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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
34年目の対峙。1979年、マラドーナブームに沸いたワールドユース。地元開催となった日本代表で前線のポジションを奪い合った両雄が、指揮官としてJリーグの舞台で再会します。
ほとんど掴みかけていたJ1への切符がスルリとその手から滑り落ち、これで4年目となるJ2を戦うことになった千葉。新監督には山形や新潟、大宮を率いるなど、Jリーグでの監督経験も豊富な鈴木淳監督を招聘し、"絶対J1!"を掲げて新シーズンに臨んでいます。しかし、開幕戦は札幌に0-1で敗れると、熊本にはアウェイで0-3と完勝したものの、続く2試合はいずれもドロー。先週末は今シーズンJ2の目玉チームとも言うべきG大阪相手に、押し込む時間も創りながら結果はまたもドロー。"共に歩もうこの時を"。勝ち切れない現状を、大勢の黄色いサポーターが詰め掛けるホームで何とか打破したい一戦です。
一方、こちらも柱谷幸一新監督を迎え、20人の新加入選手が加わるなど、まったく新しいチームに生まれ変わった北九州。ホームでは2人のルーキーが名前を連ねた開幕戦の富山、そして昇格候補の一角を占める山形と黒星を喫しましたが、岡山、徳島と続いたアウェイ連戦では共に勝ち点を獲得。ここまでは相性の良いアウェイで、昇格候補筆頭格の強豪に一泡吹かせたいゲームになります。気温は真冬に逆戻りしたかのような7.3度。凍えるような寒さの中、千葉のキックオフでゲームはスタートしました。
先にシュートを放ったのは、試合開始と同時にアグレッシブに前へと出て行った北九州。2分、キム・ドンフィの仕掛けで獲得したFKの流れから、最後は内藤洋平が思い切ったミドル。ボールは大きく枠を越えていきましたが、勢いを持ってゲームに入ります。ただ、ファーストシュートをいきなりゴールへ結び付けたのはホームチーム。
4分、ジャイールの2人を置き去りにする絶妙スルーパスは、右SBに入った米倉恒貴の前方へピタリ。走り込んだ米倉のクロスをDFが薄く弾くと、ここで待っていたのは左SBの大岩一貴。ワントラップから素早く放ったシュートがゴールへ吸い込まれます。サイドバックのクロスをサイドバックが押し込むという、何とも果敢なアタックが呼び込んだ先制弾。千葉が早くもアドバンテージを握りました。
早々にビハインドを負った北九州でしたが、それでも怯まずに攻撃的な姿勢を維持。スタメンからは初めての起用であり、「守備の部分は不慣れだった」と鈴木監督も認める米倉と、左SBの冨士祐樹が引っ張り合い、しっかりボールを回しながら、その左サイドを中心に悪くない形を創っていきます。それでも、次にゴールを記録したのもホームチーム。
15分、ジャイールが左からCKを蹴り込むと、ファーサイドでまったくのフリーになっていたケンペスは、難なくヘディングでボールをゴールの中へ送り届けます。昇格候補対決となったG大阪戦ではスタメン落ちを経験したものの、「FWというのはボールが来ない時もあるが我慢して、来た時には必ず決める」と力強く話したストライカーの追加点。点差が広がりました。
17分には田中優毅のパスから内藤洋平がエリア内へ切り込み、枠内へ飛ばしたシュートは岡本昌弘がファインセーブ。20分には内藤のクサビを古巣対決となった大島秀夫が落とし、小手川が繋いだボールをキム・ドンフィが枠へ収めたシュートは、勢いが弱く岡本がキャッチ。2回のチャンスをゴールへと結び付けられなかった北九州は、徐々に前へのパワーが減退。ゲームを落ち着いてコントロールする千葉がハッキリとペースを握ります。
このゲームの武器にもなり、アキレス腱にもなり得た米倉のサイドバック起用も「かなりチームに推進力を与えてくれた」と指揮官も評するなど、プラスに作用。19分、後方からのフィードに米倉が抜け出し、上げたクロスをジャイールがボレーで叩くもヒットせず。22分、谷澤達也が右へ振り分けると、上がってきていた米倉は鋭く中へ。北九州GK武田博行が懸命に弾いたボールを、拾った谷澤は枠の左へ外れるフィニッシュ。経験の浅いポジションにも「右サイドであることは変わらない」と話すサイドバックが、チームの"強み"として躍動します。
その後はなかなかボールの収まるポイントがない北九州に対して、ボールを回収し続け、セットプレーの数で勝った千葉が変わらず攻勢。ジャイールと兵働昭弘がそれぞれ左右からCKを蹴ると、41分には右サイドでゴールまで約30mの位置から、ジャイールが直接狙った強烈なFKは武田が何とかセーブ。ジワジワ押し込む千葉。
そして45+1分、再び輝いたのは37番を背負うブラジリアン。左から同胞のジャイールが上げ切ったクロスに、ケンペスはまったくのフリーでボレー。ジャストミートしたボールは武田もよくストップしましたが、こぼれを冷酷に蹴り込んだのもケンペス。「やはり十分な状態でシュートを打たれてしまうと、それは確実に枠に飛んでくる」と柱谷監督も言及した千葉の決定力が爆発。3-0という大差で前半の45分間は終了しました。
ハーフタイムを挟み、「まず0-0でスタートする気持ちで45分戦おう」と指揮官に送り出された北九州のイレブン。しかし、キックオフの笛が鳴ってから、わずかに1分も経過することなく決まってしまった試合。ナム・スンウからのパスを、エリア右で受けたケンペスは少し内側に持ち出すと、左足インサイドで巻いたシュートにチャレンジ。ゆっくりと、美しく描かれた軌道の先にある球体が到達したのはゴールネット。すべて異なるパターンで奪取した圧巻のハットトリック。4-0。実質、勝敗は決しました。
終わらないケンペス劇場。61分、ジャイールが左から蹴ったFK。大外で合わせた山口智のヘディングはGKを破るも、ここは宮本亨がライン上で決死のクリア。吸い寄せられるように足元へ飛んできたボールを、ケンペスがダイレクトで叩いたボレーは、1試合におけるクラブ史上最多記録更新の自身4ゴール目。「サポーターにケンペスはどういう選手かを見せることができた」とは本人の弁。この日5度目の歓喜が黄色に染まったスタジアムを包みました。
開始早々の失点もあって、後半は「リスクを負って攻めるというよりも、自分たちのサッカーをしっかり確立しなければいけない45分」(柱谷監督)となった北九州。50分には内藤がクロスバー直撃のミドルを放ち、62分には小手川が右足アウトで上げたクロスを大島が頭で叩くなど、チャンスは少しずつ掴み始めます。
64分には大島に替わって、ルーキーの柿本健太が投入されると、その1分後に柿本は強引とも取れるミドルにチャレンジ。67分には右サイドから鈴木修人が入れたアーリークロスに、柿本が合わせたヘディングは岡本がキャッチしたものの、少しずつ盛り返し始めた北九州。
すると67分、左サイドでのボール回収から得たスローイン。柿本を基点に、八角剛史、小手川と繋ぐと、中央でボールをもらった鈴木は1つ右へ持ち出してから、30m近い距離を思い切ったミドルにトライ。このボールが右へ曲がりながら絶妙のコースを捉え、ようやく1点を返すことに成功します。
相手の「中だるみの時間」(鈴木監督)を突いて、ようやくリズムが出てきた北九州。72分、高い位置で途中出場の渡大生が相手ボールを奪うと、柿本が打ったミドルは枠の左へ。75分、小手川が左サイドから右足でアーリークロスを放り込み、柿本のヘディングは岡本がキャッチ。78分は決定機。右から内藤が入れたアーリークロスは中央の柿本へ。ワントラップから放ったシュートは、しかし岡本がファインセーブで阻止。ルーキーへ巡ってきた連続チャンスも2点目には届きません。
フィエスタの締め括りは89分。途中出場の田中佑昌が右サイドで丁寧なスルーパス。ここも後方から躊躇なく飛び出した米倉がクロスを入れると、ニアへ飛び込んだのはジャイール。ファイナルスコアの完成。6-1という衝撃的な大差で、千葉が4試合ぶりの白星を手にする結果となりました。
北九州は試合後に柱谷監督が「一番大事なのはこういうゲームからしっかり学び取ること」と言及した通り、今後の教訓にしなくてはいけないような、何とも悔しい大敗となってしまいました。とはいえ、GKの武田も含めてしっかりとボールを繋いでいくスタイルは放棄することなく貫徹。「最後まで諦めずにしっかり自分たちでボールをポゼッションして、攻撃をする意識を見せてくれた」と柱谷監督。やりたいスタイルの一端は十分に覗けるゲームだったのではないでしょうか。このゲームをどう今後に繋げていくのかが、特にここ数試合は問われるはず。4月の北九州には注目ですね。
「ゲーム内容はそんなに良くなかった」と鈴木監督も話した千葉は、大勝にも浮かれる様子はまったくありません。「5点取った後の内容は良くない。守備にはまだ課題がある」と久々にスタメン復帰を果たした兵働が口にすれば、指揮官も「1失点はいただけない」と渋い表情で振り返っています。こちらも課題が残ると捉えた大勝をどう修正していくか。"絶対J1!"を引き寄せるべく、千葉の絶対的な強さを身に付けるための戦いは続きます。
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