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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
3週間ぶりに東京へ帰ってきた選手権は2回戦。第1試合は全国も経験している都立東久留米総合が、ホームに都立西を迎える一戦です。
一昨年の東京王者でもあり、常に都内のコンペティションでは上位に顔を出している久留総。インターハイ予選ではディフェンディングチャンピオンの修徳をあと一歩まで追い詰めたものの、最後は延長の末に悔しい惜敗を経験。近年は2年おきに全国への出場権を獲得しており、そのジンクスでいくと今年は"獲れる"年に当たります。
一方、地区予選を4試合27得点という圧倒的な攻撃力で制し、念願の都大会まで駒を進めてきた都立西。9月に行われた1回戦も、同じ都立勢の葛飾野を2-0で振り切り、好調を維持した状態でアウェイゲームに挑みます。グラウンドをグルリと取り囲んだ観衆は、まさに大入り札止め。真夏を思わせる陽射しの中、10時ジャストにゲームはキックオフされました。
久留総のファーストシュートは2分。左からSBの岡野達也(3年・フォルチFC)が上げたクロスを、高木翔(3年・府ロクJY)が強引にシュート。ここはDFに阻まれたものの、ゴールへの意欲を早速披露。都立西のファーストシュートは5分。右から中野雄斗(3年・練馬上石神井中)が中へ折り返し、中野正樹(2年・杉並アヤックス)が枠へ飛ばしたシュートは、久留総のGK倉科圭佑(3年・帝京FC)がしっかりキャッチ。まずはお互いが手数を出し合って、ゲームは立ち上がります。
会場を沸騰させたのはやはりあの男。10分に相手GKのハンドで獲得した、エリアすぐ外のFK。スポットに立ったのは、キャプテンマークを巻いた加藤有騎(3年・八王子霞台中)ただ1人。短い助走から右足を思い切り振り抜くと、ボールはニアサイドギリギリへ激しく突き刺さります。10番、キャプテン、司令塔というチームの絶対的な中心が魅せた圧巻の直接FK。久留総が1点のリードを奪いました。
これで落ち着いた久留総は、最前線の今村優太(2年・三菱養和SC巣鴨)がきっちり前線で基点を創り、そこからサイドへ展開していく形でさらなる攻勢に。15分には今村のドリブルで得た左CKをファーで森祥行(3年・東京久留米FC U-15)が折り返し、岡野が狙ったボレーはクロスバーの上へ。17分にも右のハイサイドで高木が戻し、SBの飯塚小次郎(1年・東京久留米FC U-15)が入れたクロスに飛び込んだ白井穂(2年・Forza'02)のボレーはヒットしませんでしたが、サイドアタックをフィニッシュへ直結させます。
ところが、突如として都立西に訪れた決定機。18分、久留総が最終ラインで回していたボールに中野が突っかけると、そのままマイボールに。目の前にはGKとゴールだけ。少し運んで放ったシュートは、倉科が何とかセーブしましたが、「アレが蹴り損ないでも、サイドに飛んでいれば失点していた」と齋藤監督も渋い顔。逆に都立西は千載一遇の同点機を逃してしまいます。
こうなると"ピンチの後にチャンスあり"はサッカーの定石。20分にロングフィードを収めた小島樹(2年・あきる野FC U-15)のラストパスから、抜け出した高木のシュートは枠の右へ外れたものの、2分後に綺麗な崩しから奪った追加点。中央でボールを持った大畑和樹(2年・三菱養和SC調布)は、今村、小島との丁寧なパス交換からフリーで裏へ飛び出し、GKの右脇を抜く冷静なフィニッシュ。3列目からの積極的な攻撃参加が奏功した格好で、久留総がリードを広げました。
以降も続くホームチームのチャンス。29分、小島が中央を綺麗に割ったスルーパスを通すも、今村が迎えた1対1のシュートは枠の右へ。37分、加藤の右CKを岡野が頭で繋ぎ、今村が合わせたシュートはヒットせず。「ボランチとの6人のリズムでトントンとやってくる」と齋藤監督が評した都立西も、2トップの中野や山浦敬史(3年・ヴェルディSS調布)、左SHの藤田瑠生(3年・練馬光が丘第二中)を中心に、ダイレクトパスで攻め込むシーンも何回か創りますが、あと1つの精度に欠け、39分には右サイドを山浦がえぐって入れたクロスも、わずかに中野へ合わず。逆に40分には白井がGKの好セーブで左ポストに当たるミドルを見舞うなど、点差以上に久留総が押し込む展開で、前半の40分は終了しました。
後半のファーストチャンスは都立西。42分、左に開いた中野が鋭いクロスを中へ送り、走り込んだ山浦には数十センチの差で届きませんでしたが、このワンプレーも流れを変えるまでには至らず。44分、左から白井が送ったクロスに、今村はダイビングヘッドで応え、ボールはクロスバーに弾かれるも、この一連は久留総のゴールラッシュへと繋がる序章。
48分には左サイドをきっちり崩し、最後はエリアに入った所から大畑が繰り出したミドルは、最高の軌道でゴール右スミへ飛び込み3点目。51分にもゴール前の混戦から、最後は再三のチャンスを逃していた今村が、ここはストライカーらしくきっちり押し込んで4点目。「相手が守備を固めちゃった所からの攻撃」(齋藤監督)からでも、しっかり奪い切った大きな2つのゴール。
その後も少し傷んだ加藤が平林泰成(3年・FC府中)との交替を余儀なくされるアクシデントこそありましたが、止まらない久留総フェスタ。58分、今村が左へ短く送ると、小島がGKもかわして折り返したボールを、白井が確実にプッシュして5点目。63分、今村のラストパスを引き出した小島は、まったくのフリーからゴールへ流し込んで6点目。67分、小島を起点に後半開始から投入されていた石井洸介(3年・練馬開進第四中)を経由して、その1分前にピッチへ送り込まれた本田貴大(3年・Forza'02)が左スミへ突き刺す7点目。直後の68分にも、エリア内から大畑が自身ハットトリックとなる豪快なシュートをぶち込んで8点目。完全に足の止まった相手に、容赦なくゴールの雨を浴びせかけます。
69分には都立西も反撃。右サイドから入山鼓(3年・杉並アヤックス)がクロスを懸命に送り、収めた山浦が枠へ飛ばしたシュートは、しかし倉科が正面でキャッチすると、73分には久留総も大畑が左へ振り分け、山上祝王(3年・石神井マメックス)がクロス。受けた石井が左スミを貫いて9点目。打ち止めのラストゴールは80+1分。左サイドでの仕掛けから、大畑がラストパスを送り、最後は本田が冷静に仕留めて10点目。「動かしのタイミングだとか準備だとか、オフ・ザ・ボールの所でまだまだ頭が働いていないので、そこを改善しないと良くはならないですね」と齋藤監督は気を引き締めたものの、終わってみれば二桁ゴールという華々しい結果で、久留総がベスト8への切符を手に入れる結果となりました。
「スピードとちょっとしたボール扱いと、体力で勝たせてもらった」と指揮官も振り返ったように、とりわけその3つのポイントで勝った久留総にやはり分があったかなという印象です。都立西もダイレクトパスでの崩しという明確な狙いはあり、その部分では「パスアンドムーブや第3の動きに付いていけなかった」と齋藤監督も認めているものの、あと1つの精度が伴わず、結果としてボールロストが増えてしまい、体力を消耗していったように見えました。久留総が次に激突するのは、「1週間前にTリーグで、お互いにベストメンバーで真剣勝負をやっている」(齋藤監督)という東海大菅生。大量得点の次のゲームとなりますが、「気の緩みとかじゃなくて、菅生には全力で全神経を集中して戦わない限りは勝てないという想いがあるから、大丈夫だと思います」と齋藤監督。幸先の良い船出を飾った久留総が、2年ぶりの王座を勝ち取るべく難敵と対峙する注目の一戦は、もうわずかに1週間後です。 土屋
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