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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年11月17日

高校選手権東京B決勝 駒澤大学高×國學院久我山@西が丘

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nishigaoka1116②.jpg誰もが憧れ、それでもその大半の選手にとって、立つことは叶わなかった晴れ舞台で行われる正真正銘のラストマッチ。異なるスタイルを持つ両者の都内最強対決。東京Bのファイナルも当然聖地・西が丘です。
3年ぶり2度目の全国へあと一歩まで迫っているのは駒澤大学高。おそらく今シーズンの東京高校サッカー界がいずれも掲げた「ストップ・ザ・久我山」を託された最後の砦は、やはりこのインテンシティの塊とも言うべき赤黒の志士。先週の準決勝では今シーズン3度目となった帝京とのラストバトルにPK戦で決着を付け、堂々の決勝進出。インターハイ予選では準々決勝で久我山に1点差で屈しており、リベンジを果たすには格好の舞台が整いました。
対するは2年ぶり5回目の戴冠を狙う國學院久我山。開幕戦で国立を沸かせてから2年。常に都内の高校からターゲットにされる日々を過ごしてきた彼らにとって、今年のインターハイは実にあの冬から3季ぶりの全国切符。「タイトルを1個取ることで、去年の呪縛から解放されたんじゃないかな」と李済華監督。平野佑一(3年・東京ヴェルディJY)、渡辺夏彦(3年・FCトリプレッタ)、富樫佑太(3年・ジェファFC)の"1年生トリオ"にとっても、この大会が総決算。「高校サッカーで何が大事かと考えているかというと、応援も含めたチームの一体感。今年はとにかくそこを求めようと思ってきた」という渡辺キャプテンの下、優勝候補がそのまま優勝する難しさへ、"一体感"を武器に臆することなく挑みます。スタンドは7594人を集める超満員。両校応援団が醸し出す素晴らしい雰囲気の中、駒澤のキックオフでゲームはスタートしました。
いきなり殴り合った両者。2分は駒澤。左からSBの井浦正人(3年・Forza'02)がFKを蹴り込むと、ファーサイドで合わせた藤田力也(3年・MKFC)のヘディングはクロスバーに跳ね返り、詰めた田邉彬人(3年・川崎フロンターレU-15)のシュートも花房稔(2年・横河武蔵野FC JY)がブロックしたものの得意のセットプレーからチャンスを創出。直後の2分は久我山。カウンターから完全に抜け出したのはエースストライカーの富樫。GKとの1対1になりかけるも、ここはよく戻った駒澤のFW大川雅史(3年・フッチSC)がタックルで阻止。お互いに決定機を逃す格好でゲームが動き出します。
インターハイの対戦時は通常の4-4-2を4-1-4-1に変更し、ブロックを築いて守備に軸足を置いた駒澤でしたが、このファイナルで大野祥司監督がチョイスしたのはいつも通りの4-4-2。ただ、負傷もあってベンチスタートが予想された紺野容(3年・練馬光が丘第一中)をスタートからCBで起用。最終ラインには右から真砂慶太郎(3年・POMBA立川FC)、渡邉愛一朗(3年・インテリオールFC)、紺野、井浦という平均身長でも180センチ近い4人を並べ、さらに前から激しいプレスを敢行。「思ったより相手もガンガン来た」(渡辺)「思ったより凄く来たので、そこはちょっとビックリした」(平野)と2人が声を揃えたように、やり合う覚悟を序盤のハイプレスに滲ませると、9分、11分と続いたCKを経て、12分にはパスカットから真砂が枠内ミドル。ゲームリズムは駒澤に。
そんな苦しむチームに光をもたらしたのは、今大会絶好調の11番。14分、花房のロングフィードを駒澤DFが跳ね返したクリアは松村遼(3年・國學院久我山中)の目の前へ。ワントラップから一瞬の迷いもなく右足で振り抜いたボールは、「GKの頭をぶち抜いた感じ」(李済華監督)でゴールに突き刺さります。「前までの自分だったら打ってないと思う。最近のシュート意識の高さが得点に繋がった」と振り返る一撃は、自身4戦連発となる大会6点目。松村のゴラッソで久我山に先制点がもたらされました。
さて、失点こそ許したものの、流れは決して悪くない駒澤。20分にも大塚寛大(3年・リオFC)とのパス交換から、"赤黒のキング"大川が枠内ミドル。最前線に構える大塚に長いボールを送り、大川や田邉が絡んでいくアタックはある意味で不変。それに対して、「駒澤との戦いがこういう感じになるというのはわかっていること」とは李監督。加えて「繋ぎたくても繋げないという状況になってしまった」(平野)流れを見て、久我山が選択したのは「今日は割り切って、ある程度は相手に付き合おう」(渡辺)というやり方。スタイルを出し切れない中、いつも以上にセーフティなプレーチョイスに振り切って、前半をやり過ごす腹づもりでゲームを進めていきます。
それでも、今の久我山には輝きを増すこの男の存在が。27分、右サイドのスローインから富樫との連携で抜け出した久竹陸(3年・FC多摩)がクロスを上げると、GKの鼻先に飛び込んだ松村が一瞬速く触ったボールはゴールへ吸い込まれます。「神懸かっていて、拝まなきゃいけないのかな」と指揮官も笑う松村のドッピエッタ。"2"の数字がスコアボードに踊りました。
以降もゲームはそれまでと同様の展開。33分は駒澤。井浦がゴールまで35m近い位置から直接狙ったFKは枠の左へ。40+1分、右から真砂が入れたロングスローを、大塚が強引に収めて狙ったボレーは枠の右へ。駒澤はおそらく描いた通りの展開だったはずですが、想定外は2つの失点。「前に来るのはわかっていたので、前に蹴って跳ね返されてもセカンドボールを絶対拾うという明確な意図」(平野)で柔軟に40分間をデザインした久我山が、2点のアドバンテージを持ってハーフタイムに入りました。
後半はスタートから駒澤に交替が。負傷を押してスタメン起用された紺野に替えて、松本将悟(3年・横浜茅ヶ崎中)を左SHへ投入。田邉が右にスライドし、右SHだった吉村進太郎(3年・FC東京U-15むさし)がSBへ一列下がる格好で、小さくないビハインドを追い掛ける態勢を整えます。
駒澤の猛ラッシュ。41分に吉村の右ロングスロー、42分に田邉の左FKが相次いで久我山ゴール前を襲うと、44分には井浦の左FKを渡邉が頭で折り返し、ニアへ潜った藤田のヘディングは右サイドネット外側へ。45分にも尾門泰(3年・東急レイエスFC)が右へ振り分け、松本のクロスに舞った大塚のヘディングは、わずかにクロスバーの上へ。49分にも井浦の右FKはいい位置に飛び、走り込んだ渡邉はわずかに届きませんでしたが、右のハイサイドで押し込み続ける赤黒。
「前半の終盤は中途半端になってしまったので、後半の入りは前に蹴ると割り切った」(平野)久我山は、50分に久竹との連携から渡辺が中央をドリブルで切り裂くも、シュートはヒットせずに枠の左へ。55分も駒澤。吉村の右ロングスローを大塚が頭で繋ぎ、藤田が枠へ飛ばしたヘディングは久我山のGK仲間琳星(2年・ジェファFC)がビッグセーブで応酬。55分から3つ続いたCKの3本目は、松本のキックを仲間がパンチングで凌ぎ、大川が狙ったシュートも花房が体でブロック。59分にも田邉のパスから大川が打ったシュートは、間合いを詰めた仲間が好セーブ。「リードしていたけど、逆に1点を取られたら非常に厳しくなる」(渡辺)というのはチームの共通理解。繋げないことを受け入れながら、「ディフェンスは非常に良かった」と指揮官も言及したように、内藤健太(2年・Forza'02)と花房の両CBに加え、右の鴻巣良真(2年・ジェファFC)、左の加藤寿弥(3年・FC東京U-15深川)と4人のDFラインは攻め上がりも自重して、劣勢の時間を耐える久我山。
「自分でも驚いています」という男の"三たび"。65分、右から小田寛貴(3年・ジェファFC)が放り込んだCKに、ニアへ飛び込んだのはここも松村。左スミへ向かったボールは、その5分前に市川晃平(3年・FC杉野)からゴールマウスを託された一志勇太(3年・横浜谷本中)の伸ばした手をすり抜け、ポストを叩きながらゴールへと転がり込みます。4試合で8ゴール目となる驚異的な"当たり"にも、「神懸かった部分もあるが、彼の持っている部分で点数を取っているということで言えば実力通り」とは李監督。松村が圧巻のハットトリックを記録し、ゲームの大勢は決しました。
67分には駒澤も真砂のフィードを田邉が頭で繋ぎ、大川がボレーミドルにトライするも枠の左へ外れると、69分に李監督が2枚目のカードとして小田と飯原健斗(2年・横浜FC JY)を入れ替え、既に投入されていた萩原優一(3年・横河武蔵野FC JY)と平野がドイスボランチで並び、右FWに出ていた渡辺が中盤へカムバック。「ボランチが2枚で、僕がその前で1枚になってからは結構動きやすくなった」という渡辺は、70分に1対1を一志にファインセーブで阻止されましたが、3分後にリベンジ。
73分、左サイドでの細かいパス交換から富樫がきっちり粘って繋ぐと、エリア内で拾った渡辺は軽やかなステップでマーカーを振り切り、そのまま冷静なフィニッシュでチーム4点目を奪取。「4点目が一番ウチらしいでしょ。その前後の崩しがウチらしいんでしょうね」と指揮官も納得の追加点が打ち止めのラストゴール。80分に井浦の左ロングスローから、途中出場の佐藤瑛磨(1年・立川第四中)が狙ったヘディングも仲間がファインセーブで防ぎ切り、聞いたのは待ち望んだ2年ぶりの全国切符獲得を告げるホイッスル。「去年この西が丘で悔しい思いをして、来年こそは全国と思ったので、そういう気持ちの強さが前面に出ていたと思う」と松村も語った久我山が"らしさ"と"らしくなさ"を共存させ、東京を制する結果となりました。
印象的だったのは試合終了直後の渡辺。普段から冷静沈着という言葉がピッタリの彼は、1人で勝利を噛み締めるようにして、ピッチに座り込みながら小さなガッツポーズを作っていました。そのシーンを問うと、「キャプテンとして思う気持ちは色々あったので、ホッとした気持ちととにかく嬉しい気持ち。感動しました」とのこと。大本命と目されているチームを束ね、唯一の目標に立ち向かう重責の大きさを垣間見るような一場面だったと思います。「どこかに運が1つか2つ入ったら、どんどん上に行けるチャンスはあるのかなと思う」と李監督が話せば、「日本一を獲りにいきます」と力強く語ったのは渡辺。「例年にない勝負強さ」(渡辺)を武器に携え、新たな歴史を創るための大航海へ久我山が堂々と漕ぎ出しました。           土屋

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