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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
止まらない旋風。「自分たちが一番驚いている」(水永翔馬)快進撃の続く長崎が、今宵上陸するのは正田醤油スタジアム群馬。6月ファーストマッチはナイトゲームです。
クラブ史上初のOB監督となる秋葉忠宏監督を招聘し、名前も新たに生まれ変わった群馬。開幕から3試合積み重ねた引き分けを、ポジティブな勝ち点3に繋げ、最高のスタートを切ったかと思われた矢先に喫したのは6連敗。以降も調子は上がらず、現在は3連敗を間に挟んでの5戦未勝利。順位もボトム2の21位と、苦しい序盤戦を強いられています。
一方の長崎は前々節の京都戦で12試合ぶりに敗戦を経験しましたが、前節はJ2屈指のビッククラブである千葉相手に、先制点を献上しながらも見事な逆転勝利。着々と"J2仕様"がスタンダードになってきている印象すら感じる戦いぶりで、そろそろ目標の上方修正も現実味を帯びてきています。今日は県内3メディア合同のスペシャルマッチということで、2週間前からの積極的な告知も実り、今シーズン平均の約2倍に当たる6186人の観衆がスタジアムに集結。群馬にとって負けられない一戦は、長崎のキックオフでスタートしました。
大声援をバックにトップギアで立ち上がったのは群馬。3分、ボールを溜めた平繁龍一が左へ振ると、前節でJ2通算100試合出場を達成したばかりの保﨑淳は縦勝負からクロス。最後は青木孝太のオフェンスファウルになりましたが、まずは左サイドからいい形を創出します。
長崎の反攻はセットプレー。5分、金久保彩の左CKをニアで高杉亮太がフリックすると、青木の体に当たったボールはあわやオウンゴールという軌道でわずかにゴール左へ。続けて蹴った金久保の左CKは、山口貴弘に当たってゴール左へ。2度のCKでリズムを手にすると、10分にも水永のポストプレーから、3月以来のスタメンとなる幸野志有人がDFともつれながら強引に放ったシュートは、GKにキャッチされるもきっちり枠内へ。15分には左サイドで5本のパスを繋ぎ、小笠原侑生の上げたクロスは中央でのオフェンスファウルでゴールには繋がらなかったものの、長崎にチャンスがやや多い展開で序盤の時間帯は推移していきます。
ただ、20分過ぎからは「勝つという執念がピッチに現れていた」と高木監督も評した群馬が、膠着し始めた流れの中でも前へと出て行く推進力でゲームをコントロール。21分には青木が獲得したFK。直接狙った平繁のFKはカベに当たりましたが、こぼれを保﨑が積極的にチャレンジしたボレーは枠内を襲い、長崎GK金山隼樹が何とかキャッチ。29分にも右SBの小柳達司が35m近いミドルを枠内へ。サポーターエリアのみならず、メインスタンドからも送られる声援を後押しに、群馬が見せる勝利への渇望感。
対する長崎は31分、負傷でプレー続行が難しくなった高杉に替わり、古巣対決となる藤井大輔がピッチイン。予期せぬ交替で1枚目のカードを切ることになり、33分に小笠原、井上裕大と回り、バイタルに潜った金久保のシュートは枠の上へ。36分に井上と岩間雄大がトリック気味にトライしたFKもシュートには繋がらず、逆に38分には群馬のチャンス。小林竜樹が全力でルーズボールを追い掛けて強奪した右FK。その小林の入れたボールがこぼれると、反応した小柳のシュートは藤井が体を投げ出してブロック。広がっていく6000の期待。
迎えた歓喜。ただし、享受したのはアウェイチーム。41分、金久保が左から蹴ったFKを、ファーで山口が折り返すと、まったくのフリーになっていた佐藤洸一は確実に頭でゴール右スミへ。194cmの守護神・北一真の伸ばした左手も及ばず。群馬からすれば「研究していたし、準備もしていた」(秋葉監督)セットプレーで痛恨の被弾。長崎が1点のアドバンテージを手にして、前半の45分間は終了しました。
勝利のみが求められる秋葉監督の決断はハーフタイム。青木に替わって19歳のレフティ横山翔平を左SHへ送り込み、その位置にいた遠藤敬佑が右へスライド。アタッカー陣に変化を施し、早くも勝負に打って出ると、49分には横山を起点にファン・ソンスを経由し、小柳が放った左足ミドルはクロスバーを越えましたが、交替選手が後半のファーストチャンスに絡みます。
迎えた歓喜。今度は正真正銘ホームチーム。60分、小林が右から蹴り入れたFKを、乾大知が合わせたヘディングはDFに当たりますが、こぼれたボールが選んだのは前半からアグレッシブな姿勢が目立っていた小柳。体勢を整えながら放ったシュートは、DFの人垣をすり抜けて、ゴールネットに飛び込みます。右SBのJリーグ初ゴールは貴重な同点弾。セットプレーからのお返しで、スコアは振り出しに引き戻されました。
「失点して相手を勢い付かせてしまった」(水永)「同点に追いついてから勢いが出た」(小柳)と両チームの選手から同じ言葉が口を突いて出てきたように、勢いも流れも群馬へ。50分に手の負傷で金久保を諦め、古部健太を送り出していた高木監督は「プレッシャーが掛かっていたにもかかわらず、ボールを持つシーンが多く出てしまった」現状打破を図るべく、67分に最後のカードとして「とにかくスペースに出て行って欲しかった」神崎大輔を幸野に替えて投入するも、飲み込まれていく群馬の攻勢。
69分には小林の連続CK。74分には小林の右FK。77分には横山が獲得した小林の左CK。「相手を裏返すことができない」(高木監督)長崎を容赦なく押し込む群馬。78分には今シーズン初めてベンチに入った、「ザスパの伝統とプライドを持っている」(秋葉監督)30歳の櫻田和樹がピッチへ解き放たれると、さらにテンションの上がったスタジアム。
80分に沸騰したスタンド。ルーズボールへ誰よりも速く反応した保﨑は、左サイドをえぐり切って中へ。走り込んだ小林のシュートはゴールへ収まりましたが、副審のフラッグは保﨑のドリブルがゴールラインを割っていたというジャッジ。溜め息と、それすらもすぐさまかき消したさらなる声援。88分、小林の左CKから最後は横山が狙ったボレーは金山がキャッチ。一体感は最高潮となり、足りないものはわずかに群馬のゴールだけ。
悲鳴と呆然。90+2分、長崎が右サイドで獲得したCK。キッカーの小笠原が脳裏に浮かべたのは「一番高さがあるのはミズさん」。そのボールへ「タイミング良く入り込めた」のもミズさんこと、水永。飛び出した北が触れなかったボールは、水永の頭にハードヒット。序盤戦での活躍で「マークが厳しくなったのは感じていたが、それを言い訳にしたくなかった」と語るエースが、10試合ぶりに挙げたゴールは勝負を決める劇的な決勝弾。「最後まで諦めないプレー」というおなじみのフレーズも、高木監督にかかればそれを徹底させる魔法の言葉。長崎が今シーズン3度目の連勝を達成する結果となりました。
群馬は「勝利への執念を表現するプレーが、すべてでウチを上回っていた」と高木監督も認める闘志を見せながらも、90分間を終えて手元に残った勝ち点はゼロ。内容と成果が比例しないゲームになってしまいました。試合後にはサポーターが強化担当に現状を詰問する一幕も。「サポーターも危機感を持ってくれているので、その想いに応えなければ」とは秋葉監督。最後の瞬間までメインスタンドも含めて応援を続けてくれたサポーターのためにも、残すべき結果はただ1つです。
凄まじい土壇場での勝ち点3獲得に、もはや何が起きてもおかしくないような状況になってきた長崎。高木監督も「勝者のメンタリティが少しずつチームに浸透している」と笑顔を見せていました。また、決勝ゴールをここ最近結果の出ていなかった水永が決めたというのも、今後に向けての大きな好材料。27歳にして初挑戦となったJリーグのDFについて、「すべてにおいてレベルが高いし、自分もレベルアップしないとやっていけない」と分析しながら、「二桁ゴールを目指して頑張っていきたい」と頼もしい言葉も聞かせてくれた水永。遅れてきたストライカーの"夢"は、どうやらとっくに覚めているようです。 土屋
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