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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年07月25日

東京都サッカートーナメント社会人代表決定戦 FC町田ゼルビア×東京23FC@西が丘

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nishigaoka0725.jpg第2試合も都内の社会人チーム同士がぶつかる対戦としては屈指のビッグマッチ。JFLと関東1部の対峙は、続けて聖地・西が丘です。
昨年はJリーグ枠として、一昨年は東京王者として、さらにその前年はJFL上位枠として3年連続で本大会まで進出しているFC町田ゼルビア。昨年も2つ勝って4回戦まで進んだように天皇杯とは好相性。無念のJ2降格を経て、2年ぶりに臨む東京ナンバーワンへの挑戦は、3年前に東京ヴェルディを倒したこの地から始まります。
一方、昨年は都予選の決勝まで進出しながら、2度のリードを守れずに最後はPK戦で涙を呑んだ東京23FC。「惜しいだけじゃ何も残らないということを去年学んだ」とはチームを率いる米山篤志監督。「僕らは攻撃的な部分が持ち味なので、格上相手にアグレッシブさを出さずにどうするんだという」(米山監督)覚悟で、"東京獲り"を狙います。18時キックオフということもあって、スタンドには小雨が降り続く中でも400人近い観衆が。好カードの予感が漂う一戦は町田ボールでスタートしました。
立ち上がりから攻勢に立ったのは、「とにかく自分たちの勢いをまず出す」(米山監督)ことを確認してゲームに入った東京23。5分には右サイドを河村太郎(26・日本工学院F・マリノス)がドリブルで運ぶと、自ら枠の右へ外れるファーストシュート。直後の6分にも田村聡(24・神奈川大)、天野徹(24・専修大)、山本恭平(25・尚美学園大)とボールが回り、田仲智紀(23・中央大)のミドルは枠外も"らしい"チャンスを創出。さらに14分にもクサビを山本が巧みに捌いて右へ送ると、河村のドリブルシュートはわずかに枠の左へ。「非常にいい入りができたんじゃないかな」と指揮官も認めたように、ゲームリズムを掌握します。
さて、「リーグ戦を落とすわけにはいかないので、復帰組と若手がどれくらいできるか」(楠瀬直木監督)というメンバー構成になった町田は、システム的に4-3-3を敷いたように見えましたが、「自分のテリトリーはこの辺ですよと言ったら、自然にああなっちゃった部分はある」と楠瀬監督。そういうポジショニングも含めて、なかなか狙った通りの攻撃は繰り出せず、17分から21分にかけて向慎一(28・AC長野パルセイロ)が蹴った3連続CKもシュートには至らず。我慢の時間が続きます。
24分も東京23。左から田仲が入れたCKに、市村瞬(26・グルージャ盛岡)が合わせたヘディングはゴール左へ。35分も東京23。左から市村が投げ入れたロングスローの流れから、猪股聖哉(25・亜細亜大)が右から放ったシュートは、DFに当たって枠の右へ。「前半は勢いを出すという面で思った以上によくやってくれた」(米山監督)「向こうの運動量とかボール回しに若い子は翻弄されちゃった」(楠瀬監督)と両指揮官。「僕と(猪股)聖哉さんの所で、セカンドも拾えて散らせてといういい攻撃ができていた」とは猪股とドイスボランチを組んだ田仲。ペースは変わらず東京23。
39分の決定機。猪股のパスを河村は左へ振り分け、受けた市村はいいタイミングでクロス。足を止めずに走り込んだ河村のシュートは町田GK修行智仁の正面を突いたものの、完璧に近いサイドアタック。町田も40分には向、相馬大士(20・FC琉球)と繋ぎ、真野亮二(22・法政大)がワンタッチで落とすと、南秀仁(20・東京ヴェルディ)のミドルはクロスバーを越えましたが、ようやくチームファーストシュートを記録。それでも42分には田仲、田村、山本のコンビネーションから東京23があわやというシーンを創るなど、勢いの差はハッキリ。「相手の方が一手先に動けていてテンポが良かった」という楠瀬監督の言葉通り、東京23が持ち味を存分に発揮するような形で最初の45分間は終了しました。
「あまり修正したくなかったんですけど」という楠瀬監督でしたが、後半スタートから選手交替を決断。村上聖弥(22・産業能率大)を下げて、加入後の2試合で持ち味を存分に発揮している杉本竜士(20・東京ヴェルディ)を送り込み、「ちょっと修正してポジションを決めて」後半へ臨みます。
撃ち合った両者。47分は町田。南が頭で繋いだボールを、真野が打ち切ったミドルはクロスバーの上へ。47分は東京23。右サイドを山本が抜け出し、うまく上げたクロスを河村が頭で合わせるも修行がキャッチ。48分は町田。素晴らしいプレスから、高い位置でボールを奪った杉本のフィニッシュは枠の左へ。52分は東京23。左から天野が放り込んだクロスを、上がっていた伊藤龍(26・ジェフリザーブス)のヘディングは枠の右へ。「修正で落ち着いたは落ち着いた」(楠瀬監督)町田と、「前半はある程度いい戦いができたけれども、『惜しかったねで帰るんじゃ、やっぱり何も残らないぞ』という話で後半に向かった」(米山監督)東京23。フィフティの取っ組み合い。
57分は東京23。安東利典(30・横河武蔵野FC)が裏へ落とし、山本は絶妙のダイレクトショートパス。渡邉啓人(25・中央大)の右クロスを田村が狙ったボレーはゴール右へ外れるも、綺麗な形でのフィニッシュワークにスタンドからも溜息が。59分は町田。相手のミスをかっさらった杉本は右サイドを抜け出し中へ。南のシュートはゴール左へ逸れるも、ヴェルディラインでチャンスメーク。61分には楠瀬監督がユ・デヒョン(23・栃木SC)と高野光司(20・ギラヴァンツ北九州)を、62分には米山監督が田村と中山友規(25・ガイナーレ鳥取)をそれぞれ入れ替えてバランスの整備を図ると、意外な形で生まれた決定機。
65分、田仲のバックパスは信じられないことにフリーで残っていた南の足元へ。まったくの1対1に東京23のGK岡本翼(22・専修大)は我慢しましたが、南を倒してしまうと吹き鳴らされた主審のホイッスル。町田にPKが与えられます。キッカーはそのまま南。スタンド中の視線が注がれる中、仕切り直しの1対1に勝ったのは岡本。左へ蹴った南のキックを力強く弾き出すビッグセーブ。「昨日の練習では1本も止めませんでしたけど(笑)、本番に強いんだなあという新たな発見もあった」と米山監督も笑顔を見せた守護神の大仕事。依然としてスコアレスが続きます。
ただ、67分には田仲が個人技からミドルを放ったものの、中2日の疲労もあってか「全体が間延びして押し込まれてキツくなった」とその田仲が振り返ったように、前へのパワーを打ち出せなくなってきた東京23を尻目に、「相変わらず元気がいいなあと」指揮官も評価した杉本の推進力も相まって、町田の一方的に近い展開へ。73分と74分には向のCKがゴール前を脅かすと、直後にも向のクロスから、南が合わせたヘディングはわずかにゴール右へ。押し込む青。凌ぐ赤白。
82分は双方に交替。町田は向と齋藤翔太(19・山梨学院大附属高)を、東京23は足の攣った渡邉と石井裕紀(24・尚美学園大)をスイッチ。84分は町田。右から入った齋藤の高速クロスに、ニアへ飛び込んだ杉本のシュートはわずかにゴール右へ。東京23は85分にも同じく足の攣った天野を山下亮介(28・福島ユナイテッドFC)と入れ替えるなど、やむを得ない交替を強いられ、「慌てずに、自分たちで無理にバランスを崩さないこと」(米山監督)を徹底。勢いはもはや完全に町田へ。
輝きを放った才能。87分、右サイドをまさにスルスルと持ち上がった田仲は3人をかわすと、25m近い距離からフワリと浮かせたループシュート。スタジアム中の時間が止まり、わずかに枠の右へ外れた直後から再び鈍く動き出した時間。PKを与える痛恨のミスにも「ウチの監督が『ミスしてもいいから前向きにやれ』と言われていたので、それを意識してやったらああいう自分らしいプレーが出せた」と振り返った27番の非凡な一連。89分に杉本が30m近い距離から直接狙ったFKも岡本がファインセーブで回避すると、勝負を分けたのは「彼らが出したアイデア」(米山監督)。
その瞬間は90+3分。右サイドでスローインを獲得すると、東京23はスローワーを左SBの市村にチェンジ。「ウチのロングスローを相手が警戒していて、相手が全員ぺナ前にいた」のを見て、短いスローインを要求した田仲はボールを受けると、「最初はセンタリングを上げようと思ったけど、ループシュートの時も相手の足が止まっていたなと思ったので」右サイドを突進。マーカーに魂で競り勝って上げた最高のピンポイントクロス。ニアに河村が体ごと突っ込むと、ゴールの中へ飛び込んだのは河村とボール。「あのループシュートがキッカケでもう1回ゲームに入れたというか、自分らしさを取り戻せた」男が、ミスを帳消しにして余りある執念の決勝アシスト。「ロスタイムが4分となかなか長かったので、ワンチャンスはあるかなと。本当に決まるとは思わなかったですけど、彼らの決め切るという力が強かったんだなと思う」と米山監督も選手たちを賞賛した東京23が、劇的な勝利で準決勝への出場権を強奪する結果となりました。
「一丸となってよく走っているし、ヨネが本当にポゼッションサッカーを志向していて、賢くサッカーをやっている。結果から見ても今日は東京23のゲームでしたよね」と楠瀬監督も口にした通り、町田がリーグ戦からメンバーを入れ替えていたとはいえ、アップセットという表現は当てはまらないような、東京23の勝利だったと思います。後半の中盤以降はかなり足も止まり、押し込まれる時間が長かった中でも、「自分たち"らしさ"というのは失わずに、ある程度やれたんじゃないか」と米山監督。おそらく西が丘にいた多くの観衆に"らしさ"はアピールできたのではないでしょうか。本大会への意気込みを聞かれ、「僕たちはやっぱり全国区のクラブではないので、全国の人たちにこういうクラブがあるんだと、まず知ってもらえるということが一番大きい。出場に対する想いは強いです」と語った痩身の指揮官。東京の頂点へ。まずは8月、倉又寿雄監督率いる日本体育大と激突します。      土屋

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