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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ブラック・スターズのW杯最終予選へ、そしてその先のブラジルへ向けたサバイバルマッチは日産。サムライ・ブルーとの対峙です。
グアテマラ戦は相手の実力にこそ疑問符は付いたものの、エースの本田圭佑や代表に定着しつつある工藤壮人がゴールを挙げるなど、攻撃面では一定の成果を得た日本代表。ただ、ここに来てザックジャパンの最前線を務めてきた前田遼一が代表入りから遠ざかっている状況を考えると、それが柿谷曜一朗なのか、大迫勇也なのか、あるいは他の誰かだとしても、1トップを務める選手と周囲のコンビネーションを合わせるためのゲームは決して多くないはず。相手のレベルを差し引いても、やるべきことはハッキリしている一戦です。
2010年のW杯はアフリカ勢最高成績に並ぶベスト8へ躍進。来年のブラジルW杯へ向けて現在行われているアフリカ予選でも、今月6日に首位の座を懸けたザンビアとの直接対決に臨むと、アウェイで敗れた借りをきっちり返す勝利で飾り、最終予選へと駒を進めているガーナ代表。その4日前の激闘に出場したマイケル・エッシェン、アサモアー・ギャン、クワドゥオ・アサモアー、アンドレ・アイェウ、ケヴィン・プリンス・ボアテングなど、攻撃陣の主力は来日メンバーに入りませんでしたが、今回日産のピッチに立つ代表キャップ10試合前後の若手にとってみれば、最終予選への、さらにブラジルへの切符を掴むための大事な一戦。個々の選手のモチベーションは決して低くないはずです。相変わらずの"ソールドアウト"で、スタジアムを埋め尽くした64525人の青。今年の国内ラストマッチはガーナのキックオフでスタートしました。
先にセットプレーのチャンスを掴んだのはガーナ。4分に右からクリスティアン・アツが蹴ったCKはDFのクリアに遭い、6分にもやはり右からアツが入れたCKは川島永嗣にキャッチされたものの、まずは「強いチームには必ず素晴らしい控えの選手がいる」というジェームズ・アッピア監督の言葉を体現すべく、アウェイチームがスタートから勢いを持って立ち上がります。
ただ、6分に清武弘嗣、香川真司、本田圭佑と繋ぎ、香川がいい形で抜け出しかけ、ここはガーナの左SBキッシ・ボアテングにスライディングで掻き出されましたが、前線のコンビネーションで決定機の一歩手前まで創出すると、ここからは日本のリズム。7分には左ショートコーナーの流れから本田がクロスを送り、ファーでフリーの柿谷はやや角度がなかったこともあって、ボレーでの折り返しを選択。最後は香川のオフサイドでチャンスが潰えてしまうもったいないシーンを経て、以降は日本のラッシュ。
10分には清武のパスから本田が枠へ収めたミドルはガーナGKラザク・ブライマーがファインセーブ。11分、清武と本田が絡み、右サイドを駆け上がっていた内田篤人がこぼれをシュートに変えるも、ボールは枠の左へ。13分、左CKをショートで始めると、遠藤保仁のクロスはニアでフリーの今野泰幸に合うも、シュートは打てず。15分、長谷部誠を起点に清武が右サイドへ球足の速いスルーパス。DFを追い抜いた内田のクロスはGKにキャッチされましたが、「あそこの3人は見えていますから、ダイレクトが一番生きると思う」と柿谷も話したように、3シャドーが自在にボールを引き出し、一気にゲームリズムを引き寄せます。
すると、16分にアルバート・アドマーがミドルレンジから枠の上へ飛ばしたガーナのファーストシュートを経て、23分に訪れた日本の決定的なチャンス。香川は高精度フィードをDFラインの裏へ落とすと、パーフェクトな動き出しとトラップで清武が独走。完全な1対1の場面から放ったシュートは、しかし飛び出したブライマーに体でブロックされると、直後に動いたスコア。揺り動かしたのは意外にもガーナ。
24分、右サイドでアドマが縦に付けたボールを1トップ気味のマジード・ワリスは巧みにヒール。ここへ走り込んだ右SBサミュエル・インコームのクロスがDFに当たって左サイドへ流れると、そこまでも"個"の輝きを感じさせていたフランク・アチェアンポングが利き足の左足でシュート。内田に当たったボールはゴール左スミギリギリを捉え、川島の伸ばした手も一歩及ばず。ファーストチャンスをきっちり成果へ昇華させたガーナが、1点のリードを手にしました。
「失点自体はイレギュラーな形」と話しながら、「そんなにピンチじゃない所でも失点まで繋がってしまうのは今後引き続きの課題」と吉田麻也が顔をしかめたように、初めて崩された形から失点を喫した日本でしたが、29分には"新"アタッカートリオの煌きで創った決定機。綺麗なカウンターから香川は左サイドへ高速スルーパス。こまめな駆け引きで完璧にラインブレイクした柿谷は、シュートレンジへ入るも冷静に右サイドへクロス。フリーで走り込んできた本田のボレーはクロスバーを越え、同点弾とはいかなかったものの、「溜めることもできるし、ボールを持つこともできるし、いいタイミングでパスを出すこともできる。曜一朗が入って色々なバリエーションが出てきたなと思う」と長友佑都も認めた通り、柿谷が絡んでのビッグチャンスに、スタンドのボルテージもワンランク上昇します。
30分はガーナ。バイタルでパスをもらったアツは枠の上を超えるミドル。36分は日本。遠藤の右ショートコーナーから、香川が今野の巧みなポストプレーでシュートを打ち切るもクロスバーの上へ。42分はガーナ。左寄り、ゴールまで約25mの位置からアドマーが直接狙ったFKもクロスバーの上へ。44分もガーナ。右サイドをワリスが鋭くえぐり、中央にアドマーが入るも長谷部誠が何とかクリア。45+1分は日本。長友を起点に本田が左から上げたクロスに、香川が高い打点で折り返すも、柿谷の前でラシド・スマイラが決死のクリア。「前半はちょっと慎重になった部分はある。もう少しテンポアップして前にボールを付けられればよかったかな」とは吉田。1トップと3シャドーの連携には見るものがあったものの、終盤はやや慣れてきた相手にボールを持たされるような印象もあった前半は、ガーナが1点のアドバンテージを持って、ハーフタイムへ入りました。
後半はスタートからガーナに交替が。CBのスマイラーが下がって、ジョナサン・メンサーがピッチイン。アッピア監督は最終ラインの顔ぶれを入れ替えて、リードして迎えた残りの45分間に臨むと、49分には遠藤が信じられないパスミス。アチェアンポングのトラップが大きく、致命傷にはならなかったものの、日本は少し嫌な流れで後半がスタートします。
それでも「ボールを奪ってからインテンシティを高めて、相手のディフェンスラインに仕掛けていこう」というザッケローニ監督がハーフタイムに出した指示を受けて、満員のスタンドを沸騰させたのはやはりこの男。50分、左サイドで長友がボールを収めると、外側を回った香川はそのまま仕掛けてカットインで中へ潜り、エリアのやや外から果敢にシュート。その軌道は一直線にゴール左スミへ突き刺さります。「自分のミスで失点したので、取り返そうと必死だった」と振り返った10番がさすがの決定力を見せ付け、スコアは振り出しに戻りました。
54分に差し掛かると同時に動いた両ベンチ。ガーナは右SHのアドマーに替えて、ソロモン・アサンテをそのままの位置へ投入。日本は内田に替えて、同じ右SBに酒井高徳を投入。ザッケローニ監督は、比較的攻撃の起点としても機能していた内田を下げる決断を下します。
60分は日本。遠藤、本田と回り、香川が左に持ち出しながら入れたクロスを、本田は豪快なオーバーヘッドで狙うも、ブライマーが好キャッチ。63分も日本。ミス絡みでガーナにこぼれたボールが再び日本へ流れ、一気にカウンター。本田のスルーパスにフリーで飛び出した柿谷は、オフサイドの判定でシュートには持ち込めませんでしたが、「前半やってビハインドでしたけど、負ける試合ではないと思っていた」という吉田の言葉を証明する一撃はその1分後。
64分、長谷部の横パスから遠藤はテンポアップの縦パスにトライ。本田が確実に落としたボールを、そのまま遠藤がコースを狙って叩くと、「シュートはちょっと甘かった」とは本人ですが、GKの手をすり抜けるかのようにゴールネットへ到達します。「真司の得点が入って、チームの流れ的にもう1点入るなっていうのは僕自身も感じていた」と長友が話した、勝負所をきっちりモノにする熟練の34歳。ガーナが優位に立っていたはずの点差は、15分間で引っ繰り返りました。
「今日のパフォーマンスは良かったが、若い選手ということで集中力に欠けていた」とアッピア監督も言及したように、1失点後は集中の切れたようなプレーが目立ち、フィニッシュまで至るシーンをまったく創れなくなってしまったガーナ。65分には「いつもは左か右のSBだが、彼はユーティリティーな選手なので」(アッピア監督)、前半こそはアンカーとして本田を監視しながらフィルター役をこなしていたものの、後半はプレスも簡単に外され始めていたハリソン・アッフルとインコームを、それぞれラビウ・モハンメドとダニエル・オパレとスイッチさせ、もう一度全体のねじを巻きなおしに掛かると、69分にアサンテのサイドチェンジから、やはり今日のガーナで一番危険な香りを漂わせていたアチェアンポングがドリブルで縦に運び、そのまま狙ったシュートは川島がキャッチ。同点弾とはいきません。
70分には"新"アタッカートリオ再び。本田の優しいパスを柿谷も優しく落とし、香川のシュートはゴール右スミを捉え、ブライマーも必死にファインセーブで応酬したものの、ゲームの流れから考えても、試合を決める一撃を振り下ろしたのは4番を背負った金髪のレフティ。72分、遠藤が左のスポットから蹴り込んだボールを、DFとDFの間に巧みなポジションを取り、最後に頭で押し込んだのは本田。「前の試合と同じでボールが良かったと思う」と話した頼れるエースの2戦連続ヘディングゴール。点差が開きました。
勝利へ向けて一気に視界が開けたザッケローニ監督は、75分にチームメイトも口を揃えて賞賛した柿谷と大迫をスイッチ。79分には清武に替えて森重真人を送り込むと、「あの時間帯になって、相手が2トップ気味にしてきたので、3バックで対応しようと考えた」と、システムを4-2-3-1から3-4-3にシフトチェンジ。ただ、「誰がどこに入ってもできると思っている」という自信の下、3バック自体はグアテマラ戦と同じ顔触れながら、吉田をセンターに置く新しい並びにチャレンジします。
とはいえ、もはや一層個人頼みのアタックに終始していたガーナ相手に、3-4-3が危ないシーンにさらされるようなシーンはほぼ皆無。83分には遠藤のクサビで前を向いた大迫が、シュートも打てそうな局面もスルーパスを選択し、本田の枠内シュートはブライマーが意地のファインセーブ。85分に本田が直接狙ったFKはDFがブロック。90+1分にワリスがクロスバーの上へ外したミドルが、このゲームのファイナルシュート。「シュートの数もゴールの数も相手を上回っていたし、チームのリアクションがあったことも良かった。ああいった形で失点してしまうと、ガクっときてしまうことがあるが、そこからよく立ち直って逆転してくれたと思う」と指揮官も一定の評価を口にした日本が、国内の連戦シリーズを2連勝で飾る結果となりました。
グアテマラ戦、そしてガーナ戦と共に3ゴールを奪っての勝利となった日本。「正直相手に衝撃がなかったので、これが本当にチームが成長しているのかというと『イエス』とは答えられないというか、この2試合では正直わからない」と長友が話したように、相手を考えれば勝利が義務付けられるような中でも、きっちり勝ち切ったことは1つの成果。あとは、「この10日間でたくさんのことができたし、チームとして色々整理することができていたと思う」とザッケローニ監督も話したように、まとまった期間でのトレーニングで新戦力もきっちりと存在感を発揮できていたのかなと。「常にゴールは狙っているので、チャンスがあればゴールを決められる自信もある。この2試合はそれが正直なかったですけど、いくら攻撃ができなくても、守備で貢献していればチームは負けないし、そこに徹するのは大事かなって思ってやっている」という柿谷を筆頭に、このゲームの終盤に登場した大迫や山口螢、齋藤学、グアテマラ戦でゴールを決めた工藤、3バック時の貴重な駒になりつつある森重と、それぞれが持ち味を出し合った新戦力には「自分もビックリするくらい彼らの力は感じるし、競争は間違いなく活性化している」とキャプテンの長谷部も言及。「意識付けという意味では練習も含めていい時間だった」(川島)今回の国内連戦を受けて、セルビア、ベラルーシと転戦する10月の欧州遠征では、さらなるチームの進化を期待できるような、意義ある"10日間"だったように思いました。 土屋
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