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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
小野路と甲斐からの刺客が巻き起こした混沌。一気に不透明さを増した先行きはCグループ。全国へ挑むために避けて通れない、関東の第2関門です。
真夏のクラブユース日本一に向けて、既に関東では予選が開始している日本クラブユースサッカー(U-18)選手権、通称"クラ選"。各グループの上位2チームプラス1の全国出場枠を目指し、5月25日から2次予選の火蓋が切って落とされています。今日訪れたのは、第3節目に当たるCグループのビッグマッチ。FC東京U-18と千葉U-18。プリンス関東に所属する両者が小平で激突します。
そのCグループは前述した通りの混戦模様。町田ユースが鹿島ユースを破り、甲府U-18がFC東京U-18を撃破するなど、続出するアップセット。2節終了時ではまったく先の読めない展開になりました。勝ち点3で4位に付ける東京と、勝ち点4で首位に立つ千葉。その差が1に縮まるか、それとも4に開くかはこのグループに入ったどのクラブもが注視するキーゲーム。よく晴れた小平の空の下、重要な一戦は15時ジャストにキックオフしました。
まず、勢いを持ってゲームに入ったのは「全国の切符を掴むための大きなヤマ」(千葉U-18・副島博志監督)という位置付けで、この90分間に臨んだ千葉。8分には右サイドを和田凌(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が得意のゴリゴリドリブルで縦に持ち出しクロス。御船翔太(2年・三井千葉SC)のワントラップシュートは枠の上へ外れましたが、12分も千葉のフィニッシュ。GKのファンブルに詰めた岩田尚樹(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)がボールを拾い、大塚一輝(1年・ジェフユナイテッド千葉U-15)、御船を経由して、新堀真也(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)がコースを狙ったシュートは枠の右へ。攻め切る形を続けて創出します。
「ウチに対する気持ちが感じられたし、後手を踏んだ所はあった」と本吉剛監督も振り返った東京を尻目に、続く千葉の攻勢。14分、右SBの伊藤翼(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)がロングスローを入れると、こぼれに新堀がチャレンジしたオーバーヘッドはゴール左へ。さらに17分、御船の確実なポストプレーから伊藤翼が繋ぎ、和田がダイレクトで右へスルーパス。開いた御船が右へ流れながら放ったシュートは右のポスト直撃。合い始めたゴールへの照準。躍動する千葉。
この要因の1つは「昨日もビックリするくらい良かった」(副島監督)御船のパフォーマンス。17分のチャンスでも見られたように、最前線で厳しいボールもしっかり収め、味方に繋げるプレーはほぼノーミス。「御船が前線で潰れ役になって、味方にボールを供給しながら2列目を生かすプレーがチームを助けてくれた」と副島監督も最大限に評価した通り、彼がしっかり基点になることで、岩田、和田、新堀と並んだ2列目の3枚も前を向いて勝負できる環境に。ここでの優位性がゲームの趨勢に直結していた印象です。
さて、20分を過ぎてもシュートが打てない東京。本吉監督も「もうちょっと前で時間を創りたかった」と話したように、左SHに入ったキャプテンの川上翔平(3年・FC東京U-15深川)にはある程度ボールが入り、左からのアタックには可能性を感じるものの、それ以外のポイントでは出足でも球際でも千葉に上回られるシーンが頻発。劣勢を押し返すことができません。
24分も千葉。左SBの奥野滉平(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)のアーリークロスを、収めて浮かせて打った岩田のボレーは枠の左へ。29分も千葉。岩田が和田とのワンツーで右サイドを崩し、マイナスへ折り返したグラウンダークロスに走り込んだ新堀のシュートはわずかにゴール右へ。33分も千葉。キレキレの岩田が囲まれた2人をぶち抜き、御船が左へ振ったパスは和田の足元へ。左へ流れながら枠に飛ばしたシュートは、東京GK伊東倖希(2年・FC東京U-15深川)がファインセーブで回避。34分も千葉。浦田樹(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)の左CKを秋山翔(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が折り返すと、和田のバイシクル気味ボレーはクロスバーの上へ。ジワジワ自信を深めていく千葉のメンタル。
「勝たなくてはいけないゲーム」(本吉監督)はホームチームも一緒。38分、川上が右から蹴ったCKを、チームで最も"戦っていた"CBの大西拓真(2年・FC東京U-15深川)が気持ちで当てたヘディングが、ようやく生まれたファーストシュート。43分にも川上を起点に輪笠祐士(3年・FC東京U-15むさし)が左へ振り分け、上がってきたSBの山岸瑠(2年・FC東京U-15深川)はカットインから枠の左へ逸れるシュートを放ちましたが、ゴールには至らず。「個人の力もあるし、チームとしての力もある」(副島監督)東京相手に、千葉が終始ペースを握るような格好で、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムで動いたのは本吉監督。「2人ともリハビリ明けで頭から行くには不安があったので、後半からスイッチを入れたい」という想定通り、矢島輝一(3年・FC東京U-15むさし)と長澤皓祐(2年・横河武蔵野JY)を投入。最前線に矢島を置いて、その位置にいた岸寛太(3年・FC東京U-15深川)は右SHへスライド。長澤は矢島の下に入り、前での時間創出へ采配を加えます。
後半のファーストシュートは東京。51分、川上の右CKをここも大西が頭で狙い、ボールは枠を越えたもののアグレッシブなスタート。ただ、大きな流れは変わらず、53分には浦田の右CKに竹之内勇人(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が、56分には右から伊藤翼が上げたクロスに新堀が、それぞれヒットしきれなかったもののシュートまで持ち込むなど、継続する千葉のリズム。
遂に動いたスコア。58分のハーフカウンターは千葉。2対2の同数でボールを持った御船は、2枚を引き付けてのスルーパスを左へ。少し運んだ和田のシュートは、GKの届かない左スミへ転がすパーフェクトなフィニッシュ。キャプテンの鳥海晃司(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が前日の負傷で欠場する中、腕章を引き継いだ10番の先制弾。「攻撃も守備も献身的にやってくれる」と指揮官も信頼を置くエースの一撃で、千葉が1点をリードしました。
失点の少し前からは盛り返しつつあった東京。「ボールも収まるし、今年のチームの1つのポイント」(本吉監督)である矢島が収めて潰れることで全体のラインも押し上がり、長澤も広範囲にボールへ関与するなど、前半よりも前線でのリズムは格段にテンポアップ。その矢先の失点にも、落ちずに持ち堪えた推進力。
63分の決定機。1年生ながら奮闘していた右SBの相原克哉(1年・FC東京U-15むさし)が判断良くダイレクトで右へ。岸のピンポイントアーリーに、184センチを投げ出した矢島のダイビングヘッドは千葉GK岩渕航平(2年・FCラルクヴェール千葉)のビッグセーブに阻まれたものの、明らかに変容したゲームリズム。
64分も東京。バイタルに潜って受けた長澤のドリブルシュートはゴール右へ。65分も東京。ロングフィードに矢島が潰れ、拾った岸はワンフェイクでマーカーを外してシュートを放つも、岩渕が正面で落ち着いてセーブ。66分も東京。スローインの流れから矢島が落とし、川上のミドルはクロスバーを越えるも、「そういうリズムになることは想定済みだったが、11番(矢島)に基点を創られた」と副島監督も認めたように、後半から入ったスイッチ。69分には和田のラストパスから、替わったばかりの伊藤大将(1年・ジェフユナイテッド千葉U-15)が打ち切った千葉の決定的なシュートも、DFがわずかに触って枠の右へ。青赤の時間。
71分に炸裂したスペシャリティ。入ったボールを完璧に収めた矢島は、お手本のようなポストプレーで左へ短いシルクパス。6分前に投入されていた佐藤亮(1年・FC東京U-15むさし)は、飛び出したGKを緩やかに破るループでボールをゴールへ送り届けます。交替で入った2人が絡んだ同点劇。采配ズバリ。まさに狙い通りの形から1年生の大仕事で、東京が鮮やかに追い付いてみせました。
「1点では終わらないゲームだと思っていた」と副島監督。この同点弾から、かなりオープンな展開に。75分は東京。「強さもあるし繋ぐ意識も高い。これからどんどん伸びてくると思う」という本吉監督の言葉にも頷ける、1年生とは思えないプレーを披露していたCBの渡辺拓也(1年・FC東京U-15深川)が高精度フィードを裏へ落とし、佐藤のトラップが大きくなってフィニッシュは取れなかったものの、一発での脅威も体現。75分は千葉。浦田のパスから、伊藤大将とのワンツーで抜け出した新堀のシュートはほんの少し枠の右へ。76分は東京。右でパスを引き出した長澤が中へ戻すと、岸の枠内シュートは岩渕がキャッチ。本吉監督の決断は77分。岸に替えて、渡辺龍(2年・FC東京U-15深川)をそのまま右SHへ。副島監督の決断は79分。岩田と新堀に替えて、バリガ外山ジロ(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)と宮崎巧(1年・ジェフユナイテッド千葉U-15)をそれぞれそのまま右と左のSHへ送り込む2枚替え。お互い奪いに出た"2点目"。
不屈の千葉。80分、伊藤大将の決定機が伊東に阻まれた直後のCK。ほぼファーストタッチとなる宮崎のキックは、竹之内の頭にドンピシャ。このボールは右のポストに嫌われたものの、嗅覚で押し込んだのはまたも和田。「高さもあるので優位性はあると思っていた」(副島監督)セットプレーでの"2点目"は、やはりエースの10番。再び千葉が半歩前へ出ました。
苦しくなった東京。「点を取るしかない状況」(本吉監督)で、圧倒的な高さを誇っていた大西を前線に上げて、何が何でも追い付こうという執念を前面に押し出し、なりふり構わずゴールを狙いに打って出ます。ところが、アディショナルタイムに生まれたのはトドメの"3点目"。千葉のクリアがルーズボールになった所へすかさず全力で駆け寄り、相手陣内でボールをかっさらったのは和田。独走から選択したのは、GKを無力化するパーフェクトなループ。「運動量も多くなっていたし、仕事量も増えてきた。成長を感じる」と指揮官も賞賛した和田は、これで驚異のハットトリックを達成。アウェイで力強く勝ち切った千葉が、「非常にレベルの高い関東を抜けて全国に出る」(副島監督)という目標を大きく引き寄せる勝ち点3を獲得する結果となりました。
「ウチに勝ち切る力がなかった」と本吉監督が振り返った東京は、痛い星を落としてしまうホームゲームとなりました。後半は矢島の投入から勢いを取り戻したものの、彼の不在時の狙いである「2人3人のコンビネーションやサイドチェンジで前を向かせるような攻撃」(本吉監督)がほとんど出せなかった前半でリズムを取り切れなかった部分が、最後まで響いてしまった印象です。ただ、このままレギュラーを確保しそうな渡辺を中心に、安部柊斗(1年・FC東京U-15むさし)や相原など1年生には目を引く好素材も。まだまだ変わっていく伸びしろは十分に残されているのではないでしょうか。
「非常に高いモチベーションでやってくれた」と副島監督も認めた千葉は、このゲームに関して言えば完勝だったと思います。殊勲の3発をぶち込んだ和田はもちろんですが、特に個人的なサプライズは御船の安定感。「ものすごく努力していたし、試合をやりなからコンディションや技術を上げてきたことが花開いている」と指揮官も高評価を口に。彼が最前線に入ることで、和田の推進力を少し下がった位置で使えることは、チームにとっても大きなプラスでしょう。久々となるユース年代の指導に「ものすごく大変な分、こうやって成果が出てくるのは楽しい部分でもある」と笑顔を見せた副島監督。"副島ジェフ"の今後が非常に楽しみです。 土屋
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