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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
3年前に激突したファイナルの再現。関東第2代表の明治大と九州第1代表の福岡大が、国立から川口へ舞台を移して対峙します。
東海の雄・中京大との初戦は常に先行されながら2度追い付き、延長では一旦突き放しながら追い付かれる熱戦を展開。最後はPK戦を制して、ベスト8へ駒を進めてきた明治。前線の山村佑樹(4年・FC東京U-18・水戸内定)と阪野豊史(4年・浦和ユース・浦和内定)、中盤の三田啓貴(4年・FC東京U-18・FC東京内定)と岩渕良太(4年・FC東京U-18・松本内定)など、アタッカーにJリーグ内定者を擁し、「繋ぐサッカー」(神川明彦監督)で頂点を狙います。
対する福大の初戦は、関西第3代表の桃山学院大と堅いゲームを繰り広げ、オウンゴールの1点で辛勝。こちらは大学ナンバーワンDFとの呼び声も高い牟田雄祐(4年・筑陽学園)を筆頭に、スタメン4人が185センチオーバーという、「Jリーグを見渡しても、なかなかないような大型チーム」(乾真寛監督)。「せっかくフィジカルな選手が揃っているので、それを前面に押し出していく」(同)スタイルで初優勝を目指します。対照的な両者の再会は13時51分、福大のキックオフで幕を開けました。
第1試合同様に、いきなり訪れた先制機。6分、右サイドで福大が獲得したスローイン。188センチのCB大武峻(2年・筑陽学園)はタッチラインに立ち、「35m以上投げられる」(乾監督)ロングスローを敢行。これを185センチのボランチ田村友(2年・九州国際大付属)がフリックすると、田中智大(4年・福岡U-18)はダイレクトボレー。丁寧にインサイドで当てたボールは、ゴール右スミに吸い込まれます。まさに狙い通りのセットプレーが結実。早くも福大がスコアを動かしました。
以降はボールを握って動かす明治に、奪ったら素早く攻め切る福大という構図がより鮮明に。ただ、明治はなかなか深い位置までは入っていけず、チャンスを創り切れません。すると"博多の男"たちが記録した追加点。
16分、本来のキッカーである清武功暉(4年・大分U-18・鳥栖内定)の欠場を受け、セットプレーを任された平田拳一朗(3年・高川学園)は左足でFKを蹴ると、絶妙の軌道で中へ。これをニアに潜った田中は、ヘディングでズドン。「あんまり考えないで打ったら入るタイプ」と乾監督が笑いながら評した4年生が、本来のSHから1.5列目に配した指揮官の期待に応える2ゴール目。福大がリードを広げました。
2点を追い掛ける展開を強いられた明治は、24分にようやくチャンス創出。最終ラインからCBの山越康平(1年・矢板中央)がフィードを縦へ。追って収めた阪野はフィニッシュまで取り切るも、ここは福大GK藤嶋栄介(3年・大津)がファインセーブで回避。さらに、ここからの逆カウンターで福大の最前線に入った岸田和人(4年・大分U-18)が突破を図り、たまらず山越はイエローカードを代償にストップ。「流れを引き戻せない」(神川監督)明治。
このFKを直接狙った牟田のキックは、明治GK三浦龍輝(2年・FC東京U-18)がファインセーブを見せましたが、この流れで生まれたCKがさらに広げた点差。26分、平田の右CKはニアの嫌な位置に飛び、三浦は懸命にパンチング。拾った岸田和人のシュートはクロスバーに弾かれたものの、こぼれに反応した大武のボレーは豪快にゴールネットへ突き刺さります。0-3。思わぬ大差が付いてしまいました。
苦境の明治は最初の交替策もアクシデントから。38分、脇腹を痛めて動き切れない山村に替えて、上松瑛(3年・洛南)を中盤に送り込み、三田を一列上げるスライドを余儀なくされます。そして、その布陣が稼働する前に生まれた隙を、抜け目なく突いた福大のトドメは42分。
「相手は攻める時に2バックになるので、後ろに残ったボランチと3人になる所は狙っていた」と乾監督。岸田和人は果敢なチェイスで残っていたボランチの一角からボールを奪うと、ゴールまで35m近くはある位置からのロングシュートにチャレンジ。距離が"ゼロ"になった瞬間、ボールはゴールの中へ見事に収まります。「いい形で奪って取れた。全員の想いが詰まったゴール」と牟田。大量4点のアドバンテージを福大が獲得して、最初の45分間は終了しました。
ハーフタイムを挟んで迎えた後半は、無理する必要のない福大と、無理しなくてはいけない明治という立場が一層明確に。51分は明治。和泉竜司(1年・市立船橋)が右サイドを抜け出して折り返すも、混戦から2度打ったシュートは、いずれも福大ディフェンスが体でブロック。57分も明治。三田が右へ流し、上がってきたSBの小川大貴(3年・磐田ユース)がクロス。こぼれを水野輝(3年・市立船橋)が叩いたミドルは枠外へ。ボールは圧倒的に持ち続けるものの、「外ではある程度持たれても、真ん中で折り重なりながら、体を張って守備する所は一番教えている所」と指揮官が自信を口にする福大の堅牢は、一向に揺らぐ気配がありません。
64分、神川監督も2人目の交替策を決断。「相手が完全に引いたので生きなくなった」水野に替えて、石原幸治(2年・市立船橋)を左SHへ投入。ボランチには岩渕と和泉が並び、阪野の下に右から上松、三田、石原が入る格好で、反撃態勢を整えると、65分には岩渕の素晴らしいサイドチェンジからチャンス到来。小川の折り返しをうまく受けた岩渕のミドルは、しかし枠を捉え切れず。刻々と消えていく時間。
70分は福大がカウンターから決定的なシーン。田中を起点に、駆け上がった岸田翔平(4年・大分U-18・鳥栖内定)は右ヘラストパス。途中出場の山﨑凌吾(2年・玉野光南)は左足に当て切れず、最後は三浦に難なく処理されましたが、後半1本目のシュートを繰り出し、"槍"の脅威はちらつかせます。
このままでは終われない紫紺の意地は79分。左サイドで八塚利朗(3年・東京Vユース)からパスを引き出した三田は、相手最終ラインの裏へ落とす斜めのクロス。ここに走り込みながら、右足アウトで流し込んだのは上松。ようやく1点を返しました。
残り10分は明治もパワーのベクトルがパスからシュートに移行して、次々にフィニッシュまで。81分、岩渕のミドルは枠の右へ。84分、阪野のパスから上松が狙ったシュートは、DFが体に当てて藤嶋がキャッチ。86分、左右に揺さ振る展開から石原が打ったシュートは、牟田が正面に体を投げ出してブロック。福大の恐れを知らぬシュートブロックは驚異的。
90+1分に崩し切った明治。三田のセンス溢れるスルーパス。左から八塚が丁寧にニアへ送った低いクロスを、全力で走り込んだ阪野は豪快なボレーでファインゴール。執念は見せた明治。しかしながら勝ったのは福大。「2009年の決勝で負けたリベンジは果たせた」と乾監督。九州王者が悲願達成まであと2勝に迫る結果となりました。
明治は「今年はああいう流れの中で連続失点してしまう」と神川監督が振り返ったように、前半の最悪に近い入り方が最後まで響いたのは間違いない所。「自分たちで判断してプレーする」(神川監督)スタイル上、今日に関しては強い"個"が逆にまとまり切らなかった印象を受けました。
一方の福大は「"美しさ"はないかもしれないが、自分たちのサッカーはよく出せた」と乾監督も評価したように、セットプレーやハイプレスなど、自らの持ち味を最大限に結果へ繋げてみせました。「痺れるくらいの勝負強さ」(乾監督)は、スタイルを信じ切った証。色々な意味での"強さ"で、福大が上回った90分間だったと思います。 土屋
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