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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昇格組の湘南にとっては3年ぶりのカップバトル。平塚競技場改め、Shonan BMWスタジアム平塚へ日本3大タイトルの1つ、ナビスコカップが帰ってきました。
3節を終わったリーグ戦の成績は2分け1敗。3試合ともに一時はリードを奪いながら、いずれも追い付かれ、まだ白星に恵まれていない湘南。とはいえ内容は決して悪くなく、あとは早く1つ勝利が欲しい所。「自分たちにとってムダな試合は1つもない」と語るチョウ・キジェ監督の下、勝ち点3を獲得するのみの一戦に臨みます。
一方、ナビスコの初戦はホームで磐田に敗れ、黒星スタートとなった大宮ですが、リーグ戦では1勝2分けといまだ無敗をキープするなど、開幕は上々の滑り出し。2トップのノヴァコヴィッチとズラタンがスロヴェニア代表招集で欠場する中、早くもリーグ戦でゴールを決めている富山貴光に、同じく水曜日のナビスコでデビューを果たした今井智基と、ルーキー2人も揃ってスタメン出場。チームの底上げを図るには、絶好の機会と言っていいでしょう。再び冬が戻ってきたかのような寒さのスタジアムには、6019人の観客が集結。ギネスブックにも登録された伝統のカップ戦は、湘南のキックオフで幕を上げました。
2分、3分、5分といきなり立て続けにCKを獲得するなど、勢いを持ってゲームに入ったのは湘南。6分には右から梶川諒太が中へ送り、岩上祐三のスルーを挟むと、菊池のシュートはクロスバーの上へ。7分には大宮も金澤慎のインターセプトから、富山、長谷川悠とパスが回り、渡邉大剛の右クロスがDFに当たると、チョ・ヨンチョルがシュートを打ちかけ、岩上が間一髪でクリアするシーンを創りましたが、まずは湘南が攻勢に打って出ました。
そんなホームチームの変化はその布陣。昨シーズンのベースであり、今シーズンの3試合でも採用していた3-4-3ではなく、「相手のこともあってのチャレンジ」(菊池)と3-3-2-2を選択。3列目の中央に当たるアンカーには永木亮太を指名し、その前には菊池と梶川を配置。2トップには「去年もなかったし今年も初めて」という岩上と武富孝介が並び、「今後に向けてスタイルを磨く挑戦」(チョウ監督)にトライします。
実際、10分には岩上がミドルを、11分には亀川諒史の果敢なパスカットから武富が枠の右へ外れるシュートを放つなど、フィニッシュまで取り切る場面も。15分にも梶川のパスを受け、菊池が右からカットインしながら左足でミドルにチャレンジ。17分にも積極性が目を引いた亀川の仕掛けでFKを得ると、ゴールまで25m強の距離から岩上が直接狙って枠内へ。「始めの20分はアグレッシブに」(武富)という姿勢で、主導権を奪取します。
しかし、大宮からすれば「(ナビスコの)磐田戦でうまくいかなかったので、いつもより少し下がってディフェンスをしていた」(チョ・ヨンチョル)こともあり、ある程度序盤に押し込まれるのは想定内。"前"ではボールを持たれる時間が長くても、"裏"は使わせない守備を徹底し、エリア内への侵入を最低限に抑えることには成功。「相手は守備を整えている感じで、裏を狙えそうな雰囲気はなかった」(武富)「裏へ抜けても、ラインはちょっと深いなと思った」(岩上)と湘南の2トップもそのライン設定について言及したように、最後の局面では危ないシーンを創らせません。
26分は大宮。チョ・ヨンチョルが右へ振り分け、富山の鋭いクロスに長谷川が合わせたヘディングは湘南GK阿部伸行がキャッチ。27分は湘南。いいパスカットを見せた永木と武富の連携から、岩上が狙ったシュートはDFがブロック。お互いに繰り出し合った手数。すると先制点は唐突に。
30分、自陣で何気なく菊地光将からボールを引き出した上田康太が、突如として振るった左足の高精度フィード。「裏が狙いというのはミーティングでも話していた」という富山は巧みな駆け引きから裏へ飛び出すと、「ファーストタッチがうまくいった」と自賛したコントロールから独走。飛び出したGKの頭上を確実に破る柔らかいシュートで、ボールをゴールネットへ送り届けます。「プロになったら、ああいうワンチャンスを生かしていかなくてはと思っている」と口にしたルーキーのゴラッソ。アウェイチームが1点のアドバンテージを手にしました。
「一瞬のスキを突かれた」(菊池)湘南と、「慌てないでプレーすることに慣れている」(チョ・ヨンチョル)大宮。以降のペースは後者。34分にはチョ・ヨンチョルのパスから渡邉がゴール右へ外れるミドル。43分には菊地のフィードを起点に獲得した右CK。渡邉が蹴り入れたボールを菊地は頭で枠へ飛ばすも、ゴールカバーに入っていた梶川がライン上でクリア。「去年もこういう試合が多かった」(チョ・ヨンチョル)大宮が1点をリードして、前半の45分間は終了しました。
後半はスタートから大宮がラッシュ。47分、下平匠のフィードを富山がうまく落とし、チョ・ヨンチョルがブラインドを利用して打ち切ったシュートは阿部がファインセーブで阻止。そのCKの流れから、渡邉のラストパスに上田が右足で狙ったミドルは枠の上へ。52分、相手のミスを拾い、ここも渡邉のラストパスから富山が枠内へ収めたシュートは阿部がキャッチ。リスクを掛け過ぎず、相手のミスも利用しながら、大宮がゲームを優位に進めていきます。
チョウ監督の決断は59分。2トップの武富と岩上を下げて、高山薫と古橋達弥を投入する2枚替えを敢行し、その高山と菊池を前線に並べるアグレッシブな形で同点、そして逆転への意欲を前面に押し出します。
しかし、次に大歓声に包まれたのはオレンジのゴール裏。61分、長谷川が裏へ蹴り込んだボールを、追いかけたチョ・ヨンチョルはマーカーの対応にも粘り強くキープし、ゴリゴリと突破すると丁寧に中へ。ニアへ走り込んだ長谷川は難なくプッシュして、陥れた湘南ゴール。「試合感覚も上がってきて、周りも見えてきた」と語るコリアンアタッカーの好アシストで2トップ揃い踏み。リードが広がりました。
折れなかった緑と青。62分、亀川とのワンツーから左サイドを抜け出した高山がクロスを送ると、GKも含めた密集を飛び越えてボールはファーへ。ここにしっかり駆け上がっていたのは古林将太。躊躇のないダイレクトボレーは、着地点にゴールネットを選びます。すぐさま反発した湘南。折れなかった湘南。点差は再び1点に。
大宮も71分には相手のイージーミスを見逃さず、またも上田がピンポイントでフィードを送り届けると、長谷川のボレーは阿部が正面でキャッチ。スコアは1-2のままで迎えた75分、同時に動いた両監督。チョウ監督の3枚目は亀川を下げてキリノ。ベルデニック監督の1枚目はチョ・ヨンチョルを下げて宮崎泰右。さらに後者の指揮官は78分にも上田と青木拓矢をスイッチ。79分は大宮。宮崎の力強い突破から長谷川が絡み、こぼれを拾って右へ流れた渡邉のシュートはGKを破るも、懸命に無人のゴールへ戻った永木がスーパークリア。1点差の勝負はラスト10分間の攻防へ。
最低でも勝ち点1は奪い取りたい湘南でしたが、「前半のプレーリズムが後半の残り5分10分ぐらいまで続けられるようにしなければいけない」とチョウ監督。「ボランチや後ろが持った時、前の"かかわり"が少なく、動きが単調だったかなと思う」と菊池。前へと行きたい意欲は十分伝わってくるものの、なかなかそれを攻撃の形へと昇華させられません。
「点を取ったら相手も出てくるので、またそこをウチが行くという勝ち方」(チョ・ヨンチョル)の実現。90+4分、ボールを持った永木に襲い掛かったのは金澤。こぼれを長谷川が左へ回し、下平の絶妙クロスを頭で押し込んだのは、83分に最後のカードとしてピッチへ送り出された渡部大輔。「選手たちは集中して最後まで戦い抜いた。動きに関しても非常に満足している」と指揮官も選手を称えた大宮が、試合巧者ぶりを発揮して勝ち点3を敵地から持ち帰る結果となりました。
強力2トップを欠いてのゲームとなった大宮でしたが、結果的に長谷川と富山の和製2トップがゴールも含めて躍動しました。「今日は2人が凄く頑張ってくれた。状況次第で違うが、ノヴァコヴィッチとズラタンは技術があるけど、今日の2トップだと守備面では楽」とチョ・ヨンチョルが話し、「2トップは攻撃だけでなく守備の面でも貢献してくれた」とベルデニック監督も言及するなど、湘南という相手を考えると、彼らの献身性が生きるようなゲームだったでのはないでしょうか。特に「結果には凄くこだわっていた」という富山の活躍は、間違いなくチーム全体に好影響を与えている印象を受けました。
湘南に関しては、ゲーム運びの部分で後手を踏んだように見えました。チョウ監督が「前半はあの隙を与えた1回で1点取られてしまった」と振り返った部分に関しては、清水戦に似通ったものがあります。「J1となると"もう1点"取ることを常に意識しながら練習しないといけない」とは、自身も今シーズンが初のトップディビジョン参戦となる菊池大介。今日は2失点後の得点でしたが、「自分たちのスタイルを磨いていくしか、このチームの良さは出ない」(チョウ監督)というスタンスを貫く上でも、"2点目"は今後も勝利への重要なキーファクターへなっていきそうです。 土屋
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