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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
久留総の熱闘を潜り抜けてきた両者の対峙。東京高校年代における層の厚さを証明するための"T2"対決は、引き続き激しい雨の降り続く駒沢第2です。
2年連続のファイナリストであり、今大会も優勝候補に挙げられていた関東第一と対戦した先週の2回戦は、相手の猛攻を確実に凌ぎながら、最後は途中出場の高田彬(3年・立川第三・八中)が決勝ゴールを奪い、同ステージ最大のサプライズを巻き起こした都立国分寺。サプライズもそれが続けばもはや実力。その持てる力を立証すべく、ベスト8の舞台に立ちます。
一方は正則学園に押し込まれる時間も長かった中で、苦しいPK戦を制して勝ち上がってきた東京実業。「今年の3年生は、西が丘でやった選手権予選で、久我山に負けたゲームを見て入学してくれた代」と片山智裕総監督。その時以来となる西が丘を、そしてさらにその先に待っているモノを掴むためのベスト8に挑みます。第1試合に比べれば多少は小降りになったとはいえ、相変わらず視界にも支障が出そうな雨の中、ゲームは国分寺のキックオフでスタートしました。
いきなり飛び出したのは東京実業お得意のセットプレー。左からキャプテンの荻原脩作(3年・横浜市場中)が蹴り込んだCKを、ファーで185センチのCB竹内涼太(2年・川崎チャンプ)が折り返し、最後はシュートまで行けなかったものの、惜しいシーンを創出すると、4分も東京実業。右サイドを運んだ滝田輝(3年・品川荏原第一中)がフィニッシュまで。ここは国分寺の左SB高水慶(3年・三鷹FA)が体で防ぎ、再び狙った滝田のシュートも高水がブロックしましたが、立ち上がりからチャンスを生み出します。
先週の試合を振り返って、「ウチの守備が悪かったかなと思ってビデオを見たら、オフェンスの方が悪かったので、この1週間をきっちりやってきた」と片山総監督も話した東京実業は、最前線の佐藤太造(3年・MKFC)をターゲットに、右に滝田、左に前田航大(2年・MKFC)を配したSHをしっかり使う狙いを体現。11分にも右サイドを崩して滝田がクロス。上がってきた左SBの三島颯太(3年・江東第二大島中)が放ったシュートはDFにブロックされたものの、"きっちり"の部分を攻勢に繋げます。
すると、やはりスコアを動かしたのはセットプレー。25分、小林将之(3年・横浜市場中)、前田、佐藤の連携で獲得したCKを左から滝田が入れると、佐藤が頭に当てたボールはDFに当たりながらも、ゆっくりとゴールの中へ飛び込みます。2回戦でも値千金の同点弾を叩き込んだストライカーがまたも一仕事。東京実業が1点のアドバンテージを握りました。
さて、得意としている"ウノセロ"への構図が早くも崩れた国分寺は、1トップ下に入った塚田洋哉(3年・FC東京U-15むさし)を起点に、時折カウンターを繰り出しますが、いずれも単発。27分にはやはりカウンターから甲斐和哉(3年・FC府中)が左へ送り、薬袋勇樹(3年・AZ'86 tokyo-ome)にシュートチャンスが訪れるも、東京実業の右SB安重秀哉(3年・川崎臨港中)が確実にブロック。フィニッシュへの形を創ることができません。得点以降はお互いにシュートをカウントすることなく進んだ前半は、東京実業が1点をリードして、最初の40分間が終了しました。
先に動いたのは国分寺の田中政孝監督。後半開始から1トップの戸田駿斗(2年・国分寺第五中)に替えて、関東第一戦でも途中出場で流れを大きく変えた、スーパーサブの炭谷大(3年・青梅FC JY)を早くもピッチへ送り込み、攻撃への積極的な姿勢を鮮明に打ち出します。
しかし、荻原のキックオフシュートで幕を開けた後半は、すぐさま動いたスコア。動かしたのは東京実業。42分、三島のドリブルで奪った左CKを荻原が短く出すと、受けた滝田は狙いすましたミドル。インフロント気味に蹴られたボールは綺麗な曲線を描き、そのままゴール右スミへ吸い込まれます。0-2。「Tリーグの時も調子が悪かったが、ここ一番という時にやってくれた」と片山総監督も笑顔を見せた滝田のゴラッソで、さらに点差が開きました。
45分にも小林の果敢なドリブルからCKを獲得し、47分には安重を起点に荻原が右のハイサイドを鋭くえぐり、上げたクロスから佐藤が枠の左へ外れるヘディングを放つなど、攻撃の手を緩めない東京実業。「ちょっとコンパクトになっていない部分があったので、そこは前半が終わった時点でちょっと修正した」(片山総監督)守備面も、竹内と高橋竜功(3年・川崎東橘中)で組んだCBと、その前に位置する小林と宮田剛(3年・川崎橘中)のドイスボランチがうまく連携を取り、相手のカウンターも未然に消火。ゲームコントロールした状態で、時間を少しずつ消し去っていきます。
2点を追い掛ける国分寺も、50分には甲斐のスルーパスへ、炭谷が持ち味のスピードを生かして反応するも、高橋が冷静にクリア。56分にはボランチの岩田浩輝(3年・東京久留米FC U-15)が、ようやくチームファーストシュートとなるミドルを放つと、57分には右SBの鈴木大二朗(3年・国分寺第四中)が右へ送り、炭谷が縦に抜け出して中へ。甲斐が反転しながら枠へ飛ばしたシュートは、東京実業GK沖山璃樹(3年・横浜大綱中)がキャッチしましたが、徐々に見え始めた攻撃の形。
東京実業も58分に先制ゴールの滝田を下げて、ドリブラーの堀江啓汰(3年・横浜FC鶴見JY)を投入すると、1分後には荻原、佐藤と繋いだボールを、その堀江が好クロス。前田のシュートは国分寺GK島村諒汰(2年・FC Branco八王子)に阻まれるも、いきなり絡んだ得点機。60分には国分寺が高田を、68分には東京実業が佐藤宙生(3年・すみだSC)を投入し、選手も入れ替えながら、試合は終盤へと差し掛かっていきます。
69分の衝撃。中盤でこぼれ球を収めた塚田は少し運ぶと、ゴールまで30m近くはある距離から強烈な左足ミドル。ボールはクロスバーに激しくヒットしますが、ここへいち早く反応した高田が豪快に揺らしたゴールネット。枠に当たったルーズボールを押し込むあたりまで、まるで関東第一戦のデジャブを見ているかのような光景。2戦連発となる高田の一撃で、たちまち点差は1点に。
前回成功させたアップセットの経験も、間違いなく後押しした国分寺の反攻。75分、CBの野崎秀人(2年・中野北中野中)が送ったフィードがこぼれると、塚田がダイレクトで叩いた30mミドルはゴール右スミを襲い、沖山が何とかファインセーブで回避。そこから3連続で続いた塚田の右CKも、何とか凌ぎ切る東京実業。「『トップチームが俺らに気を遣ってくれない』とか、そういうわだかまりが控えの選手たちにあって、3年生のリーダーのヤツがボロボロ泣きながらミーティングしていた」(片山総監督)という状況を経て、1つにまとまりつつある東京実業の応援団も喉を嗄らして必死に声援を送り続けます。
80分も国分寺。渡辺雄仁(3年・調布神代中)が左へ振り分け、高水が狙ったシュートは佐藤宙生が体を投げ出してブロック。80+1分も国分寺。左から塚田が丁寧に蹴り込んだCKは、ゴール前に混戦を生み出すも何とか東京実業ディフェンスが掻き出すと、これがこのゲームのラストチャンス。国分寺必死の追撃もあと一歩及ばず。「いいミーティングができたので、応援団のアイツらの気持ちが伝わったんじゃないかな」と片山総監督も振り返った東京実業が、3年ぶりの西が丘へと駒を進める結果となりました。
最後の最後まで勝敗の行方のわからない好ゲームだったと思います。国分寺はやはり炭谷と高田という交替カードがこの日も躍動し、しっかり1点は取り切ったものの、2失点が重く圧し掛かった格好に。それでもタイムアップの瞬間まで諦めなかった姿勢が伝えたものの大きさは、試合後にスタンドから送られた大きな拍手が証明していたのではないでしょうか。勝った東京実業が西が丘で激突するのは、奇しくも3年前と同じ國學院久我山。「その時と比べればウチもちょっと実力は付いているかなと思うので、何とか一矢報いてやってやりたいなというのはあります」と話す片山総監督が明かした、「『先輩を超える』という彼らが創った伝統」。あの日見ていた先輩を超えるために用意される舞台は、もう間近まで迫っています。 土屋
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