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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2012年12月30日

高校選手権開幕戦 実践学園×東海大五@国立

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kokuritsu1230.jpg「国立のその先へ」。全国高校サッカー選手権大会、"センシュケン"の開幕です。オープニングマッチの舞台は聖地国立。東京B代表の実践学園と福岡代表の東海大五という顔合わせ。激戦区を勝ち抜いてきたチーム同士の対戦となりました。
関東大会予選、インターハイ予選、そして選手権予選と都内で行われたトーナメントのコンペティションでは、そのすべてで結果を出してきた実践学園。関東大会では夏の全国王者・三浦学苑を破り、インターハイでは流通経済大柏と接戦を演じるなど、全国レベルも既に体感済み。「目指すのは全国優勝」(天野将貴・3年・FC杉野JY)です。
対するは、昨年に続いて2年連続で国立の開幕戦に登場してきた東海大五。予選決勝では筑陽学園の粘り強い抵抗に遭いながら、延長を制して全国切符を獲得。強豪ひしめく福岡で、東福岡以来の7年ぶりとなる連覇を達成しています。岡山内定の小林秀征(3年・水巻南中)をはじめ、昨年の悔しい初戦敗退をピッチで経験した人数は今日のスタメンに7人。借りを返すステージは整いました。夢舞台はあいにくの雨模様。緑の芝に雨粒が踊る中、東海大五のキックオフで開幕戦はスタートしました。
まず最初にシュートを放ったのは実践。4分、ルーズボールを収めた徳山浩介(3年・Az'86tokyo-ome)が思い切ったミドル。ここは枠の左へ外れましたが、「遠めからでも積極的に打って、シュートで終わろうと話していた」(天野)という狙いを早速体現します。一方の東海大五も6分、中盤から安藤瑠偉(3年・北九州浅川中)がミドルを打ち切り、ボールはDFに当たって枠の左へ逸れたものの、スリッピーなピッチを生かしたファーストシュートが双方に記録されました。
実践は東海大五対策として、「いつもより5mほどラインを下げて、前からプレスを掛ける」(深町公一監督)スタイルを選択。これに伴い、前線に「前からしっかり追える」(同)中里岳史(3年・青梅第三中)と小林優(3年・F.C. Branco八王子)を縦関係で並べ、ボランチには普段アタッカー起用の多い粕川竜貴(3年・FC府中U-15)を入れるなど、少しいつもとは異なる配置でゲームに入ります。
これが結果的には奏功。セットプレーからは7分、12分、13分とCKを与えましたが、いずれも危ないシーンまでは創らせず。ラインの設定と、前述したようにややスリッピーなピッチコンディションもあって、警戒していた小林のスピードをうまく封殺することに成功し、17分に小林の基点となるプレーから大石奨悟(3年・FCグローバル)が掴んだ東海大五の決定機も、「自分はあのプレーが得意。間合いを詰められる長所が出た」と振り返った天野のファインセーブで回避。劣勢に見える展開にも、「いつも通りかなと思っていた」(天野)「守備の時間が長くなるのは想定内」(鴻田直人・3年・JACPA東京JY)と、相手の攻撃を1回ずつ冷静に潰していきます。
23分は実践。中里のパスから、森栄司(3年・府ロクJY)が枠へ飛ばしたミドルは東海大五GK鈴木光(2年・ハジャスFC)がキャッチ。24分も実践。原大和(3年・横河武蔵野JY)が持ち味のドリブルから、強引なミドルを枠の左へ。この辺りから、「パスも下で回して、サイドに基点が創れた」(天野)実践に、攻撃のリズムが出てきました。
28分も実践。「前を向いて裏に出せる」と指揮官も評価した粕川のフィードから、中里が突っ込んだドリブルはDFが何とかクリア。31分には東海大五も新保滉(3年・久山中)の左CKから、大石が狙ったミドルは枠の左へ。32分も実践。左サイドを原と小林優で崩し、中里のミドルは鈴木がキャッチ。36分にも原が再び強引なドリブルシュートを放つなど、フィニッシュを取り切り続けます。40分に小林秀征がボレーを枠の上へ外すと、ほぼ時間通りに吹かれた前半終了のホイッスル。トータルで見ればほぼフィフティに近い攻防の40分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
後半はまず東海大五にFKのチャンス。45分、ゴール右寄り、約35mの距離から直接狙った中井栞吏(2年・島根大田第一中)のシュートは枠の左へ外れましたが、積極的な姿勢を打ち出します。ところが、意外なシーンが訪れたのは46分。実践の左SB佐藤剛(3年・あきる野FC)が高く蹴ったFKはDFがクリアしたものの、エリア内で持ち出した東海大五の選手の手にボールが運悪くヒット。故意ではなかったものの、岡部拓人主審はPKを指示。実践に思わぬ先制機が転がり込みます。
キッカーは「PKはアイツに蹴らせることしか考えていない」と深町監督も絶対的な信頼を寄せる、キャプテンの鴻田。「思い切り蹴ってやろうと」左を狙ったキックに、鈴木もよく飛び付きましたが一歩及ばず、力強く揺らされたゴールネット。しっかりワンチャンスを生かした実践がリードを奪いました。
青の疾風怒濤。48分、左サイドでボールを持った原は、運んで、運んで、運んでDFを振り切ると、「チェンジアップのような」(深町監督)フワリとしたシュートで、ボールを逆のサイドネットへ送り届けます。自ら「サイドを突破するドリブルには自信がある」と語る原の、50mあまりをぶち抜いたビューティフルゴール。先制から1分で点差を広げました。
「点を取れる時に取れず、向こうは点を取れる時に取った」と大丸忠監督が言及した東海大五。50分には左サイドで組み立てた流れから、西岡大志(3年・宮崎日大中)が放ったミドルは天野がキャッチ。55分のトリックFKは、読み切った佐藤が確実にクリア。56分、左から山口恭平(3年・宗像中央中)が折り返し、安藤がキープから打ち切ったシュートも天野がしっかりキャッチ。実践の牙城を崩せません。
先に動いたのは深町監督。62分、いいアクセントになっていた粕川を下げて、本来ボランチのレギュラーだった三村涼(3年・Az'86tokyo-ome)を送り込み、中盤のフィルターを一層増強しつつ、64分は小林優が、66分は中里がしっかりシュートで終わるなど、うまく時計の針を進めていきます。
68分に中井を下げて、中山一毅(2年・みやこ犀川中)をピッチへ送り込んだ東海大五は、69分に繋いで繋いで創った決定的なシーンも、最後はオフサイド。73分にも新保が左からCKを蹴ると、CBのポジションから前線にスライドしていた山村欣也(3年・日章学園中)が上げたクロスは天野がしっかりキャッチ。なかなかシュートまで持ち込む場面が出てきません。
しかし、一瞬の隙を突いたのはタイガー軍団のエース。77分、GKの鈴木が蹴ったロングキックはそのまま実践ゴール前まで流れ、対応した鴻田がボールを弾ませた瞬間に、体をねじ込んだのは小林秀征。素早く振り切った右足シュートが、対角線上のゴールネットへ突き刺さります。さすがの決定力。2-1。1点差。試合は残り3分とアディショナルタイム3分の勝負へ。
もはや前線に4人を残して、1点を返しに行く東海大五。80+1分、右から山口が投げ入れたロングスローも実践DFがクリア。80+2分、長いボールがゴール前の混戦を呼び、最後は山村が右から放ったボレーは、わずかに枠外へ。「尾崎を中心に、自分より前でしっかり跳ね返せていた」とは天野。「今日もエアバトラーでしたね」と笑ったのはその尾崎快斗(3年・POMBA立川FC)。高さ勝負ならお手の物。深町監督も「安心して見ることができた」と、春から積み重ねてきた守備の安定感を土壇場でも発揮し続けます。
80+4分、東海大五が左サイドを崩して、上げ切ったグラウンダーのクロスを天野が丁寧に、かつ魂を込めてキャッチすると、国立の寒空を切り裂いた笛の音は、「長かったアディショナルタイム」(天野)の終焉と、勝利を告げるファンファーレ。「自分たちのペースで戦えたと思う」と天野も手応えを口にした実践が、今大会最初の勝者という称号を手に入れる結果となりました。
実践はほとんど狙い通りのゲームができたのではないでしょうか。「一番計算できる」と深町監督が捉えて徹底してきた守備は、失点シーンを除けばかなりのハイパフォーマンス。尾崎の高さと、鴻田のカバーリング、そして「思ったより国立でも声が通った」と語る天野のコーチングを含め、「チーム全体での守備意識」(深町監督)は全国でも十分強みとして誇れることが証明されたと思います。「相手どうこうより自分たちのサッカーをやろうと話していた」と鴻田。実践が自ら積み上げてきたスタイルを、最高の舞台で伸びやかに披露してくれました。       土屋

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