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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
「今の我々の最大の目標」(柏・ネルシーニョ監督)は元日の勝利。アジアの借りをアジアで返すべく、連覇への道を突き進む太陽王が赤雉を迎えて臨む一戦は聖地・日立台です。
4つのコンペティションを平行して戦っていた中で、現在は公式戦8試合未勝利という苦しい時期が続いている柏。特にリーグ戦ではなかなか結果を出し切れませんが、カップ戦に関しては不思議とここまで粘り強さを発揮している印象も。再びACLの舞台へ返り咲くために、勝つしかない一発勝負を確実にモノにしたいホームゲームです。
千葉、長崎と続いた上位対決2連戦を1勝1分けで乗り切り、再び昇格プレーオフ圏内への視界をこじ開けつつある岡山。中3日で日曜日にリーグ戦が控えている状況でも、「言わずと知れたJ1の強豪、柏レイソルを相手に怯むことなく向かっていこう」と影山雅永監督が送り出したメンバーは完全なベスト。この90分間を、佳境に差し掛かるリーグ戦への大きなステップにしようという気概を感じる采配で、アウェイゲームに挑みます。おなじみ天皇杯のアンセムが鳴り響く中、負けたら終わりのデスマッチは柏のキックオフでスタートしました。
先にチャンスを創ったのは柏。6分、田中順也のFKから橋本和が狙ったボレーは岡山のDFがブロック。11分も柏。大谷秀和が左サイドの裏へ落とし、橋本が走り込むもシュートを打ち切れず、岡山GK中林洋次がキャッチ。13分も柏。橋本の大外を回った大谷のクロスはファーへ流れ、藤田優人のシュートは岡山DFがブロック。14分も柏。橋本の左クロスから、栗澤僚一のボレーは中林のパンチングに弾かれるも、左サイドからのアタックでホームチームが攻める姿勢を打ち出します。
岡山が数年をかけて熟成させてきた3-4-3に対し、「同じシステムの相手との連戦が続くので、先のことも考えながら、今日はこのシステムで経験を積んでいくという意図はあった」とネルシーニョ監督が話した通り、甲府、浦和、浦和、広島と続く4連戦を見据えて、柏も3-4-3で対抗。「監督からは僕が左サイドバック気味に落ちてというのは言われていた」と大谷が明かしたように、ビルドアップ時には鈴木大輔が右のワイドに開き、大谷が左の大外に落ちてボールを回すような形を選択。これで橋本を一層高い位置に押し出せたことも、相手がその流れを掴み切れなかった序盤は、攻勢に繋がっていた印象です。
そんな中でも、「前半はちょっと前から行って、勢いよく取れていた部分はあった」と古巣対決に燃える仙石廉も振り返った岡山は、16分に大きなチャンス。中盤でのボール奪取からボランチの島田譲がDFラインの裏へ落とすと、うまいラインブレイクから押谷祐樹はフリーで抜け出します。少しもたついたことで柏DFに追い付かれ、フィニッシュまでは取れなかったものの、1つ可能性を感じさせるシーンを創出すると、20分にもショートコーナーから田所が際どいクロスを中央へ。「前半は奪う所、自分たちで運ぶ所が柏を相手に十分に発揮できたと思っている」と影山監督。28分には田所の左クロスがこぼれると、右CBの近藤徹志が枠外ミドルにチャレンジするなど、徐々に落ち着き出した岡山が進めていく明確なゲームプラン。
一方の柏は少しずつ左サイドの優位性も消え、ボールは回るものの前に付けられないような状況に。25分には橋本から藤田と左右に揺さぶり、大谷が繰り出したミドルも枠の上へ。33分には大谷のパスから、37分には鈴木のクロスから共に田中順也が狙ったミドルも枠は捉え切れず。「それぞれが動いて頑張っているのはわかるけど、周りと連動していなかったり、周りの動きに合わせて動かないと出す方も出せない」とは大谷。基本的には膠着した時間が長かった前半は、スコアレスのままでハーフタイムへ入りました。
後半のファーストシュートは岡山。50分、近藤が右からハイサイドへグラウンダーのパスを付けると、裏へ潜った押谷はそのままダイレクトで枠内シュート。57分にも島田がFKを短く蹴り出し、仙石、島田と回して、最後はキム・ミンキュンもシュートまでは持ち込めませんでしたが、1トップ下のシャドーに入ったキム・ミンキュンが広範囲にボールを引き出し、前半よりわずかにパスがスムーズに回り出した岡山にも、漂い始めたゴールへの可能性。
とはいえ、ゲームの主導権はまだまだ柏。63分には藤田が短く蹴ったCKから、田中順也が強烈なミドル。中林が弾いたリバウンドへ、詰めた橋本のミドルもDFにブロックされたものの、厚みのある攻撃を披露。さらに勝負所と見たネルシーニョ監督は、67分に田中順也を下げて澤昌克を、71分に橋本を下げて山中亮輔を投入すると、一気に引き寄せたゴールへの道筋。
とりわけ躍動したのは「相手も結構足が止まっているというか、疲れが見えていた」(大谷)時間帯で、縦へと仕掛けまくった20歳のレフティ。「ここ何試合も試合に出場できていなかったので、入ったら自分の特徴を出していこうと」ピッチへ入った山中は、ファーストプレーでCKを獲得すると、その後もアグレッシブな突破を再三にわたって敢行。前述のビルドアップに関しても、「特に後半の方は凄くボールも来たし、そこから起点になってというイメージを持っていた」という左の大谷へボールが数多く入ったことも後押しとなり、山中の持ち味が一層出やすい状況も生まれていきます。
「なかなかセカンドも拾えなくて、ボールを保持する時間が極端に短かった」(仙石)こともあり、全体的に疲労を隠せなくなってきた岡山。影山監督は73分にキム・ミンキュンと荒田智之を、76分に押谷と千明聖典を相次いで入れ替えると、「守備一辺倒になってしまったので、奪って前に出ていく所を高めるには、澤選手が入って厚くなってしまった中盤のバイタルでボールを奪うことによって逆に運べるだろうという意図」で、システムを5-3-2気味にシフト。最前線に荒田と清水慎太郎を残し、中盤はトレスボランチ気味に「スライドを明確にして中を固めていくという狙い」(仙石)で、劣勢を何とか耐える方策に着手します。
83分の柏も左サイドから。ここも大谷が前方へボールを送り、山中は縦突破から好クロス。ファーでフリーになった工藤はボレーを枠に飛ばすも、中林の好捕に阻まれましたが、「あの時間で仕掛けられるヤマがいたのはチームとしても良かった」と大谷。影山監督も85分には最後のカードとして、右サイドで奮闘していた田中奏一に替えて久木田紳吾の投入で、何とか潰したい相手の左サイド。ゲームの焦点は山中が走るバックスタンドサイドに。
貫き通したストロング。88分、左サイドを駆け抜けるのは言うまでもなく山中。マーカーを振り切って上げたクロスは、「ヤマがやりやすいように縦に仕掛けて、あとの選手は仕留めるために中で準備をするという形が練習からできている」と話した工藤へ。フリーで当てたヘディングは後藤圭太に当たるも、村上伸次主審はハンドというジャッジ。土壇場で柏にPKが与えられます。キッカーはボールを離さなかったクレオ。左スミを狙ったキックは、中林も反応した上にしっかり触りましたが、わずかに優ったシュートの威力。最終盤は後藤を前線に上げて、1点への執念を見せた岡山の反撃をいなし切った柏が、「今日の最大の目的である勝つこと」(ネルシーニョ監督)を粘り強く達成する結果となりました。
柏はやはり「最低限の仕事はできたと思う」と語った山中の躍動が最大の収穫でしょう。自身も語ったようになかなか出場機会を得られなかった状況下でも、気持ちを切らさずにしっかりと準備を怠らなかった結果が、勝利を引き寄せる積極性に繋がったことは、個人にとってもチームにとっても非常に大きなプラス材料。これから続く大事なゲームの中で、彼がどれだけオプションとしての真価を発揮できるかが楽しみになるような"20分間"だったのではないでしょうか。
最後に、このゲームは岡山の仙石にとって、U-12時代から所属していた古巣との対戦でした。29分にはユースの大先輩でもある大谷に激しいタックルを見舞い、イエローカードを受けるシーンも。本人は「あれは...意味ないですね」と苦笑しながら、「チームの士気とかを考えたら行っておかないと」と何とも"らしい"発言も。当の大谷も「アレは来ると思ったから、試合だし大丈夫です。ああやって来られたら凄い怒ってるけど、あそこで廉が取れればチャンスだし、そんなに別にないですよ」と笑顔を見せつつ、「ずっとここで育った選手だし、ああいう形で対戦できるのは凄く嬉しい部分もある」と先輩らしいメッセージを送っていました。また、U-18時代の同級生である工藤について仙石は「(当時も)あのままですよ。キープしてシンプルに落として、ゴール前に入っていってシュートを狙ってて。イヤらしいですね(笑) 工藤の活躍はみんな勇気をもらっていると思うし、刺激になっているだろうし、あのまま突っ走っていってもらいたいですね。僕も追い付けるように頑張りますし、また一緒にやりたいですね。工藤もそうだし、みんなもそうだし」とのこと。いわゆる"柏U-18黄金世代"を牽引していたキャプテンのこれからにも、大いに注目していきたいと思います。 土屋
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