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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年10月20日

高校選手権東京B準々決勝 暁星×國學院久我山@駒沢第2

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komazawa1020-1.jpg昨年のファイナリストとセミファイナリストが、早くもクォーターファイナルで激突。都内屈指の好カードは豪雨の駒沢第2です。
名将・林義規監督に率いられ、毎年この時期にはきっちりチームを創り上げてくる暁星。前回大会もかえつ有明や東海大菅生など、難敵との接戦をことごとく制し、堂々の決勝進出。結果は惜しくも敗戦となったものの、その大舞台を経験したメンバーの大半が残っており、"昨年越え"を目指しているのは間違いありません。
一方はインターハイでも全国ベスト16に入るなど、今年の都内では実力が頭1つ抜けている感のある國學院久我山。先週の2回戦では都立駒場を松村遼(3年・國學院久我山中)の2ゴールで退けており、冬の全国でも"久我山スタイル"を多くのサッカーファンに披露するべく、2年ぶりの覇権奪還を目指しています。試合開始直前から強烈に振り出した雨と、時折吹き荒れる風で観戦者にとっては最悪のコンディションにもかかわらず、スタンドには多くの観衆が。久我山のキックオフで雨中の熱戦はその火蓋が切って落とされました。
2分のチャンスは暁星。左から増永裕輔(2年・暁星中)が蹴り込んだFKは、相手DFにクリアされたものの、まずはセットプレーでチャンスを窺うと、7分に久我山のストライカー富樫佑太(3年・ジェファFC)がエリア内へ侵入したシーンも、小林大輔(2年・暁星中)と増永のCBコンビが懸命に対応し、シュートは打たせず。逆に11分は暁星。臼倉宏(3年・暁星中)がドリブルで突っかけ、こぼれをキャプテンの渡辺創太(3年・FC東京U-15深川)が枠内ボレー。15分にも中盤でボールを奪った臼倉が距離のあるミドルを枠の左へ飛ばすなど、勝利への意欲をフィニッシュへの積極性で打ち出します。
とはいえ、序盤こそ暁星の勢いとスリッピーを通り越したピッチコンディションにやや苦しんでいた久我山も、15分を過ぎたあたりからはキャプテンマークを巻く司令塔の渡辺夏彦(3年・FCトリプレッタ)、萩原優一(3年・横河武蔵野FC JY)、小田寛貴(3年・Forza'02)で組んだ中盤のトライアングルでもボールが回り出し、少しずつゲームをコントロールし始めると、輝いたのは今日もこの男。
21分、CBの内藤健太(2年・Forza'02)が左へピンポイントでフィードを送ると、巧みなトラップで足元に止めた松村は短いドリブルから右足一閃。思い切り良く放ったシュートは、力強くゴールネットを揺さぶります。「受験勉強もあって、正直に言ってコンディションはそれほど良くない」と李監督も話した松村が、それでも魅せた文武両道弾。雨にけぶる電光掲示板に、"1"の数字が浮かび上がりました。
これで落ち着いた久我山は23分にもビッグチャンス。萩原が左のハイサイドへボールを付け、ここでしっかり溜めた富樫を基点に、最後は上がってきていた左SBの加藤寿弥(3年・FC東京U-15深川)が叩いたミドルは、素晴らしい軌道を描くもクロスバー直撃。暁星サイドに冷や汗をかかせるような一発を見舞うと、以降はボールを握りながら、無理をしないような展開で時計の針を進めていきます。
失点以降は前へのパワーが減退してしまった暁星。27分には増永のFKを最前線に入った宮川大史(2年・暁星中)が頭で折り返すも、及川大翔(1年・FC東京U-15深川)はシュートまで持ち込めず。29分には左サイド、ゴールまで約30mの位置から臼倉が直接狙ったFKも枠の右へ。「暁星さんが守備において頑張っていたので、自分たちが思い通りにボールコントロールし切れない部分もあった」とは李監督ですが、守備においてはほぼパーフェクトな対応を続けた久我山が1点をリードして、最初の40分間は終了しました。
一向に弱まらない雨脚の中でスタートした後半は、立ち上がりからかなり膠着した展開に。ボールを久我山が動かし、暁星は奪ったら縦に速くという構図には変化なく、前者がゲームをコントロールする時間が続くと、後半のファーストシュートは53分。渡辺夏彦が鋭いスルーパスを通し、小田が狙ったシュートはわずかにゴール右へ。54分も富樫がエリア内から枠の左へ外れるシュートを見せるなど、悪くないフィニッシュを立て続けに創出します。
56分に及川のスルーパスから江藤倫汰朗(3年・暁星中)が抜け出しかけるも、久我山GK仲間琳星(2年・ジェファFC)が出足良く飛び出してキャッチしたのを見届けると、林監督の決断は2枚替え。及川と宮川を下げて、安井迅郎(3年・暁星中)と中津留遼央(3年・暁星中)を投入。2トップをそっくりそのまま入れ替えます。
61分も久我山。エリアのすぐ外でボールを収めた富樫のミドルは、暁星GK加藤克哉(3年・暁星中)がしっかりキャッチ。63分も久我山。小田との連携からエリア内まで渡辺夏彦が運ぶも、ここは渡辺創太がしっかりカバー。李監督も62分に久竹陸(3年・FC多摩)と飯原健斗(2年・横浜FC JY)を、70分に小田と平野佑一(3年・東京ヴェルディJY)を相次いで入れ替え、「まじめに一生懸命やるし、正々堂々と激しい」と評した暁星のゴールを何とかこじ開けるための采配に着手。
70分には決定機。渡辺夏彦、松村と繋がり、渡辺夏彦が左足で枠へ収めたシュートは加藤克哉がファインセーブ。71分にもビッグチャンス。渡辺夏彦が右へ振り分け、体調不良から何とか復帰した平野がゴール右スミを襲うミドルを放つも、ここも加藤がファインキャッチ。風雨にさらされたスコアボードの数字は、相変わらず4つの"0"と"2つの1"が浮かんだまま。
一擲乾坤を賭した17歳。74分、その直前にロングスローを投げ入れ、跳ね返された増永が再び獲得したスローインはクイック。江藤のリターンを受けると、その増永はドリブルでマーカーを振り切ってクロス。DFに当たって少しコースが変わったボールへ、難しい体勢から飛び付いた安井のヘディングは、ゆっくりとゴール右スミギリギリに吸い込まれます。ワンチャンス。ワンチャンス。CBの機転と、"DF登録"のストライカーが見せた執念の融合は見事な同点弾。一瞬で2つの"0"が、2つの"1"に変わりました。
残り5分で追い付かれた久我山は、「1対1になってからは守りながらカウンター一発で時間を稼げばいいし、ダメだったら残り20分を計算に入れて」(李監督)、無理には勝負を決め急がない共通認識を徹底。それでも大西凱登(3年)をアタッカーとして送り込んだ暁星の勢いは継続。78分、臼倉の左FKを仲間がパンチングで防ぐと、ボールは白藤颯(3年・暁星中)の目の前へ。思い切って叩いたシュートは、渡辺夏彦が体でブロックしましたが、ここは危ないシーン。79分には松村のスルーパスから加藤寿弥が打ったシュートも加藤克哉が防ぎ、80分間が終わってのスコアは1-1。ゲームは前後半10分ずつの延長戦へ突入することになりました。
暁星のキックオフで幕を開けたエクストラタイム。82分は久我山。花房稔(2年・横河武蔵野FC JY)の好フィードから、富樫は左へスルーパス。エリア内の松村は相手との接触で倒れるも、主審はノーホイッスル。85分は暁星。臼倉の左FKから、こぼれを拾いかけた渡辺創太が相手との接触で倒れるも、主審はノーホイッスル。続いた際どい場面。
残っていた末脚。86分、自陣深い所からカウンターは久我山。途中出場の飯原が右サイドを運んで運んで、チョイスしたのは左へのラストパス。松村はファーストタッチで絶妙のターンからマーカーと入れ替わると、そのまま左足を振り抜きます。再三の好守を見せていた加藤克哉の手を、わずかにすり抜けた球体が突き刺さったのはゴールネット。「状態は悪かったけど、最後のキレ、ドリブルとシュートは持っているので」、指揮官が左サイドへ置き続けた松村が値千金の一発。久我山がまたも1点のアドバンテージを手にしました。
再度追い掛ける展開となった暁星。88分には最後のカードとして佐々木大輔(3年・暁星中)を送り込み、決死の覚悟で同点を狙いに行きますが、ここでその持てる能力を発揮したのは途中出場で久我山のアンカーに入った平野。セカンドボールをことごとく回収すると、落ち着いてサイドに回しながら時間を使う選択はさすがの一言。カウンターをちらつかせながら、延長後半の10分間も潰し切り、迎えたタイムアップのホイッスル。「選手権に出る時はいつもそうですけど、楽なゲームで全国に出られることなんてない」と李監督。苦しみながら100分間で勝ち切った久我山が、セミファイナルへの切符を獲得する結果となりました。
お互いが持ち味を出し合った激闘でした。久我山は難しいピッチコンディションの中でも、やはり高い技術を生かしながら、何度も決定的なチャンスを創出。一方の暁星は守備に軸足を置いた上で、ワンチャンスに懸ける集中力がものの見事に結実。"らしさ"の詰まった100分間だったと思います。そんな中で、「ゴール前のチャンスが多い方が、余分に1つ取れたなということ」という李監督の言葉が勝敗を分けたキーワード。終盤での失点にも、100分間をプランニングし直せた久我山が、相手より多く創ったチャンスから1点を多く取り切り、全国へと続く道の歩みをまた1つ前へ進めました。       土屋

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