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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
「ファイナリストになるとか、国立でやるとかいうのはまったく意味がない。僕らは年間通して"ファースト"を取ることを目標にしてきた。頂点を極めたい」(早稲田大・古賀聡監督)「4年間で2回決勝まで来られたのは、地方の大学として非常に嬉しいこと。決勝は3度目なので、"3度目の正直"を果たしたい」(福岡大・乾真寛監督)。インカレもいよいよファイナルです。
初戦で当たった徳山大を、大宮入団が内定している富山貴光(4年・矢板中央)のゴールなどで3-0と一蹴すると、準々決勝では白井豪(4年・都立三鷹)の2発で札幌大に辛勝。準決勝も鹿屋体育大から大量5ゴールを奪って、5年ぶりの頂点に王手を懸けた早稲田。「早稲田は一番でなければ何も意味がない」(白井)「早稲田は常に一番じゃなきゃいけない」(菅井順平・4年・浦和レッズY)。覚悟は決まっています。
一方、初戦の桃山学院戦を終盤のオウンゴール1点で切り抜けると、準々決勝では田中智大(4年・福岡U-18)の2発や岸田和人(4年・大分U-18)のスーパーミドルなどで優勝候補の明治大に快勝を収め、準決勝は難敵・阪南大に後半怒涛の3ゴールで逆転勝利。初優勝まであと1勝に迫った福大。「自分たちが1年やってきたことに自信を持ってやればいい」とはキャプテンの牟田雄祐(4年・筑陽学園・名古屋内定)。カップは関門海峡を越えるでしょうか。マッチナンバー15。正真正銘のラストマッチは、福大のキックオフでその幕が上がりました。
電光石火の先制劇は早稲田。2分、左サイドでボールを持った近藤洋史(2年・名古屋U18)は、回ったSBの三竿雄斗(3年・東京Vユース)へ。クロスがDFに当たってこぼれると、「最初から積極的に行こうと思っていた」白井は左足一閃。ボールはニアサイドをぶち抜き、ゴールネットへ到達します。ベンチへと走り寄る白井がユニフォームの下に着ていたのは、体調不良でメンバーに入れなかった、本来キャプテンを務める畑尾大翔(4年・FC東京U-18)が着るべき4番のユニフォーム。2月に大怪我を負い、リーグ終盤にようやく戦線復帰。「この大会に入ってからは何よりも得点で貢献したかった」と語る4年生の4戦連発となる大会5ゴール目が傷めていた左足から飛び出し、あっという間にスコアボードへ"1"を浮かび上がらせました。
さて、「守備から入っていくのが大前提としてある」(岸田和人)中でいきなりビハインドを負った福大は、まず得意のセットプレーから反攻。4分に左ロングスロー、8分に右FK、同じく8分に右ロングスローと、投げるのも蹴るのも清武功暉(4年・大分U-18・鳥栖内定)が担当してゴール前を脅かすと、10分にもやはり清武の右ロングスローから、GKがパンチングしたこぼれを岸田翔平(4年・大分U-18・鳥栖内定)がシュート。DFのブロックに遭いましたが、おなじみの形で同点機を窺います。
11分には再び白井の衝撃。奥山政幸(1年・名古屋U18)のスローインを受けた白井が突如として繰り出したミドルは、パンチ力抜群のパワーとスピードでクロスバーをハードヒット。揺れるゴールとバックスタンドのエンジ。16分は福大。カウンターから岸田和人が左へ送ると、清武のドリブルシュートはゴール右へ。出し合う手数。
ただ、20分を過ぎたあたりから少しずつ福大に傾き始めた流れ。「競り方が斜めから入ってきたり、横から入ってきたりうまかった」と早稲田CB山地翔(4年・浦和ユース)が話せば、「山地はヘディングが強くて、僕が競り負けてルーズボールも拾われた」と岸田和人も話すなど、お互いがお互いを嫌がる中、徐々に岸田和人にボールが収まり出し、福大の攻撃に厚みが出てきます。
29分にはカウンターからビッグチャンス。清武のパスを受けて飛び出した岸田和人は加速。放ったシュートは何とか食い下がった菅井が体でブロックしましたが、決定的なシーンを迎えると、ここからチャンスの連続。
31分、清武のフィードに岸田和人が潰れ、拾った田中のシュートは早稲田GK松澤香輝(2年・流通経済大柏・千葉特別指定)が何とかキャッチ。35分、岸田翔平のアーリークロスに「ショウは結構よく見てくれている」という岸田和人が粘って繋ぎ、清武のシュートは枠の上へ外れますが、双子の岸田ツインズで好機創出。38分にも翔平、和人のラインで獲得した右FKを平田拳一朗(3年・高川学園)が蹴ると、ボールはわずかに枠の左へ。「流れはだんだんウチに来ていた」と岸田和人。同点の予感も十分に。
ところが、次に記録されたのは追加点。40分、左サイドで富山が懸命に繋いだボールを、3列目から上がってきた島田譲(4年・鹿島ユース・岡山内定)が利き足の左で入れた高速グラウンダークロス。ニアサイドで搔き出そうとした牟田のクリアは、無情にも自陣ゴールに飛び込むオウンゴール。白井のクロスバー直撃以来、シュートのなかった早稲田がリードを広げました。
2点を追い掛ける展開となった福大は、44分にPKを獲得。清武、田中と繋いだボールを岸田和人が運ぶと、倒された位置がエリア内という井上知大主審のジャッジ。点差を詰める絶好機を迎えます。キッカーは岸田和人自ら。「全国になれば自信を持っているGKが多いので、そういう選手は絶対に飛んでくる。真ん中に蹴れば入るだろう」と、普段は右に蹴ることの多いパネンカを今回は中央にきっちり成功。強心臓のストライカーが阪南大戦に続いて11mの空間を制し、2-1というスコアで最初の45分間は終了しました。
後半に入ると先に動いたのは乾監督。スタートから平田に替えて最前線に山﨑凌吾(2年・玉野光南)を送り込み、システムも4-2-3-1から4-4-2に移行させ、岸田和人と山﨑のハイタワー2トップに同点、そして逆転を託します。狙いはやはりセットプレー。
46分、清武の左ロングスローはDFが弾き返し、拾った清武のクロスは誰も触れず枠の左へ。48分、清武の右FKは中央をすり抜けるもオフサイドの判定。51分、清武の右ロングスローは松澤が飛び出して直接キャッチ。53分、清武の右CKを牟田が合わせたヘディングは枠の左へ。掛け続ける"空"の圧力。
55分はハーフタイムに「相手も勢いを持って来るので、球際とか競り合いでは気持ちで負けない」(山地)と改めて選手同士で確認した早稲田。右から白井が低空のアーリークロスを入れると、ニアで受けた榎本大希(3年・横浜FMユース)のシュートは枠の右へ。58分は福大。左サイドで果敢なプレスから田中がボールを奪い、岸田和人がミドルレンジをループ気味に狙ったシュートは松澤がキャッチ。スコアは変わりません。
59分に古賀監督も1人目の交替を決断。「ケガをして苦しい時間が長かった分、想いは強かった」というパワーを見事に結果へ昇華した白井を下げて、近藤貴司(2年・三菱養和SCユース)をそのまま右SHへ投入。61分には福大も2枚目のカード切り。「立ち上がりからなかなかボールが足に付かない」と乾監督が見ていたボランチを、稲葉修土(1年・立正大淞南)から増田忠紘(3年・東福岡)に入れ替え、中盤の強度にテコ入れを図ります。
61分にどよめいたスタンド。左からクロス気味に清武が入れたFKは、松澤を越えるとクロスバーに直撃。拾った岸田翔平のヘディングは松澤がしっかりキャッチしましたが、得点シーン以外では最も惜しい一連に勢い付く福大応援団。62分に清武が蹴った右FKは松澤がキャッチ。63分、清武が左から投げたロングスローは山地が確実にクリア。2-1は継続中。
このゲームの前まで猛威を奮っていた福大のロングスローを見ると、今日はこの63分の一投で6本目でしたが、決定機まで繋がったのはゼロ。これに関しては、近藤洋史が「練習の中から福大のロングスロー対策はやっていて、自分のポジションも1人1人がやるべきことが明確だった」と話したように、「予想していたよりも質の高いスローイン」(白井)にも混乱はなし。「セカンドへの集中力はウチの方が勝っていた」とキャプテンの菅井も胸を張ったように、空陸両面で福大に自由を謳歌させません。
そんな中、70分に訪れたのは同点機。CBの大武峻(2年・筑陽学園)が左へ展開すると、弓崎は完璧なタイミングと完璧な軌道のクロスを中へ。これに完璧なコース取りでフリーになった清武が頭から飛び込むも、ボールは松澤の正面を捉えてしまい、早稲田は陥落せず。ややツキにも見放されてしまいます。
またも双方ほとんど同じようなタイミングで次の交替策に。71分、早稲田は榎本と片山瑛一(3年・県立川越)がそのまま最前線でスイッチ。73分、福大は最後のカードとして効いていたように見えた岸田和人を諦め、伊賀上竜希(3年・大分鶴崎)をサイドへ投入。勝負に出ます。
千両役者のお出ましは76分。片山のロブに対して、DFのクリアが高く上がった落下点へ誰よりも早く到達したのは富山。10番のアイデアは、落ちてきたボールをドライブで叩き込むボレー。2秒後、そのアイデアは寸分違わぬ形で具現化され、激しく揺さぶられたゴールネット。「みんなが繋いでくれたボールが来たのは偶然じゃない」と仲間への感謝を口にした絶対的なエースがユニフォームを脱ぐと、再び国立のピッチに現れた"4番"のユニフォーム。2枚のイエローカードは、4年生の絆。大きな大きな追加点が早稲田に記録されました。
苦しくなった福大。80分には清武がゴールまで約30mの距離から無回転で狙ったFKは、富山が頭でブロック。82分の富山が放ったスーパーボレーは藤嶋栄介(3年・大津)が何とかファインセーブで凌いでかすかな望みを繋ぐと、84分にもチャンス。山﨑のラストパスから、走り込んだ弓崎がシュートを放つも、ボールはクロスバーの上へ。87分に清武が右から投げたロングスローも早稲田ディフェンスの集中は切れず、しっかりクリア。「チーム全員で自信を持って守れた」(山地)早稲田の集大成。アディショナルタイムは4分。「日本一を取れば人生変わるってみんなで話していた」と白井。その時まであと4分。
90+4分、伊賀上のフィードから最後に田中が打ち切ったシュートも枠の上へ。程なく国立の夕闇にこだましたタイムアップのホイッスル。「畑尾を胴上げしようという目標」(菅井)の達成。「総理大臣杯も関東リーグも3位で、まだ僕たちは何も成し遂げていない。インカレだけは絶対優勝してやろうと話していた」(近藤洋史)目標の達成。"紺碧の空"が響き渡り、早稲田が大学日本一に輝く結果となりました。
福大は今日もスタメンに185センチオーバーが4人も揃う「Jリーグを見渡してもなかなかいないような大型チーム」(乾監督)という特徴を最大限に生かし、「高さと強さと速さで勝負」(同)という明快なスタイルを展開。決勝こそ早稲田の徹底したセットプレー対策に屈した感はありましたが、ある意味で理に適った面白いサッカーを披露してくれたと思います。中でも、「自分のためというより、チームのために頑張ろうという気持ちがゴールに繋がったのかなと思う」と話す、大会を通じて活躍した岸田和人は高さと速さを兼ね備えた好素材のストライカー。是非Jの舞台でも見てみたい選手です。
5年ぶりの栄冠に輝いた早稲田は、富山という傑出したストライカーこそいたものの、どちらかと言えば"個"よりも"組織"で勝負するチーム。「今大会は自分にチャンスが来たら、貪欲に狙っていこうと思っていた」という大会得点王の白井や、「チームが勝つために自分ができることに取り組んでいた」という菅井など、特に最上級生が"WASEDA the 1st"という目標を信じ、地道な努力を続けてきた結果が、最後の最後で大輪の花を咲かせた要因という印象を受けました。「試合に出ているメンバーだけじゃなくて、最高の同期や下級生、スタッフに恵まれて感謝したい」と話す、結果的に中学、高校、大学で日本一という個人的偉業を達成した菅井が口にした「早稲田黄金期の始まり」。インカレ最多優勝回数を1つ伸ばした名門が、新たな時代を切り拓く雄壮な第一歩を踏み出しました。 土屋
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