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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
今季初の顔合わせとなるビッグマッチ。東京を代表するチーム同士の一戦は、おなじみ駒沢第2です。
プリンス関東には2年連続で参加。高校選手権予選も2年続けてのファイナリスト。T1や関東大会予選での優勝も果たし、ここ数年の都内における実績は他を圧倒しているものの、不思議と全国へと繋がるコンペティションでは勝利から見放されている関東第一。昨年も初戦として臨み、敗退を余儀なくされた準々決勝は何が何でも突破したい所です。
一方、無念のプリンス関東降格を経験し、今シーズンからはT1に戦いの場を移した成立学園。こちらも近年は全国への扉が重く立ち塞がっており、昨年のインターハイ予選も準決勝で無念の敗戦を喫するなど、チーム全体が欲している表舞台での躍動。「ここまでは勝たなきゃいけない状態が続いていたが、今回の相手は格上。今日はウチは失うものは何もない」と太田昌宏監督。優勝候補同士の対決は関東第一のキックオフで、10時ちょうどにその幕が上がりました。
いきなりのビッグチャンスは成立。2分、後方からのFKを浅野裕永(3年・鹿島アントラーズつくば)が頭で落とすと、反応した根本凪人(3年・成立ゼブラFC)が左足で枠へ飛ばしたシュートは、関東第一GK大藤洋輔(3年・ヴェルディSSレスチ)のファインセーブに阻まれたものの、直後にもその根本が鋭い左CKを蹴り入れ、DFのクリアに遭いましたが、まずは相手ゴールを脅かします。
以降は「ある程度コントロールはできていたと思う」と小野貴裕監督も話した関東第一が、ボールを握りながらチャンスを窺う展開に。特に都内屈指のコントロールタワー忠岡義紀(3年・フレンドリー)が、中盤の底で受けて捌いてを繰り返しながら、右の角口大征(2年・FC府中)と左の山崎健之郎(3年・Wings U-15)にうまく振り分け、サイドからのチャンス創出に意欲。18分には浅野が抜け出しかけた場面をCBの天羽章太(3年・1FC川越水上公園)がしっかり潰すと、19分には惜しいシーンが。ボランチの上脇健太郎(3年・三菱養和調布)が裏へ1本のフィードを送り、1トップの小倉涼(3年・クリアージュ)が独走気味に。よく追走していた成立のボランチを務める鈴木和真(3年・FC東京U-15深川)のプレスにシュートは打てませんでしたが、ようやくゴールに迫るシーンを生み出しました。
さて、「向こうも初めて見るし、どう来るかわからない中で、まずはキチッと守ってという所はベースにあった」と太田監督も話した成立は、内田悠麿(2年・東松山ペレーニァ)と荷平雅史(3年・アルビレックス新潟JY)のCBコンビが、ボールを持たれても粘り強く周りを動かしながら対応。シュートを未然に防ぎながら、グングンと高めていく集中力。
逆に手数は成立。22分には鈴木が距離のある枠内ミドルを打ち込むと、24分には根本が浅野との素晴らしいワンツーを経て、思い切り良く放ったミドルは枠の右へ。さらに29分、根本が中央右から蹴り入れたFKを、荷平が合わせたヘディングはわずかに枠を捉え切れず。成立の連続攻撃。
32分、犬童輝(3年・柏レイソルU-15)、浅野、根本の3人で獲得したFK。中央やや左、ゴールまで25m強の位置から右スミを直接狙った根本のFKは大藤がキャッチ。35分、右サイドからSBの吉田将也(2年・成立ゼブラFC)がドリブルで運び、中へ折り返すと浅野はヒールで落とすも、関東第一のCB川路憲亮(3年・三鷹FA)が懸命にクリア。直後のやはり35分、右から根本がCKを蹴ると、ニアに飛び込んだ犬童のヘディングはゴール右へ。「前半はゼロゼロでもいいかなという感じだった。狙い通り」とは太田監督。一定のゲームコントロールは関東第一が取りながら、手数は成立が繰り出す前半は、スコアが動かないままでハーフタイムを迎えました。
後半はスタートから両チームに交替が。関東第一はボランチを上脇から渡部太一(3年・FC杉野)へ、成立は左SHを河上知樹(3年・FC杉野)から町田ブライト(2年・鶴ヶ島南中)へ、それぞれ入れ替えて残りの40分間に挑みます。
前半の中盤以降から、ややボールを回す流れから縦や裏へ入れる"前"へのパスに精度を欠いていた関東第一が後半は先に攻勢。47分には石川喬一(2年・Forza'02)の左クロスをDFが跳ね返し、こぼれを打ち切った渡部のシュートは枠の左へ。48分にも小倉、石川、山崎と繋いで、最後に角口が狙ったシュートはDFにブロックされるも、取り戻した前への推進力。50分には成立も内田が力強いインターセプトからクサビを当てると、根本がターンから大藤にキャッチされるシュートを放ちましたが、51分も関東第一。右から山崎が放り込んだCKを、小倉が頭で折り返したボールはDFが何とかクリア。押し込む状況に小野監督は55分、小倉に替えて切り札のドリブラー田中裕也(3年・Forza'02)を投入して、前線のさらなるパワーアップを図ります。
ただ、この前後から躍動したのは「基点にもなってくれるし、裏にも走ってくれる」と指揮官も評した町田。56分にはGKのキックを、その町田が右で完璧に収めて中へ送り、ニアへ飛び込んだ根本の決定的なシュートは枠の右へ。直後にも町田のポストプレーから山本涼太(3年・東川口FC)が左へ送り、根本のシュートはまたも枠の右へ外れたものの、町田が「あの動きで中盤のスペースを広げてくれる」(太田監督)ことがパス回しのスムーズさも促進。続く好循環。
給水タイムを経ると、またも両チームが交替を決断。小野監督が3枚目のカードとして切ったのは、懸命のアップダウンに足が攣った田中倫樹(3年・府ロク)に替えて高野幸祐(3年・Wings U-15)。太田監督が2枚目のカードとして選んだのは、金子拓矢(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)に替えて中村諒介(3年・武南ジュニア)。お互い疲労度もピークに達しつつあるピッチへ、フレッシュな選手を送り込みます。
66分に生まれた決定機は関東第一。石川が裏へ落とすと、右サイドを抜け出した田中裕也は丁寧に中へ。フリーで走り込んだ角口は、しかし"足"が残っておらず、弱いシュートが成立GK芝崎寛文(3年・柏レイソルU-15)の両腕へ。69分のチャンスは成立。ルーズボールを強い体でモノにした中村のシュートはゴール右へ。空き出したスペースと、確実に開き始めたゴールへの扉。
72分、成立に生まれたエアポケット。ボールカットからややアバウトに蹴られたボールへ、「ボールウォッチャーになり過ぎた」(太田監督)成立DFの隙間を縫って山崎が到達。少し運んで得意の左足を振り抜いた一撃は、GKの伸ばした手も及ばず、ゴール右スミへ突き刺さります。既に足を攣っており、小野監督も「交替させようと思っていた」レフティが土壇場で大仕事。広がった歓喜の輪。関東第一がとうとう試合の均衡を破りました。
少ない残り時間でビハインドを追い掛ける展開となった成立。失点直後に根本とスイッチしたのは、左利きでセットプレーなら足でも手でもいける上田悠起(2年・成立ゼブラFC)。最後の勝負へ出た直後に成立の決定機。74分、町田を起点に山本が左へ振り分け、中村が強烈なシュート。大藤が何とか弾くも、拾った浅野が飛び出した大藤もかわし、ゴールへパスシュートを送り込もうと蹴ったボールは、川路が起死回生のブロックで阻止。天を仰ぐイレブンと応援席。追い付けないゼブラ。
最高の見せ場は唐突に。78分、右サイドで上田がボールを確実に回し、浅野がエリア中央へ折り返したボールがDFに当たると、吹き鳴らされた主審のホイッスルはPK。ハンドをジャッジした主審がペナルティスポットを指し示し、成立に最終盤で千載一遇の同点機が訪れます。キッカーは浅野。短い助走から10番が蹴り込んだのは、まさにゴールのど真ん中。「しんどい時に何ができるかをずっと追い求めてきた」(太田監督)チームの底力。80+3分に関東第一が掴んだラストチャンスも、渡部のシュートは芝崎がファインセーブで回避。1-1。80分間では決着が付かず、さらに激闘へ20分間が付け加えられました。
延長のファーストチャンスは関東第一の決定機。84分、角口のラストパスからDFとうまく入れ替わった山崎は、センス溢れるループにチャレンジ。軌道、スピード共に申し分なく、スローモーションのようにゴールへ向かったボールは、クロスバーに着地。スタンド中を色々なニュアンスの溜め息が包みます。成立も87分には上田が枠内シュートを放つと、今度は93分に上田の連続ロングスローがピッチを飛び交う、上田ショー状態に。それでもさらなるゴールはこじ開けられず時間切れ。タイムオーバー。準決勝への切符は、PK戦へ委ねられることになりました。
雄叫びは芝崎。先攻となった関東第一の1人目を完璧なセーブでストップ。雄叫びは大藤。後攻となった成立の1人目を完璧なセーブでストップ。2人目と3人目はどちらもきっちり成功させるなど、ここまでもつれ込んでも保たれ続けるバランス。2度目の雄叫びは芝崎。関東第一の4人目が左へ蹴ったボールを確実にブロック。成立4人目の「初めてスタメンで使った」(太田監督)荷平は沈め、点差が付いた状態でファイナルキッカーへ。追い込まれた関東第一5人目の菊地優生(2年・三菱養和調布)は冷静に中央へゲット。スタンドすべての目が注がれたのは成立5人目の上田。向かって右スミへ転がしたボールは、大藤も飛び付きましたが数十センチ、あるいは数センチ届かず。「PKの練習も自分が後悔しない所に蹴られるように、ということだけをキチッっとやらせている」と成立の太田監督。十条のゼブラが2年連続となるセミファイナル進出を手繰り寄せる結果となりました。
対照的だったのは両者の試合中に変化していったコンディション。関東第一は結果として足を攣ってしまった2人の負傷交替を突き付けられ、さらに数人の選手がしきりに足を気にしていていました。一方の成立は試合を一旦中断させるほどに足を攣っていたのはわずかに1人で、4枚の交替カードも戦術的に切ることができています。「冬から粘り強さを伸ばす部分は、練習からずっと諦めずに100%で追い求めてきた」(太田監督)というその自信が、「成立自体に今まで足りなかった部分」(同)を補いつつあるのかもしれません。ある意味で成立らしくないと言っていい、"泥臭さ"を身に付けながら2試合続けてPK戦を制したメンタリティ。久々の全国へはあとわずかに1つの勝利のみです。 土屋
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