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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年01月01日

高校選手権1回戦 青森山田×野洲@駒沢

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komazawa0101.jpg15008という駒沢を埋めた観衆の数が注目度の証。1回戦屈指の好カードは、16年連続出場という金字塔を継続中の青森山田と、今や高校サッカー界の顔となりつつある滋賀代表・野洲の対戦です。
日本トップクラスの強豪が集う高円宮杯プレミアリーグEASTでは、堂々の4位に入るなど全国でもその実力は誰もが知る所の青森山田ですが、選手権に関しては2年続けてベスト16で敗退。悲願の初優勝に向けて、「ここで勝たなければ何もないので、何とかここを切り抜けたい」と黒田剛監督も語る、最初の難関に挑みます。
対するは2年ぶりに全国の舞台へ帰ってきた野洲。インターハイ予選やプリンス関西では苦戦が続いたものの、山本佳司監督は「ブラジルやスペインのように、どんな相手でも主導権を取りに行くことにチャレンジする」と宣言。名古屋内定の望月嶺臣(3年・セゾンFC)を中心にしたポゼッションスタイルを突き詰め、7年ぶりの頂点を狙います。高校サッカーファンの期待を一身に集めたゲームは、青森山田のキックオフで幕が上がりました。
立ち上がりからリズムを掴んだのは青森山田。相手の「ポゼッション能力が高い」(黒田監督)ことは当然織り込み済み。その中で、「パスワークをいかに封じてカウンターに持っていくか」(同)というポイントをしっかり整理して入った選手たちは、焦らずに野洲のアタックへ対応していきます。
11分にはその青森山田にチャンス到来。左サイドをSHの丹代爽弥(3年・青森山田中)が縦に抜け出し、そのままシュート。ボールはサイドネットの外側を激しく揺らし、先制ゴールとはいきませんでしたが、狙いをフィニッシュという形で体現してみせます。
しかし、アクシデントが起きたのは17分。裏へのボールに走り込んだ野洲の選手と、青森山田GK野坂浩亮(3年・フロンティアトルナーレFC)が正面衝突。野坂は腹部を強打し、立ち上がれず。試合は中断を余儀なくされることになりました。
この中断に加え、「かなり守備から入ってこられて、迷いが出た」と山本監督も振り返った野洲は、なかなか本来の持ち味を発揮できないまま、時間が推移。37分にはフィードに抜け出した大本祐槻(3年・FC湖東)が1人かわしてシュートを放つも、野坂がキャッチ。ボール保持をゴール前の迫力にまで昇華できません。
すると、掲示された時には場内が大きなどよめきに包まれたアディショナルタイム9分も終わりに差し掛かっていた40+8分、中盤の右サイドでボールを受けた池上丈二(3年・国見高)は少し前に運ぶと、ゴールまで約30mの距離からミドルにトライ。枠の右スミへコントロールされたボールが、ゴールネットへ吸い込まれます。「思い切ったシュートを打ってくれた」と指揮官も賞賛した、チーム一小柄な男が大仕事。青森山田が1点のアドバンテージを獲得して、最初の"49分間"が終了しました。
後半はスタートから青森山田に選手交替。負傷が「ちょっとヒドい状態」(黒田監督)だった小坂が下がり、田中雄大(2年・A.C AZZURRI)がゴールマウスへ。やむを得ないとはいえ、黒田監督からすれば想定外のカードを1枚切ることになります。
42分は野洲。ゴール右寄り、約25mの位置から望月が直接狙ったFKは田中がしっかりキャッチ。「チームを盛り上げるのが大好きな男」と黒田監督が評した田中はこのワンプレーで落ち着いたか、49分に望月のピンポイントスルーパスへ走り込んだ高野登志基(3年・セゾンFC)のシュートにも、うまく間合いを詰めてコースを塞ぎ、DFのクリアで危機回避。替わった守護神はいい形でゲームに入ります。
52分、同時に動いた両指揮官。黒田監督は前線の縣翔平(3年・ディアマンテ大阪U-15)に替えて、須貝一希(3年・横浜いずみSC FONTENSE)を投入。山本監督は右FWの関口悠太朗(3年・セゾンFC)を下げて、右SBに西村仁志(2年・YASU club U-15)を送り込み、武田侑也(3年・セゾンFC)をSBから右FWへ上げる配置転換を施します。
すると、すぐさま効果が出たのは追い付きたい野洲。54分、望月のパスから高野が放ったシュートは右へこぼれましたが、これをすぐさま拾った武田はサイドをゴールライン上までえぐって中へ。田中もわずかに触ったものの、ファーへこぼれたボールをプッシュしたのは大本。「勝負を掛けるポイントになったと思う」と山本監督も認める、武田のスライドが早くも奏功した格好で、試合は振り出しへ引き戻されました。
60分も野洲。西村を起点に望月が右へスルーパス。武田のクロスは田中がキャッチしたものの、「ボールを右サイドに入れさせないように」(黒田監督)という青森山田の狙いもわずかながら緩み始め、野洲の"右"が一気に活性化し始めます。ところが、61分に決定的なシーンを迎えたのはグリーンの戦士。山田武典(2年・七戸中)の積極的なミドルがDFに当たって獲得した左CK。池上が丁寧に蹴り入れたボールを、小松崎雄太(3年・坂戸ディプロマッツ)は高い打点から強烈なヘディング。ゴール左スミへ向かったボールは、しかしポストにヒットしてピッチ内へ。再リードとはいきません。
62分は野洲。GKに掛けた猛プレスがルーズボールを呼び、大本と何とかクリアしたいGKの走り合いは大本に軍配。しかし、シュートは弱くなり、カバーに入った青森山田DFが大きくクリア。得点後は「ボールを動かすのはプレミアで対戦した相手より、野洲の方がうまい」と敵将も認めた"セクシーフットボール"の勢いが勝り、徐々に押し込み始めます。
黒田監督も66分に負傷でベンチスタートとなっていたキャプテンの椎名伸志(3年・札幌JFC U-15)を山田に替えて投入したものの、「相手は思った以上にうまく、正面に入っても股を抜かれたり、上を通されたりする。ボールを取りにいっても取れなかった」とその椎名が話したように、続く野洲の攻勢。
ここで意地を見せたのは青森山田の守備ブロック。「声もよく出ていた」(黒田監督)小松崎と山田将之(3年・Forza'02)のCBコンビを中心に、惑わされがちなショートパスとドリブルにも冷静に対応。また、「武田の対策として、初めてレギュラーで使った」(同)という左SBの八戸雄太(2年・FC多摩JY)も、高い位置に出てきた武田相手に落ち着いたプレーで、チームに安定感をもたらします。
73分には左サイドでの細かい崩しから、高野が放ったミドルも田中がキャッチ。ポゼッションでは8:2に近い割合で野洲が上回る中でも、「想像以上の苦しい戦いも、選手たちがバランスを崩さずにやってくれた」と黒田監督も称えた青森山田の堅牢は揺るがず。3分のアディショナルタイムもすぐに消え去り、スコアは1-1で終了。2回戦への切符獲得はPK戦で争われることになりました。
ここで目立ったのが両守護神。青森山田1人目のキックを、尾本は素晴らしい反応でファインセーブ。野洲の望月、青森山田の室屋成(3年・ゼッセル熊取FC)とU-17ワールドカップ経験者が相次いで決めると、野洲2人目のキックは田中が読み切ってセーブ。両者譲りません。
青森山田3人目の山田が沈め、迎えた野洲3人目のキックは無情にも枠外へ。形勢逆転。青森山田4人目はAチームが臨んでいたプレミアではなく、「プリンスで結果を出してきた」(黒田監督)八戸が成功。外したら終わりの野洲4人目は水野隼人(3年・セゾンFC)が中央へグサリ。
運命の青森山田5人目はストライカーの林。駒沢の"目"が一斉に注がれる中、冷静に打ち切ったキックがゴールネットを揺らし、1回戦最注目のビッグマッチに幕。「PKの練習もしっかりやる中で徹底してきた"山田の蹴り方"」(黒田監督)でロシアンルーレットを制した青森山田が、次のステージへ駒を進める結果となりました。
サッカーの面白さと難しさが凝縮されていたようなゲームだったと思います。山本監督は「1点で終わった前半が想定外だったし、後半の20分ぐらいしか野洲のスタイルを出せなかった」と振り返りましたが、その"20分ぐらい"で繰り広げられたスタイルは、スタンドに詰めかけたサッカージャンキーたちも思わず溜め息を吐くしかないような魅力溢れるモノ。ここで消えてしまうのが何とも惜しい好チームでした。
そんな野洲に対して、「自分たちのやりたいことがやれているようでやれていない」と椎名が振り返った青森山田が、圧力を掛け続けられる中でもとりわけ後半に失点を喫して以降の苦しい時間帯を凌ぎ切った、執念とも言うべき守備は圧巻。「最後は気持ちの差」(黒田監督)という紙一重の勝負を手繰り寄せた"伝統"のメンタリティは、確かに彼らの中に息付いていました。          土屋

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