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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
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"王子"から"王"への戴冠式。とうとう関東の覇者が決定します。
桜舞う4月8日に開幕したプリンス関東1部も、師走の今日が最終節。数々のドラマに幕を引くラストバトルを迎えました。訪れたのは前橋育英高校高崎グランド。6位の前橋育英と2位の柏レイソルU-18が激突します。
プレミアリーグ参入戦出場権という、どのチームにとってもシーズン当初に目標として掲げたであろう優勝の可能性を、最終戦まで残しているチームは3チーム。首位は勝ち点39の桐光学園。2位は同じく勝ち点39の柏レイソルU-18。3位は勝ち点37のFC東京U-18。得失点差はそれぞれ31、26、25となっています。柏からすれば諸条件はあるものの、まずは目の前のゲームに勝利することが奇跡への絶対条件。そこに立ちはだかるのは、2年ぶりの選手権出場を決めており、全国でも優勝候補の一角に挙げられるであろう難敵・育英。年代屈指の好カードは赤城おろしが吹き付ける中、柏のキックオフでスタートしました。
ゲームの構図は序盤から明確に。後ろからパスを回す柏に、奪ったボールを素早く前へ運ぶ育英。ただ、柏は「ボールがあまり走らないグラウンド」(下平隆宏監督)にやや苦しめられ、「ビルドアップのテンポが上がらない」(同)状態に。"ホーム"の育英は当然そのちょっとした齟齬を見逃さず、2トップの小口大司(2年・裾花ヴィエンテ)と上田慧亮(2年・横浜F・マリノスJY)からスタートするハイプレスを敢行。柏の持つポゼッションの効果を、最小限で食い止めることに成功します。
すると、先にチャンスを掴んだのは育英。9分、右SBの高田龍司(2年・FC東京U-15深川)がシンプルに裏へ。並走したDFを振り切って、小口が右から中へ折り返すと、逆サイドから走り込んだ外山凌(3年・東京ヴェルディJY)が枠内へ。ボールは惜しくも柏GK伊藤俊祐(2年・柏レイソルU-15)の正面を突きましたが、完全に崩した形を創りました。
さて、なかなかフィニッシュまで辿り着かない柏。そんなチームにスイッチを入れたのは、キャプテンマークを巻いた8番。11分、横へのパスワークが続く中、中川寛斗(3年・柏レイソルU-15)は縦へ鋭いスルーパス。右サイドを抜け出したSBの堤勇人(3年・柏レイソルU-15)が戻し、平久将土(3年・柏レイソルU-15)が中へ。スペースへ潜った木村裕(3年・柏レイソルU-15)のシュートは育英GK蔦颯(2年・SCH.FC)にキャッチされたものの、ようやく創り出した好機から少しずつ歯車も噛み合うように。2種登録の選手がトップに帯同する中で、チームを支えたキャプテンの中川がさすがの存在感を発揮します。
14分には木村のFKから、中川が左足ボレー。掻き出したDFのクリアを木村、中川、秋野央樹(3年・柏レイソルU-15)と繋ぎ、最後は小林祐介(3年・柏レイソルU-15)のミドルはDFがブロック。15分にも平久のパスを中川がヒールで残し、小林の高速パスを川島章示(3年・柏レイソルU-15)はスルー。木村のシュートは枠の左へ外れたものの、一連の華麗なパスワークに会場からはため息が。
ノッてきた太陽王子。30分も柏。左サイド、ゴールまで約30mの距離から木村が直接狙ったFKは、わずかに枠の左へ。31分も柏。御牧建吾(3年・柏レイソルU-15)のクサビを受け、ターンした秋野はスルーパス。川島のシュートはゴール左スミギリギリに飛ぶも、少し蔦が触ってポストを直撃。32分には育英も、高い位置で上田がボールを奪い、駆け上がってきた鈴木徳真(1年・FC古河)へラストパス。フリーの1年生は、しかし力んでしまい大きく枠外へ。先制とはいきません。
スコアが動いたのは37分。秋野を起点に小林が裏を突くと、「自信とフィジカルが付いて、本当に伸びましたねえ」と下平監督も認める堤がDFともつれて転倒。微妙なシーンでしたが、主審はPKを指示します。キッカーは秋野。得意の左足で力一杯振り抜いたキックは、蔦もわずかに及ばず。意外な形から柏がアドバンテージを握って、前半の45分間は終了しました。
この時点で他会場の途中経過は、桐光学園が横浜FMに2-1とリードを許し、FC東京は桐蔭学園に1-2でリードという状況。このままで行くと、1位柏(勝ち点42・+27)、2位FC東京(勝ち点40・+26)、3位桐光学園(勝ち点39・+30)ということになります。
ハーフタイムが明けると、まず惜しいシーンを迎えたのは育英。47分、外山、小口と回して、小川雄生(3年・前橋FC)のダイレクトミドルは、強烈な弾道でわずかに枠の左へ外れましたが、伝統の"14番"を背負っているのも納得のプレーで、柏ゴールを脅かします。
後半も大枠の流れは変わらないものの、より育英が見せる守から攻への切り替えが速くなり、中でも広範囲に動く上田と、左に張り出しながらボールを引き出す外山の存在がゲームを牽引していきます。そして57分、激しく牙を剥いたタイガー軍団の咆哮。右サイドをシンプルかつ正確に崩すと、開いて受けた上田が中へ。ファーで待っていた外山が放ったシュートは、左のポストを叩いてゴールへ吸い込まれます。まさに疾風怒濤。点差は一瞬で霧散しました。
以降もシンプルなアタックでチャンスは育英が量産。62分、小川が左へレーザーパスを送ると、外山は1人かわして枠の左へ逸れるフィニッシュ。63分、上田のスルーパスから抜け出した小口がGKもかわしたものの、カバーに戻った柏CB中谷進之介(2年・柏レイソルU-15)が間一髪でクリア。66分、上田が右へ振り分け、上がってきたSBの高田が打ち切ったミドルは伊藤俊祐がキャッチ。際どいシーンが続きます。
一方の柏は、「体が重そうで、コンディションもそんなに良くなかった」と指揮官が振り返ったように、相手陣内での"あと1つ"が出てこず、67分に秋野のパスから平久がクロスバーの上へ打ち上げたシュートが、後半のファーストシュート。「なかなか攻め切れない」(下平監督)展開を強いられてしまいます。
先に動いたのは山田耕介監督。70分に左SBの田邉真之介(2年・三菱養和巣鴨)に替えて、三橋秀平(3年・湘南リーヴレ エスチーロ)を最前線へ投入。上田が右SHへ回り、右SHだった廣田和也(3年・前橋FC)が右SBへ落ちて、高田が左SBにスライドする大移動を敢行。2分後には下平監督も、小林を下げて伊藤光輝(3年・柏レイソルU-15)を送り込み、中盤にてこ入れを。直後に川島のシュートチャレンジから獲得したCKは、DFがしっかりクリア。破れない均衡。
さらに鈴木を永田大(3年・島原第一中)と入れ替えた育英のチャンスは81分。左から廣田が蹴ったFKは、密集のゴール前でバウンド。角度的にも逆転ゴールかと思われた瞬間、伊藤俊祐が超ファインセーブで回避。破れない均衡。
下平監督が84分に決断したのは、「初めてかもしれない」3枚同時交替。いずれも3年生の中川、川島、木村を下げて、白井永地(2年・柏レイソルU-15)、宮澤弘(2年・柏レイソルU-15)、大島康樹(1年・柏レイソルU-15)という、来年の主力を担うであろう下級生に未来を託します。
とはいえ、やはり勝たなくてはいけないという焦りからか、どうしても「やり慣れていない」(下平監督)長いボールやアーリークロスが増え、決定的なシーンまで至らない柏。それを尻目に一刺しを狙う育英。89分は育英。相手最終ラインの乱れを突いて、飛び出した三橋のドリブルシュートは枠の左へ。90分は柏。秋野が右から入れたFKは、エリア内でバウンドするも蔦が確実にキャッチ。
アディショナルタイムは3分。90+1分は育英。廣田が右から中へ付けると、フリーで永田が走り込むも、シュートは伊藤の正面。90+3分も育英。GKへのバックパスに突っ込んだ三橋が、ボールカットからゴールを陥れるも、足を高く上げたというオフェンスファウルに。程なく鳴り響いた、澄み切った上州の空気を切り裂くタイムアップのホイッスル。白熱の好ゲームは決着付かず。両者勝ち点1ずつを分け合う結果となりました。
そして、気になる他会場はFC東京が1点を追加して、1-3で勝利。残るゲームは終了直前まで横浜FMがリードしていましたが、土壇場で桐光学園が執念の同点弾。劇的な勝ち点1奪取で、関東を制することになりました。
育英は素晴らしいパフォーマンスだったと思います。上田や外山、小川などタレントも揃い、個でも組織でも繰り出せるカウンターの切れ味は抜群。開幕を控える選手権での躍進も期待できるのではないでしょうか。
優勝に一歩手が届かなかった柏は、1年を通じて非常に魅力的なサッカーを見せてくれました。3年生に関しては、トップチームに昇格する主力選手ももちろんですが、「順調に1人1人が成長して、ちょっと平均点が低かった選手も上がってきた」と下平監督。チームとしての完成度はかなりの域まで達していたと思います。「ベースはみんなが持っているので、まだ成果が出なくてもこれから色々なモノを身に付けてくれれば問題ない。次のステージでもちゃんと成功して欲しい」(下平監督)。"次のステージ"での活躍にも期待しています 土屋
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