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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年08月01日

インターハイ1回戦 作陽×鹿児島城西@福岡フットボールセンター(人工芝)

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fukuokaFC0801.jpg高校生が繰り広げる真夏の祭典の第2幕は福岡。全国高等学校総合体育大会、"インターハイ"の季節が今年も帰ってきました。
昨年度はインターハイも選手権も全国ベスト8という堂々たる成績を残し、今年はプリンス中国でもここまで首位を快走するなど、全国にその名を知られる作陽。知将・野村雅之監督の下、数チームのスカウト陣を福岡へ集結させる逸材の平岡翼(3年・ポルベニル柏原SC)を擁し、昨年のチームに立ちはだかった"ベスト8"超えを狙います。
対するは鹿児島の新盟主として、年々その存在感を増しつつある鹿児島城西。濵上大志(3年・太陽SC)、向高怜(3年・桜島中)、加治佐楓河(3年・鹿児島育英館中)などアタッカー陣に昨年からのレギュラーが多く残り、これで4季連続の全国と経験値も十分。今大会は初戦から優勝候補の一角と対戦することもあって、「今回は作陽高校との対戦だけに集中してやってきた。2回戦の情報はまったくない」と小久保悟監督。一戦必勝で難敵と対峙します。キックオフ時点の10時でも、既に福岡フットボールセンターの気温は31度。1回戦屈指の好カードは、作陽のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは作陽。5分、永松達郎(3年・ガンバ大阪JY)がトリック気味に左へ出したFKを、谷壮一郎(3年・アヴァンサールFC)は一度DFにぶつけるも、自ら拾って枠の右へ外れるシュートチャレンジ。さらに7分には丸野了平(3年・EXE'90 FC)、大塚光一郎(3年・藤陽FC)と繋ぎ、注目の平岡が右サイドで加速してクロス。ここは鹿児島城西GK下野和哉(1年)がキャッチしましたが、まずはセットプレーとスピードの"飛び道具"で、作陽がチャンスを創ります。
基本的には「ウチがボールを持つのは持つと思っていた」(野村監督)「作陽さんはボールを動かしてくるのが上手で、ビルドアップもしてくる」(小久保監督)と両指揮官が声を揃えたように、ボールを握るのは作陽。山本義道(3年・FC NEO JY)と野村一稀(3年・FCリフォルマJrユースFC)の両CBが最終ラインでボールを動かしながら、平岡と佐々木宏太(3年・SAGAWA SHIGA FOOTBALL ACADEMY JY)の両SHを走らせるフィードをハイサイドへ供給。「前から行ってもボールは取れないし、スピードのある選手もいるので、ある程度リトリートして後ろのスペースを消して、入ってきた所を狙おう」(小久保監督)という鹿児島城西の狙いもあって、作陽が持ち味を発揮する形でゲームに入りました。
一方の鹿児島城西は15分、高い位置でのボール奪取から加治佐が左へスルーパス。受けた濵上のシュートは右ポストを直撃し、こぼれに詰めた吉田隼涼(3年・姶良加治木中)のボレーは丸野が体でブロックしたものの、「カウンターになればある程度点を取れる選手はいる」と小久保監督も言及したカウンターから決定機を創出。持ち味という意味では、鹿児島城西も攻守に十分対抗して見せます。
16分は作陽。左サイドで自らのロストを再奪取した佐々木のパスから、永松が枠に収めたミドルは下野が何とかキャッチ。22分は鹿児島城西。濵上の左CKを作陽GK太田純貴(3年・ガンバ大阪JY)がパンチングで凌ぐと、加治佐がボレーで繋ぎ、中村匠吾(2年・鹿児島松元中)のヘディングは大きく枠の上へ。25分は作陽。右から左SBの東出功(3年・伊賀SC)が入れたCKに、ニアへ走り込んだ山本はフリーで頭に当てましたが、クロスバーを越えたボール。フィフティに出し合う手数。
そんな中、先にスコアを動かしたのは薩摩隼人。28分、吉田が付けたボールを濵上は右へ完璧なタイミングでスルーパス。「昨日の夜のミーティングで、相手はSBのディフェンスがおろそかになる所があるから、その裏を狙うということを言われた」という江﨑晃大(2年・太陽SC)はその"裏"にフリーで潜ると、「もうシュートだけ考えていた」という思い切りのいいフィニッシュでGKとの1対1を制します。徐々にボールが集まり出していた濵上と、縦への積極性が出始めていた江﨑の見事なシンクロ。前半は鹿児島城西が1点をリードして35分間が終了しました。
後半も先にチャンスを掴んだのは鹿児島城西。39分、左サイドへ展開したボールを、前半終了間際に負傷の向高と交替でピッチへ送り出された中村亮(2年・鹿児島育英館中)はエリア内からフィニッシュ。決定的なシーンでしたが、ボールはクロスバーの上へ消え、追加点とはいきません。
逆に42分は作陽の反攻。谷が縦へ長めの勝負パスを繰り出し、GKのクリアが小さくなった所を永松が直接狙ったロングは、いいコースに飛ぶもクロスバーを越えましたが、ここからは完全に作陽の時間帯。44分には1人目の交替として谷と青木大峰(3年・盾津東FC)を入れ替え、中盤に変化を加えると、45分にも好機創出。山本、大塚、永松と繋ぎ、平岡がドリブルから上げたクロスはGKにキャッチされるも、53分には北脇玄基(3年・SAGAWA SHIGA FOOTBALL ACADEMY JY)が惜しい直接FKを放つなど、増していく緑の勢い。
この前後から作陽が多用し始めたのは、「15番の選手へパワープレー気味に入れる長いボールが多くなった」と小久保監督も振り返った、1トップに聳える大塚へのハイボール。野村監督は「放り込んでフィジカルに任せた方がチャンスをたくさん創ったというだけの話」と渋い顔でしたが、53分には野村のフィードを大塚が頭で落とし、永松のドリブル突破は下野が果敢な飛び出しで何とか危機を回避しましたが、「ヘディング勝負とセカンド勝負」(小久保監督)でゴールへの意欲を打ち出します。
とはいえ、注目の平岡にはいいボールを入れさせたくない鹿児島城西の秘策は、「ウチの選手の中では速い中村を付けて、右に行ったら右に行って、左に行ったら左に行ってと、マンマークという形で平岡くんが移動した方に中村を移動させて、離されないようにした」(小久保監督)というもの。そのために元々左SBはレフティが務めていた所を、中村と平岡の関係性で右にも行く可能性があるため、両SBの資質を持つ東郷大志郎(2年・アミーゴス鹿児島U-15)を起用し、「この試合限定」(小久保監督)の特別シフトで平岡封じを敢行。時折その驚異的なスピードに翻弄されかかるシーンもあったものの、基本的には中村が最後の所ではやらせない好対応で対抗。「昨日言われた通りにしっかりできた」とは江﨑。平岡からのチャンスメイクは一定以上消すことに成功します。
64分には鹿児島城西に久々のチャンス。江﨑、濵上と回ったボールを中村は右へラストパス。江﨑はわずかに届きませんでしたが、際どいシーンを生み出すと、残された時間はいよいよ5分。「かわされてもカバーの選手が次から次へと出て行って、チャレンジにいくようにして欲しいし、自由にシュートを打たせないようにして欲しい」という小久保監督の鹿児島城西が守り切るか。「あとはどう点を取るか」(野村監督)という所までは来ている作陽が押し返すか。
65分は作陽。永松がうまく浮かして裏へ。フリーで抜け出した大塚の左足ボレーは、しかしわずかに枠の右へ。67分も作陽。右から東出が蹴ったCKは左へ流れ、大塚が差し戻したクロスは中と合わず。69分も作陽。左サイドを粘って突破した東出のクロスを、ニアで大塚が舞ったヘディングは枠の左へ。耐える鹿児島城西。圧力を掛け続ける作陽。アディショナルタイムは4分。
70+2分も作陽。執念で前に運んでこぼれたボールに、食らい付いた佐々木のミドルはやや距離があり、下野が丁寧にキャッチ。安堵の溜息が広がった青の応援団に、熱狂の瞬間が訪れたのはその直後。70+3分、ピッチ中央、ゴールまで30m弱の位置で鹿児島城西が獲得したFK。スポットに立ったのは濵上と吉田。短い助走から蹴ったのは、小久保監督も「もしかしたら決めてくれるんじゃないかなという期待はしていた」という吉田。右スミへ曲がって落ちたボールは、GKもわずかに及ばず華麗にゴールネットを揺らします。ダメ押し弾に笑顔が弾けた青い歓喜の輪。「決める所で決められた」(江﨑)鹿児島城西がハイレベルな激闘を制して、2回戦に勝ち進む結果となりました。
1回戦でどちらかが消えてしまうのがもったいないような、素晴らしいゲームだったと思います。敗れた作陽もCBからの狙いあるフィードや、平岡と佐々木の推進力を生かしたサイドアタックなど、特徴は十分に披露。残念ながら初戦敗退となってしまいましたが、意図を持って野村監督が創り上げてきたスタイルの一端は見せてくれたのではないでしょうか。
鹿児島城西は「1回戦が一番大きなヤマ」(江﨑)という共通認識の下、70分間を通じてしっかりした強度のプレーを続けたことが一番の勝因ではないかと感じました。特に守備時の1対1では、全員が目の前の相手に絶対負けないという強い意志を感じる対応の連続。後半の押し込まれる時間帯にも、「相手に自由にプレーさせないように、守備の意識をしっかりした」と江﨑も語ったように最後まで"穴"を作らず、ゼロで守り切った集中力が印象的でした。「ここしか考えてこなかったですし、1試合で終わるつもりで来ましたから、後のことは今から考えます」と笑った小久保監督。薩摩からやってきたタフな17人の夏は、まだまだ終わりません。      土屋

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