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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
浪速の青黒、横浜見参。順位のコントラストは実力差をそのまま現しているのか否か。15位と1位の対峙は三ツ沢です。
リーグ最多となる69得点をマークし、開幕前の予想通り首位を快走しているG大阪。レアンドロと家長昭博の退団に加え、倉田秋の戦線離脱も重なって、一時は立ち込めかけた暗雲も、帰ってきた宇佐美貴史とロチャの"新2トップ"がここ5試合で計11得点と大爆発を見せて一気に霧消。唯一無二の目標に向けて邁進します。
一方、前々節はホームで京都を劇的に下し、連敗をようやく4でストップさせた横浜FC。しかしアウェイに乗り込んだ前節の長崎戦は、終盤の2失点であえなく敗れるなど、なかなか継続して結果の出ない時期が続いています。現在の順位は15位であり、昇格プレーオフ圏内に当たる6位との勝ち点差は13。ホームで絶対王者を倒して、奇跡への第一歩を記したい一戦です。スタジアムを見渡すと、水色と青黒で見事なまでに埋め尽くされたスタンド。今季最多の12490人が詰め掛けたゲームは、横浜FCのキックオフでスタートしました。
ファーストチャンスで揺り動かされたスコア。早々の沸騰は水色。4分、高地系治が左サイドへ頭で送り込んだボールを、日本代表経験も豊富な加地亮が信じられないパスミス。拾った野崎陽介が後手を踏んだDFを2枚翻弄しながら左足を振り抜くと、DFに少し当たったボールはゴールネットへ吸い込まれます。先制したのは手負いのフリエ。いきなり横浜FCが1点をリードして、ゲームは立ち上がりました。
「先制点をしっかり取ろうとゲームに入った」(長谷川健太監督)「先に失点しないようにとはさんざんミーティングでも言っていた」(G大阪・明神智和)と2人が話したように、ここの所続いていた"被先制点"に最大限の注意を払いながら、「ベテランのイージーミス」(長谷川監督)で、今日も先に失点を許したG大阪。宇佐美も「セカンドレグのような、0-1からスタートしているようなもの」と言及したビハインドからのスタートに、ボールの回りもいつもより停滞。12分には宇佐美のパスから、遠藤がわずかに枠の左へ外れるシュートを放ったものの、それも単発。攻撃をテンポアップさせられない時間が続きます。
逆にスコアがもたらした落ち着きを後ろ盾に、長谷川監督も「最近はロングボールが多かったのに今日はしっかりとボールを繋いできた」と話すほど、ボールを握りながらスムーズにゲームを運んでいたホームチームでしたが、20分過ぎから徐々にポゼッションで劣勢に陥り始めると、「もうちょっと前に行こうよとはCBにも言ったが、結構ラインが下がってしまった」(高地)ことで、クリアが精一杯というような状況に陥ってしまいます。
「ずっとボールは持っていたので、どこかが空いた時に勝負する所を間違えないようにだけしたいなと」(明神)いう中で煌いた至宝。29分に遠藤が右へ送ると、切れ味鋭いプレーを見せていた大森晃太郎が潰れ、ボールはルーズに。「ああいう形でこぼれてくるとは思っていなかった」にもかかわらず、抜群のスピードで反応した宇佐美が「パスのような感じで打てば入ると思って、コースを狙って蹴った」ボールは、気付くとゴール右スミを瞬殺で捕獲。GKは一歩も動けず。暗殺者すら想起させるような、静かで完璧な一撃。これが宇佐美。G大阪が追い付きました。
以降は「前半はほとんどいい形を作れなかった」(長谷川監督)G大阪に、それは横浜も同様。36分には永井雄一郎が、44分にはロチャが、共に左サイドを突破して上げたクロスは、共にシュートには至らず。1-1のイーブンで、最初の45分間は終了しました。
「後半が本当の勝負だ!」と指揮官に送り出された水色を纏う戦士の決意。48分の横浜。高地がFKを小さく出すと、5試合ぶりにスタメン復帰した中島崇典はシュートブロックに遭うも、果敢に再シュートを枠の右へ。50分の横浜。佐藤謙介が裏へ入れると、野崎が落としたボールを寺田紳一が叩いたミドルは枠の右へ。51分も横浜。寺田の横パスから、佐藤のミドルはクロスバーの上へ。52分も横浜。左サイドで野崎が縦へ送り、3列目から飛び出した高地のシュートは枠の左へ。「こういう状況でも僕は使ってもらっているので、チームを少しでも良くしていきたい」と語る高地の躍動を軸に、勝利への意欲をラッシュに籠めた横浜。
53分はG大阪。ポジションを左SHに移した宇佐美のスルーパスから、藤春廣輝がグラウンダーで入れたクロスはロチャもわずかに届かず、チャンスが潰えると再び横浜。55分、永井が得意のドリブルで30m近く独力で運び、トライしたミドルは枠のほんの少し左側へ。58分、中島を起点に佐藤がナナメの浮き球を飛ばし、野崎の落としを中島が狙ったシュートはG大阪不動の守護神・藤ヶ谷陽介にキャッチされましたが、「攻撃はカウンターみたいになっていましたけど、結構しっかりみんな走れていた」と高地。増える手数と高揚するホームゴール裏。
59分に動いた両将。先制弾の野崎に替えて、「正直ぶっつけ本番という感じ」のパトリックを送り込んだのは山口監督。大森に替えて、前節の鳥取戦でも2アシストという記録以上の貢献度を見せた岡崎建哉を送り込んだのは長谷川監督。双方の思惑が交差する交替策で、勢いを得たのは後者。
60分、中央に潜った岡崎はミドル。DFに当たった跳ね返りを自ら左足ボレーで放ったシュートは枠を外れましたが、63分にも岡崎のスルーパスから、抜け出したロチャのシュートはDFに当たってゴール左へ。64分にも岡崎のスルーパスから、左サイドに走り込んだ藤春のクロスは、両足で飛び込んだ遠藤も触り切れませんでしたが、ことごとくチャンスに絡んだルーキーが、とうとう得点を演出したのは67分。遠藤が右から蹴ったCK。DFのクリアを収めた岡崎が左へ小さく出すと、藤春はゴールまで30m近い距離にも躊躇せずミドル。DFをかすめたボールはゴール左スミへ見事に突き刺さります。短時間で4度のチャンスを生み出した岡崎のアシストは逆転弾に直結。スコアは引っ繰り返りました。
負けられない横浜は2人目の交替に着手。カズと入れ替わるのはナ・ソンス。永井を1トップにして、その下にパトリックを配し、右に寺田、左にナ・ソンスを置いて勝負に出た山口監督。それでも決定機はアウェイチームに。76分、1トップ下に入った遠藤がクサビを捌き、岡崎が右へ。加地のクロスをロチャが頭で合わせると、シュナイダー潤之介が弾いたボールに、内田達也が突っ込むも足に当て切れず。80分、「ボードの番号も見えていたので、交替するのはわかっていた」という宇佐美が、遠藤からのパスを受け、コンパクトなスイングから繰り出したシュートは右のポストを直撃。とんでもないフィニッシュワークにざわつくスタンドも、スコア自体は1点差のまま。お互い同時に切った最後のカード。81分、永井は田原豊へ、宇佐美は阿部浩之に最後の10分間を託し、ピッチを後にします。
「僕らは1試合1試合が勝負、1プレー1プレーが勝負だと伝えている」という、世界を相手に戦ってきた指揮官の言霊。82分は横浜。寺田の左アーリーを、フリーのパトリックは折り返すもDFが何とかクリア。85分も横浜。ナ・ソンスがドリブルで仕掛け、こぼれを高地が繋ぐと田原のシュートはヒットせずゴール右へ。87分も横浜。佐藤のスルーパスにパトリックが反応し、武岡優斗が左足で打ったフィニッシュは当て切れず。「今までだったらズルズル行っていたのかなという部分も凄く感じる」(高地)チームに宿っていた諦めないマインド。
「選手の勝ちたいという意地であったりプライド」(山口監督)の発露が結実したのは88分。ナ・ソンスを起点に高地が左へ展開。フリーになった中島がピンポイントでクロスを上げると、ここに飛び込んだのは今季無得点の34番。今野泰幸と競り合いながら「中島の精度はわかっていたので信じて」突っ込んだ田原のヘディングは、土壇場でゴールネットを揺らします。俺たちの丘、沸騰。2-2。アディショナルタイムは3分。
ラストチャンスはG大阪。90+4分、阿部が繋いで今野は右へ展開。開いた遠藤のグラウンダークロスが後方にこぼれると、拾った内田が右スミを丁寧に狙ったシュートはシュナイダーが懸命に足を運んでファインセーブ。93分58秒、熱戦に終止符を打つ廣瀬格主審のホイッスル。「最後に追い付いたが、仕留めることもできる状況だったので非常に残念」(山口監督)「後半はある程度いい形というか、自分たちのサッカーがやれた中で、2点目、3点目、4点目ぐらい決められるチャンスはあった」(長谷川監督)と両監督が振り返ったように、双方勝ち点3を獲得する可能性が十分ありながら、振り分けられた勝ち点は1。晩夏の激闘はドロー決着という結果になりました。
正直に言って、15位と1位の対戦という印象は受けないゲームでした。「うまい選手はいるので自由にさせないのは1つですけど、みんなしっかりタイトに行けていたので、そんなにマズいなというのは思わなかった」という高地の言葉にも頷ける、横浜からすればはっきりした手応えも掴めるような90分間だったとも思います。それでも今、両者の間に開いている32もの勝ち点差は何か。その答えが出るのは、あるいは来シーズンの今頃なのかもしれません。 土屋
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