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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年03月11日

J2第2節 横浜FC×徳島@ニッパ球

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mitsuzawa0310.jpg最終結果はリーグ4位で臨んだJ1昇格プレーオフでの敗退だったものの、シーズン序盤で監督交替が行われ、一時期は最下位にまで転落したことを考えれば、その後任指揮官の手腕と選手たちの奮闘は称賛されるべきであり、その上にその指揮官が監督未経験だったとあれば、なおさら事情は違ってくるはず。その山口素弘監督の下、堂々の昇格候補として今シーズンに挑むのは横浜FCです。
昇格請負人として小林伸二監督を招聘し、あとほんの一歩及ばなかった"J1"を唯一の目標に掲げた昨シーズンはまさかの15位に沈んだ徳島。雪辱を期す今シーズンは、千代反田充、柴崎晃誠とJ1経験も豊富な2人に、高崎寛之、大﨑淳矢など前線も強化し、なかなか定まらなかったセンターラインに軸を通し、"圏外"からの悲願達成を狙います。舞台は不気味な大気と空の色を纏った三ツ沢。"何か"が起きそうな雰囲気の中、横浜のキックオフでゲームはスタートしました。
1分も経たない内にファーストシュートを放ったのは横浜。右サイドで大久保哲哉がヒールパスを通し、市村篤司が素早くクロス。ニアへ飛び込んだ寺田紳一のシュートはヒットせず、枠外へ逸れましたが、早くもいい形を創ると、3分には高地系治のパスからまたも寺田が枠内ミドル。4分には寺田のパスから松下裕樹がゴール右へ外れるミドルを狙うなど、「非常にいいゲームの入り方」(山口監督)に成功します。
すると、流れそのままに動いたスコア。6分、左サイドで掴んだFKのチャンス。松下がファーサイドへ蹴ると、大外を回って逃げた大久保がフリーでヘディング。懸命に体を伸ばしたDFに当たったボールへ、頭から突っ込んだのはルーキーの野上結貴。「シュナイダーさんに『今日はお前が取る』と言われていた」と笑ったルーキーのJリーグ初ゴールは貴重な先制弾。「意図して取れた」(松下)セットプレーで、横浜が1点のリードを奪いました。
さて、「立ち上がりは思い切り硬かった」と小林監督も振り返った徳島は、リードを許して迎えた7分に決定機。右サイドから柴崎晃誠が上げたクロスに、ニアへ飛び込んだ津田知宏のヘディングはドンピシャもわずかに枠の上へ。10分にも斉藤大介のフィードを高崎がうまく落とし、津田が放ったシュートは枠の右へ。連続してチャンスを創りましたが、ゴールには届きません。
15分は横浜。高地の右CKから、古巣対決となった西嶋弘之がヘディングを枠内へ飛ばすも、徳島GK松井謙弥がキャッチ。18分は徳島。高崎がポストプレーで基点を創り、柴崎が右へ極上のスルーパス。走り勝った太田圭輔のクロスに、大﨑が飛び込むもシュートはDFがブロック。21分も徳島。ここも柴崎がサイドへ配球し、太田がクロス。最後は大﨑のボレーがGKにキャッチされるも、「ウチのボランチを経由しながら、ボールが動くようになってきた」とは徳島3バックの中央を務めるキャプテンの斉藤大介。中盤でのパス回しでは横浜の方が量も質も上回ってはいた中で、「回すことを怖がらなくなった」(小林監督)徳島も、攻撃面で対抗し始めます。
とはいえ、すぐにチャンスへと繋がりそうな攻撃のスムーズさはやはり横浜。「自分の前の所が空いていたので、そこに付けていた」と語る松下と、その前に位置する寺田、高地の中央に並ぶ3枚だけではなく、右の武岡優斗、左の内田智也と、中盤はいずれもショートパスをしっかり繋げる選手たち。そして、中でも新加入の松下は中長距離の正確なフィードを蹴れる、今までの横浜にはいなかったタイプのボランチで、彼の所から時折前線へ送られるボールは、いずれも高い位置での基点創りに直結。「立ち上がりは1トップに対するロングボールを入れられ、セカンドを拾われての二次攻撃で押し込まれた」という斉藤の感想は、松下のフィードに拠るところが大。これがあるからこそ、ショートパスでの崩しも生きていた印象です。
27分は横浜。市村、武岡、内田で崩し、中央の大久保にはわずかに合わず。30分も横浜。高地のクサビがこぼれると、反応した大久保のシュートは松井がキャッチ。32分には大久保が、34分には武岡が共にエリア内からフィニッシュまで持ち込むなど、ゲームを優勢に進めるホームチーム。
ところが、「得てしてそういう時こそワンチャンスで決められることがある」と山口監督が言及したのは36分のシーン。中盤でボールを拾った柴崎は縦に付け、高崎が左へ振り分けると、大﨑の前で市村がクリアしたボールは中央へ。ここへ足を止めずに走り込んでいたのは柴崎。ワントラップから冷静に左足インサイドで叩いたボールが射抜いた横浜ゴール。日本代表への招集歴もあるJ2屈指のプレーメーカーが華麗に舞い、徳島がスコアを振り出しに戻します。以降はお互いに手数こそ少ないもののフィフティに近い攻防を繰り広げ、45分間のトータルで見れば横浜のゲームだった前半は1-1で終了しました。
後半はスタートから前半終盤の好リズムを持ち込んだ徳島に勢い。48分、右サイドで獲得したCK。柴崎が短く出すと、太田のリターンを柴崎は左足で中へ。ファーで高崎が折り返したボールを、大﨑が頭に当てたボールはクロスバーの上へ。いきなりのセットプレーで引き寄せた決定的なシーン。流れはアウェイチームか。
そんな「なかなかいいリズムを出せない中で」(松下)"違い"を見せたのは、「守備のことはマツさん(松下)に任せて、攻撃のことばかり考えていた」という40番のファンタジスタ。53分、電光石火のカウンター。松下が縦に当てたパスを武岡は執念のスライディングで繋ぎ、ボールは寺田の足元へ。「パスを出そうかと思ったけどコースが見えたので」ミドルレンジから左足で打ったシュートは、枠外から美しい曲線を描いて枠内へ収まるファインゴール。そのタイミングと軌道に松井は一歩も動けず。自ら「チェンジアップ」と称したパーフェクトな一撃で、再び横浜がアドバンテージを強奪しました。
「ボールが回っている中でのカウンター」(小林監督)で突き放されたものの、食らい付いた徳島。60分、藤原広太朗が右クロスを入れると、大﨑が至近距離から狙ったヘディングは横浜GK柴崎貴広に弾き出されましたが、折れずに攻める姿勢を貫徹。
61分の歓喜。CKの流れから撥ね返し合う攻防に那須川が頭で中へ。高崎が溜めて折り返すと、那須川のジャンピングボレーがゴール左へ吸い込まれます。3バックの一角を占めるレフティのゴラッソ。「厳しいアウェイの中でもう1点取ったのは逞しさを感じた」と小林監督。白熱の好勝負。再び双方の間にあった点差は霧散しました。
先に動いたのは小林監督。62分、再三チャンスに顔を出しながらゴールが遠かった大﨑を下げて、花井聖をそのままの位置に投入。すると、「攻撃の起点にもアクセントにもなれる選手」と斉藤も評した花井が本来のポジションで躍動し、ボールを引き出しては捌いて、一層のリズムを創出。「あそこで落ち着くことで、ワイドの選手も思い切って出て行ける」(斉藤)部分と、「太田に早くいい形で預けてシンプルに崩す所は考えながらやっていた」(同)部分がマッチして、一気に太田が躍動した右サイドが活性化され、徳島が攻勢を強めます。
山口監督の決断は68分。高地と大久保に替えて、開幕戦も途中出場で流れを変えた野崎陽介と田原豊にスイッチ。2枚替えで切り札"たち"を投入すると、69分には早速野崎が絶妙のスルーパスを内田へ。シュートは松井のファインセーブに阻まれたものの、こちらも切ったカードがすぐさま効果を生み出し、ワンステージ上がったゲームの"熱量"。
ラスト20分間の殴り合い。73分は徳島。那須川が右へ大きく振ったサイドチェンジを、津田が拾って中へ上げると、体を投げ出した高崎のダイビングヘッドは柴崎の正面。のけぞるアウェイゴール裏。77分は横浜。ペ・スンジンのフィードから、田原が"らしい"豪快なボレーを枠外へ。78分も横浜。相手のクリアを拾った野崎が左から持ち込んで放ったシュートは、力み過ぎたか枠の右へ。のけぞるホームゴール裏。
82分には両指揮官が同じタイミングで交替策。山口監督は市村を下げて、森下俊を再三切り裂かれかけていた左のSBへ送り込み、西嶋を右SBへスライド。小林監督は高崎を下げて、キム・ジョンミンを同じ3トップの中央へ。お互いに切り合った勝負の一手。
85分は横浜。内田が右へ送ると、田原の強烈な左足ミドルはわずかにゴール左へ。87分は徳島。3バックの右から最前線まで駆け上がった大久保裕樹の右クロスを、ニアでトラップしてから素早く振り切った花井のシュートは、柴崎がしっかりキャッチ。88分には徳島最後の交替も、粘り強い守備が特徴の青山隼から、攻撃が持ち味の濱田武へのスイッチ。渇望する"勝ち点3"。
90分、那須川の連続CKは横浜DFが懸命にクリア。90+1分、松下の左FKは松井が飛び出してキャッチ。ボールに飛び込んだ田原に提示されたイエローカード。90+2分のラストチャンス。左サイドを抜け出した内田が上げ切ったクロスを、ファーまで上がってきていた西嶋がダイレクトボレーで枠へ飛ばすも松井が丁寧に両手でキャッチ。「後半は非常に両チームがスピーディーなサッカーをしていた」と山口監督も口にした、アグレッシブでスリリングな打ち合いは決着付かず。勝ち点1を分け合う結果となりました。
徳島は内容も結果も厳しいものとなった開幕戦で突き付けられた「ボールを大事に扱うこと」(斉藤)という課題を、特に1点目を奪ってからの60分あまりは、意識しながらしっかり改善できていた印象です。それに加え、「ただボールを回すだけだと相手は崩せない」(斉藤)という共通理解から、柴崎や斉藤を軸にサイドを"縦"に走らせたり、津田や高崎へ入れる"縦"を組み込む、「縦へのフォーカス」(斉藤)も、トレーニングが一定の成果を見た気がしました。「同じミスをするのであれば、怖がらずにやるということをやりたい」と小林監督。今後に期待の持てる勝ち点1だったのではないでしょうか。
一方の横浜は、昇格候補に名前を挙げられるだけのポテンシャルを十分に示すような内容だったと思います。「うまくゲームをコントロールできなかった」と悔しい表情を見せた松下も、4-1-4-1の中盤アンカーとして抜群の存在感。野崎や佐藤謙介が控えに回るような中盤は、誰が出ても相手に脅威を与えられるタレント揃い。開幕戦ではスタメン起用された中里崇宏が、今日はベンチからも外れたあたりに、今シーズンもポジティブな"競争"原理が働いている様子を見て取ることができます。「勝点1は残念な気がするが、全体的なパフォーマンスには満足している」と山口監督。間違いなく今シーズンのJ2主要キャストを今後も担っていくでしょう。        土屋

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