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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
東京高校年代のトップディビジョンに当たるT1リーグもいよいよ大詰め。残り2節という状況で対峙するのは2位と4位。会場は都民の日でサッカー少年の姿も目立つ駒沢補助です。
先週の帝京戦に0-1で敗れ、首位を走る横河武蔵野FCユースの背中が少し遠ざかってしまった2位の駒澤大学高。そこまで3連勝と、勝ち点でも横河に肉薄していただけに痛い黒星となりましたが、そのゲームで「最後は理屈じゃなくて"粘る"とか"戦う"ということが大事だと帝京に教えてもらった」と話すのは大野祥司監督。奇跡の逆転優勝へ向けて、まずは目の前の1勝を全力で取りに行きます。
14節からの連敗が響き、1年での関東復帰という目標は潰えてしまった成立学園。とはいえ、ここからは1つでも上の順位をキープしながら、再来週に迫った選手権予選に向けても最後のブラッシュアップを図りたいゲームで、駒澤と対戦できるというのは絶好のシミュレーション。相手を2位から引きずり下ろす気概を見せたいゲームです。雨が降ったり止んだりとハッキリしない気候の下、選手権の決勝カードでもおかしくない実力者同士の一戦は成立のキックオフでスタートしました。
あっという間に動いたスコア。開始わずかに3分、左からSBの井浦正人(3年・Forza'02)がロングスローにトライすると、グングン伸びたボールをニアで叩いた大塚寛大(3年・リオFC)のヘディングは、伸ばしたGKの手を弾いてゴールネットへ収まります。「ラッキーでしたね」とは大野監督ですが、しっかり用意された"手"のセットプレーがゴールに直結。駒澤が早くもリードを奪いました。
掛け続ける赤の圧力。4分も駒澤。右サイドをドリブルで田邊彬人(3年・川崎フロンターレU-15)が抜け出し、シュートはしっかり当たらずに枠の左へ外れたものの、またも決定機を創出すると、5分も駒澤。右から吉村進太郎(3年・FC東京U-15むさし)が中へ折り返し、田邊のシュートはDFが何とか体に当てて枠の左へ。7分には再び井浦のロングスローから田邊がフィニッシュ。ここはオフェンスファウルになりましたが、駒澤ペースで序盤は推移していきます。
すると、次にゴールを奪ったのも駒澤。15分、今度は右からSBの真砂慶太郎(3年・POMBA立川FC)がロングスローを投げ込むと、こぼれに反応した大川雅史(3年・フッチSC)は右へ持ち出しながら、きっちり対角線上にシュート。ボールは鋭い弾道でゴール左スミへ一直線に飛び込みます。「マジメというか正直過ぎて、たまには長いボールを投げるふりをしてショートとか、もうちょっと駆け引きして欲しいんですけどね」と苦笑したのは指揮官ですが、それでもロングスローからの2ゴールは大きなアドバンテージ。点差が広がりました。
さて、内田悠磨(2年・東松山ペレーニア)と荷平雅史(3年・アルビレックス新潟JY)を中心に最終ラインではパスが回り、ボールを支配する時間こそ長かった成立ですが、小さくないリードを得た駒澤が築くブロックに侵入できず、バイタル付近にボールを付けられません。20分には左から中村諒介(3年・武南ジュニア)が右足でクロスを送るも、根本凪人(3年・成立ゼブラFC)のシュートは駒澤CB紺野容(3年・練馬光が丘第一中)が体でブロック。ジリジリとした展開を強いられます。
28分も駒澤。吉村のパスから、田邊がゴールまで30m強の位置から枠へ飛ばしたシュートは成立GK中座大輔(3年・ソシエタ伊勢SC)が何とかファインセーブで回避。29分も駒澤。右から大川が入れたCKに、キャプテンの渡邊愛一郎(3年・インテリオール)が合わせたヘディングは中座がキャッチ。33分にも田邊が、40分にも大川がそれぞれ枠外ミドルにチャレンジするなど、チャンスの数でも圧倒した駒澤がきっちり2点差をキープしたまま、最初の45分間は終了しました。
後半もファーストシュートは赤い戦士。開始から1分経たない46分、吉村を起点に大川が右からカットインしながら放ったシュートは中座がキャッチ。47分には田邊の左CKが、直後にも真砂の右ロングスローが相次いで中座にパンチングでの対応を強いるなど、ゲームリズムに変化は訪れません。
49分には成立も浅野裕永(3年・鹿島アントラーズつくばJY)のシュートで獲得した右CKを根本が蹴り込み、中村の頭にピッタリ合うも、ボールはクロスバーの上へ。同じく49分には駒澤も田邊のクロスがゴール方向へ向かい、中座が辛うじて触ったボールはクロスバーにヒット。漂う雰囲気はダメ押しの3点目。
60分には「縦パスを完全に狙い切れていなかったが、後半は特によくできていたと思う」と大野監督も一定の評価を口にした、相手の"縦パス"からビッグチャンス。クサビを相手の前に飛び出して奪ったボランチの藤田力也(3年・MKFC)はそのままラストパス。GKと1対1になりかけた大川は一瞬判断が遅れ、シュートまでは持ち込めなかったものの、SBの真砂と井浦を含め、"縦パス"を相手の前に入って奪う形からのカウンターを連発。狙い通りの守備が、良い攻撃の"一歩手前"ぐらいにまで直結します。
62分にもGK一志勇太(3年・横浜谷本中)のキックから、最後は大川に際どいシュートを見舞われた成立ベンチは、65分にあまり見たことのない3枚同時投入を敢行。吉田将也(2年・成立ゼブラFC)、佐藤倖一郎(3年・成立ゼブラFC)、町田ブライト(2年・鶴ヶ島南中)を一気にピッチへ送り込み、配置もスライドさせながら、太田昌宏監督は何とか流れを変えようという采配を振るいます。
しかし、次のチャンスも駒澤。67分、左から井浦が蹴ったFKへ、GKと入れ替わる格好で飛び込んだ渡邊のヘディングはわずかに枠の左へ。68分も駒澤。ロングフィードを大塚が収め、そのまま打ち切ったシュートは中座がキャッチ。72分の高速カウンターも駒澤。大塚がドリブルから左へ振り分け、大川がカットインしながらミドルレンジからトライしたシュートは、わずかにゴール右へ。「大川を中心にサッカーを"知っている"ので、力を入れる所と抜く所のメリハリは知っている」(大野監督)駒澤のコントロール下で進んでいく時計の針。
ゴールというよりシュートも遠い成立は、77分に丸紘生(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を、82分に河上知樹(3年・FC杉野)を相次いで投入し、前線の顔触れを大きく変えて反撃態勢を整えましたが、結局シュートの本数はこれ以上増えず。90分には相手の横パスを奪って田邊が、90+1分にはゴールまで35m近い位置のFKから井浦が、共に中座に阻まれる惜しいシュートを放つなど、最後の最後まで追加点への意欲を打ち出し続けたホームチームに凱歌。「リーグ戦が18試合で今の失点が17なので、何とか1試合1点以内には抑えたいという目標」(大野監督)にも近付く完封で、駒澤が貴重な3ポイントを完勝で奪い取る結果となりました。
駒澤の良い所ばかりが目立ったゲームだったと思います。セットプレーの流れから奪った2点も見事でしたが、やはり渡邊と紺野で組む都内最強クラスのCBコンビと、バイタルに蓋をするドイスボランチの尾門秦(3年・東急レイエスFC)と藤田を中心にして、高いテクニックを誇る成立にほとんどシュートすら打たせなかったような、粘り強い守備が光っていました。今年のチームを評して、「基本的には賢い。勉強もちゃんとやるし、そういう部分が集中力や粘り強さに繋がるのかなと思う」と語った大野監督。冬の主役候補に、さらなる自信がプラスされた90分間だったのではないでしょうか。 土屋
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