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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
現在2連覇中の"桐"に挑むのは、全国出場6回を誇る湘南の雄。第2試合も引き続き冷たい雨の降り注ぐ等々力です。
神奈川を制覇すること7回。チームを県内屈指の強豪に育て上げた佐熊裕和前監督の退任を受け、初優勝時のメンバーでもある鈴木勝大監督を招聘し、新チームを築き上げてきた桐光学園。初参戦のプレミアリーグではここまで1勝の最下位と、苦しい戦いが続いているものの、「ずっとプレミアで勝てない時期を過ごしてきた中で、勝ち方を"ストーリー"として創ってあげなきゃいけないということで、この選手権に向けて準備をしてきた」と鈴木監督。昨年のさらに先を目指す上でも、このステージで敗れる訳にはいきません。
一方、関東大会予選では日大藤沢、インターハイ予選では横浜創英と、いずれもファイナリストにPK戦で屈したものの、そのスタイルも含めて、県内でも注目を集めているのは湘南工科大附属。奥寺康彦や福田正博といった日本代表選手を輩出している名門も、最後に全国へと駒を進めたのは33年前のこと。先週の2回戦ではインターハイベスト4の慶應義塾を倒しており、意気揚々と王者へ挑みます。第1試合の影響もあって、試合開始時間が大幅に遅れる中、湘工大のキックオフでゲームはスタートしました。
試合開始直後からハッキリしたスタイルを打ち出したのは湘工大。2分には伊藤温希(3年・湘南ベルマーレ小田原JY)のドリブルを起点に、吉本洋大(3年・横浜六角橋中)が左へ振り分け、SBの芦村優志(3年・BANFF横浜ベイ)が上げたクロスはゴールキックになったものの、まずは1つチャンスを創ります。そのスタイルとは、簡単に表現すると"サンフレッチェ広島風"。システム的には4-3-3を敷く中で、右に椎野大空(3年・湘南ベルマーレ小田原JY)、左に芦村を配したSBは高い位置を取り、中盤アンカーの勝山聖也(2年・FC JUNTOS CLUB TEARO)が貴島和志(3年・SCH FC)と安齋土風(3年・平塚金旭中)の間に落ちて、3枚でビルドアップをするような形を選択。U-18日本代表候補のGK福井光輝(3年・湘南ベルマーレJY)がパス回しに関与する機会も多く、序盤は練習量に比例しているであろうポゼッションを披露して見せます。
対する桐光はやや相手にボールを持たれる中で、「桐光学園自体左利きを非常に大事にしているので、それは攻撃の1つの特徴」と鈴木監督も認めたように、左にボールを回してSBのレフティ杉本大斗(3年・町田JFC)がクサビを当てたり、裏へ落としたりというシーンが頻発。割合早めに植木隆之輔(3年・東急レイエスFC)と小川航基(1年・大豆戸FC)へ付けるボールも目立ち、8分には小川のパスから池田友樹(2年・横浜F・マリノスJY)が、DFに当たってわずかにゴール右へ外れるミドルにトライ。16分にはルーズを収めた植木が枠内ミドルを放つなど、こちらは2トップを生かしたアタックで対抗していきます。
ただ、少しずつ桐光で目立ってきたのは「回していく内に湘南工科さんはリズムができてくるので、そういう判断と彼らのサッカーを奪いに行けということで指示はした」と鈴木監督も明かしたボールアプローチの速さ。後ろではある程度回される中でも、バイタルへと侵入されるシーンはほぼ皆無。湘南は伊藤と上米良柊斗(2年・相模原上溝中)のドリブルこそアクセントになっていたものの、なかなか危険なゾーンへボールを繋ぎながら入っていくことはできません。
21分は桐光。植木が右から中へ送り、小川が放ったカットインミドルはクロスバーの上へ。29分も桐光。杉本のクサビから獲得したFKを、その杉本が直接狙った30m級のFKは枠の右へ。30分も桐光。植木のポストプレーから、ボランチの蔭山裕之(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が左へ展開。杉本のピンポイントクロスは植木が頭に当て切れなかったものの、続けざまにチャンスを生み出すと、31分には池田のスルーパスから小川が独走。最後はカバーに帰った椎野に阻まれましたが、攻撃面でも桐光が打ち出し始めた積極性。
湘工大も31分には伊藤が中央から縦に付け、素早いターンから上米良がトライしたミドルは枠の右へ外れるも、このゲームのファーストシュートを記録。38分にも右サイドで細かいボール回しが飛び出し、最後は勝山がゴール右へ外れるミドルを放ちましたが、結局決定機は創出できず。40分には桐光も杉本のクロスから、池田が打ち切ったボレーは枠の上へ。中盤以降は桐光が主導権を握る形で進んだ前半は、スコアレスのままハーフタイムへ入りました。
後半はスタートから湘工大にリズム。42分に勝山のパスをCFの小野寺航平(3年・パルピターレ)が頭で落とし、上米良のミドルはクロスバーの上へ消えるも、2分後には初めて迎えた決定機。44分、勝山、小野寺、松井航希(2年・バディーSC JY)と軽快に回ったボールを、伊藤は左へ。上がってきた芦村のクロスをファーで上米良が折り返すと、吉本が繰り出したシュートは桐光DFが懸命のブロックで回避しましたが、大きく左右に揺さぶる攻撃から、惜しいシーンを創出。45分に池田が放ったループミドルを挟み、48分には貴島が相手のクリアをそのまま縦への好パスに。小野寺は一歩及ばなかったとはいえ、少しずつゴールへ向かい始めた湘工大のベクトル。
相手のお株を奪うフラッシュパスが昇華した先制弾。50分、左のハイサイドを今来俊介(3年・バディーSC JY)と杉本で切り崩し、受けた小川が素早く中へラストパスを流し込むと、中央へ潜っていた今来がダイレクトボレーで貫いたゴールネット。流れるようなパスワークを成果へ結び付けた桐光が1点のリードを奪いました。
続けて抜いた伝家の宝刀。58分、桐光の伝統を受け継ぐ杉本が左から蹴り込んだFKは、中央でまったくのフリーになっていた小川にドンピシャ。福井もよく反応しましたが、弾いたボールの着地点はゴールネット。「非常に精度の高い左足」(鈴木監督)が繰り出したセットプレーから、「最大の魅力は決定力だが、僕も含めてスタッフ陣は彼の力はまだまだあんなものではないし、もっとできると思っている」と鈴木監督も期待を寄せる1年生が大仕事を完遂。点差が広がりました。
こうなると、2点目の直後こそ伊藤の直接FKや勝山の左CKなど、セットプレーから相手のアタックを許したものの、以降は「年間を通して積み上げてきたプレススピードと連動性で、湘南工科にビルドアップをさせなかった」と鈴木監督も振り返った通り、宮野剛(3年・横浜F・マリノスJY追浜)と中島駿(3年・町田JFC)で組んだCBを軸に、抜群の安定感でゴールに強固な鍵を掛ける桐光。湘工大も石塚龍成(2年・湘南ベルマーレ小田原JY)、新井涼平(3年・フットワーククラブ)、十河卓(3年・バンデリージャ横浜)と次々に攻撃的な選手をピッチへ送り込みますが、ゴールへの香りが漂うようなアタックは繰り出せません。
逆に66分にはここも杉本の右FKへ、フリーで走り込んできた中島のヘディングは福井が何とかセーブ。終了間際の80+2分にも途中出場の有馬侑希(2年・横浜F・マリノスJY追浜)とのコンビネーションから、同じく途中出場の大谷晃平(2年・東急レイエスFC)がクロスバーに直撃するミドルを放つなど、最後までさらなる追加点を狙う姿勢を表出。「新しいこととか特別なことはなかったので、普段通りの彼らが出せたんじゃないかな」と鈴木監督も認めた磐石の戦いぶりで、桐光が3連覇まであと2勝に迫る結果となりました。
桐光の完勝でした。「ウチがゲームを制した理由は、自分たちの良さで相手の良さを消せたということが、一番大きな要因じゃないかなと思っている」と鈴木監督が話したように、強度の高いプレスでジワジワと湘工大のボール回しを制限していく様は、守備の"凄み"すら感じさせてくれたと思います。今後に向けての質問を受けた鈴木監督は「特に今年の選手は常にプレッシャーと戦わなくてはいけないリーグにいましたので、3連覇を目指そうとかではなく、一戦一戦積み重ねてやっていこうと常々言っています」とキッパリ。いつの間にか雨も止んだ等々力には、勝者を祝福するかのような、ユニフォームと同じ水色の空が広がっていました。 土屋
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