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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年08月05日

J2第27節 横浜FC×北九州@ニッパ球

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mitsuzawa0804.jpg元日本代表の指揮官同士が向き合う真夏の対峙。蝉の絶叫が響き渡る緑深き舞台は三ツ沢です。
7戦無敗から一転、東京Vと神戸に連敗を喫して"4戦未勝利"となった横浜FC。順位は15位ですが、昇格プレーオフ圏内の6位までは勝ち点差10と辛うじてまだリーチできるビハインド。このゲームを反攻態勢のキッカケにしたい一戦です。
対するは現在6試合未勝利で20位に沈む北九州。とはいえ、昇格候補筆頭クラスのG大阪と京都から相次いで勝ち点1を強奪するなど、柱谷幸一監督も「ゲームの内容としてはずっと良いゲームができていた」と話したように調子はむしろ上向き。渡邉将基や八角剛史、池元友樹など古巣対決に、そして三ツ沢凱旋に意気込む選手も抱え、狙うは勝ち点3のみです。「ウチもそうですし、北九州さんもなかなか勝てていない」(山口素弘監督)中での浮上戦。暑さも和らいだ18時3分キックオフのゲームは、北九州がボールを蹴り出してスタートしました。
最初の見せ場は2分。中央やや左、ゴールまで25m強の位置で横浜が獲得したFK。スポットに立ったのは、3試合ぶりのスタメン出場となった三浦知良、"カズ"。右足で柔らかく狙ったシュートはクロスバーの上へ外れましたが、千両役者のファーストシュートにスタンドも一気に華やぎます。
ただ、「前半は非常に堅い"我慢比べ"のようなゲームになると思っていた」という山口監督の言葉通り、ゲーム展開は動きの少ない膠着したものに。序盤はやや回された北九州も徐々に盛り返し、ポゼッション自体はフィフティに近い所まで回復。11分には宮本亨のパスをバイタルで引き出した池元のミドルは枠の右へ。15分には冨士祐樹が頭で繋いだボールを、八角がミドルにチャレンジしたボールは枠の左へ。ミドルレンジから繰り出した2つのフィニッシュ。
31分は北九州にスムーズな崩しが。八角、井上翔太、森村昂太と細かく繋がり、八角が放ったボレーはDFのブロックに遭いましたが、前半で最も綺麗な形を創出。32分は横浜に決定機。左への展開からSBの森下俊がクロス。DFに当たったこぼれはゴールの目の前に入っていた中里崇宏の足元に転がるも、プッシュは枠の右へ。40分も横浜のチャンス。中里の右FKを北九州GK武田博行がパンチングで回避すると、こぼれを松下裕樹がミドル。野上結貴がコースを変えるも、詰めたペ・スンジンはわずかに届かず。「ペースは掴めている。このペースで行こう」とは柱谷幸一監督のハーフタイムコメント。ゲームリズムの針はどちらにも大きく触れることなく、慎重な印象のスコアレスで最初の45分間は終了しました。
後半に入ると、勢いよく飛び出したのは北九州。49分、キム・ドンフィと池元の連携から、井上が放ったシュートはDFにブロックされましたが、前線のコンビネーションで好機を創出。55分には横浜も松下が右へ展開し、武岡優斗の上げたクロスに黒津勝が頭で飛び付くも、シュートには持ち込めず。直後には北九州のCBに入った渡邉が果敢な35mミドルを狙うなど、積極性はアウェイチーム。
57分に訪れた決定的なチャンスは北九州。八角のピンポイントフィードが左サイドの裏へ送られると、ボールは走り込んだ井上にドンピシャ。ダイレクトボレーは横浜GK柴崎貴広のファインセーブに阻まれたものの、ワンステージ上がったゴール裏のボルテージ。58分も北九州。森村の右CKはファーでフリーの宮本に届くも、ヘディングは枠の左へ。60分も北九州。井上の左CKは大外を使うサインプレー。森村と渡邉の頭を経由したボールは、ゴール前に落ちるも池元は詰め切れずに柴崎がキャッチ。「八角と新井(純平)の展開力でウチの方が上回っていた」(柱谷監督)北九州のラッシュ。
押し切った北九州。62分、八角が縦に入れたクサビを池元はダイレクトで右へ。一度タイミングのズレたキム・ドンフィでしたが、拾い直して中を確認すると、素早くクロスをニアへ。ここへ全力で走り込んで来たのは「サイドで積極的にプレーしてくれていた」と指揮官も認める森村。頭で突っ込んだボールはGKとカバーに入ったDFに当たりながらも、ゴールへ転がり込みます。天才肌のレフティが見せた泥臭い先制弾。とうとう均衡が破れました。
「動きが出てくると得点のチャンスも出てくるが、失点のピンチも出てくる」と山口監督が語った後者の面が出てしまった横浜。失点直前の58分には、「間も空いてきたので、そこで受けてポイントになったり、仕掛けられるように」(山口監督)カズを下げて、野崎陽介を1.5列目的な位置へ投入し、リズムチェンジを図ったものの、なかなか効果は出てきません。
次に狂喜の瞬間を享受したのもアウェイゴール裏。69分、野上にイエローカードでのストップを強いた、キム・ドンフィのドリブルで獲得したFK。右から森村が最高のボールを送り込むと、宙を舞ったのは170センチのキム・ドンフィ。力強く頭で捉えたボールは二アサイドを破る追加点。自ら得たFKを自らのゴールで完結させた、コリアンストライカーの貴重な一撃。点差が広がりました。
3連敗は避けたい横浜。71分には武岡の右クロスを野崎が触り、ペ・スンジンが至近距離から足を伸ばしたシュートは、北九州のディフェンスリーダー前田和哉が体で阻止。72分には内田智也とナ・ソンスを入れ替え、最終ラインを3枚にして右の武岡、左の野崎という両翼を最大限に生かすスタイルへ切り替えます。
崩れたバランス。77分、メインスタンドサイドで宮本にタックルを仕掛けたナ・ソンスへイエローカードが提示されると、集まる両チームの選手たち。その密集へ蹴り込まれたボール。見逃さなかった副審の助言を受け、今村義朗主審が下したジャッジは、ボールを蹴った森下への一発退場。不要としか表現しようのない行為で、横浜は残り時間を10人で戦うことになりました。
人数の優位性が内容の優位性に直結しないサッカーの摩訶不思議。80分、左サイドから野崎が送ったクロスを、ニアに潜ったナ・ソンスは収め、再びマイナスの折り返し。フリーで入ってきた中里が左足を振り抜くと、一直線の弾道が貫いたゴールネット。「非常にファイトして1点返してくれた」と山口監督。数的不利の"副作用"はファイトするメンタル。スコアは1点差に引き戻されます。
80分に途中出場の渡大生が右サイドを抜け出し、逆サイドから走り込んでいた森村のボレーが枠の右へ外れるのを見て、「10人になったら形もへったくれもない」と山口監督は最後のカードとして黒津と永井雄一郎をスイッチ。諦めない勝ち点獲得。できれば"3"をという欲求。84分にはキレキレのナ・ソンスがFKを奪い、中里の直接狙ったキックはカベに阻まれるも、こぼれを野崎がクロスに変えると、ペ・スンジンが頭で残したボールは武田にキャッチされましたが、「根性を出してやっていた所は評価したい」と山口監督も口にするほどに打ち出した横浜の"根性"。
86分は横浜のCK。右から中里が蹴ったボールは、何とかDFがクリア。88分は横浜のFK。左から松下が蹴ったボールは、何とかDFがクリア。89分は横浜のFK。寺田紳一がドリブルで切り開いた絶好機。松下の直接シュートはカベに当たったものの、セットプレー連発で、一層強める北九州ゴール前への圧力。
「今週はクロス対応の練習をかなり時間をかけてやった」(柱谷監督)北九州は相次いで交替を決断。90分には左SHの森村とSBが本職の松本陽介を入れ替えると、90+2分には池元に替えて大島秀夫を最前線に投入。2枚の"クローザー"を相次いで送り込み、何が何でも手にして帰りたい勝ち点3。
90+3分のラストチャンスはホームチーム。寺田が右へ振り分けると、クロスマシーンと化していた武岡が渾身のクロスを中へ。こぼれてきたボールを中里が左足で叩き、このルーズボールがラインの裏へ。2人が殺到していた状況下でペ・スンジンが懸命な反応で打ったシュートは、しかし無情にも枠の左へ。それから程なくして迎えたタイムアップのホイッスル。「ほぼ全ての時間でゲームをコントロールして勝ちの流れを創れた」と柱谷監督も言及した北九州が、最後は何とか凌ぎ切る格好で勝ち点3を持ち帰る結果となりました。
「今日に関しては非常に妥当な結果じゃないかなと思う」と柱谷監督が話した北九州は、ボランチに位置した八角が絶大な存在感を放っていました。前述したように、昨年まで在籍していたチームとの古巣対決ということで、当然気合が漲る中でも、勝負所と落ち着かせ所を押さえた舵取りは抜群。"ボランチ"の名にふさわしい8番の好操縦が、チームを勝利に導いたと言い切ってもいいのではないでしょうか。
一方の横浜はエンジンの掛かりが遅過ぎました。ゴールへの予感が漂い始めたのは、1点目を取ってからのラスト10分間くらい。特に前半は我慢比べの展開だったとはいえ、イージーなミスが続いてパスワークのリズムができなかったという点は反省材料でしょう。「これでへこたれる訳には行かないし、へこたれるつもりも毛頭ないので、何度倒されようが戦う。レフェリーストップが掛かるまでは」と語った山口監督。ストップを掛けかけている"レフェリー"とは、あるいは自分たち自身なのかもしれません。      土屋

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