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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年07月15日

JFL第20節 FC町田ゼルビア×横河武蔵野FC@野津田

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2年ぶりに帰ってきたリーグでの南北多摩合戦は、おそらくこの一戦がファイナルバトル。多摩の覇権を懸けた大一番は野津田です。
前期終了時の3位という成績を受けて、今年から招聘した秋田豊監督を解任。至上命令とも言うべき1年でのJ2復帰へ向け、不退転の決意を見せた町田。とはいえ、楠瀬直木監督代行体制下で戦ったここ2試合も1分け1敗。首位の長野に10ポイント差を付けられている状況を考えると、これ以上の足踏みは許されません。
一方、6シーズンに渡ってチームを率いた依田博樹前監督が退任し、鹿島や清水でのプレー経験を持つ吉田康弘監督が就任した横河武蔵野。開幕戦こそ快勝を収めて絶好のスタートを切ったものの、前期中盤には7試合未勝利を経験するなど、徐々に苦しい戦いを強いられ、現在も3試合勝ちがない状況。前期はホームで敗れた"合戦"を、浮上のキッカケにしたい所です。前述した通り、来年度からのリーグ構成変更に伴い、「今年で最後になるだろうと思っている」と横河の瀬田達弘(29・東京学芸大)が話したように、リーグ戦で両者が激突するのはおそらく今回の対戦が最後。白星での有終を歴史に刻むのは果たしてどちらか。注目のダービーは横河のキックオフでその幕が上がりました。
ファーストシュートは町田。3分、CBの深津康太(28・東京ヴェルディ)が積極的なミドルをクロスバーの上へ。6分にも左SHに入った鈴木孝司(23・法政大)がエリア内で粘って繋ぎ、こぼれに反応した木島徹也(29・松本山雅FC)がDFともつれて転倒。清水修平主審の笛は鳴りませんでしたが、まずはゴールへの意欲を打ち出します。
対する横河も手数でしっかり対抗。8分、昨年の天皇杯でFC東京を沈めるFKを叩き込んだ岩田啓佑(26・早稲田大)が果敢なミドルにチャレンジ。10分にも小野真国(23・大阪学院大)のパスを、冨岡大吾(27・AC長野パルセイロ)が右へ振り分け、上がってきた右WBの林俊介(27・東京学芸大)は枠を超えるボレーまで。アウェイチームもアグレッシブに立ち上がりました。
16分は町田。鈴木が木島とのリターンからクロスバーの上へ外れるミドルを放つも、これはこの時間帯をある意味で象徴するシーン。「相手が繋いでくるのはスカウティングでわかっていたし、ウチの3トップが相手の4バックに対してしっかりプレスを掛けられた」とCBの瀬田が話し、吉田監督も「前からうまく相手の攻撃に対して守備ができていた」と評価した通り、横河は右から矢部雅明(24・静岡産業大)、冨岡、小野で組んだ3トップがボールホルダーを追い回し、縦へ入ってきたボールは最終ラインの小山大樹(32・群馬FCホリコシ)と上田陵弥(24・中央学院大)で迎撃。それでも取れなかった際には、ドイスボランチの岩田と金守貴紀(28・早稲田大)もしっかり挟み込むなど、球際の強さで対抗することで町田をエリア内へ立ち入らせず、「ロングシュートは打たせておけばいいやという感じ」(瀬田)で割り切りながら、時計の針を進めていきます。
逆に横河の攻撃面は、「意図してSHの奥の方を狙ってきた所があった」と町田のキャプテンを務める太田康介(30・横河武蔵野FC)が振り返ったように、横河にとって特に右のハイサイドへフィードを送り込み、矢部や林を走り込ませる形が多く、セットプレーの獲得も右サイドが目立ちます。
すると21分に横河が迎えた決定機は、やはり右サイドのセットプレー。レフティの遠藤真仁(27・ロッソ熊本)が鋭いFKをファーへ送り込み、冨岡のヘディングはGKを破ったものの、ゴールライン上で町田のCB高野光司(20・ギラヴァンツ北九州)が超ファインクリア。直後のCKも遠藤が再び蹴ると、またもファーで今度は小山が枠内へヘディングを収め、ここも高野がブロックしましたが、遠藤の左足が続けてビッグチャンスを呼び込みます。
さて、「前の動きがちょっと少なく、裏へ抜けられなかった」(楠瀬監督代行)町田にも26分に決定的なシーン。ここ最近は左SBに入っている柳崎祥兵(29・駒澤大)がDFラインの裏へアーリークロス。収めた鈴木のシュートは強烈に枠内を襲いますが、ここは横河GK藤吉皆二朗(21・横河武蔵野FCユース)が抜群の反応で防ぎ、ボールは右ポストに直撃。先制とはいきません。
30分は横河。林が斜めに入れたクサビを冨岡が落とし、最後は金守がシュートを打ち上げるも綺麗な崩しを披露。35分は町田。右SBの三鬼海(20・名古屋グランパスU18)が粘って縦へ運び、阿部嵩(29・ツエーゲン金沢)のリターンから、三鬼が放った決定的なシュートは、しかし枠の上へ。37分、39分と続けて木島が放った枠外ミドルを挟み、45分にも町田は大竹隆人(25・国士舘大)のミドルが枠の左へ。「前半は相手の攻撃に怖さもなかったし、3バックに手応えを感じてきている」と瀬田。町田がボールを握る中でも、横河がうまく凌ぎながら隠し持ったナイフをちらつかせるような展開はスコアレス。勝敗の行方は後半の45分間に委ねられました。
ハーフタイムに下された決断。楠瀬監督代行は「ボールを動かそうというコンセプトで行った場合、どうしても足元足元になっちゃう」という状況打破のため、「攻撃に勇気を持たせるという意味で今回獲得したつもり」の杉本竜士(20・東京ヴェルディ)を後半スタートから左SHへ投入し、縦への推進力アップを図ります。
46分には矢部と小野の絡みから、林がゴール左へ外れるシュートを放ち、横河が先に手数を繰り出す中、直後に輝いたのは指揮官から「好きにやってこい」と送り出された救世主。47分、三鬼が付けたボールを向慎一(28・AC長野パルセイロ)が左へ流すと、ここで受けたのは杉本。縦への加速から中へ切れ込み、エリア外から思い切り良く放ったシュートはゴール左スミへ綺麗に飛び込みます。デビュー戦のファーストタッチでいきなりのゴールに、「彼は持っているのかな」と楠瀬監督代行。沸き上がるスタンドの青。電光石火という形容がピッタリの先制弾で、町田が1点のリードを奪いました。
ところが、得点直後からペースを握ったのはビハインドの横河。52分には小野がドリブルで仕掛け、こぼれを上田が枠内へ飛ばした好ミドルは町田GK相澤貴志(31・川崎フロンターレ)がファインセーブで回避。54分には1枚目のカードとして、小野と若狭友佑(24・青山学院大)を入れ替えると、55分にも岩田の縦パスを冨岡が捌き、若狭が狙ったシュートはDFに当たって枠の右へ逸れましたが、一気に掴んだゲームリズム。56分にも岩田の左CKがこぼれると、上田の無回転ミドルは相澤が何とかパンチングで対処。全体的に相手へ寄せられなくなった町田を尻目に、続く横河の躍動。
結実の時は60分。瀬田の正確なサイドチェンジは遠藤へピタリ。まったくのフリーで上げたクロスに冨岡と若狭が突っ込み、ルーズボールを拾った矢部のボレーは相澤もわずかに触りましたが、ゴールネットへ転がり込んだ球体。「ゼルビアだからやってやろうという気持ちもあるし、常に勝ちたい相手」(瀬田)へ見舞った痛烈な同点弾。流れそのままに横河が追い付いてみせました。
折れなかったホームチーム。失点から5分後の65分、右サイドから三鬼がアーリークロスを放り込むと、上がってきた柳崎は懸命に頭で折り返し、向を経由したボールへ飛び込んだのは阿部。ボールが到達したのはサポーターの目の前で揺れるゴールネット。「もう負けてはいけないというプレッシャー」(楠瀬監督代行)を振り払う勝ち越し弾で、再び町田がアドバンテージを手にします。
折れなかったアウェイチーム。失点から1分後の66分、「負けていたのでどうにかしてやろうと」瀬田が最後尾からスルスルと上がり、上田のパスを引き出すとドリブル開始。「相手が3人くらい食い付いたので、横にフリーの選手が見えた」タイミングで短いパスを送ると、ゴールまで30m強の位置から矢部は迷わずシュートチャレンジ。軌道の残像が見えるかのような弾丸ミドルは、サイドネットの内側へ突き刺さります。これぞ最後の合戦にふさわしい殴り合い。20分間で生まれた4つのゴールは均等に。再びスコアは振り出しに引き戻されました。
これだけでは終わらないのが"ダービー"。68分には横河にアクシデント。右サイドでエリア内へ侵入した若狭がDFともつれるように倒れると、清水主審はシミュレーションと判断してイエローカードを提示。既に1枚もらっていた若狭にレッドカードが突き付けられます。1点目にも関与し、前線の活性化に大きく寄与していた若狭の退場。横河は残り20分近くを1人少ない人数で戦うことになります。
しかし、3-4-3から4-4-1に布陣も組み替え、「失点しないように考えながら、カウンターで点が取れればなという所で同じイメージは共有できた」(瀬田)横河の前に、「足が止まってしまったという一言に尽きる」(楠瀬監督代行)町田はギアを上げ切れず、数的優位こそ得たものの、一度相手に傾いた流れを引き寄せられません。むしろ「引き分け狙いではなく、チャンスがあったら勝ちに行く」と吉田監督が強調した横河に、時折サイドアタックからチャンスの萌芽が。時間の数字が大きくなっていくスコアボードのデジタル表示。必死に選手を後押しする両ゴール裏。
楠瀬監督代行も77分には鈴木を下げてアンデルソン(29・ファジアーノ岡山)を、85分には三鬼を下げて田中貴大(19・東京ヴェルディ)を相次いで投入。吉田監督も80分には冨岡と関野達也(27・青山学院大)を入れ替え、再び前線からの守備を増強。勝負は残り5分とアディショナルタイムへ。
85分は町田の決定機。替わったばかりの田中が右から左足でピンポイントクロスを送り、太田のヘディングは枠を捉えるも藤吉ががっちりキャッチ。88分は町田の決定機。左サイドから"足"の残っていた杉本が強引に持ち運び、30m近い距離もものともせずにミドルを放つも、ボールは左ポストにヒット。90+5分は横河の決定機。関野が前線でタメを創り、矢部が右へ丁寧にラストパスを送ると、SBの位置から駆け上がってきた林は強烈なシュート。相澤が執念で触ったボールは、クロスバーに当たってピッチの外へ。吹き鳴らされた試合終了を告げるホイッスル。南北多摩合戦は決着付かず。双方に勝ち点1ずつが振り分けられる結果となりました。
町田にとっては痛恨のドローという印象です。プレッシャーについての対処法を問われ、「簡単な答えがあればそんな楽なことはないが、やっぱり勝者になるチームはそういうことを乗り越えなくてはいけないし、乗り越えられないチームは勝者になれない」と語った楠瀬監督代行。「楠瀬監督のやりたいことを意図しながらやっている最中」(太田)だからこそ、結果の欲しかったホームのダービーでしたが、最後まで数的不利の相手を崩し切れず、非常に厳しい現実を突き付けられてしまいました。
試合終了と同時に「よくやった、よくやった、ムサシノ!」というコールがサポーターからも巻き起こったように、横河は持てる力をフルに出し切ったドローと言えそうです。「10人になってからが今までやってきた横河のサッカー」と吉田監督が話せば、「自分たちがやってきていることが出せたし、1人少なくなってからも攻めることを忘れなかった」と瀬田。数字以上に価値のある"勝ち点1"を、大事なダービーで獲得したのではないでしょうか。        土屋

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