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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年10月22日

高校選手権東京B準々決勝 帝京×都立三鷹@駒沢第2

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komazawa1020-4.jpg怒涛の4番勝負となった第4試合は既に点灯した照明の中でのゲーム。帝京と都立三鷹。昨年も2回戦で実現した因縁のリターンマッチは、言うまでもなく駒沢第2です。
高校サッカーを知る者なら誰もがその名前を耳にする名門も、全国から遠ざかって早3年。今のチームには東京制覇を経験した選手はいないものの、「Tリーグをやっていても『このチームには勝てないな』というのはまったくなかった」と、チームを束ねるキャプテンの小川一矢(3年・FCトッカーノ)が自信を見せたように、今年は早くからその実力が認められていた帝京。4年ぶりの夢舞台を引き寄せるため、「東京都で戦うためのスタイル」(小川)で頂点を狙います。
一方、難敵の居並ぶT2リーグで全勝でのブロック優勝を達成するなど、今大会のダークホース的な存在になりつつある都立三鷹。前述した昨年の対戦では後半ラストプレーで帝京に追い付かれ、延長の末に悔しい敗退を強いられましたが、「今回は去年と違う戦い方で自分たちを出して、自分たちのチームのカラーでやっていこうと」(佐々木雅規監督)、今年は真っ向勝負を挑む覚悟でこの1試合に臨みます。止み掛けたはずの雨はぶり返し、第1試合以上の雨がピッチへ降り注ぐ中、好バウト必至の一戦は帝京のキックオフでスタートしました。
お互いにある程度慎重に入ったゲームは、静かな立ち上がり。10分過ぎまではなかなかシュートまで持ち込むシーンが出てきません。ただ、その10分を過ぎると少しずつ帝京に勢いが。右でスピードのある阿久津義和(3年・帝京FC)をちらつかせながら、基本は最前線の栁下大樹(3年・浦和レッズJY)に長いボールを付け、この日は1.5列目に入った竜崎廉(3年・FC駒沢)が拾ってという形が頻発。
17分には中央で収めた竜崎が右へ展開すると、阿久津が縦に持ち出しながら放ったシュートは三鷹GK喜岡太郎(3年・FCトッカーノ)にキャッチされましたが、21分にも阿久津のFKから小川が枠の左へ外れるミドル。「前半はちょっと向こうに来られた」と佐々木監督も話したように、少しずつ帝京が押し込み始めます。
やや守る時間を強いられた三鷹は、それでもキャプテンマークを巻く高瀬樹(3年・FC.GONA)と小村直人(3年・三鷹FA)のCBコンビを中心に、長いボールへは一定以上の安定感で対処。阿久津のサイドも本来は攻撃性の高い左SB阿部晋平(3年・西東京明保中)も守備に軸足を置きつつ対応するなど、流れの中では危ないシーンを創らせません。
対する攻撃面では小川も「もっと蹴ってくると思ったんですけど、思ったよりもFWがしっかり収めてきた」と振り返ったように、昨年の帝京戦でPKを獲得している最前線の藤田翔生(3年・東村山第七中)がフィフティ以上で基点を創り、木下真麟(3年・府ロクJY)、小湊駿弥(3年・調布神代中)、立迫将一(3年・小平第三中)、巽健(2年・SC相模原)が入れ替わり立ち替わりでバイタルに顔を出すアタックを披露。シュートこそなかったものの、やりたいスタイルの一端はしっかり覗かせます。
36分は三鷹。高瀬が蹴った右FKから、こぼれを藤田が枠に飛ばしたボレーは帝京GK古島圭人(3年・湘南ベルマーレJY)がキャッチしましたが、これがチームファーストシュート。37分は帝京。小川の左FKは喜岡がパンチングで回避。39分は三鷹。高瀬のFKは裏に潜った立迫へ届くも、フィニッシュには一歩及ばず。40分は帝京。小川の左CKは三鷹DFが確実にクリア。「前半はゼロでやっていこうという狙い」(佐々木監督)「前半はゼロゼロでもいいかなという感じ」(小川)。両者の思惑通りに進んだゲームは、スコアレスでハーフタイムへ入りました。
後半に入ると、先にチャンスを掴んだのは三鷹。44分、立迫が右へ振り分け、SBの古屋翔太(3年・AZ'86 tokyo-ome)を経由すると、藤田のシュートは枠を捉えましたが、古島がしっかりキャッチ。47分には帝京も右サイドを阿久津が切り裂いてクロス。栁下がきっちり落とし、ボランチの橋本希望(2年・帝京FC)が狙ったミドルはクロスバーを越えるも、出し合った手数に高まる先制点への期待。
51分は三鷹。高瀬のFKから藤田が当て切ったヘディングは枠を越えましたが、ここまでチームの全シュートを繰り出すストライカーの躍動。56分も三鷹。小湊が40m近い距離から無回転気味に狙ったFKはクロスバー上に消えるも、「後半は保善戦も参考になって、ちょっとこっちの時間が来るのかなという感じはあった」とは佐々木監督。スカウティング通りに傾きつつあるゲームリズム。
直後に動いたのは荒谷守監督。決断は2枚替え。右SHの阿久津と左SHの木村俊輔(3年・AZ'86 tokyo-ome)を下げて、武藤稜(3年・浦和レッズJY)と三浦勇介(3年・練馬開進第四中)をそのままの位置に投入し、少し差し込まれていたサイドの修正に着手しますが、「ほとんど崩されてはなかったですけど、後半は攻め込まれていたことによって、こっちの攻撃ができなくなっていた」とは小川。67分にその小川が左から蹴ったCKに、CBのパートナー増田隆市(3年・横河武蔵野FC JY)が頭で合わせるも、ボールはゴール右へ。なかなかスコアを動かせません。
訪れたビッグチャンスは三鷹。70分に阿部の素晴らしいインターセプトから獲得したFK。左サイド、ゴールまで30m弱の距離から小湊が直接枠へ飛ばしたボールは右スミを捉えるも、古島が横っ飛びで何とか阻止。71分も三鷹。小湊の右CKを阿部が折り返し、ゴール前の混戦からシュートが飛ぶも、帝京DFが体でブロック。佐々木監督はここで巽に替えて、スーパーサブの村田宏介(3年・国分寺第三中)をピッチへ解き放ち、最後の勝負へ。
73分には帝京も栁下の巧みなポストプレーから、武藤が右サイドを抜け出しかけましたが、ここは最終ラインまで戻っていた立迫が丁寧にカット。75分にも帝京が武藤の突破で掴んだFKも、小川の放り込んだボールは中央でオフサイドが。80分には三鷹に交替。中盤の広いエリアをカバーし続けた牧島利輝(3年・東京久留米FC U-15)と増田直純(3年・東京久留米FC U-15)をスイッチして、白熱の好勝負が迎えたアディショナルタイムは2分。
カナリア軍団の絶唱。80+2分、「ちょっと点が入る気がしなくてPK戦を覚悟していた」という小川が、右から蹴り込んだ渾身のCK。栁下がファーから高い打点で折り返すと、一度シュートチャンスは逸したかに見えたものの、こぼれたボールへ突っ込んだのは橋本。1秒後に激しく揺さぶられたゴールネット。ボランチ起用に応えた2年生の一撃は、そのままアディショナルタイムの決勝弾。「全員が自分たちのことをうまいと思っていないので、献身的にやるしかない」(小川)という名門が今年も驚異的な底力を見せ、土壇場で西が丘への切符を強奪する結果となりました。
三鷹は持てる力を100%近く発揮できたのではないでしょうか。最後は警戒していたセットプレーからの失点で敗れたとはいえ、「今までやってきたことを全部出そうということで、それは出せたかなという感じはしている」と佐々木監督も話した通り、自分たちのスタイルで互角にやり合えた手応えは、選手の中へ確かに残ったと思います。まさにグッドルーザー。三鷹は間違いなく、昨年よりうまくて強いチームになっていました。
相変わらずの神懸かった勝負強さを発揮して"サヨナラ勝ち"を収めた帝京は、「苦しい試合は多いですけど、後ろが崩れなければ絶対に負けないという思いは持っている」と小川が話したように、難しい時間帯もしっかりゼロで抑えられたことが、最後の劇的な決勝点に結び付いた点も見逃せません。「東京都で戦うための戦い方というのが今はあるので、それをしっかり貫き通せば絶対に勝てると思ってやっている」と小川。セミファイナルの相手は、3年前のファイナルで苦杯を嘗めた駒澤大学高。その年から全国が遠のいたことを考えても、西が丘で激突するには格好の好敵手。11月10日。聖地で凱歌を上げるための80分間は、その幕を開けることになります。        土屋

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