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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年12月29日

天皇杯準決勝 横浜FM×鳥栖@日産

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tennohai1229.jpg聖地でのファイナルに王手を懸けたトリコロールにブルーとピンク。横浜FMと鳥栖が激突するセミファイナルの舞台は日産スタジアムです。
ラスト2節で首位に立っていたリーグ戦は、最後の最後で痛恨の連敗を喫し、その掴みかけていた優勝というタイトルが両手からすり抜けていった横浜FM。「サッカーで感じた悔しさはサッカーでしか晴らせない」と兵藤慎剛が話したように、天皇杯は4回戦のAC長野パルセイロ戦、準々決勝の大分戦も、揃って延長を含む120分間の死闘を制してセミファイナルへ。国立へと辿り着く前に、1ヶ月前に悔しい想いを味わった日産できっちり凱歌を上げたいゲームです。
クラブ史上最高となるベスト4進出を果たし、今度はJリーグの九州勢として初めてのファイナル進出へあと1つまで迫っている鳥栖。リーグ戦から続く無敗記録は現在7試合にまで伸び、絶好調と言っていい状況にありますが、「今までベスト8が最高だったということでそれを更新できたということは評価していい所だが、トーナメントは最後に頂点まで行かないと意味がない」ときっぱり話したのはキャプテンの藤田直之。このステージで満足する気持ちはさらさらありません。暮れも押し迫った青空の下、日産スタジアムに詰め掛けた観衆は22630人。トリコロールのコレオグラフィーがホームゴール裏に咲き誇る中、鳥栖のキックオフでゲームはスタートしました。
ファーストシュートは鳥栖。5分、ショートカウンターから豊田陽平が運んで左へ。キム・ミヌのシュートは枠の左へ外れましたが、まずは1つチャンスを創ると、7分の流れる攻撃も鳥栖。早坂良太のパスを高橋義希が右へ綺麗なサイドチェンジ。池田圭のクロスはキム・ミヌがシュートまで持ち込めなかったものの、8分にもキム・ミヌの右FKから菊地直哉が枠を外れるボレー。「ハイテンポな試合で相手に落ち着かせることなくやりたかった」とは菊地。13分にも藤田が裏を1本で狙い、走った豊田には届かずも、鳥栖の勢いが立ち上がりは相手を上回ります。
一方、序盤から攻め込まれる展開を強いられた横浜FMは、マルキーニョス不在を受けて1トップ起用となった藤田祥史がややブレーキ気味に。「あまりいいクサビとかは入らなかったと思うし、入ってきてもしっかり潰せていた」と藤田直之が話したように、ボールが入る前に奪われ、入っても奪われ、というシーンが多く、チーム全体の縦に向かうギアが上がってきません。
18分には横浜のファーストシュート。兵藤が左へ回し、齋藤学が仕掛けたドリブルはユースの先輩でもある丹羽竜平がタックルで掻き出しましたが、こぼれを拾った中町公祐のクロスを、右SBの奈良輪雄太が叩いたボレーは枠の左へ外れるも、ようやく創出した惜しいシーン。
20分を過ぎるとボールは横浜が支配し始めましたが、「前半から守備はDFラインとボランチで、相手に持たせるというイメージだった」とは藤田直之。23分には兵藤が左へ繋ぎ、齋藤の折り返しを中村がダイレクトで狙ったミドルはクロスバーの上へ。「ブロックの前ではボールが動くけど、その裏が取れない」(樋口靖洋監督)横浜と、「奪った後の自分たちの距離感が悪く、相手にボールを渡してしまうことがあまりにも多かった」(藤田直之)鳥栖はどちらも手数を繰り出せず、ゲームはかなり膠着。45+1分に中村が直接狙った35m弱のFKもカベにヒット。「堅い試合になると思っていた」という鳥栖の守護神・林彰洋の予想通り、両チーム通じてCKが1本もないという珍しい前半は、スコアレスのままで45分間が終了しました。
後半開始時に選手交替があったのは横浜。CBの栗原勇蔵が右足首の負傷でプレー続行が難しくなり、そのままの位置にファビオを送り出す交替を余儀なくされましたが、ハーフタイムを挟んでも流れは横浜。50分、奈良輪が右からグラウンダーで中へ付け、富澤清太郎の巧みなスルーを挟み、齋藤が狙ったシュートはクロスバーの上へ。52分も横浜。中村が右へ展開し、奈良輪を経由したボールを兵藤が打ち切るも、DFがブロックしたボールは林がキャッチ。56分も横浜。兵藤が左サイドで粘り、ドゥトラのクロスをエリア内で藤田祥史が収め、懸命に放ったシュートは磯崎が果敢に体を投げ出してブロック。「前半の途中から相手のペースになっている感じはあった」と菊地。勢いは間違いなく横浜に。
57分は鳥栖。坂井がシンプルなフィードを縦に放り込み、豊田が競り勝ったボールを池田が残すと、早坂のシュートはファビオが体でブロックしたものの、ようやく鳥栖らしい形からフィニッシュまで。すると、62分にCKより先に繰り出したのはおなじみ藤田直之のロングスロー。直後の63分にも投げ入れたロングスローはいずれもDFのクリアに遭いましたが、「こぼれたら何があるかわからないので、そういった緊張感はあった」と中町も認めたように、スローインが"逃げる"手段にならない横浜にかかるイレギュラーな圧力。
67分には齋藤がドリブルで突っかけ、菊地が何とか対応した流れのCK。中村が左から蹴ったボールは、キッカーの元に戻り、再び中村が入れたクロスを、高い打点のヘディングでファビオが中へ。こぼれを当てた齋藤のボレーは林がフィスティングで掻き出し、悪くない連動性から生まれた横浜の先制機もスコアは動かず。
すると、「あの勢いで流れは変わったと思った」と藤田直之も話した4分間の鳥栖。69分、藤田直之の左ロングスローはファビオがクリアするも、丹羽竜平がダイレクトで打ったシュートはクロスバーの上へ。71分にはユン・ジョンファン監督が池田に替えて、水沼宏太を送り込んだことも、チームリズムを変えた1つの要因に。72分、藤田直之の左ロングスローから、こぼれに反応した水沼のシュートはドゥトラが決死のブロック。73分、藤田直之の右ロングスローは左サイドへこぼれ、水沼とのパス交換から豊田が左足で巻いたシュートは枠の左へ外れましたが、「あの時間帯は替わってきた選手が運動量を出してくれて、流れはこっちに来ていたと思う」と磯崎も認めたように、変わりつつある勝利への潮流。
78分は鳥栖。磯崎の蹴った左FKがフリーの豊田に届くも、手痛いコントロールミスでシュートは打てず。同じく78分も鳥栖。1本のロングフィードを豊田が落とすと、高橋のミドルはクロスバーの上へ。79分は横浜。中村が左から蹴り入れたピンポイントCKへ、走り込んだ藤田祥史は頭でしっかり枠へ飛ばすも、ここは丹羽がライン上で決死のクリア。82分にはユン監督も2枚目のカードを切る決断を。攻守に奮闘したキム・ミヌを下げて、古巣対決となる金井貢史を投入。サイドの運動量へもう一度テコ入れを図ります。
「シーズン終盤でも"チーム"としてのゴールが少なかった」(兵藤)横浜の、まさに"チーム"で奪い取った一撃は86分。左サイドで中町とのパス交換から齋藤は右へ大きく展開。マーカーを切り返しで翻弄した奈良輪は「フジくんと目が合ったので」中へ。「絶対に落としてくれると思っていた」兵藤は、その通りに藤田祥史の落としを呼び込むと、「思い切り空いていたので転がせば入るだろうと」判断してファーサイドへフィニッシュ。DFの股下を抜けたボールは、ゴール左スミへ吸い込まれます。絶対的エースを経由することなく、5人のイメージがシンクロした完璧な先制点。この最終盤で横浜がとうとうリードを奪いました。
決して悪くない流れの中で失点を喫してしまった鳥栖。90分には藤田直之の右ロングスローを豊田がすらすも、DFにクリアされると、3枚目のカードは坂井に替えて岡田翔平。最後に賭けたのは"高さ"ではなく"スピード"。樋口監督も齋藤と小椋祥平、藤田祥史と端戸仁を相次いで入れ替え、1点を守り抜く覚悟も鮮明に、潰し切りたい4分のアディショナルタイム。
激闘に終止符を打ったのは圧巻の絶対的エース。90+4分、富澤が大きく蹴り出したボールを相手陣内の右サイドで収めたのは中村。縦に運んで、運んで、スタジアム中の視線を一身に集めたレフティは、またいで、またいで、またいで、中へ重心を移すとすかさず振り下ろした左足。ボールは左のポスト内側を叩きながら、明確な意志を持ったかのようにゴールネットへ飛び込みます。輝くキャプテンマークを掲げたウルトラレフティに駆け寄るのは、トリコロールを纏った仲間たち。「初詣に行って、テレビで見るイメージ」(奈良輪)の晴れ舞台へ。横浜が前身の日産自動車時代以来、21年ぶりとなるファイナルへ勝ち上がる結果となりました。
「どこか頭の中に1つ勝てば決勝まで行けるという意識はあったと思う。サポーターと最後は笑って終わりたかった」と藤田直之が話した鳥栖の冒険は、ひとまずセミファイナルで幕を閉じました。それでも、「ここまで来れたというのもあるし、この先に行けなかったということで、自分たちにまだまだ足りないものがあるというのも感じたし、もっともっと上を目指したいという気持ちにはなった」と磯崎。J1での1年目はリーグ5位。2年目は天皇杯ベスト4。3年目の彼らが目指す"もっともっと上"はどこまで伸びていくのかに、誰もが期待してしまうような快進撃だったのではないでしょうか。
「1ヶ月前の悔しさや残念な想いを何としても晴らし、ファン・サポーターと一緒に国立へ向かおう」と樋口監督に送り出された選手たちが躍動し、その約束の地へと向かう切符を手に入れた横浜。「ノッていてイヤなチーム」(兵藤)とのゲームも、終わってみれば相手をシュート4本に抑え、磐石に近い勝利を収めて見せました。「ウチはいい所まで行って、届かないということが多い」と語ったのは殊勲の決勝ゴールを挙げた兵藤。元旦、国立。相手はリーグ優勝をさらわれたサンフレッチェ広島。待っているのは果たして歓喜か失望か。トリコロールの勇者たちはリベンジの時を静かに待っています。       土屋

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