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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
神奈川の覇権を争う2つの"桐"が同会場に登場。一昨年のインターハイ全国王者に、座間が挑む第1試合は雨の等々力です。
真夏の全国を制したのが2年前。それでも冬の全国へはここ9年手が届かず、晴れ舞台から遠ざかって久しい桐蔭学園。今年のインターハイ予選では準々決勝で伏兵の横浜創英にPK戦で敗退。その時と同じステージを突破して、久しぶりの全国へと続く階段を確実に一段上がりたいゲームです。
対するは3年前に初の神奈川王者に輝いた座間。今シーズンはインターハイ予選で、結果的に優勝を達成する麻布大渕野辺相手に2-3という激戦を繰り広げながら敗れたものの、当然今大会も頂点を目指し得る有力候補の1つ。先週日曜の2回戦では、夏の全国出場校・横浜創英にPK戦で競り勝つなど、2度目の戴冠に向けて準備は整っています。会場は雨の降り続く等々力。両チームの応援団も大きな声援を送る中、11時ジャストにゲームはキックオフを迎えました。
4分には桐蔭の村石大樹(3年・東急レイエスFC)がCKを、6分には座間の堀内悠人(3年・FC厚木)がFKをそれぞれ蹴り込み、セットプレーを繰り出し合って立ち上がったゲームのファーストシュートは8分。桐蔭のCB山本丈太郎(3年・東急レイエスFC)が右から縦に送り、ハイサイドに潜ったSBの広田佑(3年・桐蔭学園中)はドリブルからフィニッシュ。ボールは枠の右へ逸れましたが、まずは「桐蔭さんはSBが高い位置にいる」と座間を率いる内田雅之監督の分析通りに、桐蔭がSBを絡めてシュートシーンを創ります。
一方の座間は10分、左から堀内がスローインを投げ入れ、三木孔徳(3年・FC厚木)、島田樹(3年・SCH FC)を経由して、中盤アンカーの清水一輝(3年・SCH FC)が狙ったミドルはDFのブロックに遭ったものの、繋ぐ流れからファーストシュートまで。12分には桐蔭も玉田晃太郎(3年・桐蔭学園中)のパスから片岡立綺(3年・東急レイエスFC)が枠の右へ外れるミドルを放つも、17分には座間に決定機。右サイドをSHの米山竜司(3年・横浜鶴ヶ峰中)が切り裂き、カットインから枠に飛ばしたシュートは右のポストを直撃。18分にもゴール前でスムーズにボールが回り、左足で放った松永大輝(3年・SCH FC)のシュートは桐蔭GK坂本修平(2年・東急レイエスFC)にキャッチされるも、サイドからのショートカウンターを中心に、次々と手数を打ち出します。
座間で非常に目立っていたのは、そのDFラインの高さ。キャプテンマークを巻くCB松島甲志郎(3年・横浜山内中)を仕切り屋に、右から工藤将平(3年・SCH FC)、松島、友野健太(3年・座間FC)、堀内で構成される4バックは、常にセンターライン周辺までプッシュアップを敢行。「座間高校と言えば他のチームもわかっている」(内田監督)という強気のラインコントロールで、相手を前からハメに掛かります。
その裏を突いたチャンスは19分の桐蔭。中盤からシンプルな縦パスが入ると、DFラインと入れ替わった安藤峻哉(2年・横浜F・マリノスJY)は独走。このシュートは右に外れましたが、これが1つの"攻略法"なのは明らか。25分にはこれまた再三オーバーラップを繰り返していた左SBの能瀬泰行(3年・桐蔭学園中)がクロスを放り込み、安藤が戻したボールを片岡はゴール右へ外れるシュート。31分にも山本が右サイドの裏へボールを落とし、広田のクロスに飛び込んだ金島遼(3年・桐蔭学園中)のシュートはヒットせずも、裏を巧みに使い始めた桐蔭に、少しずつ傾き出したゲームリズム。
33分も桐蔭。能勢のフィードから、こぼれを収めた玉田のシュートは堀内が体でブロック。34分も桐蔭。左から村石が蹴ったCKは、ファーに走り込んだ花田佑(1年・横浜F・マリノスJY追浜)もわずかに届かず。39分も桐蔭。玉田が左へ振り分け、ドリブルで仕掛けた金山がマーカーをかわして打ち切ったシュートは、しかしクロスバーにハードヒット。前半の途中からは「守備する時間が長くなることは想定していた」(内田監督)座間が、桐蔭のアタックを何とか凌ぎ続け、スコアレスのままで最初の40分間は終了しました。
後半は先に座間が迎えた決定的なチャンス。43分、左サイドをえぐった堀内がマイナスに折り返すと、フリーで入ってきた安孫子竜也(3年・鎌倉深沢中)がシュート。ここはDFも懸命にブロックを試み、こぼれに飛び付いた三木にもDFが寄せて回避したものの、いきなりサイドアタックからビッグチャンスを創出します。
44分は桐蔭。金島を起点に片岡が右へ付けると、花田のシュートは座間GK廣江克彦(2年・湘南リーヴレ・エスチーロ)がしっかりキャッチ。45分は座間。三木が右へ送り、カットインから狙った松永のシュートは、山本が体でブロック。46分も座間。工藤が右から入れたスローインを安孫子が繋ぎ、米山のカットインは桐蔭のボランチ小田倉康太(3年・町田JFC)がカバーに入り、シュートを打たせず。50分には1人目の交替として安藤と江川雅信(2年・湘南ベルマーレ小田原JY)を入れ替えた桐蔭は、56分にカウンターを発動させるも、抜け出しかけた江川には工藤がしっかり対応してオフェンスファウルに。基本的には桐蔭の攻める時間が長い中、座間にも徐々にボールがこぼれ始めます。
ただ、当然ラインは高く保つ座間にも疲労の色が。60分には玉田のフリックから江川がまったくのフリーで抜け出し、チャレンジした1対1は廣江がビッグセーブで回避。62分にも玉田が体を張って繋ぎ、片岡が枠へ飛ばしたミドルも廣江がファインセーブ。66分には花田、金島と回ったボールから、能勢の枠内ミドルも廣江がファインキャッチ。69分にも村石のFKがこぼれ、ダイレクトで叩いた金島のシュートはクロスバーの上へ。「ボールを動かされても、ボールが入った所には少しでも寄せて1対1をきっちりやる」(内田監督)という守備の徹底によって、水際で踏ん張り続ける座間。桐蔭が押し込む展開で最後の10分間へ。
久々に座間へ訪れたチャンスは70分。島田が右へ展開し、米山のリターンから島田自ら打ったシュートは山本がきっちりブロック。そのCKを右から堀内が蹴り込み、友野が強引に狙ったミドルは枠の右へ外れ、先制とはいかず。逆に73分には桐蔭も金島を起点に、小田倉の積極的なミドルは清水が果敢にブロック。直後の74分にもその配球をケアされていた村石が裏へ送り、玉田が放ったシュートは、ここも廣江がファインセーブ。80+1分にはカウンターから左を持ち上がった安孫子が中へ戻し、松永の左足ミドルは坂本がガッチリとキャッチ。結局、80分間を終えてもスコアは動かず。雨中の激闘は前後半10分ずつの延長戦へもつれ込むことになりました。
束の間の休息を経て、座間のキックオフで幕を開けた延長は一進一退。83分は座間。清水と松永の連携で獲得したCKは、DFが何とかクリア。直後は桐蔭。左から途中出場の松原敦也(3年・町田つくし野中)が好クロスを供給し、ボールは片岡の足元に入るも、友野が間一髪で決死のクリア。84分には桐蔭が1年生ながら奮闘した花田と辛島侑烈(2年・ベガルタ仙台JY)を、86分には座間が「久々に先発で使ったが、自分のいい所を出してプレーしていた」と指揮官も賞賛した米山と赤塩和哉(3年・三菱養和調布)をそれぞれ入れ替えると、とうとうスコアを変化させたのは前者の交替カード。
87分、右のハイサイドへボールを付けた桐蔭は小田倉が粘ってボールを繋ぐと、受けた辛島は中央へグイグイとカットイン。運んで、運んで、左足で思い切りよく押し出したボールが、左のポストを叩いて揺らしたのはゴールネット。投入からわずか4分間での大仕事。とうとう等々力のスコアボードに1の数字が点りました。
懸命の守備も実らず決壊した座間。88分には舛元桂樹(3年・FC多摩)と屋比久祐太朗(3年・川崎フロンターレU-15)を相次いでピッチへ送り込み、舛元の飛距離十分なロングスローなどから何とか同点機を窺うも、「延長の前半最後くらいから、後半の頭くらいの所はボールを前に蹴って、失う機会を作ってしまった。ちょっと焦っているのかなと感じた」と内田監督も振り返った通り、はやる気持ちから精度を欠いたアタックが増加。なかなか桐蔭ゴールへは迫れません。すると、97分には桐蔭に絶好の追加点機。辛島が縦に付けたパスから、巧みなターンで前を向いた玉田は独走。しかし、ハイラインを敷くために、「GKにとっては非常に大変な状況」(内田監督)と常に隣り合わせの守護神は、ここも顔面でビッグセーブ。繋ぎ止めた希望への糸。
座間は死なず。その糸を手繰り寄せたのは98分。左SBに入っていた屋比久が中へ送ったボールを受け、清水は冷静に中央を貫くラストパス。ラインの裏へ飛び出した赤塩は、清水をも上回る冷徹さで右スミへ流し込むと、ボールは静かにゴールネットへ収まります。「今日のキーワードは"賢さ"。1つアングルを変えて、大きい子が"足"で決めたという意味では、"賢さ"も十分発揮できた」と内田監督。両者の間にあった差は一瞬で霧散しました。
諦めない座間が狙う100分間での決着。100+1分、カウンターから長澤翔太(2年・秦野FC)が左へ流し、松永のカットインシュートは坂本が懸命のファインセーブで辛うじて回避。100+2分、右から友野が入れたCKはゴール前混戦も、桐蔭DFが何とかクリア。100+3分、島田の粘り強いキープから村石が左クロスを上げ切り、ファーで舛元が折り返したボールは、桐蔭DFがギリギリのクリア。友野の右CKをDFが掻き出すと、スタジアムを包んだタイムアップのホイッスル。竜虎譲らず。持てる力を出し合った好ゲームはドロー決着。ベスト4への切符は11mの心理戦へ委ねられることになりました。
終わらない拮抗。先攻の座間1人目のキックを、読み切った坂本が弾き出せば、後攻の桐蔭1人目のキックも、読み切った廣江が確実にセーブ。2人目が再び廣江にストップされた桐蔭に対し、「自分のタイミングでということを強調している」(内田監督)座間が長過ぎるくらいの間合いを取って、2人目から4人目まで成功させたものの、決めれば終わりの座間5人目は坂本が超ファインセーブで阻止。この段階まで来ても息が詰まりそうな時間が続きます。
消耗戦にピリオドを打ったのは、「PK戦にも自信を持って臨んでいたと思う」と指揮官も言及した背番号1。桐蔭5人目のキックは左スミギリギリを突きましたが、飛び付いた廣江の両手に残ったのは確かなボールの感触。「ウチが勝つならこういうゲーム。子供たちは本当にやり切ってくれた」と内田監督も称えた座間が優勝候補の一角を沈めて、準決勝へと駒を進める結果となりました。
座間イレブンの強靭なメンタルが際立ったゲームだったと思います。基本的には終始劣勢を強いられてきた中で、延長前半の先制点には間違いなく大きなダメージを負ったはず。それでも、土壇場で途中出場の2人が絡んで同点弾を叩き込むタフさには、脱帽するしかありません。そんな彼らを後押ししたのは、降り続いた雨の中で声援を送り続けた黄色の応援団。「一体感があるチームがチャンピオンになれると思っている」と内田監督。このチームの"一体感"は、どのチームにとっても最大の脅威になっていくはずです。 土屋
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