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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年07月29日

クラ選ラウンド16 清水ユース×仙台ユース@敷島

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shikishima0729.jpgクラブユースの夏、群馬の夏も今日からいよいよノックアウトラウンド。第1試合に登場するのは、グループ無双のオレンジ軍団と昨年度ベスト8の黄金戦士です。
参加24チーム中、唯一の1次ラウンド3連勝を達成。その攻守に取れた抜群のバランスから、一躍優勝候補へ名乗りを上げた清水ユース。「形にはめた"パターン"というのは俺はあまりないので、その状況によって選手で判断ができるようにするべき」(大榎克己監督)というベースの下、11年ぶりの戴冠をその視界の先に捉えつつ、まずは目の前の試合に全力を注ぎます。
対するは昨年度も1次ラウンドを突破すると、ラウンド16で南野拓実らを擁するC大阪U-18を破り、ベスト8進出という躍進を遂げた仙台ユース。「今まではどっちかというと来て、ビビッて、終わってというような感じだったが、僕らはベスト16へ行くのは当然というような雰囲気になった」と話したのは越後和男監督。目標の昨年越え、すなわちベスト4に向けて相手に不足はありません。朝から降り続いた雨こそ勢いを増しつつあるとはいえ、気温25.7度というコンディションは理想的。注目の一戦は9時ジャストに仙台ボールでキックオフされました。
先制パンチは清水。2分、ここまで4ゴールと好調をキープしている北川航也(2年・清水エスパルスJY)がロングシュートにチャレンジ。早くも積極的なゴールへの姿勢を打ち出すと、その結実はわずか2分後。4分、浅沼大和(3年・清水エスパルスJY)を起点に、宮本航汰(2年・清水エスパルスJY)が右へ繋いだボールを柳沢拓弥(3年・清水エスパルスJY)は中へ。左足ダイレクトで叩き込んだのはやはり北川。大榎監督も「決定力は多分この年代でナンバーワンだと思いますよ」と評価する11番の大会5ゴール目。早くも清水がリードを奪いました。
11分にも宮本が右サイドの裏へ落とすと、走り込んだ柳沢のボレーが枠内を襲うなど、清水がボールキープの時間と共に続けた攻勢。とはいえ、「最初はちょっと戸惑ってやられた」(越後監督)仙台も徐々に持ち味の"繋ぎ"に精度が伴い始め、攻撃の手数も。14分には右SBの飯塚郁仁(3年・ヴェルディSS小山)がドリブルからCKを獲得すると、茂木駿佑(2年・柏レイソルU-15)が右から蹴ったボールをニアで平野晟也(3年・ウイングス鹿沼SC)が合わせるも北川がブロック。15分にも茂木が右へ振り分け、飯野稜平(2年・ベガルタ仙台JY)が左足で上げたボールを女池光仁(3年・FCみやぎバルセロナ)が打ち切ったシュートもDFがブロック。20分も仙台。右から茂木が入れたボールを平恒之介(3年・A.C AZZURRI)が頭で繋ぎ、飯野のボレーは枠を越えましたが、「ちょっと落ち着いたら五分五分かなという感じはしていた」と越後監督も振り返ったように、仙台もいいリズムを掴みます。
ところが次にスコアを動かしたのも清水。26分、浅沼が右へ展開したボールをSBの丸山友輔(3年・清水エスパルスJY)はDFラインの裏へ。走り込んだ岡田匠馬(3年・津ラピドFC)が触ったボールは、飛び出したGKの頭上を破ると、そのままゴールへ吸い込まれます。「DFラインで回している時に結構ハメられる所があって、有効なボールが前に出なかった」(大榎監督)時間帯での貴重な追加点。オレンジ軍団が点差を広げました。
こうなると嵩にかかった王国の若武者。29分、中盤でのルーズボールを浅沼がつつくと、抜け出した北川がトーキック気味に足を出したシュートは、飛び出した仙台のGK佐々木藍(3年・ベガルタ仙台JY)が体でブロック。31分、浅沼のパスで抜け出した左SBの水谷拓磨(2年・清水エスパルスJY)がマイナスに折り返し、北川の強烈なシュートは佐々木藍がワンハンドでセーブ。さらに直後の31分、左サイドを切り崩して宮本が放ったミドルも佐々木藍が何とか体でセーブ。3点目を狙う清水の猛ラッシュ。
越後監督は早々に決断。34分に切ったカードは2枚同時。奮闘していたCBの藤澤恭史朗(3年・ベガルタ仙台JY)と平に替えて、小島雅也(1年・クマガヤSSC)と昨日戦列に復帰したばかりの安田壱成(3年・ベガルタ仙台JY)を投入し、センターラインの立て直しに着手すると、37分には久々のチャンス。ボールカットから飯塚が右サイドを切り裂いてクロスを送り、ボランチから1列上がった茂木のボレーは枠を越えるも、久々にフィニッシュまでの流れを創ります。
それでも以降は清水の再ラッシュ。38分、水谷が中へ送ったボールを、岡田が打ち切ったミドルは枠の右へ。40分、浅沼のスルーパスに抜け出した北川のシュートはわずかに枠の左へ。42分、岡田のパスを北川は完璧なワンタッチリターン。受けた岡田のドリブルが大きくなり、シュートは打てなかったものの、「回りも使えるし、自分でシュートも打てる」(大榎監督)北川のアイデアにどよめくスタンド。45分トータルでのボールキープ率はおそらくフィフティに近い中、「ポゼッションの中でゴールを狙って誰が出て行くか」(大榎監督)という部分で違いを見せた清水が、2点のアドバンテージを握って前半は終了しました。
後半はスタートから仙台が取り戻したアグレッシブな姿勢。47分、右サイドを飯塚が力強く運んで上げたクロスから、左SBの佐藤瑛亮(2年・富谷東向陽台中)のシュートは、清水GK高木和徹(3年・ヴェルディSS小山)がファインセーブで回避し、詰めた安田もシュートには至りませんでしたが、飯塚の推進力で決定的なシーンを生み出すと、50分にもビッグチャンス。飯野のスルーパスはフリーの女池に届くも、懸命に戻った水谷と高木和が2人で体を投げ出すシュートブロック。「1点返せればウチの方が精神的に有利になる」(越後監督)というのはおそらくイレブンの総意。押し切りたい仙台。
51分には女池と井上星矢(2年・ながいユナイテッドFC)を入れ替え、最前線にも変化を付けると、52分にも左サイドできっちりパスを繋ぎ、佐々木匠(1年・ベガルタ仙台JY)の落としを茂木が狙ったミドルは枠の上へ。55分に飯塚が負傷退場を余儀なくされ、小山亮樹(2年・柏レイソルU-15)と交替しましたが、57分にも井上が絡んで最後は茂木が枠外ミドル。「結構早め早めの交替で、アグレッシブな動ける選手を使ってくる」と敵将も言及した越後采配で、一定以上のパワー増強には成功したものの、結果的に痛かったのはキーマンの交替。
「右からは"イケる"というような状態になっていた」(越後監督)中、飯塚がいなくなったことでサイドの推進力は減退。大榎監督も「(流れに与えた影響は)あるかもしれないですね」と認めたように、守備面での脅威が軽減されたことで、逆にそのサイドのSBを務める水谷の躍動という"副作用"も。
59分に柳沢の右クロスを岡田がボレーで枠の右へ外すと、62分には交替出場の西澤健太(2年・清水エスパルスJY)が中へ短く出したボールに、走り込んだ水谷はわずかにゴール右へ外れる惜しいフィニッシュ。直後にも水谷は右足アウトで巧みなスルーパスを通し、北川のシュートは枠の右へ逸れたものの、「空いているスペースがあったら、サイドバックだって中で受けていい」という指揮官のスタイルを体現する水谷の推進力で、再び流れは清水に傾きます。
すると75分に記録されたのは"3点目"。6分前に投入された望月大(2年・清水エスパルスJY)が左から中へ流し、北川は右へ短いラストパス。フリーで受けた柳沢は、冷静にダイレクトでゴール左スミへボールを突き刺します。「後半はあまり自分たちがチャンスを創ることは少なかった」とは大榎監督ですが、少ないチャンスをきっちりモノにするしたたかさは圧巻。決定的とも言うべきゴールが清水に入ると、トドメの一撃はやはりこの男。
80分、左サイドでドリブルを始めた望月は、ボランチへポジションを移していた水谷との完璧なワンツーからさらに縦へ。丁寧に中央へ送ったグラウンダーの折り返しを、入り過ぎた北川が何とか懸命に右足へ当てると、浮いたボールはDFも掻き出し切れず、ゴールの中へ転がり込みます。「あれだけシュートを打ったら、もっと決めて欲しいなと思いますけど」と指揮官も苦笑した自身7本目のシュートは、ツキも味方するチーム4点目。この大会の彼はどうやら"持っている"と言えそうです。
「ここという時に決められるというのは、ちょっとの差だが大きな差」とは越後監督。その"ちょっとの差"を縮めるためのラスト10分間。82分、右から茂木が蹴ったCKに、飛び付いた小山のヘディングは枠の右へ。83分、右SBへスライドした小島が中へ鋭く送り、直前にピッチへ送り出された上野倭(3年・むつ田名部中)は右へ冷静にスルーパス。開いた井上のループは、しかしわずかにクロスバーの上へ。少なくない人数の仙台応援団に広がる溜息と、同時に広がる歓喜への期待。
89分の熱狂。中央で上野が粘って粘って左へ展開すると、引き出した佐藤も粘って粘って懸命にクロス。ポケットへ潜った上野のヘディングが揺さぶったのは、ゴールネットと応援団の魂。最後の"ちょっとの差"をちょっとだけ埋めることに成功した仙台。「ゼロで終われるような試合をしたかったなというのが率直な感想」と大榎監督も渋い顔を見せましたが、90分間を通じてみればチームの成熟度を現わすような内容とスコアで、清水がベスト8へと駒を進める結果となりました。
清水を一言で表現するなら、"オーソドックスの強み"といった感じだと思います。「ポジションもあまりこだわっていないので、流動的に動いて、GKも入れて11人でのポゼッション」という大榎監督の狙いを、各選手が高い基本技術をベースに、高い判断力で実行している印象で、相手が密集するファイナルサードでの崩しも、他のエリアでのプレーと同じ水準でやり切れるというのは、かなりハイレベルだなあと。簡単なようで最も難しい"オーソドックス"の大切さを、改めて実感させてくれるような好チームでした。
「我々の良さも出せたし、ディフェンスの面でも結構ハードに行けた」と越後監督も一定の評価を口にした仙台も、やはり非常に伸びてきているチームでした。昨年、ベスト8で敗退したゲーム後にお話を伺った際は、「常連チームとそうではないチームの差が出た」とおっしゃっていた越後監督も、「ベスト4という壁を俺たちは乗り越えるんだという雰囲気で来ているので、去年の4試合と今年の4試合では内容的に違うし、ちょっとずつチームが全国レベルになってきているなというのは感じる」と明らかに手応えを掴んでいる様子。"常連チーム"への第一歩を確実に踏み出した仙台。昨年のトップチームのように頂点を争う日が来るのも、そう遠いことではないかもしれません。      土屋

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