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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年09月26日

ACL準決勝第1戦 柏×広州恒大@日立台

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kashiwa0926.jpgアジア最強の呼び声高い中国からの刺客が今年も襲来。「柏から世界へ」はあと4試合。4強対決の第1ラウンドはもちろん日立台です。
世界にその名を知られるベルギーの名GKミシェル・プロドーム率いるサウジアラビアのアル・シャバブをアグリゲートスコアで退け、いよいよアジアの4強にまで辿り着いた柏。Jリーグ勢としても4年ぶりとなった"未知"なるステージとの遭遇も、相手は昨年も対戦した"既知"なる広州恒大。相手にとって不足なし。ここまで無敗という勢いを盾に、最初の90分間で一気に叩き潰す覚悟はできています。
現在国内リーグは2連覇。昨シーズンはベスト8に終わったACLでも、2年続けて決勝トーナメント進出を果たすと、セントラルコースト・マリナーズを5-1、レフウィヤを6-1と完膚なきまでに叩きのめして、ここまで勝ち上がってきた広州恒大。監督は2006年W杯でイタリアを優勝に導いた名将マルチェロ・リッピ。ムリキ、ダリオ・コンカ、エウケソンというワールドクラスの"助っ人"3人を中心に、アジアの頂点を現実的な目標として捉えています。雨脚の強まるスタジアムに集まった黄色と少しの赤は11932人。「No Reysol,No Life!」からの「LET'S GO KASHIWA」がゴール裏に踊り、大一番は広州のキックオフでスタートしました。
2分にチョン・チーが左から蹴ったFKを凌ぐと、直後のファーストシュートは柏。工藤が左へ流したボールを、ジョルジ・ワグネルは果敢にミドル。クレオに当たってしまったボールは枠の左へ外れましたが、まずはホームチームが積極性を打ち出します。
広州を率いる名将リッピがこのゲームで敷いてきた布陣は4-3-3。中盤に右からファン・ボーウェン、チョン・チー、ロン・ハオをトレスボランチ気味に並べ、前線には右からエウケソン、コンカ、ムリキというのが基本の形。とはいえ、「相手は前の選手が流動的に動く」と栗澤僚一も話したように、3人の外国籍アタッカーはかなり自由にポジションチェンジを繰り返し、5分には引いたムリキのスルーパスにエウケソンがランニング。ここはうまくカバーした橋本和がカットしたものの、基本的に前の3人は攻め残るため、柏もセーフティーにクリアする場面が多く、セカンドも拾う回数の多かった広州が押し気味にゲームを進めていきます。
ところが、状況を一変させたのは大舞台の経験豊かな王国の"クラッキ"。10分、右サイド、ゴールまで約30m強の距離で得たFK。スポットに立ったのはジョルジ・ワグネル。得意の左足から繰り出したキックは、クレオと鈴木大輔の動きにも助けられ、そのままゴール左スミへ飛び込みます。34歳のレフティがビッグマッチで大仕事。柏がスコアを揺り動かしました。
15分には中央からコンカが25m級のFKを枠へ飛ばし、菅野孝憲がキャッチするシーンもありましたが、先制点以降は柏が落ち着いてゲームをコントロール。動き回る懸念のコンカに対しても、「ゴール前に入ってきた時にはボランチを使ってマークに付かせ、最終ラインに入ってきた時は受け渡して付いていく」(鈴木大輔)対応で決定的な仕事はさせません。逆に21分には鈴木の素晴らしいインターセプトから、田中順也が右クロス。クレオのシュートは枠の右へ外れたものの、直後にも工藤壮人が右からシュート性のクロスを蹴り込み、足を伸ばした田中はわずかに届きませんでしたが、流れの中からチャンスも創出し始めます。
一瞬で牙を剥くのはやはりこの3人。23分、エリアすぐ外でボールを持ったコンカは、飛び込めない間合いでキープするとエリア内の左へ。エウケソンが中へ戻し、ヒットしなかったロン・ハオのシュートがムリキの足元へ入ると、すぐさま放ったシュートは左のポストにヒット。どよめくスタンド。柏を救った12センチ。変わらなかったスコア。
25分にエウケソンの無回転FKを菅野が冷静に弾き出すと、ここからは「前線から非常に追い込みができて、相手の斜めのクサビや縦パスにも、ディフェンスが1人1人がボールに行けて、そこからショートカウンターもできていた」と鈴木も振り返ったように、攻守が噛み合った柏の時間帯。ジョルジ・ワグネルの連続セットプレーを挟み、33分にもジョルジ・ワグネルの左CKから、栗澤の右クロスを田中が合わせたボレーは枠の左へ。35分には田中の左アーリークロスから、工藤はシュートを打ち切れなかったものの、惜しいシーンまで。さらに広州はファン・ボーウェンが負傷交替を強いられ、ガオ・リンが右FWとしてピッチイン。コンカが中盤に降りる配置変更を余儀なくされてしまいます。
37分は柏の決定機。クレオが左へ展開し、ジョルジ・ワグネルのクロスはDFの頭をかすめてファーサイドへ。フリーの田中は左足アウトで下を狙いましたが、飛び出したGKゾン・チョンが懸命に足でブロック。44分も柏の決定機。ここもクレオが左へ振り分け、田中とのパス交換からジョルジ・ワグネルがクロス。ファーで待っていたクレオのワントラップボレーは、しかしクロスバーの上へ。追加点のチャンスこそ逃しましたが、「前半はプラン通り」とネルシーニョ監督。柏が1点のアドバンテージを持って、"前半の前半"は終了しました。
後半のファーストチャンスは広州。開始30秒経たない内に、チョン・チーを起点にエウケソンが右へ展開。ガオ・リンのグラウンダークロスは中のオフェンスファウルで潰えるも、積極的なサイドアタック。49分は柏。ショートカウンターから工藤のパスを田中は左へ。抜け出しかけたクレオは後方に戻し、ジョルジ・ワグネルのミドルは枠の左へ消えましたが、後半は打ち合いの予感が。51分にはリッピが2人目の交替を決断。CBのフォン・シャオティンを下げて、チャオ・シュリーをトレスボランチの右へ投入。ロン・ハオが右SBへ、右SBのチャン・リンポンがCBへスライドし、前線もムリキとエウケソンの位置を入れ替えるなど、マイナーチェンジを施します。
55分は広州。茨田陽生のパスミスをきっかけに、コンカの横パスからチャオ・シュリーがクロスバーを越えるシュートを放ちましたが、このワンプレーでわずかに狂った守備のリズム。黄色の悲鳴と赤の絶叫は58分。左サイドへ展開した流れから、SBのスン・シアンがクロスを放り込むと、近藤直也のクリアは小さく、ムリキの目の前へ。大会得点ランクトップを走る男が2度の過ちを犯すはずもなく、至近距離からズドン。「1点先制されて、追いかけるという状況がとても苦手」(リッピ監督)なチームの同点弾は貴重なアウェイゴール。柏のリードは霧散しました。
59分にネルシーニョ監督は茨田と谷口博之を入れ替えましたが、「前線と最終ラインの間で間延びした感はあって、そこで相手にボールを拾われて、五分五分の所でも相手が競り勝ったりもしていた」と鈴木が振り返ったように、少しずつ守備の連動性がほどけてしまった感のあった柏。62分にはガオ・リンに、63分にはスン・シアンにミドルを献上。66分には相手のクリアミスからCKを獲得し、ジョルジ・ワグネルのキックをニアで近藤が合わせると、鈴木のヘディングはGKを破るも、カバーに入っていたコンカがライン上で決死のクリア。絶好のチャンスも突き放せない柏。
ホームチームを貫いたエースの一刺し。67分、右サイドでボールを収めたエウケソンは、カットインしながら強引にシュート。DFに跳ね返ったボールをワントラップでコントロールしたコンカは、間髪入れずに利き足でコントロールボレー。左スミへスローモーションのように蹴り込まれたボールは、飛び付いた菅野も一歩及ばず、ゴールネットを揺らします。自らの価値を証明する衝撃の逆転弾。スコアは引っ繰り返りました。
ショックを隠せない柏。69分には中盤でジョルジ・ワグネルがイージーなボールロスト。ガオ・リンからボールを受けたエウケソンは華麗なシザーズでマーカーをかわし、独走から放ったシュートはわずかにゴール左へ外れましたが、71分にも工藤が横パスを相手に渡してしまい、そのままチョン・チーがゴール右へ外れるミドル。相手に助けられた格好で1点差は継続されたものの、少し集中力も切れ始めてしまいます。
それでも、「点を取りに行こうとすると相手の思うつぼなので、バランスは難しかった」(栗澤)中でも、同点へ向けて繰り出した手数。71分、クレオの35mミドルはDFをかすめ、GKの弾いたボールはわずかに枠の右へ。そのCKをジョルジ・ワグネルが蹴り込み、最後は工藤が狙ったミドルも枠の左へ。76分、左サイドで橋本が縦に付け、田中のクロスにクレオが飛び込むも、DFが手前でクリア。そのCKをやはりジョルジ・ワグネルが蹴ると、大外で合わせた橋本のヘディングも枠の上へ。78分には切り札の澤昌克をピッチへ解き放ち、少なくとも1点は返したいホームチーム。
3つ目のアウェイゴールは82分。右からコンカが蹴ったCKは、ゾーンのストーンとして立っていた谷口の内側へ曲がり、ゴールカバーのキム・チャンスと、詰めたエウケソンと、ポストの間をすり抜け、そのままゴールの中へ転がり込みます。あまりにも呆気ない追加点でスコアは1-3。4つ目のアウェイゴールは90+1分。キム・ヨングォンのアバウトなクリアは柏陣内で弾み、ガオ・リンが頭で競り勝つと、拾ったムリキはGKもかわして無人のゴールへプッシュ。「ちょっとしたミスでこういう大会は失点してしまう。今までできたことができなかったというのが大量失点に繋がった」と栗澤が話せば、「ズルズル自分たちでリズムを崩してしまった。ミスが2、3個続いた中で守備が崩れてしまうチームの脆さを感じた」と菅野。ファイナルスコアは1-4。柏は3点のビハインドを背負って、アウェイの広州へ乗り込む結果となりました。
率直に言って、両者の実力に点差ほどの開きはありませんでした。「流れの中でそんなに崩されていなかったし、守備としては良かった感触を持ちながらの失点。防げる所でやられてしまった」という鈴木の言葉は、偽らざる気持ちを現していたと思います。特に前半の中盤以降はコンカが中盤に落ちて、よりボールを引き出し始めてからも、「ウチの守備がしっかり対応できたという意味での無失点」(栗澤)で切り抜けるなど、互角以上のゲームができていました。それでもこの点差が付いてしまったのは、当然柏の疲労も考慮すべきではあるものの、間違いなく「最終的な決定力の高さ」(鈴木)。決定機の数にそこまで差がなかった中で、開いたスコアの差は個人の決定力と直結していました。「僕たちは準決勝まで来て、失うものは何もない」と工藤。「逆境をどう跳ね返すかがチームとしても個人としても試される」と菅野。奇跡を超えた奇跡を起こすため、柏に残された時間はあと90分間です。            土屋

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