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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年12月15日

インカレ1回戦 関西大×岩手大@荻野

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ogino1214②.jpg今大会から新設されたプレーオフを劇的に制したみちのくの古豪が、関西随一のタレント集団と対峙する一戦。2試合目の会場も引き続き荻野です。
激戦の関西リーグは最終節までインカレ出場権がもつれ、4枠目に何とか滑り込むような形で2年連続の全国へと進出してきた関西大。「見ていて面白いサッカーや、美しいなと思ってもらえるサッカーってどんなんやろっていうことを、学生と問いながらやってきた」と島岡健太監督。ピッチ内外での"関係性"を重視して、1年の集大成に挑みます。
部員数27名は今大会参加校の中でも圧倒的最少。それでも東北リーグでは絶対王者の仙台大に肉薄する2位に入り、迎えたプレーオフでは試合終了間際の90分に挙げた決勝弾で北海道教育大岩見沢校を退け、14年ぶりに全国へと帰ってきた岩手大。相手は関西きっての名門ですが、「今回ここまで来られたのは1年生のおかげでもある」と鎌田安久監督も言及したように、1,2年生主体の若いチームが恐れるものは何もありません。引き続き荻野は快晴の青空と整備された真緑の芝。関西大がボールを蹴り出し、ゲームの幕が上がりました。
立ち上がりから攻め立てるのは紫紺の志士。6分、10番を背負う和田篤紀(3年・ヴィッセル神戸U-18)は、ゴールまで25m弱の距離からFKを直接狙うもカベにヒット。7分、左から篠原宏仁(2年・柏レイソルU-18)が中へ正確にグラウンダーで送り、原口拓人(3年・ガンバ大阪ユース)が左足で打ったシュートはわずかに枠の右へ。11分にも原口を起点に和田が左へラストパスを送ると、上がってきたSBの山田幹也(3年・ガンバ大阪ユース)が枠へ飛ばしたシュートは、岩手大のGK田中克憲(2年・長井)が驚異的な反応で弾き出し、ボールはクロスバーにヒットしたものの、「立ち上がりからガツガツ行って相手のペースにさせないよう、自分たちのサッカーをしっかりやろうと入った」とキャプテンの前田晃一(4年・金光大阪)も話したように、まずは関西大が勢いで圧倒します。
さて、「攻め込まれたら5枚になって、真ん中はボールに行かせて、サイドはスライドしながら絞るイメージ」と鎌田監督が言及したように、いわゆるWBの位置にいる右の田村篤志(2年・盛岡北)と左の佐藤桂(1年・秋田商業)も最終ラインに張り付く格好になり、5バック気味で守る時間の長い岩手大でしたが、この展開は「想定通り」(鎌田監督)。15分には中北遣(4年・常総学院)の左FKがこぼれると、2年前には高校選手権で国立のピッチも経験した後藤拓也(2年・尚志)がシュート。ここはDFにブロックされるも、ハッキリした戦い方を打ち出し、11人で専守を徹底します。
17分は関西大の決定機。1本のフィードで右のハイサイドへSBの内田恭兵(3年・ジュビロ磐田ユース)を走らせ、追い付いた内田の折り返しを成田鷹晃(3年・青森山田)が狙うと、ここも田中がビッグセーブ。27分も関西大の決定機。エリア内へボールを運んだ1トップの宮村緯(1年・ジュビロ磐田ユース)が枠へ収めたシュートは、三たび田中がビッグセーブで回避。その好守連発にベンチから「これがタナカカツノリです」とスタンドに向かって大声でアピールする控え選手も。
32分は関西大の決定機。前田が蹴った球足の長いフィードは裏まで届き、DFと入れ替わった成田のシュートはやはり田中がファインセーブ。35分も関西大の決定機。宮村、成田と繋いで篠原が狙ったシュートは、岩手大3バックの一角を務める齋藤浩樹(1年・盛岡商業)が体を投げ出してブロック。「前に出るのは強いので1対1が多かったのもそうだし、慌てず反応していたのも良かった」と鎌田監督も賞賛した田中の仁王立ちで、内容のバランスとは対照的に動かないスコア。
それでも一見焦れてしまいそうな展開にも、「シュートまで行けたことをポジティブに捉えて、何回も何回もトライすれば、いずれゴールに繋がると信じていた」とはCBの前田。崩す形自体は和田を軸に据えながら、かなりのバリエーションを持って創れていた関西大。「ゲームプランはあってないようなもの。チャンスを創っていた回数も多かったので慌てていなかった」と島岡監督。焦らず、騒がず、淡々といい形を創り続けてきた対価としての成果はようやく36分。
「前線はいろいろしゃべっているので、イメージの共有はできてきた」という篠原が右サイドを鋭くえぐって、マイナス気味に中へ。原口のシュートはしかしクロスバーにヒットし、ここも岩手大の牙城が跳ね返しかけたボールへ、最後にきっちり詰めていたのはSBの位置から最前線まで飛び出してきた山田。「やっぱり答えは相手にあって、相手を見てスペースをどれくらい探せるか」(島岡監督)という"相手"をしっかり見極めた戦い方がようやくゴールへと昇華。力で堅牢をこじ開けた関西大が1点をリードして、ハーフタイムへ入りました。
後半のファーストチャンスは岩手大。48分、太田和翔(1年・瑞陵)がドリブルで粘って獲得したFK。右から佐藤が蹴ったキックはDFにクリアされたものの、「0-1のままでもワンチャンスあったらということで後半へ入った」(鎌田監督)岩手大は、セットプレーからのチャンスを創出し、残された45分間に悪くない格好で入ります。
とはいえ、やはり前半以上に牙を剥いたのは2点目を取ってゲームを決めたい関西大。52分には宮村のスルーパスに原口が抜け出し、GKとの1対1はわずかに枠の左へ外れましたが、惜しいシーンを創出した紫紺沸騰はその6分後。58分、篠原が左サイドの裏へボールを落とすと、潜った宮村は思い切ってシュート。これがもつれたマーカーに当たりながら、ニアサイドに吸い込まれます。両者にとって重要な"次の1点"は関西大に記録されました。
厳しい失点に「2点目が痛かったですね」と話した鎌田監督は、1人目の交替に着手。61分、前線で奮闘した太田を下げて、村上訓史(3年・千厩)をピッチへ送り込み、苦しくなった局面の打開を試みると、島岡監督も1人目の交替を決断。64分、最前線の宮村に替えて、佐々木周(4年・奈良育英)を投入し、アタッカーの顔ぶれをシャッフル。65分には山田のパスを引き出した佐々木が、早速左から鋭いグラウンダークロスを放り込み、ニアへ潜った成田のシュートは枠の左へ逸れましたが、早くも関西大の交替選手が躍動します。
「スピードのある選手というのは情報で聞いていたが、あんな収まるとは思っていなかったのでちょっと厄介だった」と関西大を束ねるキャプテンの前田も一定の評価を口にした後藤は何とか個で対抗していましたが、その後藤と周囲が機能的に関わるまでにはなかなか至らない岩手大。72分には吉見拓哉(1年・モンテディオ山形ユース)が右から上げたクロスを後藤がうまく頭で落とすも、佐藤はシュートまで持ち込むことはできず。変わらないスコアボードの優勢と劣勢。
すると、輝いたのは途中出場の最上級生。76分、右サイドを抜け出した内田のピンポイントグラウンダークロスを、ニアで丁寧に押し込んだのは佐々木。交替でピッチへ解き放たれた4年生が大仕事。さらに点差を広げると、打ち止めはここまでの3得点にもすべて絡んできた14番。
82分、エリア内へ侵入した篠原はDFに倒されて、関西大にPKが与えられます。キッカーは「高校の時以来のPK」という篠原自ら。向かって左へ飛んだGKに惑わされることなく、冷静に逆を突いて揺らしたゴールネット。「今年1年間やってきた部分の集大成ではある。いい形で初戦を飾れたなという感じ」と島岡監督も言及したように、後半は攻勢をゴールという成果へ力強く結び付けた関西大が、大学サッカー界最強との呼び声も高い専修大と激突する2回戦へ勝ち上がる結果となりました。
久々の晴れ舞台で厳しい結果を突きつけられた岩手大でしたが、「こういう舞台に出て、プレッシャーや緊張感の中で『こういうことが必要なんだな』ということが感じ取れたんじゃないかな」と鎌田監督も話したように、チームにとっての経験値という意味では貴重な90分間だったのは間違いありません。スタメンの4年生は3バックの中央を務めたキャプテンの阿部昴平(4年・利府)と中北の2人だけ。前線で奮闘した後藤や中島飛雄(2年・塩釜FCユース)、鍵潤平(1年・市立函館)などメンタルの強さを感じさせる選手も少なくなく、この経験を糧にした来年以降の躍進へ大いに期待したいと思います。
会場へ視察に訪れていた解説者の水沼貴史氏も「楽しいサッカーですね」と話したように、"見ていて面白い、美しいサッカー"の一端は確実に披露した上で、きっちり勝利も収めた関西大。ただ、島岡監督はいつも通り「努力の方向性というのを見失わずに1人1人が謙虚にやりたいなと思う」とピッチ内外に通じる部分の重要性を強調しています。前述したように次の相手は優勝候補大本命の専修大。去年は夏、冬と続けて全国の舞台で敗れただけに、「すごくみんな燃えていると思う」と前田。「力の差は相当あるというのは自覚しながらやりたいなと。対策はないです。当たって砕けます」と笑った島岡監督も、「すべてが相手の方が上だけど、自分たちのやれることは絶対ある」と自信も口に。"3度目の正直"へ。機は熟しています。     土屋

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