mas o menos

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2013/11

S M T W T F S
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年11月18日

高校選手権群馬決勝 前橋育英×桐生第一@正田スタ

mas o menos
  • Line

syoda1117.jpg上州のファイナルは4年連続となる新・群馬クラシコ。全国注目のタイガー軍団に、東毛の新鋭が挑む舞台は正田醤油スタジアム群馬です。
プリンス関東1部では、柏レイソルU-18やFC東京U-18、横浜FMユースなど、並み居るJクラブユース勢を向こうに回して堂々の首位。世代屈指の実力を誇るとの呼び声も高い前橋育英。優勝候補の一角に挙げられた昨年の選手権、今年のインターハイと共に全国では早期敗退を強いられており、悲願の選手権全国制覇を成し遂げるためにもこの一戦だけは負けられません。
対するは2年前に現在アルビレックス新潟でプレーする鈴木武蔵を擁し、初めて臨んだ選手権の全国舞台でベスト8まで駆け上がった桐生第一。それ以降は王座から遠ざかっているものの、県内のコンペティションでは常に安定した結果をキープ。とはいえ、「今年はここまで全タイトルが準優勝」(小林勉総監督)だけに、最強のライバルを倒して最後のタイトルを獲得したいゲームになります。今日の舞台は例年の敷島サッカー・ラグビー場ではなく、ザスパクサツ群馬がホームとして使用している正田醤油スタジアム群馬。大観衆が詰め掛ける中、12時10分にファイナルの火蓋は切って落とされました。
ゲームは序盤から「守備の時間が長いのはわかっていた」と桐一の左SBを務める乾貴哉(2年・前橋ジュニア)が話したように、育英がしっかりボールを回していく展開に。4分、5分と左から続けて上田竜哉(3年・鹿島アントラーズつくばJY)がCKで桐一ゴール前を脅かすと、7分には決定機。中央でボールを持った上田慧亮(3年・横浜F・マリノスJY)がそのまま縦にスルーパス。フリーで抜け出した小口大司(3年・裾花ヴィエント)のシュートはわずかに枠の右へ逸れましたが、まずはタイガー軍団が攻勢を強めます。
さて、「守備が7割くらい」(小林総監督)という想定の下、「ペナルティエリア前で仕事をされたら結局育英さんに飛び込まれちゃうんで、なるべくDFとGKの距離間を空けるな」というのが小林総監督の狙い。実際に「DFラインの裏を狙うという指示は出していた」と育英の山田耕介監督も話したように、比較的スルーパスや裏へのフィードを一発で狙いに来ていた育英に対し、「チャレンジカバーをしっかりやって、ファーストはしっかり弾いて、キックモーションになったらしっかり下がるとか、基本的なことをしっかり4人とボランチ2人が全員できた」と語ったのは桐一のキャプテンマークを託されたCBの松島奨真(3年・前橋ジュニア)。負傷や受験で欠場した先輩の穴を埋める格好で起用されたCBの角田駿(2年・前橋ジュニア)もきっちりとラインを保ち、ドイスボランチの木村光希(3年・前橋ジュニア)と田中大輔(3年・AZ'86 tokyo-ome)も加勢して、打ち出した"裏"はやらせないという鮮明な姿勢。
その徹底は桐一の攻撃にもわずかながら波及し始め、活性化したのは右サイド。12分にFWの齋藤雄大(2年・前橋ジュニア)が右へ流れてボールを引き出し、入れたクロスはDFのクリアに遭ったものの、15分にも齋藤雄大を起点に右SBの坂井滉祐(3年・前橋ジュニア)が中へ。出村颯太(2年・前橋ジュニア)がチップ気味に上げたクロスもDFにクリアされましたが、ようやく出始めた手数。18分には松島が強引にミドルレンジからチームファーストシュートを放つなど、「四つに組んだら100%やられる相手」(小林総監督)をいなしながら、攻撃への意欲も披露します。
それでも中盤より前の6人は、いずれも受けられて飛び出せるタレント揃いの育英が、常に桐一へ突き付ける一発の脅威。33分には廣瀬慧(3年・柏レイソルU-15)のクサビを上田竜哉がダイレクトで裏へ落とし、抜け出しかけた小口には松島が何とか食らい付いて回避。35分にもU-17W杯での活躍も記憶に新しい鈴木徳真(2年・FC古河)が絶妙なスルーパスを通し、左サイドへ潜った佐藤祐太(3年・横浜F・マリノスJY)は縦に持ち出してクロス。収めた小口の左足シュートはヒットせず、先制点とはいかなかったものの、「裏の抜け出しとかボール回しはイヤだった」と乾が言及したように、警戒していてもそれを上回りかねない個の力はやはり強烈。「最悪でも0-1かなと思っていた」とは小林総監督ですが、40分を終えたスコアボードの数字は変わらず。スコアレスでハーフタイムへ入りました。
開始10秒に桐一の左SHを務める浦丸治也(3年・AZ'86 tokyo-ome)が左サイドで飛び出し、枠の上へ外れるミドルを放ってスタートした後半も、大きな流れは変わらず。45分は育英。小口の確実なポストをもらった鈴木は、中央を切り裂くドリブルからスルーパス。走った上田竜哉には角田が何とか対応しましたが、際どいシーンを創出すると、山田監督も早めの決断。46分に上田竜哉を下げて、こちらもU-17W杯日本代表の渡邊凌磨(2年・レジェンド熊谷)を右SHへ投入し、その位置にいた廣瀬を2トップの一角にスライドさせて、前線の顔ぶれに変化を加えます。
46分は桐一。出村のスルーパスに齋藤雄大が反応するも、ここは育英CB柿崎雅也(3年・今市中)が確実に対応してシュートは打たせず。50分は育英。鈴木が中盤でボールを奪い取り、廣瀬は左へ展開。上がってきたSBの田邉真之介(3年・三菱養和巣鴨)のクロスに、走り込んだ鈴木は頭で飛び付くも、シュートには持ち込めず。51分も育英。右SBの高田龍司(3年・FC東京U-15深川)が左へ糸を引くフィードを通すと、上田慧亮がカットインから枠へ収めたシュートは桐一GK依田龍司(2年・東京ヴェルディJY)がしっかりキャッチ。52分も育英。左から渡邊凌磨が蹴ったFKに、小口が合わせたヘディングは枠の右へ。増した育英の勢い。
57分も育英。上田慧亮が左へ付け、廣瀬が鋭い切り返しから放ったクロスは、小口とわずかに合わず。桐一も61分にはカウンターから浦丸が30m近くを独走するも、クロス気味のシュートは育英のキャプテンを務める樋口慎太郎(3年・横浜F・マリノスJY)が難なくブロック。ベンチも63分には齋藤光汰(3年・AZ'86 tokyo-ome)と大塚遼太郎(2年・上州FC高崎)を入れ替えましたが、64分のチャンスも育英。中盤を完全に支配した鈴木が左へ振り分け、田邉のクロスは依田がパンチングを繰り出すも、ボールは上田慧亮の前へ。ここは「体を張ってでも守るというのはDFラインの4人で話していた」という松島が文字通り体を張り、オフェンスファウルで切り抜けたとはいえ、渡邊凌磨、上田慧亮、廣瀬のドリブルもアクセントとして立ち始めた育英の圧力が、「中盤のプレスが効いていたので、ボールの出所がハッキリした」(小林総監督)部分で対抗していた桐一の体力とメンタルを、少しずつ蝕んでいきます。
70分には田中が左へ送り、浦丸の右足クロスをニアで齋藤雄大が合わせるも大きく枠外へ。71分は再び育英。田邉、廣瀬と回し、小口はシュートを打ち切れませんでしたが、73分にもビッグチャンス。田邉の左クロスを渡邊凌磨がすらし、受けた小口には松島が水際の対応で決死のクリア。差し込む育英。差し込まれる桐一。スコアの均衡は保たれたまま、ゲームはいよいよ最終盤へ。
74分に訪れた桐一の好機。右から出村が鋭いクロスを蹴り込み、飛び込んだ浦丸のヘディングは体を投げ出したDFに当たり、わずかにクロスバーの上へ外れましたが、このゲームで初めて桐一が掴んだあわやというチャンスに、一瞬変わった空気。
直後の右CK。「パターンは何個かあった」(小林総監督)中から、直前のクロスで好感触を得た出村がチョイスしたのはファーサイドへのストレートボール。ここに飛び込んでいたのは「自分に来ると思っていた」という乾。「いいボールが来たので、ここは絶対に決めなきゃいけないと」繰り出したヘディングは、ワンバウンドしながらゴール左スミへ転がり込みます。「松島か乾がファーサイドであれば決めるというのは、トレーニングからやっていた」とは小林総監督。186センチのチーム最長身が生かしたワンチャンス。残り5分でとうとうスコアは動きました。
まさかの失点で一気に追い込まれた育英。山田監督は77分に高田を下げ、184センチのDF渡邊良太郎(3年・グランセナ新潟)を最前線に送り込んで勝負に出ると、78分には同点機。後方からのフィードにその渡邊良太郎が競り勝ち、エリア左でボールを収めた小口が左足一閃。枠内へコントロールされたシュートは、しかし依田が渾身のファインセーブで応酬。いよいよ後がなくなったタイガー軍団。
80分に育英が創ったビッグチャンス。時間に追われる中でも右サイドで丁寧に繋ぎ、廣瀬が裏へ落とした浮き球を、渡邊凌磨は難易度Eのダイレクトボレー。ジャストミートしたボールは枠を捉え、歓声と悲鳴に包まれたスタジアムの観衆が目にしたのは、しかし無情にも左ポストに直撃し、ピッチへ戻ってきた球体。そしてこれがこのゲームのラストシュート。「本当に選手が80分間"無"になってボールを追って、体を張ってやったのが勝因」と小林総監督も選手を称えた桐一が、まさに"これしかない"勝ち方で凱歌を上げる結果となりました。
全国でも指折りの強豪である育英に競り勝ち、群馬を制した桐一のスタメンを見ると、11人中7人が前橋ジュニア出身。そしてこの前橋ジュニアの代表者として、数々のJリーガーを世に送り出してきたのが、小林総監督その人です。「中1から関わりがあって感謝し切れない。勉先生に付いていこうとここに来たので、こういう結果で恩返しできたので本当に良かった」と話したのはチームを最後尾から鼓舞し続けたキャプテンの松島。「信じてウチに来てくれたヤツらと、全国に行けることは良かったと思う」と話した"勉先生"は、会心の勝利に満面の笑顔で選手たちの輪に飛び込んで行きました。          土屋

  • Line