1年・アビスパ福岡U-18)が蹴ったFKは愛知学院大のGK山下渉(3年・四日市中央工業)がファンブル。こぼれに反応した武内大(3年・国見)のヘディングは、何とか戻った山下がキャッチしたものの、愛知学院大ベンチはヒヤリ。6分は愛知学院大。左サイドで獲得したCKを鈴木が放り込むも、DFがクリア。10分は福岡大。川上の右FKは山下がフィスティングで回避。11分も福岡大。おなじみのロングスローを188センチの強肩CB大武峻(3年・筑陽学園)が投げ入れると、DFが何とかクリア。交互にセットプレーを繰り出し合いながら、序盤は比較的静かな流れで推移していきます。
そんな状況をブレイクしたのは、「1つの個性として、ウチの縦に切れ込む武器ではある」と境田雅章監督も認めた14番のドリブル。12分、左サイドでボールを持った水谷侑暉(2年・暁学園)はグイグイ中に切れ込んで3人を振り切り、そのまま右へスルーパス。走った鈴木貴也には届かなかったものの、驚異的なドリブルにどよめくスタンド。そして、このプレーを境にリズムは愛知学院大へ。
14分の決定機は愛知学院大。右SBの鈴木周太(4年・藤枝明誠)を起点に、ボランチの岩崎慎平(3年・藤枝東)はDFラインの裏へ。走り込んだ鈴木貴也のボレーは右のポストを直撃したものの、あわやというシーンに意気上がる三河軍団。15分にも岩崎のパスを引き出した西中寿明(3年・東邦)が、左に流れながら枠へ飛ばしたシュートは藤嶋がキャッチ。18分にも鈴木貴也の右FKを岩崎が折り返し、最後はシュートまで持ち込めませんでしたが、「いつものサッカーを落ち着いてできるような雰囲気作りをしてきた」という境田監督の言葉通り、愛知学院大がいい形を創出していきます。
ところが次に訪れた絶好の先制機は福岡大。21分、伊賀上竜希(4年・大分鶴崎)のパスからエリア内へ切れ込んだ平田拳一朗(4年・高川学園)がDFと交錯してエリア内で倒れると、吹き鳴らされた上村篤史主審のホイッスル。福岡大にPKが与えられます。キッカーは昨年から主力を務めている田村友(3年・九州国際大附属)。短い助走から左を狙ったキックは、しかし山下が横っ飛びで叩き落とし、がっちりキャッチ。「PKには強いと思いますよ。凄い反応が良かったですよね」と指揮官も笑った山下のビッグセーブが飛び出し、スコアボードに並んだ"0"の数字は変わりません。
以降もゲームリズムは「スリッピーなグラウンドにもそれなりに対応して、ボールを回していけた」(境田監督)愛知学院大。ボールを動かす中で、右の鈴木貴也、左の水谷というドリブルもアクセントにサイドを制圧。福岡大もボランチでスタートした田村をFWにスライドさせて、前での基点創りに着手しますが、「愛知学院さんもボールへボールへよく食い付いてきていた」と乾監督も言及したように、前からの速いプレスも効いてきた愛知学院大に対して、なかなか繰り出せない手数。
39分は愛知学院大。高い位置で1トップの安東大介(4年・藤枝明誠)がボールを引っ掛け、こぼれを拾った西中はフリーでシュートを放つも、ボールは枠のわずかに左へ。42分も愛知学院大。ボランチの森川龍乃介(2年・藤枝明誠)が右へシンプルなラストパスを送り、鈴木貴也が打ち切ったシュートは武内が何とか体でブロック。「我々としては前半の出来が悪過ぎた」(乾監督)「面白いことをそれぞれの選手がのびのびやってくれていた」(境田監督)という2人の声を待つまでもなく、スコアレスとはいえ、愛知学院大のペースで最初の45分間は終了しました。
後半も先にスタジアムを沸かせたのは愛知学院大のSHコンビ。49分、左サイドからスルスルとロングドリブルを敢行した山崎はそのまま右へ。駆け上がった鈴木貴也のクロスは藤嶋の頭を越え、惜しくも中央に走り込んで来た選手は間に合わなかったものの、決定機の一歩手前までを創出。55分には福岡大も大武の左ロングスローに田村がドンピシャで合わせるも、山下がしっかりキャッチ。流れの中からは愛知学院大にゴールの予感が漂います。
"2度目の正直"は56分。後方からのフィードに安東が競り勝つと、拾った水谷は冷静に右サイドへラストパス。丁寧にトラップした西中は、藤嶋との1対1も難なく制し、右スミのゴールネットへ豪快にボールを送り届けます。前半の決定機を逃したシーンを振り返り、「1回目を外した所で「2回目は大丈夫だね」と笑って言ったら、向こうもニッコリ笑っていた」と話したのは境田監督。指揮官が笑顔で示した信頼に応える10番の先制弾。愛知学院大が先にスコアを動かしました。
「高さを使って押し込んで行く所」(乾監督)がなかなかハマらず、ビハインドも負ってしまった福岡大。乾監督は58分と60分に相次いで交替カードを投入。ボランチの前鶴祥太(3年・神村学園)と山道淳司(2年・東海大五)、右SHの伊賀上と薗田卓馬(2年・鹿児島城西)をピッチへ送り込み、薗田と井福晃紀(4年・国見)を最前線へ。田村をボランチに戻し、山道を右SHへ配して1点を返す態勢を整えます。
64分には山道の右クロスを田村が繋ぎ、川上が1つタメて放ったミドルは大きく枠外へ。72分には武内の左ロングスローを、エリア内で田村が収めるもシュートまでは持ち込めず。77分にもロングフィードのこぼれを薗田がボレーで狙うも、当たり切らずに山下ががっちりキャッチ。長いボールの比率を明確に増やしたことで、福岡大が相手ゴール前に迫る時間は長くなったものの、「向こうは集中力も非常に高かった」と乾監督も話した通り、鵜川直也(3年・愛知)と三浦祐希(2年・浜松開誠館)のCBコンビを中心に、愛知学院大は相手の攻撃を1回ずつ着実に跳ね返し、時計の針を進めていきます。
ファイナリストの底力。84分、後方から弓崎恭平(3年・東海大五)がフィードを放り込むと、4分前に投入された加部未蘭(1年・ギラヴァンツ北九州)はヘディングで右へ。山道が高速で送り込んだクロスへ、ファーで懸命に足を伸ばした薗田のシュートはゴールネットへ飛び込みます。後半最初の決定機を土壇場で成果に結び付けた、日本一への執念。残り6分でスコアは振り出しに引き戻されました。
折れなかった三河軍団。主役は最前線で福岡大の頑強なディフェンス陣相手に体を張り続けたストライカー。失点から3分後の87分、左サイドでボールを持った水谷が裏へ落とすと、諦めずに追い掛けた安東はDFに競り勝って前へ。飛び出した藤嶋と接触して転倒したのは安東。難しい判定になりましたが、上村主審が躊躇なく指し示したのはペナルティスポット。今度は愛知学院大にPKが与えられます。この重要なシーンでキッカーを任されたのは、キャプテンマークを巻いた鈴木貴也。鈴木貴也対藤嶋。文字通り1対1の勝負は、藤嶋の読みと逆方向に蹴り込んだ前者に軍配。再び愛知学院大が1点のリードを手にしました。
いよいよ攻めるしかなくなった福岡大のパワープレー。90+1分、平田の右CKに大武が飛び付いて頭で残すも、山下が丁寧にキャッチ。90+2分、大武のフィードを加部が頭に当てるもゴールキックへ。90+4分、ここも放り込まれたロングフィードを加部が残し、こぼれたボールを薗田が狙うも、体で飛び込んだ愛知学院大の人壁が懸命にブロック。90+4分のラストプレー。左から武内が投げ込んだロングスローは中央にこぼれ、またも薗田が放ったシュートは、ここも執念で体を投げ出した愛知学院大の人壁がブロック。直後、味スタ西を包んだタイムアップのホイッスル。愛知学院大が第35回大会以来、実に27年ぶりとなる全国での1勝を手に入れる結果となりました。
最後は土壇場での決勝ゴールで劇的な勝利を収めた愛知学院大でしたが、90分間を通じて見れば順当な結果だったと言えるでしょう。西中の"2度目"にも象徴されるように、境田監督の口から何度も出てきたのは"リラックス"というキーワード。「コーチもサブの選手も気持ちを和ませるようなことをやっていたので、ピッチの選手たちもリラックスしてやれたかな」という指揮官の言葉通り、ピッチやベンチ、そしてスタンドと、確かに彼らの空間には、そこかしこに"リラックス"が溢れていたように思います。「『ああしろ、こうしろ』とかはほとんど言わないので、選手たちも追い込まれてやっていないんじゃないかな」と笑う境田監督に率いられ、愛知学院大が足取りも軽やかに表舞台へと帰ってきました。         土屋

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