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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は地元の名門校であり人気校が登場。スタンドは立ち見の観客も出るなど超満員。神奈川代表の桐光学園と三重代表の四日市中央工業という、優勝候補同士がいきなり2回戦で激突することになりました。
柏レイソルU-18や横浜F・マリノスY、FC東京U-18など、全国的に見てもトップクラスの実力派が揃うプリンス関東1部を見事に制すると、その勢いで参入戦も駆け抜け、来季からのプレミア昇格を勝ち取った桐光。「全員がハードワークして、自分の役割を徹底してやる」とはチームの特徴を問われた佐熊裕和監督。敵将の樋口士郎監督も「今年の桐光はだいぶ勝負にこだわっているなと思う」と言及するなど、目指すはただ1つ、"全国制覇"です。
対するは前回大会で、その全国制覇を掴むあと一歩の所が届かなかった四日市中央工業。昨年からレギュラーを務める浅野拓磨(3年・菰野八風中・広島内定)と田村翔太(3年・東海スポーツ・湘南内定)という、J1クラブ内定2トップを擁し、国立へ忘れ物を取りに帰らなくてはなりません。14500人の大観衆が見守る中、桐光のキックオフで注目の一戦はスタートしました。
いきなりの先制パンチは桐光。開始23秒、松井修平(3年・川崎フロンターレU-15)のパスから、左SHの菅本岳(3年・川崎犬蔵中)が思い切ったシュート。ボールは枠をわずかに逸れましたが、電光石火の早業で四中工ゴールを強襲すると、5分にも左サイドでボールを持った右SHの橋本裕貴(3年・町田JFC)が枠内ミドル。ここは四中工GK中村研吾(2年・ソシエタ伊勢SC)がきっちり弾き出したものの、普段と左右を入れ替えたSHがお互いにシュートを繰り出し、いい形でゲームへ入ります。
第1試合ほどプレーへの影響は感じさせなかったとはいえ、やはり相変わらず吹いている強風の中、"風上"に立った桐光の続く攻勢。前線の野路貴之(3年・横浜F・マリノスJY)と市森康平(3年・茅ヶ崎第一中)で組んだ2トップは、タイプこそ異なりますが、収める力は揃って高性能。「蹴ってくるのはわかっていたが、パワーに押し込まれた感じ」とは四中工のキャプテンマークを巻く田村大樹(3年・LIBERO FC)。ここに菅本と橋本、そして3列目から松井が積極的に絡むなど、厚みのある攻撃を披露。一方の四中工は「2トップに入る前のパスで、受け手側と出す側のタイミングが合わなかった」と樋口監督も振り返ったように、頼みの2トップにもなかなかボールが入らず、シュートはもちろん、その前段階すらもうまく機能しません。
すると、スコアを動かしたのは桐光の"2トップ"。25分、自陣からキャプテンの大田隼輔(3年・町田JFC)が蹴ったFK。走った野路は2人に囲まれながら、巧みにヒールパス。受けた市森が右足を振り抜くと、ボールは左のサイドネットへ突き刺さります。やはりこの2人のコンビネーションは脅威。"地元"桐光が1点をリードしました。
攻め手を見い出せない四中工を尻目に、攻撃の手を緩めない桐光。35分、GK長津大裕(2年・横浜F・マリノスJY追浜)のキックは風に乗ってそのまま流れ、DFと競り合いながらGKのポジションを確認していた野路は冷静なループで中村を無力化。これがプリンス関東1部得点王の実力。ストライカーの嗅覚で点差が広がります。
止まらないスカイブルー。36分、松井が右へ展開すると、シザーズを織り交ぜたフェイントから橋本がクロス。このボールをファーサイドで待っていたのはやはり野路。GKの届かない位置へ、頭で流し込むゴラッソはチーム3点目。「前半は風上で思うような形で行けた」と佐熊監督も語った桐光が、意外ともいうべき3点の大量リードを奪い、ハーフタイムへ入りました。
後半も先に決定的なシーンを創出したのは桐光。44分、後方から来た菅本のパスを、野路はダイレクトボレー。中村がファインセーブで逃れたボールを橋本が狙うも、再度中村が弾き出しましたが、53分にも好機。松井が左へ振り分け、菅本がマイナスに折り返したボールを市森が狙うも、枠の右へ。「風上でも風下でも押し込まれていようと、DFラインの裏へ1本置きに行けばチャンスはできる」とは佐熊監督。当然のように4点目を目指します。
ところが、1つのシュートシーンが反転させた流れ。53分にゴール前の混戦から、川島大路(3年・東京ヴェルディJY)が放ったシュートは長津が懸命に弾きましたが、田村大樹の左CKにファーサイドへ体ごと突っ込んだのは坂圭祐(2年・四日市内部中)。「3-0のままじゃ終われないという意地」(樋口監督)の一発。3-1。リードは2点に。
55分、再び四中工が左サイドで獲得したCK。再び田村大樹が「ずっとやってきた」というピンポイントキックを入れると、このボールに頭で合わせたのは再び坂。「凄いヘデイングでしたね」と樋口監督も笑い、「坂のヘディングはケアしていたが」と佐熊監督も言及した2年生CBが、高校年代トップクラスのCBと言っていい諸石健太(3年・横浜F・マリノスJY)に競り勝っての強烈な一撃。3-2。リードは一瞬で1点に変わりました。
止まらない四中工。58分、浅野が左サイドをさすがの突破力でぶっちぎり、中へグラウンダーのクロス。田村翔太が優しく繋ぎ、田村大樹が左足で枠へ飛ばしたシュートは、クロスバーにハードヒット。こぼれを狙った川島のフィニッシュは、桐光の左SB中島駿(2年・町田JFC)が体でブロックして何とか凌いだものの、あわや同点というシーンに場内は異様な雰囲気が漂います。
60分には樋口監督が1人目の交替を決断。12月の負傷で離脱を余儀なくされ、「コンディション的にヘロヘロ。できれば替えたくなかった」という松尾和樹(3年・菰野八風中)に替えて、舘和希(1年・伊賀FC)を右SBへ投入。川本将太郎(3年・亀山中部中)が一列上がって右SHへ入り、川島が右から左へ移行。田村大樹はボランチにスライドして、同点への"波"を捕まえにかかりました。
62分も四中工。左から田村大樹が絶妙の位置に蹴り込んだFKへ、ファーサイドから突っ込んだ田村翔太はわずかに届かず。64分も四中工。今度は右から川島が蹴ったFKは、少し中と合わずにゴールキックへ。66分も四中工。川本が右へ送り、田村翔太がやや強引に打ち切ったシュートは、中島が何とかブロック。両校応援団が陣取るバックスタンドは歓声と悲鳴が交錯します。
苦しい時間帯を強いられた桐光の反攻は67分。大田のフィードを確実に収めた野路は、右サイドを独力でぶち抜くと、ニアへ速いクロス。走り込んだ市森のシュートは、しかし中村がファインセーブ。追加点の絶好機を逃し、桐光ベンチも頭を抱えます。ただ、次の得点が記録されたのは劣勢の"ホーム"チーム。
70分、市森が粘り強いキープから左へ展開すると、菅本のピンポイントクロスはファーまで到達。ほとんどフリーで待っていた橋本のヘディングは、懸命に飛び付いた中村の頭上を綺麗に破ります。「しんどい所を何とか2点で抑えられた」(佐熊監督)守備の粘りが呼び込んだ貴重な追加点。再度、点差は2点になりました。
追い込まれた三重の名門。72分に浅野が強引に狙ったミドルは枠の右へ。78分に田村大樹が左サイドから蹴り入れたFKも、わずかにクロスバーの上へ。そして80+3分、中央から田村翔太が直接狙った無回転FKを長津が冷静なセーブで弾き出すと、オレンジ色の陽射しが輝くピッチに鳴り響いたホイッスル。ハイレベルな一騎打ちは桐光に軍配。撃ち勝った"ホームチーム"がベスト16への切符を獲得する結果となりました。
勝敗を分けたのは桐光が挙げた4点目。2点を返され、なおも苦しい時間帯が続く中で、最後は"2トップ"ではなく、SHに配置された菅本と橋本で奪い切ったゴール。双方共に強力な2トップがクローズアップされる中、一番大事な1点を彼ら以外の選手がもぎ取ったあたりに、桐光の底力を見た気がしました。注目対決にふさわしい好ゲームだったと思います。 土屋
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