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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年09月08日

ナビスコ準決勝第1戦 柏×横浜FM@日立台

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kashiwa0908.jpg国立決戦まではあと180分間。日本が世界に誇る、伝統のカップ戦セミファイナルは初秋の日立台です。
準々決勝で難敵の広島を退け、久々にナビスコで4強まで進出してきた柏。リーグの鹿島戦後に辞意を表明し、練習と天皇杯2回戦に現れなかったネルシーニョ監督も、前言を撤回してこのゲームから再び指揮を執ることに。就任後、国内のタイトルでは唯一優勝に手の届いていないこのナビスコカップ獲得に向け、「チームがそういう決断を下した以上は全員が尊重して、また1つになって結果を求めるためにやっていくだけ」(大谷秀和)という選手へ、そして監督紹介のアナウンスに拍手とコールを贈ったサポーターへ、その采配の実力を改めて示す必要のある一戦です。
リーグ戦の順位はテーブルの一番高い所。ナビスコでもここまでの8試合で残した勝利数は7と、おそらく現在のJリーグで最も"強い"と表現して差し支えないであろう横浜FM。国内三冠すら視野に捉える状況下で、まずは12年ぶりとなるこの大会制覇を目指し、平均年齢30.82歳の経験豊富な11人で日立台へ乗り込んできました。スタジアムを埋め尽くした黄色とトリコロール。激戦必至。ファーストハーフの"90分間"は、横浜のキックオフでスタートしました。
立ち上がりは比較的静かな流れの中、柏のファーストシュートは7分。ワグネルの左CKをGKがパンチングで弾くと、拾った栗澤のミドルはクロスバーの上へ。対する横浜のファーストシュートは12分。中盤でルーズボールを拾った小椋祥平のミドルはゴール左へ。14分に中村俊輔の左FKを、栗原勇蔵が頭に当てたシュートもゴール左へ。最初の15分間はこの3本のシュートが繰り出されたすべてのシュート。五分に近い探り合いの様相を呈します。
この状況を創り出していたのは、柏の中盤が敷いた横浜対策。「リーグの時には中盤が2対3の数的不利でボールを動かされることが多かったので、しっかり今回は人数をハメちゃってほぼ4-1-4-1気味にやっていた」(大谷)「相手のボランチ2人とシュンさんのところをうまく見て、うまく3人で受け渡しながら誰かしら人に付く」(栗澤僚一)とドイスボランチが言及したように、横浜の1トップ下に入る中村に加え、ドイスボランチの小椋と中町公祐に、基本は大谷がアンカー気味に位置しながら、その前に入った栗澤と田中順也をぶつけ、"3対3"で対処。田中も「イメージ的には3ボランチの左」と明言するなど、相手の中盤3枚をマンツーマン気味に消すことで、「そこから奪って攻撃というイメージ」(栗澤)を徹底。ボールはある程度回される中でも、バイタルに入った時にはきっちり1人が1人を潰す役割をまっとうし、好調横浜に攻撃のリズムを創らせません。
すると、18分に飛び出したゴラッソ。古巣対決に燃える狩野健太のパスがこぼれ、ジョルジ・ワグネルが収めてショートパス。「トラップが凄く難しかったけど、止めた時に誰もいなかったので思い切り打つことができた」という田中が左足を振り抜くと、弾丸と化したボールは凄まじいスピードでゴール左スミへ突き刺さります。守備のタスクもこなしながら、自分の"ゾーン"を見せ付けた田中のゴラッソ。柏が1点のアドバンテージを獲得しました。
さて、「ボールの運び方にスムーズさを欠いていた。相手の前でボールを動かし過ぎた」と樋口監督も話した横浜も、ようやく決定樹を創出。23分、左サイドで中村、兵藤慎剛と繋ぎ、中町が左へラストパス。ここに全力で上がってきたドゥトラのシュートは、惜しくも左のゴールポストにヒット。24分には中村の右FKに、マルキーニョスが薄く当てたヘディングは柏GK菅野孝憲のファインセーブに阻まれましたが、ようやくエンジンが掛かり始めると、ここからは双方が殴り合う展開に。
25分は柏。自らのクサビを基点に田中からのリターンを受けた狩野は、中央へ絶妙スルーパス。クレオの右スミを狙ったシュートは、横浜のGK榎本哲也が横っ飛びで防ぎ、詰めた田中のフィニッシュはクロスバーの上へ。27分は横浜。中盤で大谷との火花が出るような1対1を制し、マルキーニョスが放ったミドルはDFに当たってコースが変わるも、菅野が何とかキャッチ。28分は柏。鈴木大輔の素晴らしいパスカットを起点に栗澤が繋ぎ、クレオが左へ流すとワグネルのピンポイントクロスはファーへ。狩野は最高のトラップで1枚はがすも、シュートはクロスバー直撃。32分は横浜。右サイドから小林祐三が果敢にドリブルで中央へ侵入。懸命に近藤直也が掻き出したボールを、マルキーニョスが抜群の反応から狙ったミドルは、寄せたDFをかすめてわずかに枠の左へ。お互いにチャンスがことごとく決定的なシーンという、スリリングな時間帯が続きます。
手数を出し合う状況下で、それでも「ウチがマイボールにする時間が長かったし、相手もそこからの良いボールは出せなかったと思うので、そこは狙い通り」と栗澤が話したように、柏はカウンターの強みもちらつかせながら、いつも以上にしっかりとボールも保持。41分には栗澤のパスから自ら狙ったミドルはDFにブロックされたものの、さらに最終ラインとGKの間に落ちたボールへ突っ込んだのは大谷。"2本目"のシュートは打てませんでしたが、「この試合に懸けるみんなの気持ちも凄かった」という栗澤の言葉を体現するようなキャプテンの執念が前面に押し出されると、レフティモンスター再び。
44分、「あれは相手が読みづらい健太君のタイミング」と絶賛した狩野のパスを呼び込んだ田中は、対峙したマーカーの中澤をハンドオフで遠ざけると、鋭い反転からそのままシュートにチャレンジ。「1本目と同じように蹴れたので、感覚は凄く良かった」というボールは、インに巻きながらGKの届かないゴール左上に飛び込みます。またも自分の"ゾーン"を見せ付けた田中のスーペルゴラッソ。点差が開きます。
漆黒の中でも止まらない太陽王。45+2分、深い位置でボールを持った端戸仁へ猛然と襲い掛かったクレオがボールハント。拾ったワグネルはクレオとのワンツーで中央へ潜り込むと、得意の左足でゴールネットへグサリ。ブラジル人ストライカーの献身が呼び込んだ大きな追加点に、「前半はカウンターを含めて攻撃の量が良かったし、さらに良かったのは個人の決定力が長けていた」とネルシーニョ監督も納得の表情。内容自体はフィフティに近い中でも決定力を見せ付けた柏が、45分間だけで3点のリードを手にしてハーフタイムへ入りました。
小さくないビハインドを背負い、「前に行こうと、アウェイゴールを取れば大きく状況は変わる」と樋口監督に送り出された横浜は、後半開始から1枚の交替カードを。端戸に替えて佐藤優平を投入。中盤センターがマッチアップする中で、違いを生み出せなかった中盤ワイドに変化を付けて、後半の45分間に臨みます。
46分にFK、49分にCK、50分にもCKと、セットプレーを連続して奪った横浜が、まずは1点を返すべく仕掛けたラッシュ。51分には中町、中村、マルキーニョスとゴール前で細かく繋ぎ、最後は中村のシュートが鈴木のブロックに遭いましたが、54分には絶好の決定機。兵藤が右へ送ったボールを小林はファーまで届く絶妙クロス。3列目から飛び込んできた中町のヘディングは枠を捉え、菅野にしっかりキャッチされたものの、強く発したアウェイゴールへの意欲。
それでも、「ある程度予想できた展開なので、その中で自分たちからむりやりバランスを崩すというよりは、しっかり守って相手のスペースをうまく突いてという感じ」と栗澤が話した通り、押し込まれる流れも受け止めながら、「守り切るというよりは、相手も出てくるので、空いた裏への意識はしっかり持っていた」(大谷)というその柏の意識は、時折カウンターから獲得するセットプレーにも表出。前述の中町が掴んだ決定的なシーン以降は、横浜に20分近くフィニッシュを取らせず、「ウチらが得意とする守ってカウンターという所で、みんなでいい距離感でバランス良く守れた」という栗澤の言葉にも頷けるような、クローズした展開を巧みに創り出してみせます。
73分は横浜。中町が左へ付け、中村が上げたピンポイントアーリーに、マルキーニョスがフリーで飛び込んだヘディングは枠の左へ。75分も横浜。中村が左からショートコーナーを意図し、兵藤のリターンをクロスに変えたボールは、DFが何とかクリアして菅野がキャッチ。76分に小椋と富澤清太郎の交替を挟み、78分も横浜。後半は積極的なボール関与で、チームにリズムをもたらしていた佐藤が右サイドを抜け出すも、フィニッシュは飛び出した菅野がファインセーブで阻止。変わらない3点差。
トドメの追加点は85分。4分前に投入された澤昌克が高い位置でボールを引っ掛け、田中が倒されてゲットしたFK。スポットに立ったのはワグネル。34歳のブラジル人レフティが魔法の左足を振るうと、完璧な軌道を描いた球体を優しくゴールネットが包み込みます。4-0。想像もしなかったフィエスタに沸き上がる日立台。中村の凄まじいコースを狙った89分のFKもわずかに枠を外れると、「どんな点差でも全員が90分笛が鳴るまでやらなきゃいけない」(大谷)という課題もクリアした柏が、何と日立台では今シーズン初となる完封勝利を達成し、ファイナル進出を大きく手繰り寄せる結果となりました。
色々な意味で注目の集まった一戦で、「戦術も久々にしっかり90分間まっとうできた、ここ最近で一番良いゲーム」(田中)を披露し、完勝を収めた柏。「一人ひとりのパフォーマンスがレイソルは本当にレベルが高い」と樋口監督も認めたように、いい所ばかりが出た90分間で、カップタイトルの獲得もいよいよ見えてきました。ただ、それ以上に「周りから言われるほど、チームは混乱することなく、選手はただ目の前のゲームに向けて準備をするということだけに集中できていた」(大谷)「ここでブレちゃいけないというか、崩れちゃいけないというのは思っていたし、それを証明するのは勝利だと思ったので、今日の勝利はチーム全員がそういう意識を持って戦った証拠」(栗澤)と殊勲のドイスボランチが揃って言及した"いつも通り"を、"いつも通り"ではない環境の中で結果に結び付けられたことが、今後に向けて何より大きな成果だったかもしれません。        土屋

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