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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2012年も今日がラストデイ。大晦日のサッカーイベントと来れば、当然高校選手権でしょう。1回戦の2試合が行われる駒沢の第1試合は、東京A代表の修徳と徳島代表の鳴門が激突します。
インターハイ予選から数えて、リーグ戦、そして選手権予選と都内では公式戦22戦無敗という圧巻の記録を創り、堂々の東京代表を勝ち取った修徳。究極の堅守速攻型から繰り出される高速カウンターは、集中力も含めて全国レベル。S級ライセンスを取得している知将・岩本慎二郎監督の下、徹底してきたスタイルで勝負します。
一方、75回大会では田村直弘を擁した徳島商業を県内初の国立へ導くなど、徳島を代表する名将の香留和雄監督が指揮を執る鳴門。レギュラーの大半が1、2年生という若いチームは波に乗り、県予選決勝では徳島商業に3-2で競り勝って、6年ぶりの代表権を獲得。全国での飛躍を誓います。東京代表の登場と2試合目のカードもあってか、スタンドは10659人の大盛況。鳴門がボールを蹴り出し、ゲームはキックオフを迎えました。
先にシュートを放ったのは鳴門。2分、松浦一樹(2年・徳島ヴォルティスJY)のFKから、こぼれを山口博也(2年・徳島ヴォルティスJY)が強引にミドル。ボールは枠の左へ逸れましたが、まずはファーストシュートを打ち切ります。ただ、徐々に「ウチもボールは回せるんですよ」と岩本監督も笑った修徳へ傾いた流れ。「チーム全体が主導権を握ることが今日のテーマ」と語るボランチの城ヶ瀧大地(3年・フレンドリーJY)を中心にして、最終ラインもしっかりボールを繋ぐ戦い方で、好リズムを生み出します。
8分には、右SBの池田晃輔(2年・FCフェスタ)が裏へ落とすと、小野寺和也(3年・フッチSC)が一瞬の間合いから放ったシュートは、わずかに枠の右へ。11分、本橋瑞基(3年・クリアージュFC)の右CKから、城ヶ瀧が力強く当てたヘディングは、鳴門GK安永龍平(1年・プルミエール徳島SC)がファインセーブ。さらに13分には守備で効いていた久保祐貴(2年・習志野第一中)が、19分にはキャプテンの野澤克之(3年・FC東京U-15深川)が相次いでミドルを狙うなど、「ミスせずにしっかりボールを保持して主導権を握る」(城ヶ瀧)ことに成功します。
さて、2分のシュート以降はなかなかチャンスを創り出せない鳴門。敵将も警戒選手に挙げていた2トップの宮井智史(2年・徳島ヴォルティスJY)と林壮太(2年・徳島ヴォルティスY)にボールが入る場面はあるものの、そこへのサポートが遅く、厚みのあるアタックには至りません。加えてサイドも相手に押し込まれる場面が多く、攻めるポイントが見つからなかった印象です。
23分は修徳。野澤が粘って右へ繋ぎ、大塚竜太(3年・フッチSC)は1人かわしてクロスを上げると、こぼれを狙った野澤の右足ボレーは枠の右へ。28分も修徳。大塚のパスを受けた野澤が裏へ送り、小野寺はGKともつれ、シュートまでは打てなかったものの、悪くないチャレンジ。
29分には鳴門にも好機。やや修徳のDFラインがバタつき、ルーズになったセカンドを宮井がボレー。DFに当たったボールは枠の右へ外れましたが、このCKを山口が蹴ると、ニアで南野秀斗(3年・プルミエール徳島SC)がゴール右へ逸れるヘディング。少しギアが入ります。
ただ、前半の残り時間に2度訪れた決定機は修徳。35分、「相手の陣地でボールを取ることが自分の仕事」と話す城ヶ瀧が、素晴らしいカットからそのままエリア内へ侵入してラストパス。野澤がここも右足で振り抜いたシュートは安永がキャッチ。38分、右サイドを本橋と大塚が絶妙のコンビネーションで崩し、小野寺が左足で狙ったシュートも安永がキャッチ。先制とはいかなかったものの、「落ち着いているように見えた」と岩本監督も振り返る修徳攻勢で前半は終了しました。
後半はいきなり修徳にチャンス。絡んだのはハーフタイムに「もっと戦わないと」と喝を入れられたフッチコンビ。41分、クサビを小野寺が頭で落とすと、大塚はダイレクトでリターン。抜け出した小野寺のシュートは左へ外れたものの、「前半はインターハイと雰囲気が全然違って"カチカチ"でした」と苦笑いしたストライカーが、1つ持ち味を発揮します。
鳴門も43分には右サイドで時間を創り、林がマイナスに戻したボールを、山口がループ気味に狙ったミドルは枠の上へ。お互いにフィニッシュを取って、後半が立ち上がります。
変わらず修徳ペースで時間が推移しつつ、シュートシーンは双方に訪れない中、スコアが動いたのは53分。大塚の落としを城ヶ瀧はダイレクトで裏へ。本橋のシュートは鳴門の左SB惠木政嘉(3年・徳島川内中)がよくブロックしましたが、再び拾った本橋が大塚へ付けると、繰り出された10番の必殺スルーパス。「ポストに当たるようにニアを思い切り狙って」利き足とは逆の右足で押し出した本橋のシュートは、右のポスト内側を叩いてゴールへ吸い込まれます。「選手権予選でもゴールがなかったので、そろそろ決めたいなと狙いに行っていた」と笑う本橋の貴重な先制弾。修徳がアドバンテージを握りました。
勝利には2点が必要になった鳴門は57分に1人目の交替策。右SHを浜西俊樹(1年・鳴門第二中)から川添翔(2年・徳島ヴォルティスJY)に入れ替え、サイドに変化を付けてきます。対する修徳も61分に交替を決断。野澤を下げて、田上真伍(2年・FC東京U-15深川)を右SHへ投入。本橋が左へスライドし、こちらもサイドの配置を組み替えてきました。
64分は鳴門のアタック。左サイドを林が1人で切り裂き、中へグラウンダーのクロス。2人が詰めてきたわずかに前で、修徳GK野口博輝(3年・ヴェルディSS調布)が何とかキャッチ。1点が入れば、即同点。香留監督は68分に惠木と中村諒治(1年・プルミエール徳島SC)もスイッチさせ、勝負に出ます。
とはいえ、「前へ前へという気持ち」(城ヶ瀧)の衰えない修徳もラッシュ。69分、本橋、井上照規(3年・LARGO FC U-15)と繋ぎ、大塚はドリブルからセンス溢れるヒールパス。井上のシュートは安永の正面を突いたものの、大塚の"らしさ"が炸裂。71分、「周りを生かすような最低限の仕事はしないと」という小野寺のポストを、ここも大塚がシンプルに返すと、小野寺のループは安永が懸命に弾き出すファインセーブ。73分、久保の素晴らしい浮き球パスはフリーの小野寺へ。「相手が諦めたかと思って」丁寧にシュートを狙いに行くと、しかし全力で戻ったDFがクリア。追加点とはいかず。
すると、76分に沸いたスタンド。鳴門が右サイドで得たCK。山口がマイナス気味に入れたグラウンダーのボールを、松浦がまたぎ、南野がまたぎ、最後は林がシュート。残念ながら枠は逸れ、ダブルスルーは秀逸なアイデアでしたが、同点弾には結び付きません。
そして、次に変わったスコアボードの数字は"1"から"2"。79分、井上の果敢なミドルから獲得したCK。1本目は安永の好守に掻き出されましたが、2本目を田上が蹴り込むと、フリーの城ヶ瀧がヘディング。これを「自分は競るよりゴール前で何かした方がいいんじゃないかと、あの瞬間にふと思った」という小野寺が反応してフリックしたボールは、ゴールネットへ到達します。やはり最後は岩本監督も「アイツの代わりだけはいない」と評価する、チームを牽引してきた"心優しきエゴイスト"がきっちり一仕事。「自分的には理想のゲーム」と城ヶ瀧も手応えを口にした修徳が、同校12年ぶりとなる全国勝利をもぎ取る結果となりました。
修徳の快勝だったと思います。相手のスタイルもあって、得意の堅守速攻というよりも、「ダイレクトパスの練習をしてきた成果が、ここに来て出たと思う」と小野寺が話したような、"ポゼッション"スタイルを全国の舞台で披露。本橋に小野寺と取るべき選手がゴールを挙げて、守っても無失点に抑える完璧に近いゲーム運びで、東京勢の強さを見せ付けてくれました。
次の相手は優勝候補の青森山田。「ワクワクしている」と岩本監督が話せば、「全国でも有名な高校なので、そこを倒して有名になりたいという気持ちは持っている」と小野寺。いかに強豪とはいえ、"ホーム"の駒沢を簡単に脱出させるつもりは毛頭ありません。 土屋
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