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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
今シーズン最後の京神ダービーは首位と3位の真剣勝負。勝てば文句なしのJ1復帰を果たす神戸が、この日に立つ舞台はホームのノエスタです。
屈辱のJ2降格から1年。情熱の指揮官を頂き、連敗や大敗も経験するなど、このリーグでの難しさにも直面しながら、35節でG大阪から首位を奪い返して、遂に"あと1つ"まで辿り着いた神戸。昨年から強いられてきた苦境の対価として、サッカーの女神が用意していたのは「ホームで勝てば昇格というおいしい状況」(北本久仁衛)。共に前を向き続けてきたサポーターに、ノエスタで歓喜を届けたい一戦です。
まさかの3連敗で昇格プレーオフ圏内ギリギリの6位まで順位を落としたのは、もはや過去の話。そこから1つの引き分けを挟み、クラブ記録となる7連勝で一気に後続を突き放した京都。西京極でのプレーオフは確保した感もある中で、「可能性は少ないけど、勝って昇格が決まる前のガンバとやりたい」とは中盤のキーマン工藤浩平。神戸、G大阪と続くこの連戦は、わずかに残る自動昇格への望みを引き寄せるラストチャンスです。「神戸のサポーターも京都のサポーターもたくさん入って頂いて、非常に素晴らしい状態でゲームができたことに感謝します」と京都の大木武監督も言及したスタジアムは、22468人の大観衆。最高の雰囲気の中、京都のキックオフで大一番は幕を開けました。
立ち上がりから大サポーターをバックに付け、一気呵成に飛び出したのは神戸。7分にマジーニョが中へ付けると、やや力んだポポキャノンは京都のGKオ・スンフンの正面を突いたものの、らしいフィニッシュがチームのファーストシュート。10分にもマジーニョ、小川慶治朗、ポポと繋いだボールを、最後はオーバーラップしてきた左SBの相馬崇人がミドル。ここはDFのブロックに阻まれたとはいえ、「入り方としては向こうの出足がすごくシャープだった」と大木監督も認めたホームチームが、まずはゲームの主導権を握ります。
スタイル自体はいつもと変わらない京都を苦しめた一番の要因は、神戸の中盤に鎮座するエステバン。「セカンドボールへの反応がエステバンは速かったし、彼のプレッシャーというのはみんな感じていた」とはマッチアップする回数も多かった工藤。「特に守備から攻撃に入った時にウチがボールをキープできず、攻撃にならなかった」と大木監督も話すなど、中央を避けてサイドへ散らす回数が増えたものの、その中央では「相手のパス回しは上手いけど、ゴール前に人は多くないので、そこは来た時にしっかり潰せばいいと思っていた」と話す北本と河本裕之の帰ってきたCBコンビが築いた鉄壁。18分にようやく横谷繁が放った、大きく枠を外れたミドルがファーストシュート。なかなかいつものリズムとテンポを打ち出せません。
20分には神戸に決定機。左サイドで相馬がダイレクトで縦に付け、加速した小川はマーカーをぶっちぎってエリア内へ侵入。やや角度がなくなり、シュートは間合いを詰めたオ・スンフンにきっちりセーブされ、「あんなにスピードを上げてドリブルに行かなくてもぶっちぎれていたから、少しスローダウンすれば良いのになあと思って見ていた」とは安達亮監督ですが、京都に圧倒的なスピードの脅威も植え付けると、直後のCKもチャンスに。マジーニョが左から入れたボールはGKが落とし、河本がループ気味に狙ったシュートはクロスバーの上へ。28分にもマジーニョのドリブルから、森岡亮太が左足で枠を越えるシュートにトライするなど、このあたりは完全に神戸の時間帯。
30分過ぎからはようやく京都もボールを落ち着いて回せるようになり、少しずつショートパスでテンポも上がっていったものの、37分に工藤が中央からそのまま単独でドリブルシュートを放ち、DFに当たったリバウンドを再び狙うも、ヒットしなかったシーンが流れの中から掴んだ唯一のチャンス。崩せない神戸の牙城。
39分に訪れた神戸の決定的なシーン。森岡が左へ送り、マジーニョが自分の間合いとレンジから打ち切ったミドルの行方は、わずかにボール数個の差で枠の右へ。43分にも絶好の先制機は神戸。右サイドで粘ったポポが森岡のヘディングリターンを受け、サイドをえぐって中へ。走り込んだ小川のシュートは、しかしここもわずかにゴール左へ。「前半はすごく我々の狙い通り」(安達監督)「前半はしっかり我慢しようという話をして、実際に我慢できた」(工藤)という両者の対照的な言葉は、45分間の展開そのもの。神戸優勢の前半は、スコアレスでハーフタイムへ入りました。
「前半に飛ばしすぎた分、最初の方でちょっと足が止まってしまった」と安達監督が振り返った通り、後半はスタートから神戸の勢いが減退し、京都もボールの回りはだいぶスムーズになったものの、相変わらずフィニッシュには結び付かなかったため、10分近くは膠着状態に。それでも57分のチャンスは、やはり神戸。ポポが左へ付けると、受けた橋本英郎は少しトラップに手間取り、シュートは打ち切れず。中に戻したボールは秋本倫孝が掻き出し、マジーニョが強引に打ったシュートも、下畠翔吾が確実に対応。59分にも山瀬からボールを奪い切ったエステバンが右へ展開し、小川がクロスを上げるもポポのボレーはヒットせず。スコアは変わりません。
先に動いたのは「少し押し込めるような形になった」と情勢を判断した大木監督。60分、中盤前目の倉貫一毅に替えて、「一発を持っている」原一樹を最前線へ投入。その位置にいた横谷を中盤へ落とし、傾きつつある流れを手繰り寄せに掛かります。すると、67分には安達監督も決断。前半の1本以降はシュートのなかったポポを下げて、逆転勝利を収めた前節の主役・田代有三を当然最前線へ投入。大一番はいよいよラスト20分間の攻防へ。
71分は京都。右に流れた原のクロスから、山瀬が大きく枠の左へ外れるボレーを放ちますが、これは京都の後半ファーストシュート。75分には神戸が2枚目の交替カードとして、森岡と杉浦恭平をスイッチさせると、76分には京都にチャンス。山瀬が右から上げたCKを、秋本が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。76分には京都も2人目の交替に着手。山瀬と入れ替えたのは、ここまで途中出場で5ゴールをマークしている切り札の三平和司。残された時間は10分間とアディショナルタイム。
「引き分けではウチは後がない。とにかく勝ちたいという気持ちで交替もやった」と大木監督が話したように、終盤は上回った京都の執念。83分、福村貴幸、駒井善成とボールを回し、横谷がゴール右スミを狙いすまして放ったミドルは、神戸GK徳重健太がファインセーブで阻止。86分には両指揮官が同時に切った最後のカード。安達監督はマジーニョと茂木弘人を、大木監督は右SBで奮闘した下畠と中村祐哉を、それぞれ入れ替え、いよいよゲームは最終盤へ突入。
89分は京都。三平を起点に原が右へ送り、工藤のクロスはファーの中村へわずかに届かず。90+1分も京都。横谷が右へ振り分け、原のクロスは三平に収まるも、渾身のボレーは横谷に当たり、ルーズボールを拾ったその横谷のシュートもエステバンがブロック。90+2分も京都。中村が右から上げたCKはエリア後方にこぼれ、バヤリッツァが打ち切ったミドルは北本が体でブロック。90+4分のラストチャンスは神戸。カウンターから田代が左へ付けたボールを、杉浦は運んで運んで強烈なミドル。ゴール左を襲った軌道が捉えたのは、しかし枠のわずか左へ置かれたドリンクボトル。「全体を見て非常に良いゲームができたと思っています」(安達監督)「いいゲームでしたね」(大木監督)と2人が声を揃えたゲームはスコアレスドロー。神戸のJ1復帰は持ち越しとなり、先に試合を終えていたG大阪が1年でのトップディビジョン帰還を決める結果となりました。
お互いが意地と意地を全力でぶつけ合った好ゲームでした。「今日の昇格決定を逃してしまっているので、それが一番残念だが、試合の内容は非常に良かったなと思って納得している」と安達監督が話せば、「京都の選手は頑張ったと思う。最後は押し気味に進められたし、次に繋がるゲームだったかな」とは大木監督。どうしてもホームで昇格を決めたい神戸と、今日の昇格チームをゼロにする唯一の可能性だった自らの勝利に邁進した京都。会場の雰囲気も含め、今季のJ2を牽引してきた両者の対戦にふさわしい、サッカーの魅力に満ち溢れた神戸の夜だったのではないでしょうか。 土屋
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