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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
この酷暑とも称された"夏"の日々を、どれだけ自分たちのモノにして来れたかを披露するには格好の舞台。高校生にとって夏休み明け一発目の公式戦は、おなじみT1リーグです。
夏休みに入ってからのT1では悪夢の4連覇を喫したものの、前節の都立駒場戦で久々の白星を獲得し、勢いを持って今日の大井第二へ乗り込んできた修徳。トーナメントマスターの彼らにとって、組み合わせも発表された選手権に向けてチームを固める意味では、リーグ戦も当然1試合1試合が大事なゲーム。田上真伍(3年・FC東京U-15深川)と加藤禅(3年・柏レイソルU-15)という攻撃のキーマン2人を欠く中で、アタッカー陣に奮起が期待される一戦です。
インターハイ予選は準々決勝で帝京をあと一歩で倒す寸前まで行きながら、最後はPK戦で涙を呑んだ東海大高輪台。ただ、「今年はT1でたくさん試合ができて、経験値は上がっていると思う」と川島純一監督も話したように、東京のトップリーグでも強豪相手に確かなインパクトを与えている中、帝京戦を受けて「フィジカルと走力をまずやろうと」(川島監督)取り組んできた夏の成果を、その部分では都内トップレベルを誇る難敵にぶつけるのがこのゲームです。もはや虫の音も輪唱の域で聞こえる晩夏のT1は、18時30分にキックオフを迎えました。
19秒の先制パンチは修徳。最前線に入った関秀太(3年・スクデット)が右サイドを強烈に切り裂き、カットインしながら放ったシュートは右のポストを直撃しましたが、いきなり強烈な一発をお見舞いすると、勢いそのままに先制点まで。3分、ドイスボランチの一角に入った沖山正信(3年・板橋志村第四中)が左へ展開したボールを、佐藤悠輝(3年・FC東京U-15深川)はそのままミドル。ボールは一直線にゴールネットへと突き刺さります。昨年から出場機会を得ていたサイドアタッカーの一撃で、修徳が早くもリードを奪いました。
「最初相手がかなり来て、すぐ失点もしてしまって焦った」(荒川真作・3年・FC駒沢)高輪台の反発はすぐに。4分、右からその荒川がクロスを上げると、伊藤竜之介(3年・ヴェルディSS調布)のヘディングは修徳のGK高橋太郎(3年・すみだSC)にファインセーブで阻まれましたが、直後のスローインで差し込んだ光。左SBの後藤優一(2年・品川大崎中)が投げ入れたボールを、CFの金子真彦(3年・川口戸塚西中)はエリア内で体を張って収めると、得意の左足でズドン。「高輪台のエースナンバーを背負わせてもらっているので、自分のゴールでチームを勝利に結び付けたいというのはいつも思っている」というストライカーの反撃弾。わずか1分でスコアは振り出しに戻りました。
いきなり1-1という打ち合いで幕を開けた展開を受けて、高輪台は8分前後に中盤をアンカー1枚の逆三角形からドイスボランチの正三角形にシフト。「ウチの良さを出すのか、まずは相手の立ち上がりを防ぐのか、毎回葛藤するんですけど、今日は早めにあそこを塞ぎました」と川島監督。ボールが行き来する流れを見越し、「ああいう耐える時間も必要なのかなという判断」(川島監督)を下します。
その流れの中に乗った修徳で、とりわけ目立っていたのは両SH。右の雪江悠人(2年・草加Jr)と左の佐藤が積極的にボールを呼び込み、18分には沖山が左へスルーパスを送ると、佐藤が縦へ持ち出してクロス。ファーでトラップから反転した雪江のシュートは枠を捉えられませんでしたが、2人で惜しいチャンスを創出。22分には金子に、24分には後藤の縦パスを伊藤が足裏で残し、最後は吉野崚平(3年・川口在家中)に、それぞれ際どいシュートを打たれたものの、同じく24分には佐藤のスルーパスに雪江が反応。ここは抜群のタイミングで飛び出した高輪台GK砂田政和(3年・東海大高輪台中)が間一髪でストップしたとはいえ、両サイドアタッカーの躍動がもたらす攻勢。
ただ、27分に早めのカードトラブル回避の意味で、奮闘しながらもイエローを提示されたCBの和田幸記(3年・ヴェルディSS調布)と廣瀬滉大(3年・FC駒沢)を入れ替えたあたりから、「自分たちの持ち味であるパス回しができた」とは荒川。30分前後には再び中盤を岸本康太郎(3年・インテリオールFC)の1アンカーに、吉野と阿部駿祐(3年・GRANDE FC)がその前に並ぶ形へ戻し、本来の持ち味を取り戻すと、ここからは続けたラッシュ。
35分、その2分前に最終ラインまで全力で駆け戻って、守備に貢献した荒川が右サイドを粘って抜け出し、中へ送ったこぼれを吉野が叩いたシュートはDFがブロック。37分、後藤のスローインを金子が落とし、伊藤が狙ったシュートはDFに当たって枠の右へ。41分、「長い距離のスローインから、自分が体を張ってターンして、ゴールというのは練習している形」と金子が話した通り、ここも得点シーン同様に後藤のスローインから、その金子がDFを引きずりながら打ち切ったシュートは枠の右へ。45分、ルーズボールを拾った伊藤がマーカーを2人外して枠へ収めたフィニッシュは、高橋が好判断でファインキャッチ。終盤はかなり高輪台が押し込む格好となった最初の45分間は、1-1のままでハーフタイムへ入りました。
後半も先にチャンスを創ったのは高輪台。48分、吉野のパスから伊藤がカットインで1人振り切り、コースを突いたシュートは枠の右へ。50分は修徳。長いFKを雪江が落とし、佐藤のミドルは砂田にキャッチされたとはいえ、今日はキレキレの2人でフィニッシュまで。57分は高輪台。伊藤、吉野のヒール、荒川のスルーパスで崩し切り、阿部はシュートチャンスを逸しましたが、らしさ満載のアタックに「後半の入りも良くて、そこからボールを保持する時間も長くなった」とは荒川。押し寄せる縦縞の荒波。
岩本監督の決断は58分。沖山に替えて送り込んだ野坂竜郎(3年・GOODLY)のポジションは右SB。その位置にいた久保祐貴(3年・習志野第四中)をボランチにスライドさせ、池田晃輔(3年・埼玉ユナイテッドFCフェスタ)との都内屈指とも言うべきドイスボランチへの移行で、中盤のフィルターを強化します。
それでも止まらない疾風。58分、CKの流れから小山拡志(3年・インテリオールFC)のボレーミドルはわずかにゴール左へ。61分、金子の右CKから伊藤が打ったシュートもゴール左へ。66分、ゴール右寄りから枠に飛んだ金子のFKは高橋がセーブ。68分には高輪台が負傷した小山と森芳大飛(3年・KSC)を、69分には修徳が雪江と藤本優斗(3年・ジェファFC)をそれぞれ入れ替え、突入するラスト20分間。
70分には久々に訪れた修徳のチャンス。左SBの田原迫隼人(2年・Forza'02)を起点に、佐藤が左へ振り分け、小野寺湧紀(2年・荒川第五中)が右から上げたクロスは砂田にキャッチされましたが、最前線に藤本が入り、その下に右から佐藤、小野寺、関を並べた布陣が、再び下町の雄にもたらした勇気。73分、関のスルーパスへ走ったのは小野寺。独走状態だった後方から懸命に廣瀬と宮下諒也(3年・Y.S.C.C)が寄せ、シュートは砂田にキャッチされるも、決定機に近いシーンを創出。77分にも相手CKのクリアを藤本が収めるとカウンターを繰り出し、佐藤の高速クロスは中央と合わなかったものの、やはりやられるだけでは終わらせない精神力を、この苦しい時間帯にきっちりと形にして披露します。
78分、高輪台が3枚目に切ったカードは、阿部に替えて「チームでクイックネスが一番ある」と指揮官も言及した岡田侑也(2年・GRANDE FC)。81分に金子の蹴った直接FKがわずかにクロスバーを越えると、直後に輝いたのは入ったばかりの小柄な16歳。83分、相手のクリアミスを見逃さなかった岡田は、20m近くあったゴールまでの距離にも躊躇なく左足一閃。重い球質で枠内へ向かったボールが、クロスバーを叩いて落下した地点は、ゴールネットこそ揺れずともゴールラインの内側というジャッジ。"切り札"が魅せた、あまりにも大きな勝ち越しゴール。高輪台が勝利へと続く道を一歩前へ踏み出しました。
失点直後に小野寺に替えて山崎利貴(3年・ヴェルディSS相模原)を送り込み、何とか追い付きたい修徳。85分に金子が最高のポストプレーで繋ぎ、岡田が独走したシーンは高橋が果敢に飛び出し、ダメ押しの失点は何とか回避すると、88分に到来したラストチャンス。左から山崎が蹴ったCKは中央にこぼれ、先制パンチを繰り出した関がこの場面でもシュートを放ちますが、砂田がしっかりと両手でキャッチ。「今日は落とせないゲームだったので、相手よりも気持ちが出た」と金子が語った高輪台が、ゴールデンウィークのリベンジを果たして、大きな勝ち点3を獲得する結果となりました。
高輪台にとって、ある意味で彼らのようなスタイルを比較的得意とする修徳との今節は、選手権に向けての試金石なのかなという視点で今回は大井に足を運んだのですが、現状でも既に「今は練習を見ていてもモチベーションが高い。いいトレーニングができていると思う」という川島監督の言葉にも素直に頷けるチーム力を有していると思います。ゴールシーン以外にも、持ち味のキープ力で存在感を発揮した金子は「プレーしていて自分たちも楽しいので、3年間やってきてみんなの仲も良いし、この仲間と全国に行きたいというのは凄く思っている」とキッパリ。黄色と黒の新たなタイガー軍団は、"秋の主役"に躍り出る可能性を十分に秘めています。 土屋
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