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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
遥かなる1月1日を望む男たちの夢舞台。東京の社会人最強とも言うべき2枠を決めるデスマッチは聖地・西が丘です。
昨年は東京ヴェルディユースと東京23FCを倒し、東京王者として天皇杯本大会へ臨んだ横河武蔵野FC。カテゴリーで見ても都内最強のFC東京と激突した2回戦では、後半アディショナルタイムに岩田啓佑(26・早稲田大)が40m近い距離からのFKを直接沈め、見事にJ1クラブを撃破。今年は連覇を懸けてこのステージを戦います。
一方、3月の東京チャンピオンシップファイナルで全社王者のFC KOREAに競り勝ち、3年ぶりにこのステージまで駒を進めてきたエリースFC東京。昨年の関東リーグ1部で2位に輝くなど、その実力はホンモノ。クラブ史上初となる本大会出場へ、「平日にもかかわらず30人近く集まった。仕事の関係で何人かは来られなかったが、選手の集まりはいい方」と檜山康監督。アップセットの準備は整いました。徐々に降り始めた雨にも西が丘の芝は抜群のコンディション。横河がボールを蹴り出し、ゲームはスタートしました。
開始10秒、金守貴紀(28・早稲田大)がいきなりキックオフシュートを見舞ったゲームは、「JFLと何ら変わりなく、いつもと同じようにキックオフから100%で行けるようにしよう」と吉田康弘監督に送り出された横河の攻勢。5分に左から岩田の蹴ったCKは、エリースのGK白子哲平(29・横浜フィフティークラブ)がパンチングで回避したものの、13分にもセットプレーからチャンス。遠藤真仁(27・ロッソ熊本)が右から入れたCKのクリアボールを小野祐輔(24・日本大)が拾い、再び遠藤が放り込んだクロスはGKがファンブル。関野達也(27・青山学院大)は詰め切れませんでしたが、まずは手数を繰り出します。
19分も横河。遠藤の右FKは嫌らしいバウンドでゴール前を襲うも、戻っていたエリースのFW山下真太郎(27・横河武蔵野FC)が両ヒザで何とかブロック。20分も横河。左サイドで創った流れから、林俊介(27・東京学芸大)の横パスを岩田が打ち切ったミドルはわずかにゴール右へ。インプレーからもチャンスを創出した横河の流れ。
さて、「スカウティングは前節を見ただけで、この試合に向けてのトレーニングはしていない」(檜山監督)というエリースは、ある程度ブロックを築きながら、前半は守備に重点を置く戦い方で対抗。22分には高橋周大(29・横河武蔵野FC)の突破から獲得したCKを谷川烈(33・FC町田ゼルビア)が蹴り込むも、清岡賢二郎(28・東京外国語大)のヘディングは叩き付け過ぎて枠外へ。さらに24分にはCBが負傷交替を余儀なくされ、早くも1枚目のカードとして津田和樹(30・FC町田ゼルビア)を左SBへ送り込み、藤森渉(27・早稲田大)がCBへスライドする配置転換を強いられます。
ただ、25分に林が左足ミドルを枠の右へ外し、27分に清岡もミドルをゴール左へ外して以降のゲームは膠着状態に。「シュートまで行けなかったし、ボールを持たされているだけで主導権を持っていた訳ではない」と吉田監督。確かに横河がボールは握りながらも、その繋ぎの中からはなかなかフィニッシュまで取れず。36分には左から右足で矢部雅明(24・静岡産業大)がクロスを放り込み、最後は小野が頭で狙ったシュートは白子が辛うじてファインセーブで阻止。41分にも瀬田達弘(29・東京学芸大)が右へ展開するも、金守のミドルは枠の右へ。「ボールの動く距離やスピードが相手に守りやすい回しだった」と吉田監督が話せば、「前半を0-0で乗り切れたのは凄く良かったし、選手も納得していると思う」とは檜山監督。攻勢とは裏腹に、エリースが思い通りの展開に持ち込んだ感のある前半はスコアレスで終了しました。
ハーフタイムで吉田監督は選手交替に着手。ドイスボランチの一角に入っていた金守を下げて、金井洵樹(22・大東文化大)を送り込み、攻撃面でのてこ入れを図るも、後半のファーストチャンスはエリース。47分、高い位置で山下がボールを奪い、裏へ出したボールに清岡は追い付けませんでしたが、48分にもエリースのフィニッシュ。相手陣内でショートパスを5本近く回し、石川清司(29・SGシステム)が狙ったミドルは枠の左へ外れるも、「後半はいくつかチャンスが来るだろうなと思っていた」と檜山監督。意気上がる赤のサポーター。
飛び出した別格の"左"。51分、岩田が左へ展開すると、遠藤が優雅に振るった左足。絶妙クロスはファーサイドまで到達し、うまく収めた林は素早くシュート。ボールはニアサイドをぶち抜き、ゴールネットを揺らします。「左からはいい状態だったら上げろと言っていた」吉田監督の指示通り、前半から最も相手に脅威を与えていた遠藤のクロスで、明日が誕生日の林がバースデー"イブ"ゴール。横河が1点のアドバンテージを手にしました。
「声が止まって、足も止まった"デッドポイント"」(檜山監督)で失点を喫したエリース。58分には香西駿介(19・東海大菅生高)のロングスローを石川が戻し、香西が蹴った鋭い右クロスはわずかに清岡へ合わず。60分にもCBの安藤謙(27・T.F.S.C.)が自陣で得たFKから、50m先のゴールを直接狙うと、最後は横河GK藤吉皆二朗(21・横河武蔵野FCユース)に阻まれたものの、コースとスピード共に好チャレンジ。跳ね返したいビハインド。
61分は横河。左右に大きく揺さぶり、岩田が意外なタイミングで送ったスルーパスを小野がプッシュ。ここは白子のファインセーブに阻まれましたが、訪れた2度目の歓喜は直後の63分。再度ピッチに降臨したレフティ神。サイドでボールを受けた遠藤はマーカーを抜き切ることなく、タイミングだけでピンポイントのアーリークロス。舞った関野のダイビングヘッドがゴールへ突き刺さります。「前半はクロスへ入っていけていなかったが、後半は入っていけていた」と指揮官も評価したサイドアタックの結実。点差が広がりました。
2点を追い掛ける展開となったエリース。檜山監督も64分に清岡と深澤良(24・慶應義塾大)を入れ替え、前線の顔ぶれに変化を加えると、ここから始まったラッシュ。67分、スルスルと最後尾から上がってきた藤森は、高橋のリターンを右足で枠へ飛ばし、この一撃は藤吉にファインセーブで弾かれましたが、68分にも深澤の右クロスに自らサイドへ展開した山下がヘディングを放ち、ボールは枠の右へ外れたとはいえ、一気に引き寄せたゲームリズム。
73分もエリース。谷川が自ら蹴った左CKのこぼれを再びクロス。藤森が頭で折り返し、安藤がトライしたボレーは枠の左へ。76分もエリース。谷川が今度は右から入れたCKに、ニアへダイブした安藤のヘディングは枠の右へ。80分もエリース。深澤が1人でキープし続け、右から蹴り込んだクロスは藤吉がセーブ。檜山監督も「1点取れば流れは変わるかなという感じだった」と言及したように、エリースが圧力を掛け続けます。
「シュートまで行かれている」(吉田監督)横河に、シュートまで行っているエリース。88分にも左サイドを深澤が切り裂き、そのまま放ったシュートはわずかに枠の左へ。「残り10分、15分はよくやった」と檜山監督。90分に小野のパスから途中出場の冨岡大吾(27・AC長野パルセイロ)が迎えた1対1の決定機も、白子が粘って粘ってファインセーブ。ゲームはいよいよアディショナルタイムへ。
90+1分のチャンスはエリース。左サイドを高橋が駆け抜け、疲労の中でもきっちり枠内へ収めたシュートは、GKを破るも平岩宗(26・駒澤大)が全力で戻ってスーパークリア。「最後まで諦めずにやってくれた」(檜山監督)エリースのラストチャレンジもゴールには届かず。
ようやく刺されたトドメは90+2分。エリースDFがボール処理を誤ると、絶好のボールは小野の足元へ。思い切り叩いたシュートがぶち抜いたニアサイド。「彼のストロングポイントなので、あそこに入っていることが大事」と吉田監督も認める18番が下ろした勝負の幕。横河が2年連続の頂点へ確実に歩みを進める結果となりました。
「見ての通りよくなかった。勝ったことだけが収穫」と吉田監督も渋い顔を見せたように、エリースが健闘したゲームだったと思います。前半での負傷交替もあり、「先に交替枠を使ってしまったので、変化を付けにくかった」とは檜山監督。それでも何度か決定的なチャンスを創出するなど、いわゆる"格上"を向こうに回し、小さくない収穫を得たように見えました。対して、「ウチはそんなに余裕がないので、まず1つ1つやっていかないと」と吉田監督が言及した横河はスコア以上に苦しめられたものの、土曜日のリーグ戦から3人を入れ替えただけのスタメンで臨んだ中3日のゲームでも、最終的には3点差を付けての勝利。「大会関係なく同じ姿勢で行くだけ」(吉田監督)の横河が来月迎えるネクストラウンドは、早稲田大との大一番です。 土屋
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