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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
問答無用の首位攻防戦。関東2連覇中の"緑"と、昨年のインカレ王者に輝いた"海老茶"が西が丘で対峙します。
ここまでのリーグ戦は29ゴールと、1試合平均3得点に迫る勢いで3連覇へ向けて爆走中の専修大。ところが、中断期間中の総理大臣杯は予選敗退の憂き目に遭って出場できず、神奈川に移って迎えた天皇杯予選も決勝で桐蔭横浜大に惜敗と、2度の全国切符を逃してしまいました。しかも今節はキャプテンであり、絶対的なエースの長澤和輝(4年・八千代)が教育実習のために不在。今後に向けて試金石とも言うべき一戦に臨みます。
対するは専修を2ポイント差で追走している2位の早稲田大。こちらもリーグ戦ではわずかに1敗と、最大のライバルにしっかり食らい付いているものの、総理大臣杯は2回戦でPK戦の末に敗退すると、そこからは天皇杯予選と高麗大との定期戦も連敗。「一戦一戦が絶対に負けられない戦い」と明言する古賀聡監督の下、その中でも特別な一戦は今日の首位決戦です。上がった雨に濡れたピッチという好コンディションの下、注目のゲームは専修のキックオフでスタートしました。
序盤からゲームの主導権を握ったのはやはり専修。10分には仲川輝人(3年・川崎フロンターレU-18)のパスから、前澤甲気(3年・清水商業)が放ったシュートは早稲田の右SB八角大智(2年・流通経済大柏)が体でブロック。13分にも佐野弘樹(2年・桐光学園)、星野有亮(3年・静岡学園)と繋ぎ、こぼれを拾った前澤のシュートは早稲田のCB金沢拓真(2年・横浜F・マリノスユース)が体でブロック。早稲田も高い集中力で何とか凌ぐものの、「関東の中で一番攻撃の質の高いチーム」という古賀監督が評したように、専修の時間は続き、14分に早稲田が池西希(4年・浦和レッズユース)、榎本大希(4年・横浜F・マリノスユース)と回し、小松聖音(4年・札幌光星)が取ったフィニッシュも専修のCB河津良一(3年・作陽)がブロックして回避。ジワジワと押し込む緑の戦士。
すると、スコアが動いたのは25分。専修が左サイドで"らしい"繋ぎをスタートさせると、前澤を経由して北出が右へラストパス。受けた仲川はゴール左スミへ冷静にグサリ。「長澤がいなくてスピードがないのでワンテンポ遅れて、そこからどうしても数的有利な所が創れなくて、同数でそのままズルズルいっちゃっていた」とは源平貴久監督ですが、さすがに勝負所での技術はさすが。専修が1点のリードを奪いました。
「相手の質の高さに腰が引けてしまった部分があってプレッシャーを掛け切れず、ボールを奪うという強みが出せなかった」と古賀監督が悔しがった早稲田を尻目に、アドバンテージを手にした専修は一気にラッシュ。26分、佐野のスルーパスに抜け出した仲川は、飛び出したGKの右を抜くシュートを放つも、勢いが弱く軌道も枠外と見るや、全力でダッシュしてボールに追い付きリターン。詰めた佐野のシュートは早稲田のCB奥山政幸(4年・名古屋グランパスU18)がゴールライン上で何とかクリアするも、仲川の驚異的なスピードにざわつくスタンド。
33分も専修。星野が右へ振り分け、北爪健吾(3年・前橋育英)の高速クロスは早稲田GK松澤香輝(3年・流通経済大柏)が何とか搔き出す高精度。40分も専修。長いボールを北出が頭で落とし、星野が叩いたシュートはDFに当たって枠の左へ。そのCKがこぼれると、キッカーの下田北斗(4年・大清水)が自らクロスを送り、飛び込んだ萩間大樹(2年・川崎フロンターレU-18)にはわずかに届かず。逆に早稲田も終盤にようやく決定機。45分、池西が素晴らしいボールカットから右へ展開し、榎本がクロス。マイナスにこぼれたボールを小松が枠へ飛ばしたシュートは、専修のGK福島春樹(2年・静岡学園)がファインセーブで応酬。45分間で見れば、「精神的な部分でちょっと弱気になった部分があったのではないかなと思う」と古賀監督が話した早稲田を、専修が圧倒するような格好で、ゲームはハーフタイムに入りました。
後半もまずは専修にシュートチャンス。49分、下田の左CKに萩間が合わせたヘディングはDFにブロックされましたが、52分にも下田が右から際どいCKを蹴り込むなど、スタートから披露した追加点への意欲。後半も流れは専修かという立ち上がりに対し、早稲田も57分に三竿雄斗(4年・東京ヴェルディユース)が左サイドを突破し、榎本とのワンツーからクロス。こぼれを狙った小松のシュートはわずかに枠の左へ逸れたものの、ようやく早稲田サイドアタックのキーマンとも言うべき三竿が攻撃に絡み、わずかに変化の兆しを見せたゲームリズム。
仲川の股抜きスルーパスから、佐野が枠の右へ外した61分のシュートを間に挟み、早稲田は57分に右SHを小松から石川拓(4年・日本大高)へ入れ替え、専修は62分に佐野と替えた鈴木勇二(3年・富山第一)を左FWへ投入。前澤がCFへスライドし、さらなるゴールを奪いに掛かると、奏功したのは前者の交替策。
63分、発動した早稲田の高速カウンター。左サイドで榎本が短く出したパスから、竹谷昂祐(4年・ガンバ大阪ユース)はマーカーと競り合いながら、低い体勢で中央へグッと入り込んでそのまま独走。溜めて出されたスルーパスを受け、石川はGKとの1対1も冷静に左スミへ沈める同点弾。「アタッキングサードの質であったり、仕掛けは彼の強み。何回かああいう場面で外していたが、今日はその教訓も生かして決めてくれた」と指揮官も笑った伏兵の一撃。2位の早稲田が4年生3人の"意地"でゲームを振り出しに引き戻しました。
「去年とか一昨年とかみたいに三冠を目指すのはなかなか難しいと思うんですけど、去年のように粘り強くやっていくのは特徴になる」と源平監督が語った絶対王者のリバウンドメンタリティ。66分、左サイドに展開したボールを途中出場の鈴木は粘って粘って突破まで。中央へ送り込んだクロスはファーへ届くと、フリーの仲川は正面で構えたGKからタイミングとコースを一瞬ずらし、確実にゴールへボールを送り届けます。「彼は近距離のシュートは簡単に決める」とFW出身の源平監督も言及したように、簡単そうに見えるものの、決して簡単ではないシーンもきっちり制する仲川の決定力はさすが。再び点差が開きました。
さて、視野に捉えた勝利への道筋をまたも閉ざされかけた早稲田でしたが、「体力的な部分では絶対にどこにも負けないという自信がある」と古賀監督も誇るだけあって、74分に宮本拓弥(2年・流通経済大柏)と山内寛史(1年・國學院久我山)を2人目の交替として入れ替えると、ここからは驚異的な末脚で怒涛のラッシュ。
76分、中田航平(4年・横浜F・マリノスユース)、八角と回し、石川が上げ切ったクロスに3列目から走り込んできた池西が渾身のダイビングヘッド。誰もが同点かと思った瞬間、しかし福島が抜群の反応で超ファインセーブ。81分、竹谷の縦パスにファーストタッチでマーカーを振り切った山内のシュートはクロスバーの上へ。直後に古賀監督が切った最後のカードは、竹谷に替えて小長谷勇太(2年・清水東)。「前半厳しい戦いになっても、相手の足が止まった時間帯に自分たちが相手よりも動く」(古賀監督)という鉄の信念。
82分、池西のパスを小長谷が頭で残し、エリア内で榎本が打ったシュートは北爪が何とかカバーして福島がキャッチ。この時間帯に一層躍動したのは、湘南ベルマーレの特別指定選手として、ナビスコカップ2試合にも出場している左SBの三竿。「仲川と北爪のサイドなので、前半はちょっと向こうも警戒していて押せていたが、後半は彼がうまかったかな」(源平監督)「マッチアップしている仲川君のエネルギーの問題も当然あって、前半はそこで守備に力を割かれてしまったが、後半は相手も少し落ちたので前へ前へと行けたのではないか」(古賀監督)と両監督が言及したように、仲川の対応よりも前への推進力を求められてからは、完全にサイドを制圧します。
すると、88分には石川を起点に山内が中へ付けると、上がってきた三竿は強烈なシュートを枠内へ。ところがこのピンチを鬼気迫るセーブでストップしたのはやはり福島。「前期からずっとそうなんですけど、彼で結構失点を防いでもらっている所がずっとあるので、彼がいなかったらもっと勝ち星の数が変わってきていると思う」と源平監督も絶賛した守護神は、直後に小長谷を経由して榎本がDFに当てながら枠へ飛ばしたシュートもがっちりキャッチ。専修ゴールを割らせません。
規定の時間は終了した90+2分、石川が鋭い突破で獲得した早稲田のFK。熱量のボルテージが上がった"ウルトラスワセダ"。右サイドの深い位置でスポットに立ったキッカーの三竿は、中央に蹴り込むフォームから、マイナス気味にショートパス。虚を突かれた専修。フリーで走り込んだ八角のミドルは、しかしクロスバーをわずかに越えてしまい万事休す。「後ろの選手が自覚を持って、よく声を出してやっていたかなと。それは今までにない所」と源平監督も守備陣を賞賛した専修が首位攻防戦を制し、勝ち点3を上積みする結果となりました。
専修にとって、苦しいゲームをモノにしたこの1勝はかなり大きいのではないでしょうか。終盤はかなり押し込まれる時間が長かった中でも、「失点が1というのは、ウチにとっては少ないのでいいかな」と源平監督も笑ったように、荻間と河津のCBコンビにファインセーブ連発の福島を中心にして、きっちり1点差で逃げ切っての勝利。日頃攻撃陣が目立つことの多いチームが、守備陣の奮闘で勝ち星を得たこの一戦は今後への新しいベースになるかもしれません。
「前半がすべてだったかなと思う」と古賀監督も振り返った早稲田は、アタッカー陣に欠場選手が多い中、いわゆる"カウントされそうな"シュートが1本しかなかった最初の45分間で、後手に回ったことが悔やまれます。それでも、1試合目で自らのチームの精神力を嘆いた明治の神川明彦監督が、「自分たちでやっていくという彼らが、今の僕らの1つのモチーフになっている」と話したように、後半に発揮した自立性に基づく強靭なメンタリティはやはりチームの拠り所。「優勝するという目標に何ら変わりはない」と古賀監督が言い切ったマインドで、どこまで勝ち点差の開いた専修に食い下がっていくかは、今後も非常に注目していきたくなるような"45分間"でした。 土屋
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