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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年10月14日

高校選手権東京B2回戦 関東第一×都立国分寺@東久留米総合G

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kurume1013.jpg第3試合には優勝候補の一角が登場。一昨年と昨年のファイナリストへ、2年ぶりに都大会へ帰ってきた都立の古豪が挑む構図。舞台は引き続き東久留米総合高校グラウンドです。
PK戦で敗れたのは2年前、後半アディショナルタイムの決勝点で敗れたのは1年前と、2年続けて"あと1つ"の壁に阻まれてきた関東第一。2シーズン目を迎えたプリンス関東でも、全国クラスの強豪を相手に経験を積み重ね、もはや残されたのは頂点のみ。「ここ最近は練習ゲームも含めて、どことゲームをやっても良くはなってきているかなと思う」と小野貴裕監督。自らの殻を打ち破るべく、"あと1つ"へのファーストステップに臨みます。
昨年の選手権は支部予選敗退。夏のインターハイ予選も地区予選敗退の憂き目を見るなど、現在プレーしている選手たちにとっては厳しいシーズンが続いていた都立国分寺。それでも、この選手権では2度の1-0を潜り抜けて支部予選を勝ち上がると、1回戦では強敵のかえつ有明を、ここも得意の"ウノセロ"で撃破。「都大会に来れば、相手がどこであれ厳しい試合になるので、とにかく国分寺は『粘り強く、粘り強く』」と田中政孝監督。全部員で円陣を組み、イレブンに気合を注入します。ここまでの2試合同様に大観衆がピッチを取り囲む中、この会場のラストゲームはキックオフを迎えました。
3分のファーストシュートは関東第一。ドイスボランチの一角に入った上脇健太郎(3年・三菱養和調布)が左足ミドルを枠の左へ。11分も関東第一。1トップの田中ヨシ(3年・AZ'86 tokyo-ome)がミドルレンジから枠へ飛ばしたシュートは、国分寺GK島村諒汰(2年・FC Branco八王子)が丁寧にキャッチ。14分も関東第一。司令塔を任された忠岡義紀(3年・フレンドリー)のパスから、ここも田中が放ったミドルは島村がキャッチ。最初に記録された3本のシュートはいずれもミドルでしたが、まずは関東第一が手数を繰り出します。
ただ、この3本のミドルはエリア内までいい形でボールを運べなかった裏返しでも。「割と短いパスが繋がらなかった」と小野監督も振り返った通り、ボールを保持する時間は当然のように長くなる中で、ややサイドへと動かすスピードも遅く、縦へテンポアップするタイミングも掴み切れず。16分には忠岡の左CKが一旦跳ね返されるも、拾った山崎健之郎(3年・Wings U-15)のリターンを、忠岡はピンポイントでニアへ。しかし頭から飛び込んだ小林海輝(3年・三井千葉SC)のフィニッシュは、惜しくもクロスバーのわずかに上へ。スコアは動きません。
さて、ある程度押し込まれる展開も織り込み済みの国分寺は、野崎秀人(2年・中野北中野中)と長田祐翔(3年・東京ウエスト)で組んだCBを中心にして、「守備のブロックは崩さないように」(田中監督)、1つ1つ相手の攻撃を潰していくことに成功。攻撃の時間はなかなか創れませんが、「こういうレベルにあるチームとやらせてもらえると、守備のやり方もどんどん理解できて、意図も合ってきて、という所はある」と田中監督も語ったように、確実に"守るリズム"を構築。逆に26分には高水慶(3年・三鷹FA)の左FKから、野崎が合わせたヘディングは惜しくもオフェンスファウルを取られたものの、32分には薬袋勇樹(3年・AZ'86 tokyo-ome)と高水の連携から、最後はボランチの岩田浩輝(3年・東京久留米FC U-15)が、関東第一GK大藤洋輔(3年・ヴェルディSSレスチ)にキャッチを強いる枠内ミドル。36分に山崎のパスから田中ヨシが狙ったシュートも、いち早く反応した野崎が体を張ったブロックで回避。前半終了時のスコアボードに並んでいたのは2つのゼロ。国分寺の健闘が光った最初の40分間は、スコアレスでハーフタイムへ入りました。
後半スタートから、小野監督が決断した2枚替え。右の堀内学(2年・FC杉野)、左の万代勇輝(2年・FC府中)というSHを、そのまま田中裕也(3年・Forza'02)と音泉翔眞(2年・VIVAIO船橋)へスイッチ。「真ん中でボールが収まらないから、結局サイドに広げても、"くさい所"にボールが入っていかない」(小野監督)現状を打破すべく、アウトサイドのてこ入れを図ります。
50分に田中裕也のドリブルから右CKを獲得し、小林のキックを川路憲亮(3年・三鷹FA)が頭で折り返したボールはフィニッシュまで繋がらなかったものの、ここを境に関東第一が強めた攻勢。51分、左サイドを音泉がえぐり切り、マイナスに戻したボールを忠岡はミドルに変えるも、国分寺DFが体でブロック。52分、小林が左へスルーパスを送ると、音泉の折り返しはわずかにずれ、入り過ぎた田中ヨシはシュートを打ち切れず。56分、途中出場の石川喬一(2年・Forza'02)は右へ振り分け、SBの菊池優生(2年・三菱養和調布)が放り込んだクロスを、ニアで小林が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。ようやく掛かり始めた勝利へのエンジン。
ところが、57分に渡辺雄仁(3年・調布神代中)がファーまで届けた右アーリーから、上がっていたSBの高水が際どいボレーを放ち、58分にも左サイドを崩して塚田洋哉(3年・FC東京U-15むさし)が折り返し、渡辺のシュートは大藤がキャッチしたものの、続けて国分寺が決定機に近いシーンを創出すると、明らかに変わったゲームリズム。それを加速させる田中監督の交替策は62分と66分。前者は薬袋と高田彬(3年・立川第三・八中)、奮闘しながら足を攣った野崎と荒岡修帆(3年・あきる野FC U-15)の2枚替え。後者は甲斐和哉(3年・FC府中)と「スーパーサブでもともと取っておいて、どこで入れるかというタイミングを図っていた」と指揮官も言及した炭谷大(3年・青梅FC U-15)というFW同士のスイッチ。ギアが一段上がったのは国分寺。
特に「薬袋はインサイド、インサイドなんですけど、後から入れた高田はアウトサイドから行ける。そこでズレが生じたかな」と田中監督も話した左サイドは、交替前から握り始めていた優位性がさらに増幅。68分、左から高水がクロスを送り、高田が打ち切ったシュートは何とか関東第一DFがブロック。69分、岩田のパスから塚田が左へ流れて放ったシュートは、菊池が何とかブロック。70分、塚田がここも左へ送り、高田が上げたクロスはファーへ飛び込んだ炭谷にドンピシャも、叩き付けたヘディングは大藤がビッグセーブで阻止。「確実に相手の方が格上なので、こうやって粘り強くやっていれば会場のみなさんも応援してくれる」と田中監督も言及したように、グラウンドへ充満する国分寺の"雰囲気"。
71分には関東第一に絶好の先制機。左から山崎がピンポイントアーリーを蹴り込み、田中裕也がラインの裏へ抜け出すも、シュートはわずかに枠の右へ。73分は国分寺。高水がFKをクイックで始め、岩田のロングフィードをGKの鼻先で触った炭谷のヘディングは枠の左へ。直後も国分寺。右SBの鈴木大二朗(3年・国分寺第四中)がアーリークロスを打ち込み、斜め後方からのボールを巧みに枠へ飛ばした高田のボレーは大藤がキャッチしましたが、高まるゴールへの可能性。
「選手にも『仲間を信じて』という話をしているので、こっちも選手が決めてくれるのを信じていた」という田中監督の想いは75分に結実。右から素早く送り込まれた長めのFKをしっかり収めた炭谷は、クイックモーションから強烈なシュートを右スミへ。ポストを激しく叩いたボールが中央にこぼれると、待っていた高田は冷静にプッシュ。懸命に体を投げ出したGKもDFもわずかに及ばず。交替策もズバリ。残り5分で国分寺がとうとうスコアを動かしました。
土壇場で窮地に追い込まれた優勝候補。失点直後には飯塚紘夢(3年・FC KASUKABE)を送り込み、なりふり構わず狙いにいく1点。78分は関東第一。左から蹴った山崎のサイドチェンジを田中裕也が折り返し、こぼれを狙った石川のシュートは国分寺DFがブロック。79分には田中監督も3枚目のカードとして、最前線で懸命にチェイスし続けた戸田駿斗(2年・国分寺第五中)と濱田啓揮(3年・拝島中)を入れ替え、前からのプレス強度の維持に着手。残すは1分間とアディショナルタイム。
80分も関東第一。山崎の右CKはDFのクリアに遭い、再び山崎が入れたクロスも菊池のヘディングはクロスバーの上へ。80分も関東第一。左から忠岡がCKを蹴り込み、こぼれを叩いた飯塚のミドルは国分寺DFが執念でブロック。80+1分も関東第一。山崎が右から蹴ったCKは、国分寺DFが何とかクリア。80+1分も関東第一。忠岡の左CKへ天羽章太(3年・1FC川越水上公園)が懸命に飛び付くも、頭に当たったボールは枠の右へ。傾きかけた陽射しの差し込むピッチへ鳴り響いたのは、タイムアップのホイッスル。ジャイアントキリング完遂。「とにかく『粘り強く、粘り強く』が結束してできた」と田中監督も笑顔を見せた国分寺が、"ウノセロ"でベスト8への挑戦権を獲得する結果となりました。
これぞ"選手権"というゲームだったと思います。当然会場に詰め掛けていた観衆も両者の力関係は把握しており、「こういう一生懸命やる姿が高校サッカーだと思いますし、やっぱりそういう部分で応援して下さったんだろうなと思う」と田中監督も語った通り、前述したように試合が進むにつれて、雰囲気が国分寺寄りになっていったことも、まったく勝敗に影響がなかったとは言えないんじゃないかと。ただ、もちろん苦しい時間帯にも体を張り続けた守備の集中力が、最大の勝因だったこともまた間違いありません。「大会は勝てば勝つほど力を付けてくるので、もうワンランク上のチームになれるかなと楽しみです」と田中監督。国分寺の"ワンランク上"が行き着く先は、まだ誰も知る由もありません。          土屋

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