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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年02月17日

第19回ちばぎんカップ 柏×千葉@日立台

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chibagin0217.jpg千葉県のサッカー界に"球春"を告げるビッグマッチは、タイトルを懸けたリアルファイト。ちばぎんカップの到来です。
連覇を狙った昨年のリーグ戦ではなかなかその力を発揮し切れず、6位という悔しい結果に終わった柏。しかし、アジアへの扉を開くべく挑んだ天皇杯では、元旦の国立へ咆哮を轟かせる見事な優勝を成し遂げ、2年続けて国内主要タイトルを獲得。迎えた今シーズンはリーグの覇権奪還とモロッコへのロングフライトを明確に目指して戦います。
J2屈指の戦力を揃え、昇格筆頭候補の評価も受けながら臨んだリーグ戦は5位。回った昇格プレーオフも9割方掴んでいたJ1復帰の権利をあと一歩の所で逃し、J2で4年目のシーズンを戦うことになった千葉。鈴木淳新監督の下、唯一の目標を手にするための1年が始まります。当然両サポーターも気合い十分。スタンドには11190人とリーグ戦クラスの観衆が集結。注目のダービーは柏のキックオフでスタートしました。
まず、立ち上がりから目立ったのは「止まることを知らないくらい前に行く」と茨田陽生が評した柏の右WBを務めるキム・チャンス。6分には積極的な仕掛けでCKを獲得すると、9分にはクレオとのコンビネーションから左へ送り、チャンスの起点に。このボールをジョルジ・ワグネルはクロスに変え、クレオのヘディングは枠の左へ。11分は自ら好機創出。右へ流れた工藤壮人を全力疾走で追い抜くと、出てきたボールをピンポイントで中へ。クレオのボレーはDFにブロックされたものの、「3バックもやったことはあるので、違和感なくやれている」と早くも高い順応性で、柏の右サイドに推進力をもたらします。
一方の千葉で序盤から目を引いたのは、左SHに入ったジャイール。自ら「今日がサポーターとも初対面」と話す新加入のブラジル人アタッカーは、「ドリブルから人を崩してゴールに迫り、クロスを上げるというスタイル」(鈴木監督)をしっかり披露。相手3バックの"外"でキープ力を生かし、うまくアクセントとしての機能を果たします。19分には一瞬のタメを創り、渡邊圭二のオーバーラップを促すと、その渡邊の折り返しをニアで谷澤達也が合わせるファーストシュート。柏の"右"と千葉の"左"。バックスタンドサイドで、見応えのある主導権争いが勃発すると、先にスコアを動かしたのは千葉の"左"。
19分、谷澤から左でボールを受けたジャイールは、「自分の特徴でもあるスピードを生かして」スルスルと中へ潜りながら右足でクロス。このボールに飛び込んだ米倉恒貴のヘディングはゴール右スミへ収まり、菅野孝憲も一歩及ばず。攻撃性の高いサイドハーフ2人の崩しで、千葉が鮮やかに先制してみせました。
さて、リードを許した柏は新システムとも言っていい3-5-2も「悪くはなかったし、ある程度手応えを掴んだ」と工藤が話すなど、決して機能していなかった訳ではなく、特に最終ラインの3枚はバランスの取れたチャレンジアンドカバーができていた印象です。その一方で、ボランチが攻守に苦しんでいた印象は否めません。
「前半はほとんどボールに触っていないイメージ」と茨田。ビルドアップは基本的に後ろの3枚でのボール回しになり、いずれもが長いボールも正確に蹴ることができる上に、前にはクレオというターゲットもいるため、ボランチを経由するようなボールはほとんどなし。さらに「常にグッチさん(谷口博之)の位置を確認しながらプレーしていた」茨田は、「自分がバランスを取ろうと思って」守備に軸足を置いたプレーが多く、その谷口とのバランスに腐心するあまり、J1クラスと言っていい佐藤勇人と兵働昭弘の相手ボランチにセカンドを拾われるシーンも多発。チームの大きな穴にはなっていなかったと思いますが、カウンターも数的同数に近い形で食らうシーンも見られるなど、茨田と谷口の2人にとっては少しストレスのかかる展開だったかもしれません。
24分は千葉。米倉、谷澤と繋ぎ、ルーズボールを収めた米倉が左へ振ると、ナム・スンウのシュートは菅野の正面。27分は柏。ワグネルが高い位置でボールを奪うと、クレオの積極的なミドルは枠の右へ。手数を出し合う中、30分には千葉が3連続チャンスを創出。中盤でボールを持ったジャイールは絶妙のタイミングで裏へ入れると、抜け出しかけた米倉の目前で菅野が判断良く飛び出しクリア。直後にはエリア内で谷澤がタメて右へ送り、米倉のシュートはDFがブロック。こぼれに兵働が頭から突っ込むも、ここも菅野が間一髪でセーブ。その左CKをジャイールが入れると、山口智のヘディングはキムがライン上でクリア。怒涛のラッシュで柏ゴールへ迫ります。
以降の前半残り15分は柏ペース。ややサイドの推進力が減退した中で、後ろからシンプルにフィードをサイドの裏へ。39分にはワグネルが獲得した左CKを自ら蹴ると、近藤のヘディングはわずかにゴール左へ。44分にも近藤が左サイドのスペースへ落とすと、ワグネルは追い付いてクロス。このこぼれをレアンドロ・ドミンゲスは確実にボレーで枠内へ飛ばしましたが、ゴールライン上で竹内彬がスーパークリア。続くワグネルの左CKも近藤に合ったものの、またもボールは枠の左へ。前半は千葉が1点のアドバンテージを握って45分間が終了しました。
ネルシーニョの決断はハーフタイム。「左サイドにジョルジしか起点がなかった」と見ると、増嶋竜也を下げて山中亮輔を投入。システムも最終ラインに右からキム、鈴木大輔、近藤、山中を並べる4-4-2にシフトし、後半の巻き返しを狙います。こうなると当然全体のバランスは整い、守備面ではやはり効果大。カウンターに晒される脅威が軽減されます。
そして、攻撃面で持ち味を発揮してみせたのが「今年は2年目だけど勝負だと思っているので、レギュラー争いに食い込めるようにどんどんアピールしたい」と話す山中。「ビハインドの状況だったので、自分が出て逆転してやろうという気持ちは凄く強かった」と、ピッチイン直後からフルスロットルでオーバーラップを連発。これには指揮官も「後半は左サイドのリズムが上がってきた」と言及。左を1つのアクセントに前へ出て行く柏。56分にはワグネルのFKから鈴木が枠の左へ外れるヘディングを放つなど、同点への意欲を打ち出していきます。
ただ、次にゴールを挙げたのも千葉。60分、ジャイールが独力で右に流れながら打ち切ったシュートを、菅野がファインセーブで弾き出して生まれたCK。右から兵働が短く出し、ジャイールのリターンを兵働が中へ。DFに当たったボールが米倉の懐へ飛び込むと、躊躇なく合わせたボレーがゴールネットへ突き刺さります。「いいボールが来たのでボレーするだけだった」とはいえ、さすがの決定力。米倉のドッピエッタで点差が広がりました。
61分にはネルシーニョ監督の2枚替え。「クレオと2人で崩すというところまではいっていない」と話すなど、やや今日はハマらなかった工藤を田中順也へ、谷口を栗澤僚一へぞれぞれ入れ替え、「いつもの感覚」(茨田)を呼び戻させると、68分にはクレオと狩野健太もスイッチ。最前線に入る田中の下に右からレアンドロ、狩野、ワグネルが並ぶ4-2-3-1で2点を返す勝負に出ます。
ところが、3たび沸き上がったアウェイのゴール裏。71分、兵働が左サイドへ最高のシルクパスを送ると、渡邊は素晴らしいクロスをニアへ。ここへ走り込んで来たナムは、薄く頭に当てる巧みなヘディングでボールをゴールへ送り届けます。「非常に良いものを持っていると思う」と鈴木監督も認める20歳の新鋭がトドメの3点目。勝敗は決しました。
千葉1人目の交替はゴール直後の71分。やはり違いをしっかり見せ付けた兵働が下がり、佐藤健太郎がそのままの位置に。75分には奮闘したナムと深井正樹をスイッチすると、ジャイールが1.5列目的に中央へ入り、J2では間違いなく屈指の破壊力を持つ4人のユニットへシフトします。
何とか1点は返したい柏でしたが、「点差が開くと相手も落ち着いてしまうし、リトリートされてしまって裏もケアされた」と茨田。77分にはレアンドロのシュートがDFに当たってこぼれた絶好機も、狩野のシュートは弱く、千葉GK岡本昌弘がキャッチ。79分にレアンドロが右へ展開し、キムのクロスを田中が頭で落とすと、レアンドロはボレーで狙いましたが、ここも岡本がしっかりキャッチ。スコアボードの"ゼロ"を書き換えられません。
86分にゴール前で絶好の位置からレアンドロが直接狙ったFKもわずかに枠外。「全体としてコンディションがいまひとつの中、選手は良く戦ってくれて良いゲームをしてくれたと思います」と鈴木監督も一定の評価を口にした千葉が、大会史上最多得点の3ゴールを奪う快勝で、キャプテンの山口智がカップを掲げる結果となりました。
千葉は現時点での完成度が非常に高かった印象です。高さのあるクレオにも、山口智と竹内で組むCBが高い補完性でそつなく対応。兵働と佐藤勇人のドイスボランチも攻守にバランスが取れており、ここの4枚はそのままJ1で通用するユニットでしょう。あとは、2点に絡んだジャイールもおそらく大きな武器になってくるはず。シーズン開幕が楽しみになるようなタイトル獲得でした。
柏は「すべてにおいてマイナスに捉える必要はない」と工藤が話したように、「目に見えて我々の選手の仕上がりに差があった」(ネルシーニョ監督)中では、新戦力の起用も含めて悪くないテストになったのではないでしょうか。ただ、来週にゼロックス、再来週には早くもACLの初戦が控えていることを考えると、あまりゴールの匂いが漂って来なかったアタッキングサードの突き詰めは急務。特に3人のブラジル人アタッカーに関する起用のタイミングやポジションの置き方が、今後の鍵を握ってきそうです。        土屋

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