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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年10月13日

高校選手権東京B2回戦 東京実業×正則学園@東久留米総合G

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kurume1012-2.jpgインターハイ予選でそれぞれPK戦までもつれ込む熱戦の末に、実践学園を倒し、修徳に涙を呑んだ実力者同士の対峙。2回戦の中でも屈指の好カードは引き続き東久留米総合高校グラウンドです。
インターハイ予選の1次トーナメントで激突した実践学園戦は、押し込まれる展開の中で攻撃もしっかり繰り出し、最後はPK戦で昨年の全国出場校を沈めた東京実業。T2リーグでも7試合を終えてわずかに1敗と好成績を残しており、「この代は凄く"いい代"」と片山智裕総監督も選手への信頼を口にするなど、上位進出もハッキリと視野の先に捉え、最後の大会に挑んでいます。
対するはインターハイ予選1回戦でディフェンディングチャンピオンの修徳を相手に、劣勢の中でもポゼッションへの気概を見せ、最後はPK戦で散ったものの、鮮烈な印象を見る者に与えた正則学園。こちらもT3リーグでブロック優勝を達成するなど、シーズンを通じて一定以上の成果を見せてきたチーム。小澤寛樹監督も「コンセプトとして今やっている所が、少しずつ形になってきている」と手応えを語っており、夏以上の結果を引き寄せる準備は整いました。今年の都内で考えれば、間違いなく"見る価値"のある両者の激突にも、第1試合同様に詰め掛けた大観衆。一層陽射しが鋭く照りつける中、12時2分にビッグマッチはその幕が上がりました。
お互い慎重に立ち上がったゲームは、スタートの5分を過ぎても探り合うような展開に。先にチャンスを創ったのは正則学園。9分、ロングフィードを宮澤優(3年・フッチSC)が収め、行木勇人(2年・フレンドリー)がやや強引にミドルレンジから枠へ飛ばしたシュートは、東京実業のGK沖山璃樹(3年・横浜大綱中)にキャッチされましたが、ようやくゲームに初めてのシュートが刻まれます。
さて、「立ち上がりが悪かったのと、アップも良くなかったように感じた。硬くなっていたのかな」と片山総監督も話した東京実業は、10分を過ぎるとウイング気味に開いた右の前田航大(2年・MKFC)と左の滝田輝(3年・品川荏原第一中)を生かしながら、少しずついい形を創出。12分には荻原脩作(3年・横浜市場中)の右CKからこぼれを滝田が狙うも、正則学園DFが体を投げ出してブロック。16分にも左サイドで滝田を起点にSBの三島颯太(3年・江東第二大島中)がクロスを送り、中央で佐藤太造(3年・MKFC)が収めかけるも、正則の中盤アンカーを務める積田隼人(3年・江戸川松江第三中)がしっかりクリア。21分に滝田がトライしたミドルも、正則の右SB井原翔(3年・GRANDE FC)が身を挺したブロックを敢行。フィニッシュまでは持ち込むものの、ことごとく正則学園ディフェンスの体を張った守備に阻まれます。
すると25分、阿部亮介(3年・墨田中)が右へ送り、宮澤がグラウンダーで戻したクロスは中と合いませんでしたが、このチャンスを境にして流れは一気に正則学園へ。28分に左スローインの流れから積田が狙ったミドルは、DFに当たって枠の左へ。そのCKを宮澤がショートで素早く始め、行木が入れたクロスは右のポストに直撃。拾った岩浅拓斗(3年・ヴェルディSSレスチ)のシュートは沖山がファインセーブで防ぐも、完全に傾いたゲームリズム。
29分も正則学園。東京実業守備陣の連携が悪く、野崎京也(3年・フレンドリー)が飛び出したGKの頭上へ浮かせたループは、わずかにクロスバーの上へ。35分も正則学園。相手最終ラインでのイージーミスを阿部が奪い、行木の枠内ミドルは沖山が何とかキャッチ。押し込む正則学園に、耐える東京実業。「とりあえずいい形で終わろうというコーチからの指示もあったので、ゼロゼロで終われればいいなと」(片山総監督)いう後者の思惑は、しかし前半終了間際に霧散。
38分、右サイドで井原が縦にボールを付けると、抜け出した宮澤はマイナスクロス。走り込んだ行木の強烈なシュートはクロスバーに激しくヒットしますが、そのリバウンドにきっちり詰めたのも行木。2度目のシュートはしっかりゴール右スミを捕獲。T3リーグの得点王が、この大舞台でもさすがの先制弾。正則学園が1点のアドバンテージを手にして、最初の40分間は終了しました。
ハーフタイムに動いたのはビハインドを背負った東京実業。ボランチの境亘平(1年・大田雪谷中)に替えて、小林将之(3年・横浜市場中)を投入。チームの根幹となるポジションを、奮闘していた1年生から3年生にスイッチさせて、後半の巻き返しを図ると、いきなりのチャンスは41分。左サイドを三島がえぐり、中央でキープした佐藤がマーカーに付かれながら繰り出したシュートはヒットしませんでしたが、同点への執着を早速流れの中から見せ付けます。
ただ、ここからゲームは膠着状態に。54分には正則学園も、井原のクロスから野崎が沖山にセーブを強いるヘディングを放ちましたが、これが両チーム通じて後半初めてのシュート。55分には東京実業が前田と堀江啓汰(3年・横浜FC鶴見JY)を、57分には正則学園が阿部と田中陽大(3年・フッチSC)をそれぞれスイッチ。偶然にも揃って右サイドのアタッカーに変化を加えると、より効果的な化学反応を示したのは正則学園。
65分、相手のクリアを頭で跳ね返したのは田中。このボールに反応し、GKの鼻先でコースを変えた行木のヘディングは枠の左へ逸れるも、替わった右SHがチャンスに絡むと、69分にも田中が右サイドで縦に出したボールを、大外から回った鈴木圭人(3年・江戸川小岩第一中)はニアへ。野崎のシュートはクロスバーに当たり、こぼれを拾った行木のシュートは再びクロスバーにヒット。追加点とはいきませんでしたが、田中の躍動感がチームへさらなる推進力を生み出します。
ところが72分に輝いたのは、押し込まれるチームのストライカーナンバーを背負った3年生。東京実業は右サイドから小林がロングスローを敢行。投げ込まれたボールがエリア内でバウンドすると、密集の中で頭をねじ込んだのは佐藤太造。決して強くヒットしたわけではなかった球体は、彼の執念が注入されたかのように、ゆっくりとゴールへ吸い込まれます。「ああいうのが出るのは、ずっと話していることですけど人間性。熱い気持ちを持って、前向きにやっているからだと思う」と片山総監督も認めた、佐藤太造の貴重な同点弾。スコアは振り出しに引き戻されました。
最終盤で追い付かれた正則学園も、勝利へ懸ける想いを乗せた猛ラッシュ。77分、岩浅のフィードを途中出場の高橋壮太(3年・POMBA立川FC)が収めるも、東京実業DFが何とかクリア。80分、岩浅はクイックでFKを始め、積田の枠内ミドルは沖山がキャッチ。80+1分、右サイドで田中が3人の人壁をぶち抜き、グラウンダーで入れたクロスから宮澤がダイレクトで狙うも、東京実業は沖山とCBの竹内涼太(2年・川崎チャンプ)も含めた4人で決死のブロック。80+3分、鈴木のスルーパスを受け、柳竜馬(3年・市川高谷中)が右へ流れながらシュートタイミングを窺うも、東京実業の右SBに入った安重秀哉(3年・川崎臨港中)が絶妙のカバーを見せ、間一髪で回避。「あんなボコボコに打たれているのに入らなかったですね。いつ取られるのかと思ったのに」と苦笑したのは片山総監督。両者譲らず。前後半10分ハーフの延長戦に、その勝敗の行方は委ねられることになりました。
迎えたエクストラタイムは交互に訪れるビッグチャンス。82分は正則学園。右から岩浅が放り込んだFKに、ファーへフリーで飛び込んだ宮澤は足に当て切れず。84分は東京実業。佐藤太造のポストから、小澤純(2年・品川荏原第一中)がドリブルで突っかけ、両足を自在に操る荻原の左足30mミドルは最高の軌道も、クロスバーにそのままヒット。88分は正則学園。柳のラストパスから高橋が抜け出しかけるも、三島が足を止めないナイスカバーで回避。東京実業が佐藤宙生(3年・すみだSC)、正則学園が荒川航汰(3年・横浜大綱中)と、どちらも3年生のアタッカーを最後のカードとして切り合い、ゲームは最後の10分間へ。
92分は東京実業。小林のFKを荻原が頭で繋ぎ、小澤が抜け出すもオフサイドの判定。97分も東京実業。小林のFKを高橋竜功(3年・川崎東橘中)が頭で合わせるも、ボールはクロスバーの上へ。100分も東京実業。佐藤太造がゴールまで30m近い位置から、きっちり枠を捉えてきたミドルは、懸命にバックステップで戻った正則学園GK蔦谷恵太(2年・FC HORTENCIA)がファインセーブで何とか決勝ゴールを阻止。100分間の激闘は決着付かず。次のラウンドへ勝ち進む権利は、PK戦で争われることになりました。
先攻は正則学園。1人目のキャプテン河内佑弥(3年・C.A.アレグレ)は、GKの逆を突いて確実にゲット。後攻は東京実業。1人目を任された佐藤太造のキックは蔦谷にストップされてしまいましたが、主審は蹴り直しを指示。"2本目"は同じコースに蹴った佐藤太造に軍配。ファーストキッカーはお互い重責を果たします。
2人目、3人目は両者共に成功する中、正則学園の4人目が思い切って蹴ったボールは、無情にも左ポストを直撃。精神的にも難しい東京実業4人目の高橋は気持ちでねじ込み、いよいよロシアンルーレットもラストキッカーへ。外せば終わりの正則学園は、井原がGKに触られながらも成功。残すは東京実業の5人目のみ。当然この場面で登場するのは、キャプテンマークを託された絶対的なエースの荻原。10番に注がれる会場中の視線。
短い助走から荻原が選択したのは向かって右。GKが飛んだのは向かって左。揺らされたゴールネット。広がった歓喜の大輪は赤。「今日のゲームに関してはツイてるだけだったけど、そのツキを引き寄せてくれたのも彼らなのかなと。彼ららしいと言えば彼ららしいと思います」と片山総監督。耐える時間の長かった東京実業が、最後はPK戦でベスト8への切符を奪い取る結果となりました。
内容云々を超越した、壮絶な好ゲームだったと思います。「いや~、シビレましたね」と笑顔を見せた片山総監督も、「内容的には負けてもおかしくなかった」と認めた通り、敗退となった正則学園は素晴らしいパフォーマンスを100分間に渡って見せてくれました。勝敗を分けた最大の要素は間違いなく"運"。炎天下の中、死力を尽くして戦い抜いた両チームの選手に、最大限の拍手を贈りたいと思います。      土屋

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